この方が手がけるプロジェクトは、かなりの確率で成功しています。
以前、この方とプロジェクトをご一緒させていただく機会をいただき、その理由が分りました。
あるプロジェクトの企画をまとめる作業で参加させていただいたのですが、かなり綿密に話し合い、徹底的に様々な視点で考えながら戦略を立てて、企画書を仕上げました。
さらに、私と打合せをするだけでなく、大勢の関係者とのネゴシエーションでも、きめ細やかに一人一人と打合せを繰り返しておられました。
何回かチェックポイントをもうけて、そのたびに最新状況を企画書に反映していきました。
企画書の作り方も極めてきめ細やかで、一言一句、丁寧に見ていきました。
しかし、様々な状況を考慮した結果、このプロジェクト実施を取り止めることになりました。
その時に、この方がおっしゃった言葉が忘れられません。
私が手がけるプロジェクトは、なぜほとんど全てが成功するのか、とよく聞かれます。
その理由は非常に簡単です。
負け戦をしない、ということです。
成功する条件が整っているかを見極め、整っている時には勝負する。
整っていない時は勝負しない。
それを常に徹底しているからです。
先日のエントリー「共感をエンジンとして成長していく、ライフネット生命保険」に書いたライフネット生命の出口社長も、次のようにおっしゃっています。
「森の姿をしっかりとらえなければ、木を育てることはできない」
「風が吹かない時は、凧を揚げることはできない」
同じことですね。
プロジェクトは一人ではできません。
多くの方々が関わってきます。
その方々の、かけがいのない人生の時間を預かるからこそ、負け戦は避けるべきなのです。
だから、勝負すべきでない時は、勝負しない。
しかし、そのためには徹底的に状況を理解することが必要です。
企画を立てる時には細心に立てて、
状況を見極めるためにあらゆる努力を惜しまず、
引くべき時にはそれまでの努力を惜しげもなく捨てる。
その姿勢は、多くの人々の二度と還ってこない貴重な人生の時間を、負け戦に費やさせたくないという覚悟なのだということが、このプロジェクトを通じて実感できました。
取り止めになったこのプロジェクトからは、個人的に、実に多くのことを学ぶことができました。
負け戦をしない、という考えは、とても大事なことだと思います。
が、大半のPMにはその概念すらないんじゃないか、と思うことがあります。勝とうとか、負けちゃいけないとか、そのことすら考えず、「やり遂げる」だけにフォーカスしているような。
まぁ、お膳立てされて、やり遂げるだけになっている、日本のプロジェクトのあり方にも問題があるのかもしれませんが。
当たり前のようだが、意味のある言葉でした。多くのことを学ばれたとありますが、是非我々コンサルタントやさらには政権担当者にもお教えいただきたいと感じました
大木さん、
おっしゃる通り、プロジェクトの請け負いという形は少なくなり、「言い出しっぺがやる」形になっていくのかもしれませんね。
奥村さん、
コンサルタントの立場で、色々とご経験されておられる奥村さんからこのような言葉をいただき、恐縮です。
今後ともよろしくお願いいたします。