IBMが4年間をかけて開発したQ&Aシステム「ワトソン」が、米国の人気クイズ番組「ジョパディ!」で、二人のクイズ王と3日間に渡って対決、最終的にワトソンが勝ちました。
ITメディアの記事「IBMのコンピュータ対クイズ王 2回戦はコンピュータの勝利」では、二日目の様子をレポートしています。
ここでは、「米国の都市」カテゴリーの質問に対して、ワトソンが、正解の「シカゴ」ではなく、カナダの都市「トロント」と答えた様子が書かれています。
人間からすると、「米国の都市の問題じゃないか。なんて初歩的なミス!」と思うところですが、記事によると、
IBMの開発者はこのミスの原因について、Jeopardy!ではクイズのカテゴリー名と答えの内容が合わないことも多いため、Watsonがトレーニングの段階で、カテゴリー名をヒントとして重視しないよう学習していたこと、問題文に「米国の都市」という言葉がなかったことなどを挙げている。
としています。
本100万冊分の情報が入っているワトソンですが、その膨大な情報をどのように活用するのか、こうやって、一つずつ地道に教え込むことが必要なのですね。
asahi.comの記事「スパコン、米のクイズ王に圧勝 本100万冊分の知識」では、「連勝王」「賞金王」の二人(人間)と、ワトソン(人工知能)の比較表が掲載されていて、なかなか興味深い内容になっています。
賞金100万ドルは慈善事業に寄付するとのこと。
当然のことですが、実はIBMは、これよりもかなり大きい金額をかけて、ワトソンを開発しています。
エンターテイメントとしてみると、なかなか面白い「コンピュータ vs クイズ王」のイベント。
しかし、IBMは単なるエンターテイメントでこのプロジェクト「ワトソン」を進めてきたのではありません。
ワトソンは、自然言語処理技術、分析技術、大量データ処理技術、最適化技術、音声認識技術等、様々な要素技術を統合することで、人とコンピューターの新しい関わり方を提示しています。
2011/3/3修正:ワトソンには音声認識技術は搭載されていません。番組でテキストデータが送られ、処理が始まるようになっています。お詫びと共に訂正いたします。
今後もCPUやメモリー、ディスク等のハード面は指数関数的に速く大容量になります。ワトソンと同等のシステムが、一般の人が使えるようになるのは、そんなに遠い未来ではありません。
たとえば、ワトソンと同じシステムが、将来一人一人のケータイに内蔵され、あらゆる質問に答えることができたら、どうでしょう?
あるいは、そんなに先の話でなく現時点で考えても、昨日の日経新聞夕刊記事に書かれていたように、たとえば医療診断システムへ応用することで、より的確な診断をいつでも行えるようになります。
コンピュータは人間と違い、仕事が続くことで疲れて能率が低下したりミスを誘発することはありません。激務と言われている医師の仕事の一部を肩代わりできる可能性もあります。
他にも、企業の様々な課題を解決するために、活用できる場面は沢山あります。
ワトソンで培った技術は、新しいビジネスをもたらし、テクノロジーで世の中を変革する大きな可能性を秘めているのです。