昨日のブログの続きです。
引き続き、ナゴヤラジオでのエアウィーヴの高岡本州社長(当時)のインタビューから引用してまとめます。(詳しく知りたい方は、リンク先のインタビューをお聴き下さい)
本日は、エアウィーヴがブランド作りに挑戦してきたかをご紹介します。
—(以下、引用)—
事業を開始した頃に、「ブランドを作りたい」と考えて、どうやればブランドを作れるか広告会社の社長に聞いた。その的確なアドバイスが今でも当社の重要な方針になっている。
『ブランドは広告では作れない。ブランドは、実績の積み重ねである。
実績とは、「起こったこと」の積み重ね。年月が必要。
たとえばエルメスは、バーキンが使い、グレース・ケリーが使い、………と、1800年代からの実績の積み重ねがちゃんと見える。ティファニーもそう。それも1つだけの実績でない。沢山ある実績の積み重ねだ。それらが見えることで、価値を持っている。高い次元の実績を積み重ねないと、ブランドにならない。』
—(以上、引用)—
「ブランドはお金では買えない。顧客に対して信頼を積み重ねた結果が、ブランドである」ということは、まさに私も常々思っていることなので、深く共感しました。
顧客への地道な価値提供と、仮説検証による継続的な価値向上が、ブランディングに繋がります。(そして最近の異物混入事件やその後の対応による顧客離れを見てもわかるように、企業への信頼は一瞬で崩壊してしまいます)
では、高岡会長はエアウィーヴのブランドをどのように創り上げていったのでしょうか?
—(以下、引用)—
当社事業を「生活インフラ事業」と考え、「では一番高い睡眠を求めているのは誰か」と考えたら、それがオリンピック選手だった。そこでオリンピック選手で実績を積み重ねていった。
しかしオリンピック選手の実績を一般の人に持っていっても、「ちょっと自分は違うし」と考える人も多いのが現実だ。
たとえば、「真央ちゃんも使っていますよ」と言っても、「私、スケートしないから、関係ない」となってしまう。
つまり「真央ちゃんが使っているから」買う顧客は確かに存在する。しかしすべての顧客がそうではない。
一方で、寝具はすべての人が対象。だからすべての人に訴求したいと考えた。
—(以上、引用)—
浅田真央選手をブランドアンバサダーとして起用するのは、ブランド戦略上で大きな意味がありましたが、高岡会長は「これだけでは顧客は買わない」としっかり認識していました。
では、エアウィーヴではどのようにブランド戦略を展開していったのでしょうか?
実はブランドを2軸で考えたところにヒントがあります。
—(以下、引用)—
エアウィーヴのブランディングは「実績を積み重ねる」ことが基本。ではどのように行ったか?
航空会社のファーストクラスで使ってもらったのは、ブランディング上、とても大きな意味があった。
航空会社のファーストクラスは、誰もが「すごく高い」と知っている。そして飛行機に乗ると、降りるときに必ずファーストクラスを通るので、誰もが「ああ、いつも飛行機に乗って通るあのファーストクラスで、真央ちゃんが使っているエアウィーヴを使っているのか」と連想できる。
つまり、自分よりもはるかに遠いところにある真央ちゃんよりも、ちょっと近いところにエアウィーヴを置けたということだ。
このように、ブランドでは、「認知性」だけでなく、「自分との関係性」も重要だ。
つまり、顧客に近いところにエアウィーヴを置いていくことが、「関係性」を訴求する上で必要ということ。
さらにリッツカールトンや加賀屋の特別室などの超一流ホテル・旅館でも、エアウィーヴを使うようなった。
100万円以上するファーストクラスは、普通はなかなか体験できない。しかし5-7万円程度の超高級ホテル・旅館であれば、ちょっと何かあって大きく奮発すれば体験できるかもしれない。
つまり、ファーストクラスよりもさらに関係性が近くなる。
「あ、真央ちゃんも使っているけど、加賀屋さんも使っているのか」と、より近いところで連想いただけるようにする。
このように、認知性が高い世界から、より関係性が近い一流の世界に徐々に置いていくことで、エアウィーヴのブランディングを作っていった。
—(以上、引用)—
このように、ブランドを「関係性」と「認知性」という2つの構造に分割して考え、相乗効果を上げることで、エアウィーヴは着実にブランドを構築していきました。
このように考えると、なぜ浅田真央選手だけでなく、他のスポーツ選手とも契約しているかがわかります。
—(以下、引用)—
さらにエアウィーヴを使っているテニスの錦織圭さんやゴルフの宮里美香さんにも、広告に出ていただいている。
こうすることで、
「真央ちゃんなら別世界だけど、テニスならやったことがある。錦織圭選手も使っているのか」
「私は錦織くんはよく知らないけど、ゴルフはやる。宮里美香さんも使っているのか」
というように、より幅広い人に親近感を持っていただけるようになる。
—(以上、引用)—
このように、本連載の第1回の最後でご紹介したように、エアウィーヴでは、私が提唱している「お客様が買う理由」を作るフレームワーク、つまり
(1)自社の強みを徹底的に考え、
(2)ターゲット顧客、その課題、解決策を仮説として立てて、
(3)愚直なまでに仮説検証を繰り返す
を継続して実践され、この蓄積によって、その延長線上で「一流」のブランド作りに成功しているのです。
そして一流のブランド作りのために、「どの顧客にどの順番で使ってもらい、どの事例を、情報発信するか」を、「『認知性』と『関係性』にわけて」考え抜いているのです。
ここからも、顧客について考え抜くことがとても重要なことがわかります。
では、全体の事業戦略はどのようになっているのでしょうか?
実はそこには、本連載の中にも出てきた高岡会長の懐刀でもある田所邦雄氏(現・エアウィーヴ取締役)が重要な役割を担っておられます。
そこで次回は高岡会長のインタビューから切り替えて、田所氏の講演内容からエアウィーヴの戦略を見てみたいと思います。
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(2) 200枚の試作品は大好評。そして初年度4000万円を投入。しかし売れたのは1000万円