最近、コンビニが様々な役割を担い始め、社会的インフラになりつつあります。
一方で、全国200万台以上とコンビニ店舗数の50倍の数が設置されている自販機は、飲料水を売る本来の目的以外では、必ずしも社会的に十分に活用されていなかったように思います。
この状況が変わる可能性を示唆する記事がありました。
7月5日の日本経済新聞に、『自動販売機運営大手のエフ・ヴィ・コーポレーションが、心臓発作を治療する救命機器「自動体外式除細動器(AED)」付の自動販売機の設置を始める』という記事が掲載されていました。
AEDは電気ショックを与えて心拍を回復する機器です。
2002年、高円宮さまがスカッシュをプレイ中に心室細動により47歳の若さでお亡くなりになったのは記憶に新しいところです。心室細動が起こると血液が心臓から送り出されないためすぐに意識を失い、3分後に脳死が始まると言われています。高円宮さまの場合、救急隊が到着したのは発作後8分が経過しており、間に合いませんでした。
これも現場にAEDがあれば助かったと言われています。当時はAEDの一般使用は規制されていましたが、この事件が契機になったようで、2年前に規制が緩和され誰でも使えるようになりました。心室細動は発作が起きて3分以内に対応しないと間に合わないため、最近では、都営地下鉄等、人が集まる公共性が高い場所で設置が始まっています。
AED付自販機は一台100万円程度で、一般の自販機の2倍程度の価格とのことです。心臓疾患を抱える患者だけでなく、高齢者にも需要が高いと見ており、初年度1000台の設置を目指すそうです。
病院外で心臓発作で死亡する人は年間35,000人にものぼりますので、社会的な価値は非常に高いですね。
自販機は、
- 全国くまなく200万台以上が設置されている
- 電力が供給されている
- 外部環境に関わらず温度を一定に保つ仕組みを持っている
- 構造が堅牢である
という特徴を持っていますので、他に例えば災害対策等、様々な分野に応用が利きそうです。
このように、社会の問題解決を志向し、かつ、利益を計上することで継続性も併せ持つビジネスが数多く輩出していき、日本発の新しい産業社会が実現していくことが、今後求められると思います。
注:「心室細動」と似た言葉に「心房細動」がありますが、両者は全く別の症状です。「心室細動」は脈が300-600程度になり血流を失うため緊急性が非常に高いのに対し、「心房細動」は脈は100-160程度の頻脈になるもので一般に「不整脈」と言われているものです。ただし、後者は血流がよどむために血栓が出来やすくなり、数日続くと脳梗塞等のリスクが高まります。長嶋元監督が脳梗塞を起こしたのは心房細動がきっかけと言われています。