先日ご紹介した「なぜ顧客は逃げてしまうのか」(ジェフリー・J・フォックス著 原田喜浩訳 光文社)から、「8つの広告禁止用語」を紹介しましたが、本書のp.45-47でもう一つ参考になることが書かれていたので、紹介します。
商品を値下げする目的の一つは、値下げすることで需要を掘り起こして、全体の売上を伸ばすことです。
しかし、値下げしても需要が増えず、逆に全体の売上が下がる商品もあります。
両者の違いは何でしょうか?
商品の需要を、「直接需要」と「派生需要」に分けると、この違いが分ります。
「直接需要」とは、最終消費者の需要です。
「自分が欲しいから買う」ケースで、多くの場合は消費財が該当します。
このような場合、値段を下げたり、クーポン等で買いたい人を増やすことで、需要を喚起し、より沢山売り、売上拡大を図ることができます。
一方の「派生需要」は、最終商品を作るために購入する顧客からの需要です。
たとえば、芝刈り機のタイヤメーカーは、タイやを値下げしても芝刈り機の消費者を増やすことはできません。逆に芝刈り機メーカーの売上が落ちると、タイヤメーカーもあおりを受けます。
結局、商品が派生需要に属するものであれば、どれだけ値下げしても、需要に影響を与えることはできません。
ということで、派生需要の商品を扱っている場合、値下げしても全体の需要は減ります。
競争に勝つために企業が値下げ合戦をしても需要は増えることはなく、企業の収益は圧迫され、シェアも変わらないという結果になります。
本書では、「値下げではなく、巧みな広告と営業活動でライバルに差をつけよう。」と締めくくっています。
マーケッターは、市場全体の需要構造を理解する必要があるのですね。
法人市場における各種IT製品・サービス(つまり私たちの売り物)は、「企業が生産物を生み出すためのもの」という観点で考えると、派生需要になりそうです。
とは言っても、「ライバルは価格勝負してきているし、この案件は絶対負けられないし」という状況、多いですよね。
ううむ、「いかに価格を下げずに、価値を上げるか」、大きなチャレンジですね。
ただ、この成熟化社会の日本では、直接需要の値下げにさえ、消費者は反応しなくなってきていますし、今後ますますその傾向は強くなると思います。
現在、ほとんどの企業は「人・モノ・金」しか経営の基盤を持ち得ていないため、値下げと「人・モノ・金」の削減でしかこの不況に対応出来ていません。
でも、これには必ずいずれ限界が来ます。
従来の「人・モノ・金」に「顧客」という新たな要素を加えて、理念ではなく、本当の意味での顧客政策を持ち、実行する他に生き残る道はないと思います。
日本の多くの企業には、「お客様第一主義」のような理念はありますが、真の顧客政策を実行している企業は殆どありません。
顧客は、企業にとって売上と利益をもたらす唯一の存在であるにもかかわらずです。
キヨさん、
コメントくださり、ありがとうございました。
全くご指摘の通りで、現時点でも日本は供給が需要を35兆円程上回った状況で、デフレの度合いを強めています。
このような状況では価格競争はデフレ傾向に拍車をかける結果になり、これが賃金の切り下げを生み、さらに需要が減る、というデフレスパイラルに陥るきっかけになります。
しかも高度成長期とは異なり少子高齢化でただでさえ需要は縮小傾向な訳で….。
社会全体の視点でも、顧客中心主義はますます重要になってきますね。(ただし、近視眼的顧客対応には陥らないようにしたいですね)