今回の原発事故で、政府から「健康にはただちに影響はない」という発表が相次いでされています。
「健康にはただちに影響はない」と言われると、「では長期で考えると、どの程度影響あるのか?」と不安に思うのは、当り前のことですね。
2011/05/08の日本経済新聞記事 『放射線とからだ(上)外部被曝、浴びた量に注意―低いレベルでは個人差大きく』で、このことについて解説しています。
記事は長いものですが、とても参考になったので、「長期的にどの程度影響があるのか」という点に絞ってご紹介したいと思います。
まず、放射線の被曝による健康被害は二種類あります。
一つ目は、一度に大量の放射線を受けて障害が出る「急性障害」です。
1シーベルトを超えるとリンパ球の減少や嘔吐(おうと)などの健康被害が起きます。
現時点の福島第1原発の状況では、これだけの放射能を受けた周辺住民は出ておらず、住民が急性障害になる可能性はほとんどゼロとのこと。
二つ目は、放射線量を浴びてから時間が経過し、がんなどの症状が出る「晩発性障害」です。放射線がDNAを傷をつけ、細胞をがん化させるためです。
これについては、広島・長崎の原爆による被爆者を長期間追跡した疫学調査が紹介されています。
以下は、放射線影響研究所の資料により一部改変・抜粋した資料です。(1958年~1998年の調査)
広島・長崎の被爆者における固形がんの発生リスクと放射線の影響
線量(ミリシーベルト) | 被曝した人 | がんになった人 | そのうち被曝しなければがんにならなかったと推定できる人数 | 放射線の寄与率 (%) |
5-100 | 27789 | 4406 | 81 | 1.8% |
100-200 | 5527 | 946 | 75 | 7.6% |
200-500 | 5935 | 1144 | 179 | 15.7% |
500-1000 | 3173 | 688 | 206 | 29.5% |
1000-2000 | 1647 | 460 | 196 | 44.2% |
2000超 | 565 | 185 | 111 | 61% |
合計 | 44635 | 7851 | 848 | 10.7% |
確かに、高い放射線量を浴びる程、影響は高くなっています。ただ、5-100ミリシーベルトの放射能を浴びた27,000人の被爆者のうちがんになったのは4,400名で、そのうち被曝によりものと推定できるのは1.8%。
実際には、同研究所疫学部の陶山昭彦部長は「線量が低い場合は、喫煙などの生活習慣などによって引き起こされたがんと区別ができない」と説明しています。
—(以下、記事より抜粋)—
そもそも放射線を浴びなくても、日本人の半分はがんになるとされる。そのため、放射線の影響でがんを発生したと判断するには、被曝してから、がんの発生率が有意に上昇したとする結果が出なければ原因だと断定しにくい。
—(以上、記事より抜粋)—
今回の原発事故は確かに深刻な問題ではありますが、不必要に不安になることは避けたいものです。
また、記事では以下のようにも書いています。
—(以下、記事より抜粋)—
ただし、低レベルの放射線量による健康影響は科学的に分からない点が多く、将来がんが発生する可能性は否定できない。今後、福島第1原発事故が収束するまで、一定レベルの放射性物質は出続けるとみられ、国民の不安を解消するためにも住民の健康を長期間にわたり調べるべきだとの声は根強い。
—(以下、記事より抜粋)—
今回のデータは、しっかりと取って、今後に備えていきたいですね。