40年以上前、タイトルは失念しましたが色々なウンチクが書いてある本で、次のような話を読みました。
あるピアノメーカーが、高級ピアノを売り出しました。
広告で「素晴らしい音色」「最高級のピアノ」とアピールしましたが、さっぱり売れませんでした。
そこである人のアドバイスでコピーを変えたところ、ピアノは飛ぶように売れました。
「あなたのお子様を、レディにする」
当時、小学生か中学生だった私は、「なるほど、商売ってそうなっているのか」と思った記憶があります。
今、改めてこのことを考えると、この逸話は「製品志向」と「顧客志向」の違いを実に的確に表現した事例だったことがわかります。
前者の「素晴らしい音色」「最高級のピアノ」は、製品であるピアノの機能や品質をアピールしています。しかしその価値が顧客にとってどのような意味があるかはアピールしていません。
後者の「あなたのお子様を、レディにする」は、顧客の価値をダイレクトにアピールしています。
後者をもう少し分析すると、
ターゲット顧客:ちょっと余裕があり教育熱心な親
ニーズ:子ども(主に女の子)が大人になった時に、恥ずかしくない素養を身につけさせたい
と考えた結果、このターゲット顧客のニーズに訴えかけるように、「あなたのお子様を、レディにする」というメッセージを届けています。
さらにこのようにターゲット顧客とニーズを捉えると、ピアノだけでなく、お子様をレディにするための解決策として、音楽教室を展開することで、顧客へ提供する価値をより高めて、ビジネスも拡大できます。
実際、カワイ音楽教室やヤマハ音楽教室は有名ですね。
40年前は子どもが沢山いて、日本も経済的に余裕が出るようになった時代だったので、ピアノメーカーはこのような形でビジネスを展開し、成長しました。
現代では少子高齢化が進み、子どもの習い事も多様化しているので、ピアノメーカーは子どもだけを相手にしていてはビジネスは低迷する一方です。そこでシニア層を狙って「大人の音楽教室」へと多角化しています。
世の中で流行っているビジネスと伸び悩むビジネスを、改めて「顧客志向」「製品志向」の視点で考えてみると、新しい発見があると思います。