こんな広告に大金を使っていいの?


先日見た、あるビジネス週刊誌の1ページに掲載された広告は、こんな感じでした。

・大きく二ケタの数字が書かれています。一瞬わからなかったのですが、よく読むと創立○○周年でした。この広告にはこの数字が4−5箇所に書かれています。情報が重複しています。
・同じ意味の文章が2〜3箇所に書かれてますが、何を言いたいのか、よくわかりません。
・写真の中で一番大きな写真が、社長の写真です。でもこの写真を載せる意味がわかりませんでした。
・さらに見ると小さな写真が6〜7個掲載されています。創立以来の同社の歩みを振り返る写真のようですが、小さすぎて何なのかよく見てもわかりませんでした。(何かの模様に見えました)

「結局この会社、何をこの広告で伝えたかったんだろう?」と思ってしまいました。会社名も印象に残りませんでした。

巷では、こんな広告を実によく見かけます。そのたびに、つい思ってしまいます。

「この媒体ってお金がかかるよね。こんな広告に大金を使っていいんだろうか?」

「広告の父」と称されたデイヴィット・オグルヴィは、1983年に刊行した歴史的名著「売る広告」で、広告に必要なポイントを挙げています。いくつか抜粋しましょう。

①「広告は、効能を語れ」 これが本書で一番重要。もう一度読み返して欲しい。
→効能を語っていない広告はあまりにも多いのが現実です。すべてお金の無駄遣いです。

②広告の基本は、商品を知り、ポジショニングせよ
→事実に基づき、説得力ある形で説明し、違いを示すのが広告の役割です。多くの広告は、機能説明(何をやるか)だけで終わっています。

③自画自賛よりも、誰かの推薦
→誰かの推薦の方が、人は納得します

オグルヴィは、印刷媒体の広告で成功する方法も述べています。

④ヘッドラインを読む人は、本文を読む人の5倍。具体的なメッセージで売り込まないと、広告費の8割がムダ
→現実には、ヘッドラインが抽象的で、何をいいたいのかわからない広告ばかりです。

⑤イラストよりも写真の方が、人を惹き付ける。1枚の写真は1000語の言葉と同じ値打ちがある
→現実には冒頭の広告のように、写真を活かさない広告が多いのが現実です

⑥広告の配置。人は、図版→ヘッドライン→本文の順に読むので、各要素をこの順で配置。図版の下にヘッドライン。そして図版には必ず説明のキャプション
→これも無頓着な広告が多いですね。

「でも永井さんが見た広告って、創立○○周年の感謝を伝える広告でしょ? そもそも『売る広告』とは違うんじゃないの?」と言われるかもしれませんが、それは違います。

「感謝を伝える広告」も確かに大事です。しかしその場合も、その「感謝の気持ち」を的確に相手に伝える基本は、「売る広告」と同じです。

①「効能を語れ」 →その○○年間で、御社はどんな効能を提供し続けてきたのか?
②商品を知り、ポジショニングせよ →その○○年間で、御社はどんな違いを提供してきたのか?
③自画自賛よりも誰かの推薦 →その○○年間で培った、お客様との絆を見える化できないか?
④ヘッドライン →その○○年間の想いは、どんな短い言葉に集約できるのか?
⑤写真 →その○○年間の想いを伝える象徴的な一枚の写真は、何か?
⑥広告の配置 →その○○年間の感謝を伝えるには、どんな配置がベストなのか

オグルヴィの指摘は40年前のものであり、広告では基本中の基本です。しかしいまだに、これが出来ていない広告が多いことに改めて驚かされます。

一方でこれは逆に、私たちに大きなチャンスを教えてくれます。

私の感覚ですが、世の中の広告の9割は、オグルヴィが指摘した広告の基本を踏まえていません。

基本を踏まえない広告が多いということは、逆に基本を踏まえた広告を出せば、大きな成果があがる可能性がグンと高まるということなのです。

御社の広告は、成果は出ているでしょうか? そしてその広告は、広告の基本に忠実でしょうか?

   

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