是本信義著『図解クラウゼヴィッツ「戦争論」入門』を読んでいます。
難解と言われる「戦争論」のエッセンスが、わかりやすくまとまっています。
この中で、戦略と戦術について明確に分けて説明した部分があり、参考になりました。
—(以下、p.81-86 引用)—-
「戦術における目的は勝利。(中略)戦略にとって目的とは、直接講和をもたらす状況を作り出すこと。」
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クラウゼヴィッツは、戦争においてこの手段と目的の性質を明確に区別し、その混交を戒めている。
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戦略上の最終目的を達成するためには、そのための手段/プロセスとして各種の戦術上の成功、この場合、勝利を積み重ねていく必要があるというものである。
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ところが日本海軍は、日本海海戦であまりにも鮮やかなパーフェクト勝ちを収め、それが(一局地戦争にすぎない)日露戦争終結の最大の要因となったため、手段の一つに過ぎない敵艦隊の撃破である艦隊決戦を究極の目的と取り違えてしまったのである。
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ごく短絡的にいえば、このように手段を目的と取り違え、艦隊決戦至上主義に取りつかれた日本海軍には、もはや戦略も戦術も必要なかったのである。
—(以下、p.81-引用)—-
日露戦争で、ロシアのバルチック艦隊に対して、日本海軍がおさめた日本海海戦大勝利という成功体験が、その後、日本海軍が戦略思想を育む上で、阻害要因になった、ということですね。
成功体験というものは、事実に基づいて考える戦略思想をも冒してしまう。これは怖ろしいことですね。
しかし、これは軍隊に限らず、現代の企業組織でも起こっていることです。
先日の朝カフェで、ライフネット生命保険・社長の出口治明さんが、「人は成功体験を忘れることはできない。だからダイバーシティにより、成功体験に固執しない多様な人材を企業の中に入れていくしかない」とお話しされていました。
成功体験により戦略思想が阻害されている組織に、戦略思想を根付かせる一つの方法が、出口さんもおっしゃっている「(過去の成功体験を持たない)人材の多様化」なのかもしれません。