
前回、『値下げせずに売るには?─「質問」で買いたくさせる営業の極意』というブログを書きました。おさらいすると、
・ジョンが、保険セールスのダンから電話を受けた
・ダンは質問でジョンに家族の学費・ローン・万一のリスクを自覚させ、「保険料<将来不安の解消価値」という構図を成立させた
・結果、コモディティ商品なのに、値引きゼロで即決成約に成功した。
・セールスが磨くべき武器は商品説明ではなく、顧客の課題を理解し、課題をあぶり出す質問を準備すること
という内容でした。
このブログに、こんなご意見をいただきました。(内容は要約しています)
『でも価格意識の高い顧客は、提案を受けても複数社を比較するし、疑い深い顧客はセカンド・サードオピニオンを求めるかもしれない。比較作業そのものが面倒で、保険契約をやめる可能性だってある。今回の提案手法は第一段階であって、ここから複数の施策を常日頃から考え、実践していける営業こそが「成果を出せる営業」』
とても重要なご指摘なので、今回はこれを深掘りしたいと思います。
ポイントは「課題は認識した。でもなんであなたから買うの?」ということですよね。
セールス活動では、課題を認識した人のアクションは、二通りに分かれます
①課題を認識させてくれた人から買う
②他によい商品がないか、検討を始める
ご意見をしてくださった方のポイントは、「現実には①ではなく、②の人が多いのでは?」ということです。ここでカギになるのは図にある「顧客の総コスト」という概念です。お客様は自分自身が気付かないうちに、様々なコストを抱えているのです。
ポイントは、商品の料金は「検索/購入のコスト」の一部に過ぎないという点。商品を買う際には、他にも様々なコストがかかっています。
探索コスト … 業者とそれぞれの商品の価格/条件を探索する。価格・補償条件も調べて、さらに一次情報の信頼性を確かめる手間もあります
時間的コスト … 調べた商品を比較検討します
身体的コスト … さらにセカンド/サードオピニオンを得る際に要する労力もかかります
この顧客の総コストという概念がわかると、色々な打ち手が可能になります。
さきに挙げた「①課題を認識させてくれた人から買う」人は、こう考えています。
「確かに他の保険商品を探して、比較検討したり、第三者の意見を聞くと、安い保険があるかもしれないね。でもそれって手間がかかるよね。家族の安心も大事だし、少々高くてもすぐに買おう」
つまり保険商品の料金が少々高くても、「保険商品の提供価値=妻や子どもたちの将来への不安への解決策」の方が上回っており、かつ商品の料金以外の「検索/購入のコスト」も負担に感じて、課題を認識させてくれた人から買う訳です。課題を認識させてくれた過程を通じて、セールスに対する信頼が生まれたことも要因かもしれません。
問題は「②他によい商品がないか検討を始める」お客さんです。成果を上げるセールスは、事前にここにも目を配りをして、こんな話をします。
「お客様には、いまオススメしているこの保険がベストだと考えています。ご参考までに、他3社のプランとご提案のプランを比較したのがこの表です。引用元はこちらにありますので、必要でしたらあとでご確認ください」
こうして信頼性が高い情報で比較検討した結果を提示することで、「検索/購入のコスト」を減らして、商談を成功させます。
さらに法人営業の場合は、顧客事例や実績、メディア記事なども解決コストを減らす手段になり得ます。
「顧客の総コスト」という視点を持ち続ければ、価格競争から抜け出せるのです。
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