企画段階で完璧なコンセンサス構築を目指す日本では、計画段階で関係者に根回しをしながらじっくり時間をかけますが、実行して問題が多く出た後、「最初に言ったことと違うじゃないか」と言われたりして検証・対策がキッチリとできず、結果的にPDCA (Plan, Do, Check, Action)が回らないことが多いように感じています。
一方で、米国人は計画はあっさりしていますが、すぐに実行した後、検証や対策を行って、再度計画を見直すことが多いのです。
これを仕組みで回しているので、結果的に小さな成果でも速く出て、学びも蓄積されていきます。
数年前、日本IBMで米国人の同僚と仕事をしていた際に、なぜ米国ではこのスタイルなのかを聞いたことがあります。
米国のMBAを修了していた彼の答えは、
「米国も昔はこうではなかった。しかし戦争で、このようにPDCAをキッチリと回す部隊の勝率が高いことがわかった。だからこれがビジネスでも採用されるようになったんだ」
「なるほどなぁ」と思ったのですが、当時の私の知識では、これは具体的にどういうことなのかがわかりませんでした。
最近、少しわかってきました。
AAR: アフター・アクション・レビュー
という手法なのですね。
これは1970年代半ばに米国陸軍で導入された手法で、元は戦闘シミュレーションから教訓を得るために取り入れられたものです。そして湾岸戦争やハイチ介入で本格的に実践活用されるようになりました。
AARでは、戦闘シミュレーションが終わった後に、参加した関係者が集まって、常に次の四つの質問を軸に議論が展開されます。
①我々がやろうとしたのは何か?
②実際には何が起きたのか?
③なぜそうなったのか?
④次回我々がやろうとするのは何か?
ポイントは、この目的は「学びと改善」であり、任務に成功したか失敗したかは問わないし、あくまでも訓練であって評価ではない、というという点です。
組織が学びを蓄積しパフォーマンス向上を図る手段であり、採点の道具ではない、という点が重要です。
実際の仕事で多くの人達の意見を出しながらAARを実践し成果を挙げるためには、これらを参加者が腹落ちして理解しているかどうかがカギになります。
元々は陸軍で活用された方法ですが、ビジネスにも展開可能です。
湾岸戦争を指揮し国務長官も務めたコリン・パウエルは、国務長官になってからもスタッフとAARを行っています。
まだまだ学ぶべきことが沢山あると痛感します。
ご参考までに、下記の本の一部(p.210-217)で、コリン・パウエルがAARの実践をした経験を書いています。
またこの本でも、事例として米国陸軍のAARが取り上げられています。(p.138-152)
永井孝尚さん、
初めまして。
あなたのブログと書籍のファンです。
問題解決はやり方は様々ですが、難しいものですね。
ぜひ、今後も永井さんを応援させて下さい。
大信田昌宏様、
ありがとうございます!