各社が銀塩フィルムカメラを縮小する中で、銀塩フィルムの高級カメラ市場はどうなっていくのでしょうか?
6月15日の日経産業新聞の記事「高級フィルムカメラ輸出、コシナが本格化」で、光学機器メーカーのコシナが高級フィルムカメラ市場で攻勢に出ている様子が紹介されています。
「コシナ」と言っても知らない方が多いかもしれませんね。
実は、コシナは、自社ブランドのカメラに加えて、カメラメーカー各社の普及型一眼レフカメラをOEMで提供してきました。累計生産台数は恐らく数百万台を超えているので、気がつかないでコシナの一眼レフを使っている方は、きっと多いと思います。
これだけの台数を生産すると、カメラを成型するのに必要な金型の減価償却が完了しますので、これを土台にして様々なカメラを安価に開発することができます。
ここからがコシナが凄いところで、1999年から「フォクトレンダー」という欧州の老舗ブランドで、ライカやコンタックス等の高級カメラと互換性のあるレンジ・ファインダーカメラや一眼レフカメラ、レンズを立て続けに発売し始めました。
2004年からは、同様に欧州の老舗ブランドである「ツァイス」シリーズも出しています。
普及版カメラよりも高価格ですが、ライカ等の舶来超高級カメラよりはずっと安い、という微妙なプライシングです。
現在の製品ラインアップはこちらを、フォクトレンダーの歴史に興味のある方はこちらをご覧下さい。
カメラにあまり興味がない方々には全く理解できない世界かもしれませんが、この製品ラインアップは、カメラ好きには堪えられないモノがあります。
カメラ店でフォクトレンダーやツァイスに触っているうちに正気を失ってしまい、ふと気がつくと店の外でカメラを持っていて財布が軽くなっていた、という方も多いのではないでしょうか?
銀塩フィルムカメラから各社が撤退する中、コシナはこれをチャンスと捉え、銀塩フィルムにこだわるユーザー層をターゲットとして攻勢をかけています。記事によると、コシナは現在3割のカメラ事業の売上比率を拡大する計画とのことです。
普及カメラから高級カメラにシフトしてきた、ということで、一見、クリステンセンの「イノベーションのジレンマ」にある破壊的イノベーションのようにも思えますが、コシナの場合は必ずしも目新しい破壊的技術があった訳ではないようです。
以前、何かの本か雑誌でコシナの小林社長のインタビューを読んだのですが、これらのシリーズは、カメラやレンズが好きで、品質にこだわり続けた結果、生まれたものです。
夢中でお客様が喜ぶような商品を追求しているうちに、結果的にビジネス・モデルのイノベーションを行っていた、ということなのかもしれません。
永井さん、こんちは。
コシナは信州中野にあり、私の実家が元々あったところで、大変な田舎です。農業が中心の町です。コシナは地元の優良企業だったのに、デジタルカメラの波で、どうなるかと心配していました。
同じ長野県の茅野市にあるカメラ製造会社のチノンは2年前にコダックのデジタルカメラ製造の会社になっています。
地方にあっても、世界的な流れには直接影響されてしまうもので、難しいですね。
こんにちは。
すごくいい話ですね。フラット化する世界で、どのようにすれば存在感を放つことが出来るかということを示す好例だと思います。
高橋さん、
高橋さんのご実家は信州なのですね。新聞記事によると、コシナは本場の欧州にも輸出するそうです。頑張って欲しいですね。
今泉さん、
IT業界は利害関係が多い、ということも若干あって(^o^;)ゞ、あまり利害関係がないカメラ業界を例にイノベーションの考察を続けているのですが、今、この業界はまさにイノベーションの真っ只中ですね。それにしても、世界をリードする日本のカメラメーカーの皆さんの頑張りには、いつも敬服する思いです。