「1on1やってるけど何かダメ」の原因


部下やチームメンバーを持つビジネスパーソンの方々とお話しすると、様々なご相談をいただきます。

その中でも多いのが「チームがうまくまとまらない」というもの。

会社からは、自分のチームに方針が降ってきます。
一方で自分のチームには色々な人がいて、まとまりません。
「こういう方針だから」と伝えても、伝わったのかどうかよくわからず…。
定例会議をしても、誰も意見を言いません。
チームメンバーは一体、何を考えているんでしょうか?

…こんな感じです。

こんな状況を打開すべく、チームメンバーを理解するために最近広がっているのが「1on1ミーティング」(以下、1on1)です。ちゃんと時間を取って、チームメンバー一人一人と向き合って話す場を定期的につくる、というものです。

しかし、こんな人が多いのも現実です。

「1on1? やってるんですけど、何かダメですね」

実は、これには原因があります。

「1on1やってもダメ」という人にお話しを伺うと、多くの場合、コーチングとティーチングの違いをまったく理解していないのです。そしてコーチングスキルを学ばないまま、ティーチングの方法論で1on1をやっているのです。

「え? コーチングとティーチングって、同じでしょ?」と思ったとしたら、要注意です。こんな状態だと、1on1をやればやるほど逆効果です。

■ティーチングの基本は「知らないことを教える」ことです。

基本は「答えは、私が知っている。だから教えてあげよう」。 たとえば、部下から「○○○で困ってて…」という相談を受けて、「□□□するといいよ」と答えます。

■コーチングの基本は「その人の中の答えを引き出す」です。

基本は「答えは、私でなくその人の中にあるから、その答えを見つけられるように支援しよう」。 たとえば、部下から「○○○で困ってて…」という相談を受けて、「問題は何だと思う?」と尋ねます。「△△だと思います」という答えに対して「なるほどねぇ。ではどうしようか?」というように進みます。

つまりティーチングとコーチングは、正反対なのです。

でも「なんでそんな面倒くさいことやるの? ティーチングの方が手っ取り早いでしょ」と思うかもしれませんね。

実は長い目で見ると、コーチングの方が圧倒的なパフォーマンスを生み出すのです。

たとえばお客様でトラブルが発生したときの対応を考えてみましょう。

ティーチングだとこうなります。

部下「お客様からクレームです」
上司「□□□をしなさい」
部下「了解です」

手間は少なく最短で問題解決ですが、部下は受け身なので学びは少なく、当事者意識も育ちません。

コーチングだとこうなります。

部下「お客様からクレームです」
上司「どう対応すればいいと思いますか」
部下「☆☆なので、△△だと思います」
上司「なるほど。他に代替案はありますか?」

手間はややかかりますが、部下に当事者意識が生まれ、学びも深まります。

ほとんどの企業は、例外なく「社員のやる気を重視している」とおっしゃいます。この「やる気」、つまり心の中から「これをやりたい」と感じる内発的動機付けは、ご本人の自律性と有能感から生まれてきます。

コーチングは、相手の自律性と有能感(≒内発的動機)を重視した方法論なのです。

逆にティーチングは、やり方を間違うと部下の自律性と有能感(≒内発的動機)を損ないかねないのです。

1on1も同じです。

「1on1やってるけど、何かダメ」という方は、多くの場合、マネジャーの独演会になっていたりします。つまり部下は黙ったまま、マネジャーがずっと話しているのです。

皆さんが部下の立場で、こういう1on1はどう感じるでしょうか?

私だったら「この1on1、意味不明だなぁ。早く終わらないかなぁ」と思ってしまいます。

つまり1on1がうまくいかない最大の理由は「マネジャーのスキル不足」に尽きるのです。

ここで一点、補足があります。「ティーチングがダメ」というわけではありません。

ティーチングとコーチングのどちらが適切かは、職務レベルとご本人の能力の関係で決まります。

職務レベルに比べて部下の能力が未熟な場合は、部下自身が答えを持っていないことも多いので、ティーチングが適切です。しかし職務レベルと部下の能力が見合っている場合は、コーチングが適切です。

そして現代では、マネジャーが現場のすべての状況を把握するのは困難です。現場は現場を熟知する部下が一番わかっています。ですので、デフォルトはコーチングから入り、必要ならティーチングに切り替えるのが現実的でしょう。

 

いずれにしても、「1on1やってるけど、何かダメ」という方は、コーチングのやり方をしっかり学ぶことをオススメします。(永井経営塾にご入会の方は、「必修カリキュラム30」の27番目にありますので、ぜひご覧下さい)

    

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