数学の基本的な解き方がわかれば、TOEICもビジネス課題も解ける


ビジネスでも勉強でも、その本質は「問題解決」です。
何らかの問題が与えられ、その問題をいかに解くかが問われるのです。
そして問題解決には、鉄壁の原理原則があります。

その原理原則が書かれているのが、「世界のエリートが学んでいる教養書必読100冊を1冊にまとめてみた」のBook 92でご紹介した、数学者G.ポリアが1945年に書いた名著「いかにして問題をとくか」です。

数学教育に尽力した著者ポリアの生徒に、のちにコンピュータの基本原理を作った天才フォン・ノイマンがいました。現在のコンピューターのほとんどはノイマンが考えた原理に沿って動く「ノイマン型コンピューター」です。

本書はポリアが、抜群に頭の回転が速かった天才ノイマンの才能に恐怖を抱き、「ノイマンのような天才がなぜ誰も解けない問題を簡単に解けるのか」を20年間考え続けた結果をまとめた本、といわれています。

そのカギは本書の冒頭40ページに具体的な例とともにまとまっています。

問題を解くには、下記4ステップを行うことです。

❶ 問題の理解:まず問題を正しく理解する
何が未知か? 何が与えられたか? 何が条件か?

❷ 計画を立てる
既知の事実で何か使えるか検討。❶の未知をよく見て「過去に似た問題はないか?」「問題言い換えられないか?」「問題を分割できないか?」を考える。

❸ 計画の実行
計画に沿って各段階を一歩一歩進める。❷の計画を忘れないことが大事。

❹ 振り返り
常に誤りの可能性があるので、必ず検証する。全データを使ったか? 別のやり方では?

「え? これだけ? 当たり前じゃん」と思ってしまう人は多いのではないでしょうか? しかし実際に出来ている人は意外と少ないのです。逆にこの4ステップを確実に身につけることができれば、あらゆる難問が解決できるようになります。

そこで、数学、TOEIC問題、ビジネスの課題に当てはめて考えてみましょう。

【数学の問題例】
底辺10cm、高さ5cmの三角形の面積を求めなさい。

❶ 問題の理解:まず問題を正しく理解する
→未知:三角形の面積
→与えられた情報:底辺10cm、高さ5cm

❷ 計画を立てる
→既知の事実で使える情報:三角形の面積を求める公式「底辺×高さ÷2」
→問題言い換え、問題分割は不要

❸ 計画の実行
→公式に数値を代入して計算
→10cm×5cm÷2 = 25cm2

❹ 振り返り
全データを使ったか?→使った

 

【TOEICの問題例】
Select the best answer.

The meeting __ postponed until next week.
(A) was (B) were (C) have (D) has

❶ 問題の理解:まず問題を正しく理解する
→未知:空所に入る適切な単語
→与えられた情報:文全体。A-Dの選択肢(動詞の変形)

❷ 計画を立てる
→既知の事実で使える情報:
・主語が「The meeting」と単数→適切な動詞を選ぶ
・「postponed」が過去分詞形なので受動態→適切な動詞を選ぶ

❸ 計画の実行
→(A)〜(D)で単数形対応の動詞は(A)wasと(D)has
→(A)〜(D)で受動態対応の動詞は(A)wasと(B)were
→両方を満たすのは(A)was

❹ 振り返り
完成文”The meeting was postponed”が正しい文章かを確認する

 

【ビジネスの問題例】
社員の残業時間が増加している。残業削減の対策を考えて、実施せよ

❶ 問題の理解:まず問題を正しく理解する
→未知:「残業が増加している原因」と「効果的な対策」
→与えられた情報:「残業が増加している」という現象

❷ 計画を立てる
→残業増加の原因を特定する調査方法を検討する
・社員インタビュー:各部署の社員数名に、残業理由/業務負担をヒアリング
・業務プロセス分析:業務プロセスを洗い出し、ムダな作業を特定
・データ分析:勤怠データを分析し、残業時間推移やピーク時間帯を把握

❸ 計画の実行
→❷の計画を、下記の通り実施。期限や優先順位を考慮し、作業人数を割り当てる
・社員インタビュー:残業理由や業務負担について深掘りするインタビューガイドを作成し、1週間かけてインタビューを実施。
・業務プロセス分析:業務フローを可視化し、各ステップの時間を実測。2週間かけて時間がかかる業務や無駄な手順を洗い出す。
・データ分析:勤怠システムから過去6ヶ月のデータを抽出。1週間かけて残業時間の推移をグラフ化。ピーク時間帯や特定の部署の残業時間を特定する

→これら調査結果に基づき、ムダな作業削減・撤廃、ピーク時間シフトなどの対策案を立てて、実行する。

❹ 振り返り
→❸の実行結果を評価する。
・効果測定:勤怠データを分析、残業減少度合いを把握し、実施対策が残業時間に与えた影響を確認する。
・フィードバック収集:定期的なアンケートやミーティングを実施し、現場の声を聞いて、対策の効果や問題点を確認。。
・対策の調整:効果不十分な場合や新たな問題が発生したら、対策を再評価して修正。(例:追加トレーニング、リソース再配分)
・定期的モニタリング:残業時間削減が継続的に維持されているかを確認し、必要に応じて追加対策

 

このように、問題解決の原理原則(4ステップ)は、様々な分野で応用が効きます。ぜひ身につけたいですね。

    

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