今回も日経ネタですが、本日(5/12)の日本経済新聞朝刊の特集「消費をつかむ 人気商品は安くなる」で、人気機種で高スペックの商品が、あまり人気がなくスペックも低い商品よりも安くなっている現象が紹介されています。
例えば、液晶テレビでは、32型の価格が一部量販店で画面サイズの小さな26型を下回っています。「32型は26型の10倍売れる」という家電量販店のバイヤーの話も紹介されています。
ちょっとおかしな現象ですね。どうなっているのでしょうか?
この記事では、ネットにより消費者が価格情報に詳しくなったことを理由に上げています。
価格に関して、経済学でいう「情報の非対称性」がなくなったということです。
つまり、従来は供給者の方がより多くの情報を持っていて価格支配力があったのに対して、今は消費者も多くの情報を持ち最安値の店を知っているために、供給者の価格支配力がなくなった、ということです。
しかし、これだけの理由では、短期的に需要が高まると品薄状態が発生するのに、価格が安くなる状態を十分説明できていません。
ということで、以下は私の仮説です。
従来、このようなケースでは、短期間で見れば供給は一定のため品薄になるのでプレミアム価格がつきます。
この前提が変わったということではないでしょうか?
商品寿命が短くなっている現代では、欠品による機会損失の発生はビジネス的に非常にインパクトが大きいために、最小限に抑える必要があります。
そこで現在、多くのメーカーでは、需要変化に対し供給をダイナミックに変更できる体制を構築しつつあります。
これにより、人気商品が沢山売れてもオンデマンドで商品が供給されることにより品薄になるケースを回避できます。
需要供給曲線で言えば、供給曲線そのものを非常に短期間でオンデマンドに上下にシフトできるようになり、均衡点を定め均衡価格と均衡数量を実現できるようになった、ということです。
このように考えれば、人気商品が安くなるのは、まさに経済学の原則に合った現象である、ということになります。従来の前提との違いは、供給が需要を満たせない期間が非常に短くなっているという点です。
このためには生産を需要変化にダイナミックに対応できる必要がありますし、採算割れを起こすケースの場合は早めに察知し、場合によっては市場撤退の判断ができるような仕組みが必要になります。
ということで、生産・供給・販売・マーケティングのプロセス全体を繋げて、その上で全体で経営判断できる仕組み構築の必要性がますます高まってきています。
う~ん、少なくともテレビのような商品は、需要の高まりを受けて(オンデマンドで)製造するというより、先々の需要の高まりを予測して、または、需要を高める施策とともに先行投資することで、(競争力のある)低価格で人気商品を提供するという図式がなりたっているように思います。
> 32型は26型の10倍売れる
これがどのような前提に立った発言なのかわからないのですが、もし32型と26型でたいした価格差がないとか、価格が逆転しているのであれば、大きいほうを選ぶ人が多いのは当然でしょう。テレビは独占できる市場ではないので、各社が需要が高いと予測した大画面に投資した結果、競争が激化して価格が下がったのだと思います。それこそ価格逆転が起きているということは普通ではないわけですから、むしろオンデマンドに需給を調節できていないというあらわれという気がします。それこそ「先行投資で、もっと儲かるはずだったのに」と思っているメーカーがあるかもしれません。
製造にオンデマンドを持ち込むと、事前に大規模需要を見込んで大量生産するよりも単価が高くなるでしょうから、むしろ長期的な需要の予測とか意思決定支援といった役割の方が重要でしょう。その意味で、
> 全体を繋げて、全体で経営判断できる仕組み
が重要だという点には、もちろん同意します。
mohnoさん、コメントありがとうございます。
鋭いご指摘と思います。
ある電器会社は、アテネ五輪に照準を合わせて、開発/生産/物流/販売をお互いに連携させ、五輪の3ヶ月前の発売に合わせてプラズマテレビの開発・生産を行い、販売の際には全国数千店舗で数万台のテレビを一斉に陳列して、世界最高の色数や大画面合わせの迫力をアピールすることで、大きなシェア獲得を果たしました。予想よりも大きかった価格下落に対しても、生産サイドで対応してコスト削減を図り、収益を確保しています。
ということで、周到なマーケティング戦略と開発・製造・物流・販売がカッチリとかみ合った上で、市場に変化にオンデマンドで対応する事が必要ということですね。
あくまで個人的な想像ですが、この観点では、売れ筋でない商品の価格が下がらないのは、このサイクルに乗らないため、ということなのかもしれません。
しつこいですが^_^;
> ある電器会社は・・・
について、アテネ五輪の時期はとっくにわかっていた話ですし、その時期を狙った大画面の普及の話も以前からある話なので、あまりオンデマンドという感じがしないですね。
これは、オンデマンドに“変化”に対応した話として紹介されているのでしょうか。
[経済][経済学]人気商品が安くなる理由
12日の日本経済新聞朝刊の特集「消費をつかむ」で、人気機種で高スペックの商品が、あまり人気がなくスペックも低い商品よりも安くなっている現象が紹介されている。この記事に関してエントリが書かれている。この経済学の常識に反する事実について各々考察されている。だが…
mohnoさん、
「アテネ五輪」の部分はマーケティング戦略の話で、市場の変化(需要の変化)にオンデマンドに対応の部分はビジネスプロセスの話です。
堂々めぐりしてますが^_^;
> 市場の変化(需要の変化)
「需要の変化(増大)」に対応したのではなく、「大量需要を予測(期待)」して“あらかじめ”設備投資をした結果、安く製造できたのではないかという趣旨です。
私も現場の話を聞いたわけではないので、仮説にすぎません。ほんとうにオンデマンドが実装されているなら、小型のテレビの方が安くできそうな気がします。
まあ、自宅には4:3のブラウン管しかないんですが^_^;
液晶テレビ
こちらのエントリに触発されて少し調べてみたのだが(エントリとは無関係)、本当に安くなってきたものだ。
たとえば、2004/2に発売されたという SHARP LC-32DG1という液晶テレビは、価格.com……
http://bcnranking.jp/pickup/08-00008024.html より
> 高くても売れるプラズマ
だそうです。
液晶テレビの中では大画面の32v型もプラズマテレビよりは小さいですから、価格戦略はプラズマも想定されていたでしょうね。
ふと yodobashi.com を見たら、価格が逆転していた機種がなくなっているようです。値段を下げなくても十分売れるという判断なのでしょうか。
“オンデマンドな値付け”という意味ではそうかもしれませんね 🙂
mohnoさん、
コメントありがとうございました。
ここに挙げられた機種の最近2ヶ月の価格変動をkakaku.comで見てみると、なかなか興味深いですネ。