こんな発言をよく見かけます。
「我が社は徹底的な生産性向上を追求して、成長する」
「日本は生産性向上を徹底して、成長しなければいけない」
確かに生産性向上は大切です。効率を上げることは、ビジネスの必須課題です。
しかし生産性向上だけでは、成長はしません。むしろ縮小します。これは簡単な計算でわかります。
売上1億円を達成するために、コスト5000万円かけていたとします。
営業利益は1億円-5000万円=5000万円。ですので営業利益率は50%ですよね。
ここで生産性向上を頑張って、コストを3000万円に下げたとします。しかし当然ながら、ライバルも生産性向上に励んでいます。そこで多くの場合、値下げしなければなりません。
でも値下げしても、営業利益率(=儲け)は維持したいですよね。そこで営業利益50%を維持する、と仮定しましょう。
売上 = コスト + 営業利益営業利益率 = 営業利益 ÷ 売上
ですよね。
コスト3000万円で営業利益率50%を達成する場合の売上は、この式にあてはめて考えると6000万円になります。(計算式は省略します)
つまり生産性向上を頑張ったのに、売上は1億円→6000万円に下がってしまいました。
実はこれが、日本の「失われた30年」の正体です。生産性向上は必要です。でも生産性向上だけでは、売上は下がるのです。しかしこんな反論がありそうです。
「でも日本って、生産性向上でずっと成長してきたんじゃないの?」
その通りです。ただし、それは高度成長期までの話。市場が成長していて、日本の生産性がまだ低かったので、ライバルよりも頑張って生産性向上すれば、成長して新たに生まれた市場をゴッソリ獲得できました。しかし現代では市場は成長していません。
問題は、もはや市場が成長していないのに、高度成長期に生まれたこの成功パターンを続けていることです。
生産性向上は常に行っていく必要がありますが、それだけではダメなのです。
いま必要なのは、新しい価値を生み出すこと。つまり価値創造です。
いまのやり方を改善するのは必要なことですが、長い目で見ると、それだけではジリ貧に陥ります。
いまのやり方をむしろ忘れて、全く新しい商品やサービスを生み出すチャンスはないか?
お客様は本当は何を熱望していて、喜んでお金を払おうと考えているのか?
低成長時代のいまこそ、「ウォンツ(潜在的ニーズ)の発掘」が必要なのです。
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