外資系が進出してくることは、必ずしも悪いことではありません。
競争が活性化されることで顧客にメリットがあります。
何よりも、雇用が増加します。
実際、欧米各国では、自国内に生産拠点を作ってくれる日本企業に対して、失業対策になることもあり、大変感謝してくれます。
一時期、「縮小する日本市場からは、外資系はみな撤退しつつある」というイメージもありました。
最近になって、外資系各社は日本市場開拓に前向きになっているように感じます。
ヘッドハンティング会社でも、今年年初から、外資系の求人案件が増えていると聞いたことがあります。
実際、昨日(9/23)の日本経済新聞の記事『外資50社調査、「日本拠点を拡大」6割強、タタIT人員5倍、「市場なお開拓余地」』によると、外資系の多くが日本市場開拓に投資しているそうです。
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日本経済新聞社が22日まとめた「外資系企業の日本拠点戦略調査」で、回答企業の6割強が2~3年以内に日本拠点の業務や人員の拡大を検討していることが分かった。
IT(情報技術)、サービス、金融、医薬品などが中心で、日本市場に開拓の余地があるとみている。インドのIT大手3社は人員を大幅に増やす。
一方、高い法人税率や閉鎖的な商慣習がビジネス上の障害だとして、制度の整備を求める声も目立った。
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上記がサマリーですが、ここで挙げられている業界は、日本市場の中で業界の構造改革がなかなか進まない一方、技術活用で大きな成果が期待できる業界が多いように思えます。
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拡大理由では「(自社の活動分野において)日本における需要が今後も拡大する」を挙げる企業が16社(複数回答)で最多。
内需は低迷しているが、日本勢にない商品やサービス力で顧客を取り込む余地があるとみている。
世界的に見た日本市場の規模の大きさに注目する企業も多い。
—(以上、引用)—-
これは、言い換えると、「日本市場では、自社の製品やサービスにより、顧客に対して大きく差別化した価値を提供できる」との判断が働いているのでしょうね。
注目している日本でのビジネスチャンスは、業界によって様々です。
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各社は「日本企業の海外進出に伴い、ITインフラ整備の需要が拡大する」(TCSジャパンの梶正彦社長)とみており、景気減速懸念が出ている欧米の代替市場として、日本市場に注目する。
サービス分野では「日本向けの観光、ビジネス旅行の需要は今後も増す」(シンガポール航空のキャンベル・ウィルソン日本支社長)、「不動産有効活用の分野で日本の成長のポテンシャルは高い」(シービー・リチャードエリスのトニー・チャー副社長)との指摘があった。
医薬品業界は、国民皆保険制度が確立するなかで高齢化が進む日本の市場拡大に期待。「今後も(先端医薬品への)需要は拡大する」(メルクセローノのマーク・スミス社長)とみている。「(投入を予定する)多数の製品がパイプライン上にある」(バイエル ホールディングのハンスディーター・ハウスナー社長)との声もある。
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「日本企業のグローバル化」「日本の観光資源」「不動産有効活用等の未開拓分野」「高齢化」といった、日本独自の環境を、ビジネスチャンスと捉えているようですね。
一方でポジティブな見方だけではありません。
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…「新産業のぼっ興や大型の設備投資が期待できない」(日本エマソンの土屋純社長)といった、慎重な姿勢が聞かれた。
製造拠点を中国に移転する計画や、アジア統括機能をシンガポールに移転する計画を持つ企業もあった。「(自社の活動分野において)日本における需要は今後、それほど拡大しないとみるから」との理由が5社と最も多かった。
—(以上、引用)—-
製造業で、このような見方をする企業が多いようです。
一方で、日本でビジネスを展開する際の課題も指摘されています。
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「明文化されない業界独特のルールなど商慣習が閉鎖的である」60%(30社、複数回答)(具体的には「契約文化が徹底していない。ITシステムを構築する際、計画変更に伴うコスト増などのリスクを一方的に負わされる」等)
「諸外国に比べ法人税が高い」46%(23社)
「重要法律・通達の英訳が無料で閲覧できない」32%(16社)
「労務分野において解雇の金銭解決ができず、柔軟な人員戦略ができない」28%(14社)
日本政府に規制緩和を求める声は、とりわけ航空や医薬品業界で目立った。
アジア諸国に比べ英語力のある人材が不足している点を問題視する企業も多かった。
(中略)
今後、対日投資を呼び込むには、制度面やインフラの整備がカギとなりそうだ。
—(以上、引用)—-
やろうと思えば解決できる施策が多いように思います。
是非、政府主導で実現して欲しいところです。
一方で、日本でビジネス環境を評価する声もあります。
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「従業員の法令順守意識が高い」68%(34社)
「従業員の能力、スキルが高い」58%(29社)
「他のアジア諸国に比べて法の統治が進んでいる」「知的財産権の保護が進んでいる」32%(16社)
—(以上、引用)—-
当ブログの「日本企業が変わりつつあることを読み取れる、IBM Global CEO Study 2010」でも書きましたように、「今後5年間で最も重要となるリーダーの資質」で「誠実さ」については、グローバル全体のCEOは2位の52%であるのに対して、日本のCEOは5位の29%でした。
グローバル全体が「誠実であることが大事(逆に言うとできていない)」との認識に対して、日本では「確かに大事だが最重要ではない(すでにできている)」との認識である、と考えられます。
高い倫理性は、日本企業およびビジネスパーソンが、グローバルに先行している点なのでしょうね。
記事を読んで、日本市場、まだまだ成長余地があると改めて感じました。