今月の日本経済新聞「私の履歴書」は、KKR創業者のヘンリー・クラビスです。
昨今の企業の買収劇でも、KKRの名前はよく出てきますよね。
KKRはグローバルな投資会社で、業績不振で成長余地がある企業に投資し、経営変革を行って企業価値を高めて、最終的に売却やIPO(上場)を行うことで、利益を得る、というビジネスを行っています。
欧米で成功したKKRは日本市場進出を検討し、2006年に東京に拠点を設けました。
2024年10月17日掲載の「私の履歴書」で、クラビスさんは日本市場進出を始めた頃のことを回想しています。
—(以下、引用)—
(日本では)若手が活躍する場も限られている。日本企業との会議で、多くの若手は無言でメモを取っている。握手の順番も後になりがちだ。ジョージは会食で、隣の会長ではなく遠くに座る若い人と話して気まずい雰囲気になった。
KKRの投資決定会議では、最も若手から意見を述べる。多くの面で、若手は企業を一番知っている。若手が先輩に遠慮して言いたいことが言えないのはやや危険だ。
—(以上、引用)—
私は長い間、外資系IT企業に在籍して日本の大企業や官公庁のお客様とビジネスしてきましたし、2013年に独立後も、外資系や日本企業のお客様に研修やコンサルティングをご提供してきました。
ですので長年、外資系企業と日本企業の両面を見る立場にいます。
クラビスさんのご指摘は、いまも日本企業と接していて感じる事です。
よい言い方をすると、日本企業の社員は年長者の意見を尊重して聴きます。しかし言い方を変えれば、年長者に忖度して、自分の意見をほとんど言わない傾向もあります。世の中の変化を掴んでいるのは現場で働く若者です。これではなかなか変化に対応出来ません。
外資系企業では「各自は独立した自由な個人」という価値観が浸透しているためか、若手でも割と自由に発言ができる雰囲気もあります。
この数年間、超名門といわれた多くの日本の大企業で、信じられないような不祥事隠しをしてきたことが発覚するようになりました。
そこで「高い心理的安全性が大事」(=本音で議論できる組織にしないといけない)という危機意識が、企業のマネジメント層を中心に浸透して始めています。
そして多くの日本企業でこの傾向がだいぶ変わりつつあることも、私は感じます。
クラビスさんもこう述べています。
—(以下、引用)—
それでも日本企業は変わった。女性や外国人の登用も徐々に増え、最高経営責任者(CEO)を外部から受け入れた会社もある。訪日のたびに若い起業家と会食をするが、変化に対する意欲も明らかに高まってきた。
—(以上、引用)—
ここでのポイントは「変化はまだら模様で起こっている」といことです。
言い換えれば、急速に変わり始めている日本企業と、なかなか変わろうとしない日本企業があるのです。
私は有り難いことに、様々な企業様からマーケティング研修のご依頼をいただきます。
この際に心がけているのは、最初に経営幹部とお話しをさせていただき、まずその企業の組織文化について理解することです。
経営幹部が「本音で議論できる組織に変えたい」と本気で考えている場合は、マーケティング研修を実施した結果、社員のスキルが上がり、成果につながります。
しかし中には経営幹部が、言葉には出さないものの「従来のやり方が正しい。何も変える気はない」とお考えの企業様もおられます。こういう企業様の場合、仮に社員がマーケティング研修を新たなスキルとして学んでも、その力を活かす場が与えられずに、結局、成果につながりません。ですので、このような企業様のご依頼は辞退をさせていただくこともあります。
今後10年単位で考えた場合、成長して生き残る企業はどちらかは、自明ですよね。
あなたの会社は、「本音で議論できる組織に変わろう」としているでしょうか?
「従来のやり方が正しい。何も変えない」と思っているでしょうか?
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