よく『「100円のコーラを1000円で売る方法」の主人公・宮前久美のモデルは誰ですか?』というご質問をいただきます。
実は特定のモデルはいません。
ただ強いて言うと、宮前久美が直面し悩んでいることは、15年前・30代中頃に初めてマーケティングの仕事を始めた頃に自分が悩んだことそのものです。
そしてメンター役の与田誠は、現在の私とも言えます。
つまり現在の私(=与田誠)が、15年前に初めてマーケティングの仕事を始めた私(=宮前久美)に対してアドバイスをするとしたら、どのようになるかを考えながら書いたのが、「100円のコーラを1000円で売る方法」です。
自分が仕事で悩み考えたことを書いたのですよね。
Wikipediaによると、私小説は「….日本の近代小説に見られた、作者が直接に経験したことがらを素材にして書かれた小説をさす用語である」としています。
「100円のコーラを1000円で売る方法」は「私小説そのものである」とも言えるかもしれません。
2012/6/27の日本経済新聞夕刊の特集「複雑な世界、日本語の力で 私小説の枠組み拡大に挑む」で、作家のリービ 英雄さんが私小説に関して以下のように書いておられます。
—(以下、引用)—-
…..日本語は、日本のことしか書けない言語ではない。
日本語で書くとどこか感覚的になり、主観的になるようなところがある。そこに文学的な何かが宿るような気がしている。近代文学が培ってきた力がそうさせるのかもしれない。そんな日本語・日本文学の力を使って大きな世界を表現することに、作家は挑むべきだ。その一人として、私は同時代の日本人作家を挑発していきたいと考えている。
—(以上、引用)—
このように考えると、もしかしたらビジネスパーソンが自分の経験で書くビジネスの世界は、新しい私小説の世界を切り開く可能性があるのかもしれませんね。