先日よりご紹介しているPDF版無償公開ですが、公開4日後に、ついにダウンロード1,000件を突破しました。
考えてみると、この本を出版したのが2008年9月。
それから1年半をかけて、1,000冊を販売または配布しました。
その1年半かけて販売&配った数を、わずか4日間で超えてしまいました。
Twitterでこの本のことをリツイートしていただいたり、ブログでご紹介して下さった皆様のおかげです。
感謝いたします。
ところでふと、「この出来事は、一体何を意味しているのだろう?」、….と考えてしまいました。
何回かご紹介している通り、この本は自費出版です。
自費出版ではありますが、しっかりプロにお願いして表紙などをデザインし、版下を作り、自分でISBNコードを取得し(だから『出版者』は私=永井孝尚になっています)、アマゾンのe託販売により、通常の本とまったく同様に販売しています。
そのため、「この本は自費出版です」と説明すると、驚かれることがあります。
このために、約70万円かけて2,000冊印刷しました。
今からほんの1年半前、2008年9月の時点の日本では、自費出版として、この方法が最もコストパフォーマンスに優れた方法だったと思います。
一方で、まだ1,000冊が残っていて、自宅の一角を占領しています。
黒字にするためにはあと400冊程売る必要がありますが、今後、400冊売れる可能性は少ないと思います。
ただ、儲けようと考えて出版したのではないので、このこと自体はまったくこだわっていません。
それは、もともと、『仕事で学んだマーケティング戦略の考え方を本にまとめて、皆さんに読んでいただき、役に立てて欲しい』と考えて出版したからです。
そのわずか1年半後、PDF版を無償公開した途端に、同じ1,000部がダウンロードされています。
その全てが、紙の本と同様に読まれることはないかもしれません。
取りあえずダウンロードしてみた、という方もおられるでしょう。
しかしそれにしても、1,000部です。
『仕事で学んだマーケティング戦略の考え方を本にまとめて、皆さんに読んでいただき、役に立てて欲しい』
という当初の思いを実現するのならば、このようにPDFで無償公開する方が、合理的かもしれません。
少なくとも金銭的な持ち出しはない訳で、数十万円をかけて紙の本を何千部も作る必要はなくなります。
ただ、紙の本が手にできる….という感激は何ものにも代え難いものがあるので、この点をどう考えるか、ですね。
本書を出版した際にも、既に何冊も出版されている方から、
『バック・トゥ・ザ・フューチャーの最後に、主人公の父親が作家になっていて、段ボールに入った新刊が送られてくるシーンがありました。あの感激は万国共通だと思います』
というメッセージをいただきました。まったく同感です。
もしかしたら、15万円程度かけて50-100部程度をオンデマンド印刷し、かつ電子出版で配布、というあたりが、ビジネスマンが自費出版する際の今後の姿なのかもしれません。
一方で、まだKindleは日本では極めて限られた方々しか普及しておらず、iPADも来月発売というこの時期に、4日間で1,000件がダウンロードされたという事実は、大きな意味を持っていると思います。
このあたりのことは、昨日ご紹介しましたように、明日3月25日のSocialWeb2.0Partyで講演したいと思います。
ところで、今回、Twitterで「PDF版無償公開」とつぶやいたり、ブログのエントリーをつぶやいたりしたのが、リツイートされて拡がっていきました。
ダウンロード状況も把握しているので、Twitterの拡がりとダウンロードの関係も、後程、分析してみようと思います。
■『戦略プロフェッショナルの心得』PDF版、通勤の合間に半分読みました。『朝のカフェで鍛える 実戦的マーケティング力』の売れ行きもUPするのでは?
■『戦略プロフェッショナルの心得』PDF版、読破報告第一号 from Twitter
自費出版で1000部さばいたというのは、それはそれで、よい数字なのではないかと思います。
角川氏の書籍をはじめ、無料公開されるケースが出てきていますが、“出版ビジネス”という面からみれば、その1000ダウンロードが何冊の実売につながるのか、というところが気になりますね。著者の視点からは、たとえば、これをきっかけに講演の依頼が来るという“ビジネス”もありえますが、出版そのもので利益を上げることを目指す出版社にしてみると、最終的にはどこかでプラスにしなければなりませんので。
『フリー』は1万ダウンロードに対して14万部の実売になったわけですが、やはり、これは稀有な例になりそうな気がします。
大野さん、
ありがとうございます。
おっしゃるように商業出版での完全無償公開は、フリーミアムがどれだけ成り立つかというところにビジネスケースがかかってくるわけで、やはりちょっと難しい面があるように思います。
『フリー』が行ったように、デマンド・ジェネレーションの一環として、期間限定公開で話題性が高まるのを促し、期間終了後に実際の本で回収するという方法が現実的なのかな、と思います。
ただ、これは電子出版がブームになっている現時点だから有効な手法になっている可能性もありますね。
今後も有効かどうかは微妙です。
完全無償公開は、やはり自費出版だからこそ適合性が高いように思います。