これまで日本企業は残業を減らす努力を十分にしてきたとは言えませんでした。
2008年2月にgooリサーチ(現・NTTコムリサーチ)が行った「残業と仕事の効率化に関する意識調査」という調査によると、「どのようなツールを用いて仕事の効率化を実現しているか」という質問に対して、66%が「特に何もしていない」と回答しています。
そして2週間前に当ブログで書いた「良くなってきた景気に、残業時間増で対応している日本企業」で紹介したように、「好景気で仕事が増えると残業で対応」、「不景気で仕事が減ると残業が減る」、というパターンを繰り返してきました。
景気判断の指標となる日銀短観上の景気の山と谷は、残業時間の山と谷と、このように見事に一致しています。
「景気が良くなると残業が増える」というのは、雇用慣習を含めて、日本企業の構造的な問題でもあります。
しかし一方で、労働生産性が国際的に大きく見劣りするというデータもあります。
2015/4/9に日本経済新聞に掲載された記事「労働生産性 仕事の効率、世界に見劣り」によると、2013年の1時間あたりの労働生産性は日本は41.3ドル。OECD(経済協力開発機構)加盟34ヶ国中20位。トップのノルウェイ87ドルの半分以下、4位の米国66ドルの2/3以下です。
雇用慣習はなかなか変えられませんが、生産性向上の余地はまだまだ大きいですし、努力はすべきですよね。
最近になって、取り組む日本企業も増えてきました。
3週間前に当ブログで書いたエントリー『「残業=カッコいい」から、「残業=カッコ悪い」の時代へ』で紹介したように、システム開発大手のSCSKでは、残業時間を短くした人の方が得をする人事制度を7月に導入します。
また、2015/4/9の日本経済新聞の記事「残業削減へ朝型勤務 東ソー、早朝は割増金 東京海上、17時半に退社 政府が助成金検討」では、このような各社事例を紹介しています。
東ソー:早朝勤務に対し割増金の支給を開始。さらに一部職場を除き午後8時以降の残業を原則禁止
コニカミノルタ:午後8時以降の残業は申請を求める
サトーホールディングス:「完全フレックスタイム制」開始。午後8時以降の残業は原則禁止。導入後の昨年12月の総残業時間は例年より3割減。
東京海上日動火災保険:若手・中堅社員を対象に週1回の頻度で午後5時半の退社を求める制度を導入。
伊藤忠商事:午後8時以降の残業を原則禁止し、早朝の時間外手当割増率を25%から50%に。
ユニ・チャーム:始業・就業時間を1時間繰り上げ (通年サマータイム)
このように、生産性向上が必要と認識している企業は、既に取り組みを始めています。
そして労働生産性を向上するヒントの1つが、朝シフトです。
上記の企業の多くが、「夜に残業する」という常識を「朝に残業する」という常識に変える挑戦を行っておられるのも、偶然ではありません。上記記事でも、政府が経団連や日本商工会議所、全国中小企業団体中央会に取り組みを要請する方針であることを紹介しています。
日本企業の労働時間が長い1つの要因が、「付き合い残業」。企業としては「付き合い残業は止めましょう」と言うだけでなく、それを抑制し具体的に生産性を上げる施策が必要です。
4年前に出版した拙著「残業3時間を朝30分で片づける仕事術」でも、朝シフトを提唱し、個人で出来る具体的な取り組みをご紹介しました。
私自身も、2年前に会社員を卒業しましたが、今も変わらず朝シフトを続けており、その生産性の高さは実感しています。
本書が出版されてから4年が経った今も、朝シフトや時間管理に関する取材を数多くいただくのも、企業の問題意識を反映していると思います。
個人の生産性向上は、企業の競争力強化に繋がり、その結果、企業は成長していく筈です。
今後、このような取り組みを始める企業が増えることを願っています。