『朝のカフェで鍛える 実戦的マーケティング力』が生まれるまでの経緯を連載でご紹介しています。連載バックナンバーは、こちら。
さて、本書が生まれる経緯をご紹介する前に、そもそも、本書がどのような本なのかを、もう少し詳しくご紹介します。
こちらにあるように、この本は、法人向けマーケティングについて物語仕立てで分かりやすくまとめたものです。
分かりやすい法人向けマーケティングの本を求める潜在ニーズは高いものの、そのような本は世の中にはほとんど存在しませんでした。本書は、このようなニーズにお応えするものです。
主人公は、宮前久美という、中堅会計ソフト会社A社の商品企画部・主任(33歳)です。
宮前久美は、10年間セールスを経験したあと、「顧客に役立つ大ヒット商品を生み出したい」という夢を叶えるために、商品企画部に異動しました。
しかし、宮前久美はセールスとして現場のビジネス経験は持っていますが、マーケティングのことは全くの初心者。異動先の商品企画部で会話される言葉すら分らない状態です。
そんな中、親戚の集まりで叔父の与田誠と出会います。そして、大手企業マーケティング部長を経て大学院でマーケティングを教えることになった与田誠から、早朝のカフェで、マーケティングの実務についてコーチングを受けながら成長していく、という設定です。
移り変わる四季とともに、主人公の宮前久美が様々な難問に突き当たり、悩みつつ、顧客視点による気付きを得ながら、課題を解決し成長する様子が描かれています。
また各章では、メンターである与田誠による解説が用意されています。図を活用し、宮前久美が直面している問題に沿った形で、様々なマーケティング理論が分りやすく解説されています。
下記は、本書で紹介しているマーケティング理論の例です。マーケティング担当者としては、「一通りこれだけは押さえておきたい」というものを選んでいます。
・顧客視点からの事業の定義
・3C分析、ポーターの5つの力
・推測統計
・バリュープロポジションと、その落とし穴
・顧客満足の構造
・市場ポジションと競争戦略、規模の効果、経験曲線
・ブルー・オーシャン戦略
・KBF (主要購買決定要因)、セグメンテーション、ターゲッティング、ポジショニング
・チャネル戦略の考え方
・価格の考え方、コスト基準型価格設定と価値基準型価格設定、EDLP(エブリーデイ・ロープライス)戦略、コスト・リーダーシップ、コストと価格の考え方
・価値認識プロセス、コミュニケーションのプロセス、IMC(統合マーケティングコミュニケーション)、コミュニケーションミックス
・イノベーター理論とキャズム理論
・対症療法と問題解決の違い
・クリティカルシンキング (演繹法と帰納法、因果関係、相関関係、MECE)、仮説検証とPDCA
・データによる問題の深掘りと原因分析の実例
・現場における問題の深掘りと原因分析の実例
本書は物語仕立てで分りやすく書いてはいますが、内容はMBA入門レベルです。
下記は、本書のオビからの引用です。本書の内容が垣間見えてくるかもしれません。
意外と知らない、真の顧客志向とは?
「ウチの会社の事業とは、ソフトウェア開発販売業だ」
「新商品は、顧客の要望をすべて網羅した上で、企画する」
「利益を削って誠心誠意値引きをすれば、お客様は満足だ」
「売上がのびないのは、きっと競合が激しいからだ」
→実は全て間違いです!
【本文より引用】
『競合よりも顧客のことを最優先で考えるべきだ。競合のことばかり考えて戦略を立てていたら、競合の出方次第で戦略が変わってしまう』 (2-2章より)
『頻繁に値引きすることと、大安売りすることは、似ているようで、まったく意味が違う』 (4-2章より)
『「売れていないのは、売っていないからだ。だから売るのだ」というロジックは堂々巡りだ。このロジックのどこにも原因はない』 (5-2章より)
【まえがきより抜粋】
本書は、法人向けマーケティングについて物語仕立てで分かりやすくまとめたものです。世の中にあるマーケティングの本は丁寧に理論を書いているものが多いのですが、初心者には敷居が高く、実務でのイメージが今ひとつ湧かない面もあります。また、多くの企業は法人顧客に対してビジネスを行っていますが、世の中にあるマーケティングの本の多くは消費者向けです。これはマーケティング理論が消費者市場で発展してきたことも理由でしょう。分かりやすい法人向けマーケティングの本を求める潜在ニーズは高いものの、そのような本は世の中にはほとんど存在しませんでした。本書は、このようなニーズにお応えするものです。
次回は、本書が生まれるきっかけをご紹介します。