こんなことを言うオジさん、多いですよね。
「若いうちは失敗をどんどんした方がいいよ」
でもこの言葉、額面通りに受け取るのは危ういと思います。
日本経済新聞2023.8.16号に、東京大学の畑村洋太郎名誉教授の対談が載っています。 畑村さんは「失敗学のすすめ」などの著書もある失敗学の提唱者です。
この記事を読んで「なるほど」と思った部分を紹介します。
—(以下、引用)—
――失敗には「良い失敗」と「悪い失敗」があるそうですね。違いは。
「悪い失敗は手抜きや不注意に基づく失敗で、これは経験する必要がない。良い失敗は人の成長に必要な失敗だ」
「新しい価値の創造には仮説を立て、検証することの繰り返しが必要で、それは良い失敗と表裏一体だ」
—(以上、引用)—
この言葉に尽きますね。
「失敗はどんどんした方がいいよ」と言われて、手抜きしたり不注意で失敗を繰り返しても、学びはほとんどありません。周囲に迷惑を掛けるだけです。これは「悪い失敗」です。
むしろ「成功するにはどうすればよいか」を考えた上で、仮説を立てて、全力で実行してみる。そしてもし失敗したら、仮説のどこが悪かったのか、実行段階のどこで問題があったのかを考える。これが「良い失敗」です。
経験すべき「良い失敗」とは、「成功しよう」と努力した上での失敗なのです。
ここでのカギは、ムリめなストレッチ目標を持つこと。
ほぼ100%達成可能な目標を立てて、「成功しよう」と考えて実行すると、失敗はほとんどないでしょう。しかし自分の能力もそれほど上がりません。
むしろ自分の精一杯の能力を超えた挑戦をして、成功するために考え抜いて挑戦する。その失敗から得られた経験こそが「良い失敗」なのです。
冒頭の「若いうちは失敗をどんどんした方がいいよ」というオジさんの言葉の危うさは、ここにあります。
能力を超えた挑戦をすべきなのは「若いうち」だけではありません。そう言う当のオジさんも対象者であって、どんどん挑戦して「良い失敗」をするべきなのです。
「良い失敗」を積み重ねていくとともに、「良い失敗」を楽しみ、「良い失敗」をした人を賞賛する文化も定着させていきたいものです。
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