「アイリスオーヤマ」と言えば、私は「ガーデン用品や家具などを作っているメーカー」というイメージを持っていました。
しかし最近、家電事業にも参入しています。
たとえば、LED照明事業の参入は2009年8月。2012年には240億円に成長。
白物家電は2007年に参入、調理家電を中心に売り上げを伸ばし、2012年度の売上高は165億円。
照明や白物家電といった成熟事業で、どうしてこのような急成長が出来たのか興味がありました。
情報を探していたところ、「ロングセラーが会社をダメにする ヒット商品は消費者に聞け」(大山健太郎著、日経BP社)という本を見つけました。本書は2013年の日経ビジネス連載「経済新潮流」に加筆訂正したものです。150ページ程度で文字数も少ない本ですが、アイリスオーヤマの経営の概要がわかりやすくまとまっています。
本書の冒頭、その理由を大山社長ご自身が語った言葉が紹介されています。
—-(p.15-16から引用)—-
大山社長はこともなげに言う。
「お客さんの不満を解消し続ければいい。幸せに暮らしていても、どこかに不満は生じる。それを解消する商品やサービスを、顧客が納得する価格で提供すればいいだけのこと」
—(以上、引用)—-
具体的には、どういうことでしょうか?大山社長はこのように続けておられます。
—-(以下、引用)—-
(p.26)
ここから私が考える変化対応のコツを提示したいと思います。それは、顧客の代表になることです。
(p.36)
他社が対応できない顧客の依頼に応え続けること。それが、どんな環境下でも利益を生み出し、ひいては企業を存続させることにつながるということを忘れないでください。
—(以上、引用)—-
本書のタイトルにもなっている「ロングセラーが会社をダメにする」は、その考え方の一つです。発売3年後までの商品を「新商品」と定義し、売上の6割以上を常に新商品で上げることを一つの指標としています。
顧客ニーズは常に変わっていきます。だから、常に商品の新陳代謝が必要。新たに生じ続けている顧客の不満を、常に解消し続ける一つの指標が、売上の新商品比率なのです。
では、「新商品比率を高くする」にはどうするか?
それはビジネスのスピードを超高速化することです。
本書では他にも「プレゼン会議」の超スピード決裁をはじめとする超高速経営の方法論や、メーカーと問屋を兼ねる経営手法、急な需要に応えるために稼働率7割以内に抑える工場経営方法、人事評価制度などが紹介されています。
最近、アイリスはなんとコメ事業にも参入しています。
—(以下、p.71-72から引用)—
実は、大山社長がコメ事業への参入を考えたのは、発表のわずか3ヶ月前の2013年1月のこと。………コメビジネスの可能性を考え始めたところ、「伸びシロの塊」ということに気づいた。……製造業として、付加価値創造と生産性向上のノウハウを持つアイリスであれば、生産者と消費者をともに満足させる仕組みが作れるのではないかーー。
—(以上、引用)—
「超高速で、顧客の不満を解消し続ける」という勝ちパターンを会社全体で身につけたからこそ、可能なアプローチです。
アイリスはコメ事業も年商200億円のビジネスに育てる考えです。
「旧来型のビジネスモデルが横行する業界はとてつもなく大きなビジネスチャンスが眠っている」(p.80より)ということです。
新規事業・成熟事業を問わず、顧客の不満を迅速に解消し続けて成長するアイリスオーヤマから学べることは、とても多いと思います。