論点思考(1):いかに課題を設定し、課題を捨てるか?


内田和成著「論点思考」を読みました。

内田さんはボストンコンサルティンググループ(BCG)の日本代表を務められ、現在は早稲田大学ビジネススクール教授です。

先日ご紹介した「嶋口・内田研究会」で、たまたま参加していた私の同僚のSさんが社会人大学院・内田ゼミの現役ゼミ生をやっていたご縁で、そのSさんから本書をいただきました。(Sさん、ありがとうございました!)

25年間のコンサルタントの経験が凝縮された、読みやすく、かつ深い本で、2日で一気に読みました。

現役コンサルタントや、経営戦略を考える立場にある人にとって、教科書になる本だとも思いました。

非常に学びが多かったので、これから2回に分けてご紹介したいと思います。

もちろん、私がご紹介するのは一部ですので、ご興味がある方はぜひ本書をご覧になってみてください。

 

まず、タイトルにもなっている「論点」。

BCGでは「解くべき問題(課題)」のことを「論点」と呼んでいます。

最初にこの論点設定を間違えると、間違った問題に、多大な時間とワークロードをかけて取り組み、かつ何も成果を挙げないことになります。

本書は一貫して、最も重大な過ちは間違った論点、不要な論点に答えることであり、成果を出すためには「正しい答え」ではなく「正しい論点」が重要である、としています。

例えば、本書p.48では下記のような記述があります。

—(以下、引用)—–

まず大前提として、現象や観察事実と論点を間違えないことが大切だ。一般に問題点と呼ばれるものの多くは、現象や観察事実であって、論点でないことが多い。現象を論点ととらえて問題解決を図ろうとしても、多くの場合、成果はあがらない。

—(以上、引用)—–

本書では、現象(例えば「会社に泥棒が入った」)に対して、論点(課題)を4つの観点で設定する例が挙げられています。それぞれの論点で、打ち手が全く変わってきます。「会社に泥棒が入った」こと自体は現象であって問題ではないと言うことです。

これはまさに我々が陥りやすいトラップですね。

手前味噌ですが、昨年出版した「朝のカフェで鍛える実戦的マーケティング力」の第5章でも、課題設定を間違って主人公が堂々巡りに陥っている様子を描きました。

 

また論点の捨て方として、p.104に下記のような記述があります。

—(以下、引用)—–

BCGの先輩コンサルタント….に教えてもらった言葉に「戦略とは捨てることなり」という言葉がある。

…..治療の優先順位を決めることを「トリアージ(Triage)」という。

JR福知山線脱線事故の際、この「トリアージ」が行なわれた。緊急処置で救命の可能性がある人には「赤タッグ」、早期に処置が必要な人には「黄タッグ」、救命不可能な人には「黒タッグ」がつけられた。この判断が一人当りわずか30秒で行なわれたそうだ。通常では考えられない厳しい決断が瞬時に求められ、「黒タッグ」の人には治療が施されなかった。

—(以上、引用)—–

私達はともすると、結論を出すまでに多くの時間をかけてしまうことがあります。

しかしその間にも、多くの機会が失われています。

限られた救急資源しかない状態で、大規模事故に遭遇した場合、誰にどの順番で治療を施すかを検査して時間をかけていると、さらに多くの人命が失われます。

経営の現場でも、時間と人的な資源が無限にあると考えると、同じことが起こります。ただ、それが見えにくい点が異なります。

経営と救急医療の現場は異なりますが、学べることは多いと思います。

 

次回も本書についてご紹介したいと思います。