「理論は机上の空論」ではない。ビジネスパーソンこそ、理論を学ぶと応用範囲が圧倒的に広がる


Red path across labyrinth

私たちビジネスパーソンの多くは、体験的に「仕事の現場に真実がある」ということを実感しています。

私も確かにその通りだと思います。

一方でともすると、「理論は現実の後追い」だから「理論は机上の空論」と考え、理論を軽視しがちです。

しかし、ハーバードビジネスレビューで早稲田大学ビジネススクールの入山章栄准教授が書いておられる「世界標準の経営理論」という連載を読むと、必ずしもそうとは限らないことがわかります。

 

ハーバードビジネスレビュー2015年2月号に掲載された連載第6回「理論ドリブンと現象ドリブン 経営学はけっして「現実の後追い」ではない」で、入山准教授は次のように述べています。

—(以下、引用)—

さて、ここで知っていただきたいのは、その当事者である経営学者には、「理論を思考の出発点にするタイプ」と「現象を思考の出発点にするタイプ」がいることだ。

……筆者の知る限り、現存するすべてのMBAの経営学教科書は現象ドリブンで構成されている。書店に並ぶほとんどの経営書もそうだろう。おそらくこの現象ドリブンの構成は、教科書の作成者(多くはビジネス・スクールの教授)が、ビジネスパーソン向けに「わかりやすくする」ために用いているのだろう。しかし筆者は、実はこれはまったく逆の効果ではないかと考えているのだ。

—(以上、引用)—-

 

よく知っている事例を最初に紹介され、その現象を元に理論が説明されると、納得する方が多いと思います。

実際に私も著書でこの手法をよく使います。わかりやすいからです。

その手法に対して、入山准教授は「逆効果である」とおっしゃっています。

そして、リアルなビジネス現象が、複数の経営学の理論で説明可能であることを実例で挙げた上で、次のように書いておられます。

—(以下、引用)—

ここまで来れば、既存のMBA教科書・経営書の課題が理解いただけたのではないだろうか。……「この事象は、あの理論でも、この理論でも、あっちの理論でも、はたまたこんな理論でも説明できます」と書かれているのだ。当然、それぞれの理論的な説明は薄くなり、読者の理解は浅くなる。

…本連載が目指しているのは、それとはまったく逆のベクトルだ。すなわち、世界標準の経営理論を根本から説明することで、それらを腹落ちして理解いただき、皆さんを取り巻くあらゆるビジネス事象の理解・考察・予測のための「思考の軸」にして欲しいのだ。本連載の対象となる三つの戦略の範囲なら、それらを説明する主要理論の数は20程度だ。この程度なら、忙しいビジネスパーソンでも学習は十分に可能な筈はずだ。

そして一つの理論を理解できれば、それを思考の軸にしてさまざまなビジネス事象に応用できる。……それどころか、学者では思いつかない「理論→現象」の応用を、むしろ皆さんが思いつくことも十分ありうるだろう。特定のビジネス事象に詳しいのは、学者ではなくビジネスパーソンなのだから。

このように「理論→現象」の思考軸で経営学を学ぶことこそ、はるかに効率的で、応用範囲も圧倒的に広がるのだ。

—(以上、引用)—-

 

実際に私も理論を学ぶことで現象をより深く理解できることを実体験しています

「現象(事例)→理論」で経営理論の面白さに目覚めた方は、理論を学んでみると、より考え方が深まると思います。

 

その際に、ハーバードビジネスレビューに入山准教授が連載されている「世界標準の経営理論」は、とても参考になると思います。