世に戦略の本は多いが、実は戦略を定義した本はほとんどない


今回、「戦略プロフェッショナルの心得」を書いた際に、ある方から次のようなアドバイスをいただきました。

「世の中に戦略の本は沢山ある。
しかし戦略をしっかり定義しているのは、伊丹敬之先生の本があるくらいで、戦略を明確に定義した本はほとんど存在しない。
だから、永井さんの本では、永井さんなりの戦略を定義して下さい。」

実際、自宅にある戦略関係の本を一通りチェックしてみたところ、確かに戦略について明確に定義した本は、伊丹先生の本以外にはありませんでした。

「マーケティング」について定義した本は、あるのですけどね。

ということで、今回の本では、第8章「戦略とは何か?」で、以下のように戦略を定義させていただきました。

—(以下、第8章より抜粋)—

・戦略は、策定するだけでなく実行しなければ意味がありません。

・戦略を策定する段階では、さまざまな事業環境や自社の能力を考慮して、ターゲットとする顧客を定義し、その顧客に提供する価値を社内外のあらゆる関係者との協業を通じて最大化する方法を定めます。

・実行の段階では、ますます速くなる市場やビジネス環境の変化に常に対応し続けるために、戦略の策定と戦略の実行を常に密接に連携させあって、仮説検証プロセスを通じて継続的な変革を実現していきます。

 

以上を踏まえて、本書では「戦略」を次のように定義します。

 

戦略とは、さまざまな事業環境や自社の能力を考慮して、ターゲットとする顧客を定義し、その顧客に提供する価値を社内外のあらゆる関係者との協業を通じて最大化する方法を策定した上で、ますます速くなる市場やビジネス環境の変化に常に対応し続けるために、戦略の策定と戦略の実行を常に密接に連携させあって、仮説検証プロセスを通じて継続的な変革を実現していく、一連のプロセスである。

—(以上、第8章より抜粋)—

実際、どんなにかっこいい戦略を作っても、実行困難だったり、実行する人のハラにおちていないと、その戦略は何も価値がありません。

まったく、戦略は策定するだけでは不十分で、実践を伴い結果を出して、はじめて戦略の価値が出てくる、というのが実感です。

ビジネスの現場で事業戦略に関わっている立場で、ささやかながら、アカデミックな戦略本とは違った視点での提言ができたのではないか、と思っております。

(林さんのブログに書かせていただいたコメントを書き直してみました)

世に戦略の本は多いが、実は戦略を定義した本はほとんどない」への6件のフィードバック

  1. 2日続けてです。
    ワシは戦略と戦術は分けて考えています。
    戦略とは、
    ・何と(誰と)戦うの?
    ・どうして戦うの?
    ・勝てそうな理由は?
    ・勝ちの基準は何?
    ・勝って何を得るつもり?
    ・勝って得た益をどこに分配するの?
    の定義ではないかと。
    どうしたら勝てるか?が戦術で、勝つためにしないとならないことが作戦なのではないかと思っています。

  2. ヨシムラさん、
    二日続けてありがとうございます。
    全くおっしゃる通りですね。
    強いて加えると、「そもそも戦うのか?」を考えるのも戦略かもしれません。ブルーオーシャンではありませんが、「戦わずして勝つ」が理想なので。

  3. 戦略の定義に関しては、4分の1ぐらいしか読んでいないですけど、「戦争論」(当然、クラウゼビッツ著の)でかなり明確に記述されていたと思います。
    > 「戦わずして勝つ」が理想なので。
    孫子ですよね。戦略の本質について記述された書と言えば、孫子に始まると思います。

  4. 永井さん
    トラックバックどうもありがとうございます。
    永井さんの書籍の感想を書いたら、注文レポートを見ると何名の方がAmazonから購入されたみたいです。少しお役にたてて良かったです。。

  5. アロハさん、
    コメントありがとうございました。
    おっしゃる通り、確かに「戦争論」、ありましたね。
    今回のブログで書いた「戦略」は、「ビジネス戦略」という意味で書かせていただきました。説明不十分で失礼いたしました。
    孫子の考え方は、現代のビジネスにも通じるモノがあると思います。

  6. 林さん、
    拙書をご紹介下さり、ありがとうございました。
    林さんのブログを毎日かかれておられるご努力にはいつも脱帽しております。

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