生き残ろうと思って差別化しようとしても、結局、差別化できない理由


「生き残りのために差別化しよう!」と号令がかかる場合があります。

しかし世の中で実際に差別化で成功している事例を見ていると、「生き残り」を「差別化」の目的にするのは、ちょっと違うような気がします。

 

たとえば、格安航空会社(LCC)の走りだったサウスウェスト航空。1967年創業です。

人件費以外のコストを徹底削減し高収益、黒字経営を続けており、米国で唯一、同時多発テロ以降もレイオフしていない大手航空会社です。

機内食、指定席、ビジネスクラス、別航空会社への手荷物転送を廃止し、発着時間は15分間隔で高稼働率、近距離用旅客機のボーイング737で標準化して保守効率抜群です。徹底した差別化を図っています。

創業当時、米国の都市間を飛行機で移動しようとすると、直行便がなく、ダラスなどのハブ空港を経由する必要がありました。料金も高いし、不便だったのですね。

そこで創立者の一人であるハーバート・ケレハーが「運賃が安く、定時運航率が優れていて便数の多い航空会社なら成功する」と考えて、サウスウェストが生まれました。

 

業務用ミラーで国内シェア8割のコミーも、徹底した差別化を図っています。しかし創業当初は看板を受注製作する会社でした。

ある展示会に、アクリル製の凸面鏡をはりあわせた回転看板を試作して出展したところ、あるスーパーから30個の大量注文が入りました。

実際にどのように使っているか聞いたところ、使用目的はなんと「万引防止」でした。コミーが受注生産型の看板業から、商品開発型のミラーメーカーに脱皮するきっかけは顧客の声だったのですね。

 

顧客の課題は、多様化しています。

差別化で成功している色々な事例を見ていると、顧客の解決できていない課題を拾っていくと他社と違うことを行わざるを得ず、そしてお客様が喜び、結果的に差別化されているように思えます。

つまり差別化は、多様な顧客の課題を解決し、よりよい社会を創り上げようと努力した積み重ねの結果なのでしょう。

顧客のことを考えず、「生き残るために差別化しよう!」を出発点に考えると、結局は差別化できないし、生き残ることもできないのではないかと思います。