自費出版の道#08: 勤務先の承認、著作物使用の承認


私は日本IBMに勤務している会社員ですので、主な生計は勤務先の給与で立てています。

今回、個人で自費出版するとは言え、勤務先の名前を出した上で本を出します。

本書に掲載された内容は筆者である永井孝尚個人の見解であり、必ずしも筆者の勤務先であるIBMの立場、戦略、意見を代表するものではありません。

という一文を本の冒頭に入れていますし、実際、本の内容は私の個人的な見解をまとめたものです。

しかし、読者の方々は、「日本IBM社員の永井が書いた本」と思って本を読まれることになります。

会社のブランド・マネージメントという観点でも、勤務先の会社が本の内容が問題がないかをチェックすることが必要になります。

また、今回は自費出版の販売に伴い収入が入ります。社員を雇用する会社として、社員が外部から収入を得ることに対して、問題がないことも併せて確認する必要があります。

例えば競合他社等、勤務先と利害が相反する団体から収入を受け取るのは問題があります。利益相反になるからです。

従って、

1.出版する書籍が、勤務先の会社の名前を出しても問題がない内容であること
2.受け取る収入が、勤務先と利益相反にならないこと

を確認することが必要になります。

今回、「さすがIBM」と思ったのは、このような承認プロセスが社内にちゃんと整備されているということです。

詳細は社内内部プロセスに関わる話なので割愛させていただきますが、2週間ほどかけて勤務先の承認を得ました。

 

一方で、本の中では、書籍・雑誌・新聞などから何カ所か転載しています。

そこで著作物利用の許諾も得ました。

まず、本のドラフトをチェックして一覧表を作成しました。このリストには、著者名、出版社名(または新聞社名)、出版日、転載内容等をまとめました。

この結果、合計7カ所から許諾を得る必要があることがわかりました。

この7つの書籍を出版している出版社・新聞社に対して、それぞれ個別にメールやFax、電話でコンタクトしました。

全ての出版社・新聞社では、著作物利用の承認プロセスが整備されています。

必要事項を記入し、書籍のドラフトを添付して送ると、数日で承認されました。

新聞社への寄稿記事の場合、事前にその記事を書いた著者の許諾が必要になります。そこで著者の大学の先生や会社の役員の方に個別にメールを送って事前承認をいただき、その承認内容を添付して新聞社の承認を得ました。

一つ問題があったのは、新聞社の承認を得る際に、新聞記事のコピーを添付する必要がある場合があったことです。

私の場合、ブログに記事を書くと、その記事はそのまま廃棄していましたので、手元には残っていません。

このような場合は、新聞社に連絡して、記事のコピーを有償で購入する必要があります。

結構高い料金であり、また、郵送されるまで1週間程度かかるので、将来ブログに書いた内容を出版したいと考えている人は、転載記事のオリジナルは全て手元に置いておくとよいかもしれません。

一通りの承認を完了するのには、3-4週間を要しました。

 

勤務先の承認も、著作物利用の承認も、時間がかかります。

出版を考えておられる方は、本のドラフトが完成した時点で、できる限り早めに必要な承認処理を始めておくことが望ましいと思います。

 

注:著作物利用と引用の区別が不十分でしたので、修正しました (2008/8/14 13:00)