ビジネス書を読むと、抽象的な思考を求められる言葉が色々と出てきます。
「お客の言いなりになるな。お客が本当に望んでいることは何か?」
「当社の使命とは、何だろう?」
「当社の本質的な強みって、何だろう?」
私が企業様に提供している研修でも、同じように抽象的な思考が必要となる課題を考えていただいています。
しかしこんな抽象的なテーマについて議論していると、こう言う人もいます。
「ビジネスで日々忙しいのに、なんでこんな抽象的なことを考えなきゃいけないですか?」
理由は実にシンプルです。
「言動や判断が首尾一貫するから」です。
あなたは、次の二人のうち、どちらの下で働きたいですか?
A課長 「言うことがそのたびにコロコロ変わる上司」
B課長 「言動・判断がブレない上司」
A課長の下で働きたい、という人は、恐らく少ないでしょう。
ほとんどの人は、B課長の下で働きたいと思うはずです。
A課長は、脳内の99%が「今日中に取引先X社にご挨拶に行って、午後には会議に出て、夕方までに明日の役員会議の資料を作成しなきゃ…」という目先の仕事が占拠しています。「当社の使命は○○○だよね」なんて抽象的なことを考える余裕はありません。
中核となる考えがないので、A課長の判断は、その場その場で場当たり的な判断になりがちです。
B課長も、A課長と同様に「今日中にこれやってあれやってこっちも片づけて」と目先の仕事で忙しいわけですが、並行して「でも当社の使命って○○○なんじゃないか? これってやるべきなの? どうなの?」ということも考えています。つまり抽象的な思考をしています。
たとえばファーストリテイリングの使命は「服を変え、常識を変え、世界を変えていく」です。同社CEOの柳井正さんは、ことあるごとにこの使命に立ち返って、次に何をやるべきかを考え続けています。だから言動や判断にブレがないのです。
だからビジネスパーソンにこそ、抽象的な思考が求められるのです。
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