私は企業研修で、チームに分かれて自社の様々な課題を話し合うワークショップを行っています。先日の研修でこんなご質問をいただきました。
「時間内に意見を取りまとめるのに苦労しています。ゴールが明確でない状況で話が横にズレたりするので、どうしたらいいのか困っています」
確かに研修に限らず実際の会議でも、延々と時間を掛けて話し合ううちに「あれ? 何を話し合っているんだっけ?」という状況は起こりがちですよね。
こういうことが起こる大きな原因の一つは、自分たちが何の問題を話し合っているのかが見えなくなっていることです。
このご質問でも、まさに「ゴールが明確でない状況で…」とありますよね。
ワークショップでも会議でもほとんどの場合、話し合う目的は「どんな問題を解決するか?」です。
最初に解決すべき問題を決めないと、話し合いは延々と迷走し続けます。
ですからまず最初に「どんな問題を解決するのか?」を決めることが必要です。
この「解決すべき問題」の設定を間違えると、話し合いは迷走します。
ここで参考になるのが内田和成著「論点思考」という名著です。本書にある事例を紹介してみましょう。
ある食品メーカーの営業が、こんなことで延々と悩んでいました。
「どんな広告を打てば、コンビニに商品を置いてくれるだろう?」
話を伺うと、こうおっしゃいます。
「コンビニのバイヤーさんが『オタクの商品、TV CMやってないから置かないよ』って言うんですよ」
しかし現実には、TV CMには膨大なお金がかかりますし、TV CMなしで置いている商品も沢山あります。そもそもTV CMしても、必ずしもコンビニが商品を置いてくれるとは限りません。
これは問題の設定が間違っているのです。
このセールスが考えるべき正しい問題設定は…
「コンビニにウチの商品を置いてもらうには、どうするか?」
です。
かのドラッカーはこんな言葉を残しています。
「経営における最も重大な過ちは、間違った答えを出すことではなく、間違った問いに答えることだ。正しい答えではなく、正しい問いが必要である。」
この「正しい問い」のことを、内田和成氏は著書「論点思考」で「論点」と呼んでいます。
論点とは「解決すべき問題」のことで、必ず「打ち手」とセットになっています。
たとえば、「昨晩会社に泥棒が入った」という状況を考えてみましょう。
「昨晩泥棒が入った」のは一見すると大きな問題に見えますが、いくら延々と議論しても、「昨晩泥棒が入った」という事実は解消しようがありませんよね。つまりこれは現象であって、論点(=解決すべき問題)ではないのです。
この場合の論点と打ち手は、たとえば次のようになります。
論点①:防犯体制に不備があった →打ち手①:防犯体制作りをどうするか
論点②:損害が発生した →打ち手②:損害を算定し最少化しよう
論点③:報告体制不備で翌日夕方に知った →打ち手③:報告体制を整備しよう
論点④:会社の評判が落ちた →打ち手④:イメージ向上の対応をしよう
論点は、置かれた状況によって変わります。会社の資金繰りが厳しい時は②「損害が発生した」が論点になりますし、会社が不祥事で叩かれている時は④「会社の評判が落ちた」が論点になります。
チームでまず「解決すべき問題」を話し合って合意するように習慣づけることで、話し合いが高い生産性を生み出すようになると思います。
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