2023年6月5日のテレビ東京「ワールド・ビジネス サテライト」で、韓国ヒョンデ(現代自動車)のEV戦略が紹介されていました。
ヒョンデは20年前にも日本市場に参入しましたが、撤退しています。この時の反省が「日本市場に合わせていなかった」。そこでEV時代を迎えて、満を持しての日本市場再参入です。
この戦略が、実に興味深いものでした。
まず、オンライン販売のみです。
現時点でEVを買うのは、キャズム理論でいうところの新しいモノに抵抗がない「イノベータ」「アーリーアダプター」です。だったらアーリーマジョリティやレイトマジョリティが重視する店舗展開は不要、との判断なのでしょう。
さらに、災害が多い日本市場に併せて外部電源機能付きモデルを投入。ちなみに日本で人気のテスラは、外部給電機能はないそうです。電気代が安い夜間などに充電すれば、電気代を抑制することもできます。
以上は商品戦略とチャネル戦略ですが、さらにカギとなるのがサービスマーケティング戦略。
買う側からすると「店舗がないとしたら、保守サービスはどうなるの?」となるわけですが、ヒョンデは、整備拠点から来た出張整備士が各家庭を訪問しています。
EVはガソリン車よりも部品点数が少ないのが特徴。だから出張整備で修理が間に合うことも多いのです。
そんなヒョンデは、1年でこの新型EVのアイオニック5を700台を販売したそうです。
これは、まさにEVの特性を考えたサービスマーケティングですね。
デジタル時代になって、本格的にモノとサービスが融合し始めています。
このモノとサービスの融合について、慶応大学名誉教授の井関先生は、「牛肉の赤身=モノ、脂身=サービス」にたとえて、次の3段階でわかりやすく説明しています。
■第1段階 すき焼きと脂身(顧客の要望で脂身)
この段階ではサービスは必要悪です。従来の店舗での保守サービスはこちらですね。
■第2段階 サーロインステーキ(脂身は赤身に付随するが分離)
サービスは差別化要素です。ヒュンデの出張サービスはこの段階です。
■第3段階 松阪牛(赤身と脂身は霜降り)
サービス/モノが一体化します。EVで言えば、自動運転サービスになるとこの段階ですね。
いまやモノづくり企業こそ、サービスマーケティング戦略の巧拙が問われる時代。自社が展開可能なサービスがどの段階にあり、将来はどの段階に進化できるかを考える上で、参考になる考え方だと思います。
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