本日(2007/1/4)の日本経済新聞に、塩野七生さんのインタビューが掲載されています。指導者としての政治家について語ったものですが、マーケティングの観点でも非常に示唆に富んでいますので、引用します。
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マキアヴェッリは「民衆は抽象的な問いかけをされると間違える場合があるけれども、具体的に示されれば相当な程度に正確な判断を下す」と言っています。
—(以上、引用)—
「民衆」を「市場」や「潜在顧客」と読みかえれば、まさにマーケティング・コミュニケーションの要諦そのものですね。
—(以下、引用)—
ある政治家が「政治家は有権者のニーズをくみ上げて….」と言うから、私は「有権者は自分のニーズをはっきりと分かっていない。あなたはそれを喚起すればいい」と言ったのです。問題を指摘して、有権者が「そういわれればそうだ」と反応してくれれば勝ち。
—(以上、引用)—
これも同様で、「政治家」を「企業」、「有権者」を「市場」「潜在顧客」「ユーザー」と詠みかえれば、商品マーケティング戦略です。
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私は一度だけ小泉さんにお会いしたことがあります。彼は私が書いた「マキアヴェッリ語録」の最後の「天国に行くのに最も有効な方法は、地獄へ行く道を熟知することである」という言葉が一番好きだと言いました。
—(以上、引用)—
常に最悪の事態と撤退戦略(exit strategy)を想定する、リスク管理の考え方ですね。
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私は日本の政治家はテレビの使い方が変だと思います。テレビの前で話すときは、カメラの向こうに何千万人がいると考えるのではなく、たった一人を相手にしていると考えればいいのです。私は自分の本の読者は複数ではなく単数だと思っています。一人に分かってもらいたいという思いで書いている。そこを小泉さんは分かっていた。一億人を前にしていると思えば「俺は死んでもいい」なんて言えますか。
—(以上、引用)—
これも、マーケティングでは必要なことだと思います。マーケティング・コミュニケーションではマスで考え勝ちですが、ある具体的なお客様を想定し、そのお客様に語りかける、という方法がますます重要になっているように思います。
塩野七生さんは、「ローマ人の物語」全15巻の執筆に15年間を費やされました。大作ですが、読む価値は非常に大きいように感じました。
送らばせながら、ご挨拶申し上げます。
hnを統一致しました故、今後とも拝読させていただく所存です。
閑話休題
学識者側の視点から鑑みれば
塩野女史はいわゆる戦記モノのヒーローを主軸に自分の主観のみで史実を描写しすぎるとの見解を良く耳にします。
要は「為政者好きな作家が書いた策士的な史実のみを物語として描く故、実際の史実とは偏向する」との評価を彼女は有識者から良く指摘されるようですが…
私にとっての塩野女史はいわゆる戦術と支配、そして栄枯盛衰を描かくことのできるプロであると確信しております。少なくともサーガとは異なる、史実の中にある人間的な駆け引きを非常に旨く上梓なされておられてます。おっしゃるとおり その営みの中にこそマーケティング的な「仕掛け」が揶揄されており、生々しい「理」と「戦術」を感じ入るように思われます。ただし、あくまでも比喩的な心得として読まれた方が、よりローマ記(!)を楽しめるのではないかしらんと…手前勝手に思う所存です。
新年早々 長文投稿、失礼いたしました(^^)
重複投稿の非礼をお詫び申し上げます。
上記一行目、「送らばせ」×
正しくは「遅らばせ」でございます…新年早々失礼致しました…
山本祐実さん、
コメントを下さり、ありがとうございました。
私が塩野さんのお話に接したのは、この日経の記事が初めてでしたので、頂戴したご意見、大変に参考になります。
おっしゃるように、伝記は比喩的表現として現在の自分が置かれた状況にどのように活かしていくか、といった視点で読むと、面白さも倍増するように感じます。
これからもよろしくお願いいたします。