「消費者の行動は経済学では説明できない、心理学で考えなくてはいけない」。
セブン-イレブン・ジャパンの創業者、鈴木敏文会長の言葉が、「セブン-イレブン覇者の奥義」の冒頭で紹介されています。この言葉の大切さは、マーケティングを担当している者としてとても共感します。
この本では、やや蒸し暑い3月中旬に、著者がセブン-イレブンでレジに向かおうとした時に、目に飛び込んできた「冷やし手延べそうめん」がなぜか無性に食べたくなり、つい買ってしまった逸話が紹介されています。
普通に考えると、そうめんは夏に店頭に出します。しかし、セブン-イレブン本部では売上データから「急に暖かくなるとそうめんやざるそばのような商品の売れ行きがよくなる」という事実をデータとして把握していました。そこで前日よりも気温が5度高かったこの日にそうめんを発注しておいたのです。
例えば、Webコンテンツを作る場合でも、実際のアクセス状況を分析してWebを見ているユーザー心理の仮説を立ててコンテンツを作り、その後のアクセス状況を再度詳細に分析して検証し、仮説を修正する、という作業を繰り返すことになります。ちょっとした言葉や画面フローの違いによって、お客様の印象はまったく異なります。
マーケティング担当者は、単に心理学に対して造詣が深いだけでは不十分で、データで裏付けを取り、それを常に見直す習慣を持つことが重要であると思います。
永井様
田中陽です。私の本を紹介していただき恐縮です。。セブン-イレブンという会社は取材をすればするほど小売業とは思えないほど、「物つくり」に真剣に取り組んでいる会社であることを実感します。そして、その商品をどうやれば、よりよく売れるのかを真剣に考えている会社だといこうこともよくわかります。
「覇者の奥義」はコンビニエンスストアのノウハウ本ではなく、マーケティンングに携わる人、経営学や経営組織論などに興味のある人たちに読んでいただきたいと思って書き上げました。
「そうめん」の話を本に書きましたが、今なら、
「おでん」の売り上げが好調かもしれませんね。これだけ天候不順な日が長続きすると・・・。昨晩、11時ころに家の近くのセブン-イレブンに立ち寄りましたが、70歳くらいの女性がおでんを買う姿を見ました。
セブン-イレブンは消費者のニーズを先取りするようなことはありませんが、ニーズの変化には的確に、いち早く把握してその変化に対応していく柔軟さ、したたかさがある企業だと思います。
田中さん、コメントありがとうございました。
おっしゃるように、セブン-イレブンは、マーケテインングや経営のヒントとなる題材の宝庫であることがよく分かりました。
特に「おやっ?」と思ったのが、「原則店を見ない鈴木(会長)にとって、現場からの情報やPOSデータから吸い上がってくる販売実績は経営判断を下すよりどころである」という一節です。
「経営者は現場を徹底的に理解しなければならない。だから頻繁に現場に足を運ぶ」というアプローチではなく、「経営者は現場を徹底的に理解しなければならない。だから現場のことは数字で把握する。(把握できない部分は仕組みを作る)」という経営姿勢が貫かれているということでしょうか?(もちろん前者のアプローチも重要ですが)
どうしても数字で伝わらない暗黙知の部分を、FC会議等、様々な仕組みで汲み取ろうとしているのも興味深い点ですね。