昨日の第21回朝カフェ次世代研究会は、柳下さんによる『Quest for Win-Win: Win-Win 関係をつくる方程式を探る』でした。
最初に、顧客と提供者側の視点で、Win-Win関係を構築している事例が二つ紹介されました。
一つ目は、パスモにスイカ。
利用者のメリット:改札がスムーズ。小銭を持たなくなった。
提供者側のメリット:人のコストが減った。不正乗車防止。他にも隠された収益源として、定期などの追加徴収収入などが紹介されました。
次にApple。既にiOSプラットホーム(iPod, iPhone, iPad)で、実は売上の75%を稼いでいます。そのiOSについては以下のように説明されていました。
利用者のメリット:好きな音楽だけを楽しむ。スキマ時間の使い方を変えた。クレジットカードがなくても決済可能になった
提供者のメリット:ストック型ビジネスへの転換。段階的進化によるR&Dの充実。ブランドイメージ。2億超のApple ID
共通するのは利用者の利便性を徹底して追求している点。もう一つは、最初から無理をせず段階的な進化を果たしている点です。例えば、iPod, iPhone, iPadは毎年のように機能強化した新製品を出し、利便性を高めています。
一方で、IT業界では時間・コストの制約があると品質(スコープ)を削ってしまう…ということが起こりがちです。
しかし、柳下さんはこれは本来は間違いで、常に考え続けなければいけないことは、利便性の追求だ、とおっしゃっています。「知覚した結果>期待」だと、顧客はポジティブに考えてくれます。確かに、電子マネーは利便性が期待以上だったので、少々高くても許してしまう、という面もあります。
アジャイル開発も、このビジネスニーズのコンテキストで捉えることが必要なのでしょうね。
柳下さんは最後に、「ポイントはバリュープロポジションであって、IT業界でなかなか顧客とのWin-Win関係を構築できないのも、時間コストの制約に囚われていて、バリュープロポジションをなかなか考えられないため」と締めくくりました。
「顧客の利便性を第一に考え、まずは小さく作って早く回して、少しずつ改善していく」という方法論は、まさに現在の成功方程式だと思います。
Appleやパスモ/スイカは、この方法論を活用した上で、顧客だけでなく、その周りで一緒に価値を提供する多くのパートナー(企業や開発者)とのエコシステムを構築し、さらにそのエコシステムが、ライバル各社が真似できない規模と利便を提供しました。
だからこそライバルと差別化でき、成功できたのでしょうね。
さらに、そのパートナー企業ともWin-Win関係を構築しているわけですね。
柳下さん、ありがとうございました。
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次回、6/22開催の第22回の「朝カフェ次世代研究会」は、永井隆太さんの「ソーシャルメディアと三位一体論」です。
永井さんは広告会社でソーシャルメディア活用をお仕事になさっています。次回も楽しみです。