連載第3回目です。
■「オルタナティブ出版」を始めます(その1) なぜ、「オルタナティブ出版」なのか?
■「オルタナティブ出版」を始めます(その2) なぜ電子出版でなく、紙の本なのか?
今回、3月に出版を目指して準備中の新著「バリュープロポジション戦略 50の作法 -顧客中心主義を徹底し、本当のご満足を提供するために-」を、「オルタナティブ出版」の形で出版する理由の一つは、英語版により、グローバルに情報発信したいと考えたためです。
言うまでもありませんが、現在、ネット上では国境の壁は消滅しています。
一人の個人がグローバルに情報を発信することは、今やとても簡単。
文字の場合、主な壁は英語のみ。
音楽や映像の場合、その壁すら存在しません。
さまざまな経験と知恵を持ったプロフェッショナルが、主体的に情報発信し、グローバルでお互いに学び合うことで、よりよい世界を実現できるはずです。
一方で、日本から海外に対する英語による情報発信は少ないと言われています。
日本の国内市場が適度な規模を持っていたために、海外市場を考慮しなくても良かったことも一つの要因でしょう。
しかし世界はフラット化しており、日本の国内市場も収縮しています。
英語の壁は常にありますが、知識と経験を日本から情報発信していくことも重要です。
他の非英語圏の人たちも、同じジレンマを感じているのではないかと思います。
現在、英語版さえ仕上げれば、個人がグローバル向けて出版するのは極めて簡単です。
それはAmazonのKindle Direct Publishing (KDP)を使う方法です。(注:今年1/21から、Amazon DTP (Digital Text Platform)はKDPに変わりました)
米国ではKindleはかなり普及しています。このインフラ上で出版するのです。
しかも無料。
実は、2010年初めまでは、大きな壁がありました。
米国の社会保障番号(SSN)、連邦納税者識別番号(TIN)、米国法人番号(EIN) のいずれかと、米国の銀行口座が必要だったのです。
しかし、2010/1/15にこの制約がなくなり、誰でもKindle上で出版できるようになりました。
(昨日のエントリーで、「日本語版は、電子書籍でなく紙の書籍で出版する」と書きましたが、実は、日本でこのようなインフラがまだ整備されていないために、電子書籍版を見送ったのです)
出版社から日本語版を出版した場合でも、英語版は出版可能かもしれません。
しかし、出版社により英語版の版権の判断は異なる可能性もあります。
(2011/2/15 12:17追記:「出版契約の際に、日本版書籍の版権とその他は分けて契約することができる」とのご指摘をいただきました。ありがとうございました)
また、日本語版と英語版で版権が異なる場合、たとえば表紙を同一デザインにできない等、微妙な問題が発生する可能性もあります。
この部分はある程度自由度を持ちたいと考えました。
ということで、昨年12月から英語版を作成してみました。
しかし、「新著の英語版の状況:日本人にとって分かりやすい英語でも、ネイティブにとっては分かりにくい。英語出版の壁は思ったよりも厚いと実感」に書いたように、現時点ではまだまだ出版できるレベルではありません。
先に、「主な壁は英語のみ」と書きましたが、書籍として売り物にするレベルの英語に仕上げるのは、結構大変だと痛感しています。
このあたりは、試行錯誤ですね。
いくつか解決策を考えているので、日本語版が一段落次第、取りかかりたいと思っております。
今回の本を書くにあたって、日本人が書いたマーケティングの本を、はたしてグローバル(特にAmazonのお膝元の米国人)が読もうとするかどうか、という点も、検討事項でした。
実際、本書のテーマとなっている「バリュープロポジション」の考え方自体は、欧米社会の発想です。
しかしマーケティングの考えが生まれるはるか前から、日本では「顧客本位」という考え方が根付いていました。
一方で最近は、近視眼的に「顧客の言うことだけを聞けばよい」と考えてしまう傾向も散見されます。
そこで、本書では、日本の様々な事例を集めて構成し、欧米流の「バリュープロポジション」という視点で、改めて日本の「顧客本位」の考え方を見直す内容としました。
表紙も、この内容を反映したものにする予定です。
今回の試みにより、必ずしもネイティブレベルではない非英語圏のビジネスパーソンが、個人の力で、世界に向けて本を出版するための新しい方法論を提示できれば、と考えています。