「ガス抜き」では、問題は解決できない


昔のことです。

ある案件で問題が発生しました。その担当者に「このような問題があって、あなたが担当しているこれが原因のようなのですが、対応を検討していただけますか?」と相談しました。

担当者は「じゃぁ、一緒に飲みながらお話ししましょう」とおっしゃって、数日後に飲みに行くことになりました。

飲み会でその件を話すと、「いやぁ、色々としがらみがあるんですよ」と悩んでいることを話します。しかしなかなか本題に入ろうとしません。

なぜかそこには彼の後輩も参加していました。彼がお手洗いに立つと後輩は「xxさん、とてもいい先輩で、こんな人なんです……」とエピソードを語ってくれます。

結局、その日は問題について具体的に踏み込んで話ができませんでした。

 

翌日、その担当者に再び電話しました。

「それで、あの問題の件、どうします?」

と話したところ、

「え?昨日飲みにいったばかりじゃないですか」

との返事。結局、この案件の問題は解決できませんでした。

 

不満が溜まっている人たちに、「ガス抜き」と称して、話を一通り聞いたり、飲み会などのエンターテイメント系イベントを行ったりします。

彼が私に対して行っていたのが、実はこの「ガス抜き」でした。

この言葉はビジネスの世界で、「彼らも不満が溜まっているようだ。ちょっとガス抜きした方がいいんじゃないか?」といったような文脈で使われます。

ちょうど空気が溜まってパンク寸前の風船から空気を抜くように、溜まった不満(=ガス)を吐き出させるということですね。

Colorful balloons

 

ただこの「ガス抜き」という言葉は、人に対するリスペクトがあまり感じられない言葉でもあります。

もし誰かが自分に対して「あいつ、ガス抜きしておこう」と言っているのを聞いたら、あまりいい気がしませんよね。

 

また「ガス抜き」は、問題解決を先延ばしにし、うやむやのままにします。

本来は、不満が溜まっている人と対話し、何が不満なのかを明らかにし、こちらの状況も伝えた上で、双方が納得する解決策を探っていくことが必要です。そのためには手間がかかりますが、「ガス抜き」で問題から逃げるよりも、問題が解決することで成果もあがることが多いのです。

 

「ガス抜き」という言葉は、ビジネスの場では禁止用語にした方がいいのではないかと思う、今日この頃です。