昨日開催した第27回朝カフェ次世代研究会は、ライフネット生命保険社長 出口治明さんの「情報発信の需要性」 でした。
朝カフェは、多くの方々のご厚意で成り立っています。
そもそも朝6時半から数十名の朝の勉強会で使える会議室なんて、都内にはありません。少なくとも昨年年初、朝カフェを企画していた頃に私が探した時は見つけられませんでした。
そのような貴重な場所を、しかも無償で使わせていただけるのも、いいじゃんネット社員の皆様と社長の坂本さんのご厚意です。
講師も、参加者の有志が持ち回りで、しかも無償で引き受けて下さっています。
「遅刻しない」「ドタキャン、ドタ参しない」等のルールをキッチリ守られているのも、モラルが高い参加者の皆様のおかげです。
「朝カフェ」は、このように非常に多くの方々のご厚意で成り立っている勉強会なのですよね。
今回の出口さんのご講演も、朝6時半からという普通では考えられない時間帯のご講演を、しかも無償でご快諾下さいました。本当にありがたいことです。
今回の参加者は40名でした。
朝6時半に40名も一部屋に集まっているのは、なかなか壮観です。たぶん、都内広しと言えども、この日の朝に6時半に40名も集まっているのは、いいじゃんネット様オフィスくらいのものだったのではないでしょうか?
出口さんのお話しは「目から鱗」の連続で、本当に素晴らしいものでした。
大木さんが「面白すぎてtsudaれない」とTwitterで書いていましたが、まさにその通りの内容でした。
既に下記ブログでも紹介いただいています。
■Think differentならぬThink simpleでいこう!(大木さん)
■ライフネット生命の商品は「タテ・ヨコ思考」の成果物ということがわかった #asacafestudy(柳下さん)
私がTwitterに書いた中から、主なモノをピックアップしてみました。〔編集しています)
■数字、ファクト、ロジックのみで考え、数字で議論すべし。国語で議論していたら結論にならない。現在のTPPの議論はまさにそうである。
■日本国の税収は現在40兆円。今後バブル期以上の景気は来ないだろう。だからバブル期の税収60兆円を超えることはない。だから頑張っても税収50兆円。一方、日本国の支出は92兆円。38兆円が地方交付税と国債で削れない。残り54兆円。これをどう考えるか?
■国債・地方交付税を除いた支出54兆円のうち29兆は年金と医療。3割削って20兆。6兆は文教で5兆は自衛隊。これらで削れるのはわずか。5兆は公共事業でこれを削ると景気が悪化する。だから夢のような総理でも支出は80兆円までしか下がらない。支出80兆円引く税収50兆円の30兆円をどう工面するかが考えるべきこと。中学生の算数で考えれば分かる話。「景気がよくなると税収が増える」と言っている人は、これを無視して大衆迎合している
■日本で大変なのはデモグラフィックの変化だ。少子高齢化は人口構成変化に他ならない。2000年は3.6人で老人一人が支えていた。2025年は1.8人。2050年には1.2人になる。
■日本は年齢で例えると45-50歳。高齢者の戦略は高通貨・高金利の政策。つまり自分の魅力をお金で補う。しかし問題は借金が多いので低金利政策しかできない。50歳なのに20歳の若者の戦略を取っているので大変
■この根本的な原因は1票の格差。田舎の有力者(老人男性)が政治リーダーになりやすい。だから都会の働く女性が大変なのが、よく分からない。だから待機児童が減らない。
■「国債の95%は国内のお金で持っているから大丈夫」という議論はガラパゴス的議論である。国際的な議論では「政治とは税金の分配」。借金とは、子孫の取り分を自分達が先に勝手に使ってしまうということである。政治の正当性の問題である。
■国際社会では政治の正当性の認識があるので、トロントサミットは、G20のうち日本以外の19カ国は2013年までに財政赤字を半減することにサインした。しかし日本の総理は帰国の途についたとき、「今回のサミットはよかった。財政の重要性が理解できた」と言ったとか言わなかったとかいう話がある。そもそもの認識のレベルが違う
■戦後の日本がなぜうまく行ったのか?それはアメリカに負けたから。国民は全員「悔しい。米国に追いつき追い越せ。真似をしろ」というコンセンサスがあった。統制経済・談合・鎖国で経済のことばかり考えて頑張った
■しかし、成長して日本も大国になった1980年代に米国が、「日本はもう大きくなったから。自分で責任を果たせ。統制経済・談合はやめろ」と言われた。→これが為替の自由化。金融の自由化。(前川レポート) ここでバブル崩壊と冷戦終結(グローバライゼーション)が起こった。
■冷戦終結前はグローバル経済(中間層)は5億人だった。冷戦終結後に30億人に膨れあがった。「一人歩きしろ」と言われた時に大変な状況に投げ込まれた。そこで日銀はゼロ金利でカンフル剤を打って企業に自立を促した。しかしカンフル剤を打ち続けているうちに企業は「気持ちいい」と思ってしまい、前川レポートで指摘した構造変革は起こらなかった
■高度成長期までは、会社の業績は関係なく収入は増えてきた。難しことはお上に任せていればOKで、何も考えずに済んだ。新聞のことを鵜呑みにしていた。これからは自分で考えなければ解はない時代だ
■成功体験がある人が変革の邪魔をする。成功体験のある人に成功体験を忘れてもらうことが必要。しかし成功体験を忘れるのは不可能。だから、ダイバーシティしかない。成功体験のない人(女性、マイノリティ)を経営陣に入れることだ
■政治は付加価値は生まない。付加価値を生むのは民間であり経済である。経済界が、日本の競争力低下を政府日銀を理由にするのは、自らの責任回避でしかない
■情報発信の重要性。1981年に興銀がIT課を作った。→すると、日本中から腕に覚えのある人がやってくる→当然負ける。そして負けると学ぶ。このように情報発信しなければまったく学べないし、分からない
■アクサCEOの言葉。ベトナム進出の際、市場調査は一切しなかった。そのかわり、新聞広告で「アクサはベトナムに進出するので社長を募集する。ベトナムのことが分かる人はレポートを提出して欲しい」と出した。申込みが殺到した。その中から一番優秀な人を雇用した。これも情報発信が重要な例
■大昔、情報発信は大変でコストがかかりリスクもあった。今は情報発信コストはタダだ。むしろ個人の方が情報発信できる時代。個人の力がものすごく大きくなっている時代。どんどんやるべきだ
■若い人が大切なのは、まずビジネスを乗り切れる身体の健康を作ること。その上で、英語の読み書き。Googleで検索し、英語で数字・ファクトが取れれば、日本のメディアが非常にゆがんでいることが見える
■ちきりんの「自分のアタマで考えよう」はオススメである。自分のアタマで考えるロジックを教えてくれる。
■情報発信について、ライフネットのケースでは本と論文。10冊以上を出口さんと副社長の岩瀬さんが作っている。SNSも積極的。「会社を知って欲しい」との思いから。リアルの場としても、講演を年間200回以上やっている。10人以上集まれば全国どこでも行く。
■情報発信の場合、メッセージの一貫性と整合性が何よりも大切である。たとえば「人類皆兄弟」&「戸締まり用心」と言っているCM。海外の友人が「なんでこんなことを許しているんだ」と指摘されて、初めて言っていることにギャップがあることに気づかされた。新聞雑誌を鵜呑みにするので、違和感を感じないのが問題である
■情報発信の落とし穴:情報発信だけで自己満足になってはいけない。情報発信は目的ではなく手段。「世界を変えたい」と思うから情報発信するのだ。あくまで情報発信はスタートである。PDCAサイクルを回すことが大切
■反応が殺到して受け皿がないとPDCAが回らない。受け皿を用意する。準備をすることが大切。すぐれた新聞記者は10聞いて1しか書かない。だからいい記事を書ける。「急がば回れ」だ
■ライフネットの場合、海外に対しても情報発信している。ひらすら英語で論文を書き、英語でスピーチをしている。この結果、海外の方からライフネットにアプローチしてくる。既に引き合いが数カ国から来ている。だから、小さい会社でもグローバルの展開は可能だ。ただし自分から海の中を探すのではなく、自分が海の中で光を出すのだ
■ライフネットについて:日本では全世帯の6割が平均所得以下で暮らしている。この人達はデフレだから生活できる。「諸悪の根源はデフレ」と言っている人は、この現実が分かっていない
■日本の問題は若い人が貧しいこと。だから、おじいさん・おばあさんは放っておいて、若い人を大切にしないと、この国はもたない。だからライフネットでは保険料を半額にした。例えてみると、ライフネットは缶ビール。飲み屋だと飲み屋の人件費が乗っている。ライフネットは運営経費をギリギリに削っている。大手はここが高い(日本中に店舗がありお金がかかっている)
■20世紀の生命保険は死亡保険だった。旦那が死ねば一家が路頭に迷うから。しかし今は3割が一人暮らし。子供がいない夫婦も多い。だから極論すれば死亡保険は不要。だから「働く人の保険」、つまり就業不能の保険を作った
■ライフネットはネットの中にしか店がない。だから、いかに知ってもらうかがチャレンジ。TV CMはお金がかかり保険料アップに繋がるので極めて限定的にしかしていない。そのために、草の根的に理解してくれる仲間を増やしている
私は学んだことが満載でしたが、特に「情報発信は目的ではなく、手段」というところは、お聞きして背筋が伸びる思いでした。
私も、日本がよりよい国になるために、ビジネスパーソンがもっと情報発信できればと思って、朝カフェをやったり、ブログや本を書いています。おかげさまで仲間も増えてきました。この思い、忘れてはいけないな、と思いました。
出口さん、本当にありがとうございました。
Twitterのつぶやきもまとめてみました。
次回、12月14日(水)の朝カフェは、私・永井の『残業3時間を朝30分で片づける仕事術 』の予定です。7月に出版した本の内容をお話しする予定ですが、もしかしたら若干内容を変更するかもしれません。
後ほど、正式にご案内致します。