武蔵野社長・小山昇さんのご著書「経営の心得」を読みました。
208の経営のエッセンスがそれぞれ1ページにまとまっています。
どれも常識に囚われない、小山さんが経営の現場でつかんだ言葉ばかり。
どの言葉も素晴らしく啓発されましたが、208の言葉の中で、以下の言葉がありました。
—(以下、引用)—
お客様アンケートで大切なのは
「良い」の数でも「悪い」の数でもない。
継続的にアンケートを採って、
時系列的に傾向を把握する。これが何より重要。—(以上、引用)—
アンケートについて、普段、私が考えていることが集約されていて、「まさに我が意を得たり」と思いました。
小山さんがここで述べておられるのは、一般的なユーザーアンケートのようです。
一方で、主にIT企業などがセミナーを行ってアンケートを取ることもあります。この場合の目的は、そこから案件を見つけ出すことです。
たとえば、「情報インフラ変革セミナー」と銘打って情報システム部の方々にご参加いただき、アンケートで参加された企業がどのような情報投資をお考えになっているかをお聞きし、それをセールスがフォローする、という形です。
しかし一方で、たとえば同じ顧客層が毎回数十名以上集まるシリーズもののセミナーの場合、さらに一歩考えを進めて、この顧客セグメントの動向を把握する、という方法もあります。
たとえば10年近く前に、私はコールセンター長を対象とした半日のセミナーを3ヶ月毎に数年間継続して開催しました。毎回100名参加した出席者は、全てコールセンターのユーザー企業でした。
このセミナーでは基本的に製品紹介は行わず、先進ユーザー事例を中心に、出席される実際のユーザー責任者の方々が持ち回りで講演されました。
このセミナーで、顧客動向を把握するためにアンケートを行いましたが、100名ほどが参加するため、日本のコールセンター長が抱える最新の課題は何かをリアルタイムに把握することができました。
たとえばITバブルがはじけた2002年当初、アンケートでユーザーの最優先課題はコスト削減であることが分かりました。しかし数ヶ月毎に見ていくと、その後は「コスト削減」のニーズは徐々に減っていきました。
その一方で、コールセンター統合のニーズが増えていきました。具体的には、拠点統合、業務統合、チャネル統合等です。そこでこの時期、「コールセンター統合、3つの視点」というテーマでセミナーを企画しました。
また、コールセンターのプロフィット化のニーズも高まり始めました。そこで、「そもそもコールセンターのプロフィットセンター化が可能なのか?」を議論するテーマをセットしたり。
このように、アンケートで把握した最新の顧客課題に基づいてテーマをセットすることで、参加する方々の問題意識を捉えたマーケティング活動が展開することができました。
これができたのも、小山社長がおっしゃっている「時系列的な傾向」を、アンケートで把握できたからなのですよね。
注意すべきことは、毎回のアンケートでは、質問項目はできるだけ変えないことです。同じ質問項目を設定しているから、定点観測が可能になります。
「たかがアンケート」と思われがちですが、結構奥深いものですね。