第二次世界大戦中にこんな笑い話があります。
米軍は大西洋でドイツ軍のUボートに多数の船を撃沈されて困っていました。
そこである米国の俳優が記者にこう語りました。
「Uボート退治は簡単だ。海水を沸騰させれば、浮いてくる。そこを捕らえるのさ」
記者はこう尋ねました。
「素晴らしい!でもどうやって沸騰させるのでしょうか?」
俳優はこう答えました。
「解決策は教えたよ。考えるのはあなたがただ」
笑い話ですが、実は笑えない話でもあります。似たようなことはビジネスの場でも起きているからです。
組織トップが大きな問題意識を持ち、
「もっと顧客志向になろう」
「徹底的なコスト削減を進めよう」
とメッセージを出す企業は多くあります。しかしこう言われた部下は戸惑います。
「言っていることはわかるが、具体的にどうすればいいかわからない」
そしてこう考えます。
「今日も忙しいから、まずあの件を片づけよう」
この結局、何も変わらないことが多いのです。しかしトップはこの状況をなかなか理解できません。
「目的は明確に示した。手段を考えるのが部下の仕事なのに、なんでやらないのだろう」
先の米国俳優とこの組織トップの共通点は、「手段を考えるのは、自分の仕事ではない」と考えている点です。
違いは、米国俳優は手段は存在しないと知っていてジョークで発言しているのに対して、組織トップは目的を達成するための手段は存在すると信じ、その手段を考えるのが部下の仕事と考えていることです。
「目的」という大きな花火を打ち上げますが、その目的を達成するための具体的な手段は考えていないのです。だから「机上の空論」になってしまうのです。
特に現代は、戦略を実行するスピードが勝負の分かれ目になっています。言い換えれば、戦略を迅速に実行することも、戦略を立てた人の責任であると考えるべきなのです。
細かい詳細な手段や箸の上げ下げまでトップが考える必要はありませんが、部下や関係者が実際の行動に移せるための具体的な手段までを考えるのは、目的を考えた人の責任と考えるべきなのです。