「こんなのオモチャじゃん」…しかし新たな顧客が生まれていることが怖い。それは日本が20年間苦しんできたこと


市場に現れた新たなライバルが、まったく新しい商品を出してくる場合があります。

最初は性能が低くて、既に市場でシェアを握っている立場から見ると「こんなのオモチャじゃん」と思ったりします。

しかしその商品で、これまでユーザーでなかった新しい顧客が生まれたとしたら….それは市場の覇者にとって、実は大きな脅威なのです。

 

例えば、30年前に登場したパソコン。

登場した当時は「こんなのオモチャ」と言われました。当時はコンピュータと言えば、大型コンピュータやオフコン。しかしその後、エンドユーザーが使いはじめ、パソコンはIT市場を大きく変えました。

 

また、トランジスタラジオ。

1950年代は、ラジオと言えば真空管ラジオ。大きなもので電力消費も多く、家庭で家族が聴きました。トランジスタラジオが登場した当初、真空管ラジオを聴いていた顧客は、「確かに小さいけど音質も悪いしオモチャ」と思いました。

しかしトランジスタラジオを買った顧客がいたのです。ロックンロールが大好きな若者でした。親の目が届かないところで聴くためです。その後、トランジスタラジオは性能が向上して真空管ラジオを駆逐しました。

 

市場の覇者が新たな商品を「こんなのオモチャ」と思っても、これまで使ってこなかったユーザーが新たな顧客になった場合、それは将来的には大きな脅威なのですよね。

これは「イノベーションのジレンマ」と呼ばれているものです。

イノベーションのジレンマは英語ではInnovator’s Dilemma. つまり本来の意味は「イノベーターのジレンマ」です。イノベーションを起こしたイノベーター自身が、新たなイノベーションに対応できずに陥ってしまうジレンマのことなのですよね。

 

来週出版される「100円のコーラを1000円で売る方法3」は、この「イノベーションのジレンマ」をテーマにしたものです。

「イノベーションのジレンマ」はやや難解な理論です。

本書は、その「イノベーションのジレンマ」について書かれた世の中にある本の中で、恐らく一番わかりやすい本になったと思います。

 

ここ20年間、日本企業が低迷する大きな理由の一つは、リスクを取ってイノベーションに挑戦していないことだと思います。

まさに日本全体が「イノベーションのジレンマ」に陥っています。だからこそ、今、日本にイノベーションが必要な時期なのです。

本書が少しでもお役に立てればと思っています。