最近のコンパクトデジカメも1000万画素を越え、数字の上ではデジタル一眼レフと同等の画素数を持つようになってきました。
写真で作品を撮ろうと考えている人達にとって、実際のところ、コンパクトデジカメやデジカメ一眼が昔の銀塩フィルムと比較してどの程度の画質を持っているのか、気になるところです。
そこで、実際に調べてみました。
被写体として使ったのは、お台場にあるフジテレビの社屋で、深夜に撮影しました。
昨年同じ日に書いたエントリー、「長時間露光環境における、銀塩フィルムとデジカメの描写性能の違い」にもあるように、銀塩フィルムの想定使用範囲を超えた環境です。しかし、ある程度の限界を超えた条件は、解像度を把握するためには適切である、という見方も出来ます。
使用機材は下記の通りです。
銀塩フィルム
・Canon EOS-1RS、EF 28-70/2.8L
・コダクロームプロフェッショナル64で撮影、Nikon CoolScan IV ED(*)でデジタル化
・コメント:35mmフィルムでのベストな画質を得られるように考慮
デジタル一眼レフ
・Canon EOS-1Ds、EF 28-70/2.8L、RAWデータ撮影 (ISO 100)
・イメージセンサーは1110万画素、CMOS 35mmフィルムフルサイズ(35.8×23.8mm)
・コメント:5年前の2002年11月発売当時は、最高画質デジカメ。現時点でも普及タイプデジカメ一眼と比べて全く遜色はありません
コンパクトデジカメ
・PowerShot G9、RAWデータで撮影 (ISO 80)
・イメージセンサーは1210万画素、1/1.7インチCCD
・コメント:2007年9月発売の製品 (発売当時の価格は約6万円)。現時点では多くのメディアでコンパクトデジカメの中では最高評価を受けています
結果は本エントリーの最後に掲載しています。(文字と画像を混在して掲載すると配列が崩れるため)
尚、RAWデータで撮影したものについては、オリジナル画像と補正画像の両方を掲載しました。
このようにしてピクセル等倍で並べて見ると、コンパクトデジカメの画質は、いまや銀塩フィルムを凌駕している、と言ってもよいのではないでしょうか?
一方で、デジタル一眼レフとコンパクトデジカメでは、同じ画素数でも画質の差は歴然です。
ちなみに、PowerShot G9のイメージセンサーは1210万画素ですが、イメージセンサーのサイズは通常のコンパクトデジカメと同等の1/1.7インチCCDなので、12mmx9mmで面積は108平方mm。
一方のEOS-1Dsのイメージセンサーは1110万画素ですが、CMOS 35mmフィルムフルサイズ(35.8×23.8mm)で面積は852平方mm。
ということで、EOS-1Dsのイメージセンサーの面積は、PowerShot G9の約8倍ということになります。
普及版のデジカメ一眼でも、イメージセンサーのサイズは、EOS系の22.2×14.8mm(329平方mm)や、Nikon・Sony系の23.6×15.8mm(373平方mm)等は、PowerShot G9の3倍の面積です。
作例で見ましたように、同じ画素数でも、デジカメ一眼がコンパクトデジカメよりも画質に優れている理由は、このイメージセンサーの大きさの違いにあるのでしょう。
一方で、コンパクトデジカメには携帯性という圧倒的に有利な点もありますので、これを活かして機動性のある撮影を行うこともできます。実際私は、特に高画質が必要ではない作品については、最近このPowerShot G9で様々な作品を撮り始めています。
このように、画質の特性を中心に考えつつ、各種デジカメの特性を把握した上で、デジカメを使い分けていくとよいのではないでしょうか?
(*) 2008/1/5 20:45訂正:当初Nikon CoolScan IIIと記載していましたが、正しくはCoolScan IV EDでした。訂正します。
2008/1/7 22:00 追記:今回の比較は、銀塩フィルムをフィルムスキャナーで読み込むことによるアナログ⇒デジタル変換に加え、本文にも記述の通り、相反則不軌が起きる条件で比較しているので、銀塩フィルムに不利な条件になっています。後日、機会がありましたら昼間の写真で、銀塩フィルムとデジカメのプリント同士の比較を行いたいと考えております。
サンプル画像
「全体」と書かれているのは全体画像、「等倍」となっているのは右上箇所のピクセル等倍画像です。
また、「RAW」と書かれているのはRAW画像を無補正でJPEG形式にしたもの、「補正」と書かれているものはRAW画像に対して色温度などの補正を行ったものです。
銀塩の方なのですが
スキャンしてからデジタルズームしたのか
銀塩でズームしてからスキャンするのかの差が殺せていない気がします。
銀塩の画素数は一般的なフィルムでも2000万画素以上といわれていますが、Nikon CoolScan IIIのスキャンの有効画素数はそれよりも低く1000万画素程度だと思います。
したがって、スキャン後のズーム(等倍)の写真については、銀塩の実力ではないと思います。
等倍の方はズームしてポジを作った後に、スキャナーで読み込まないとダメではないでしょうか?
違っていたらすみません。
CoolScanIIIは2世代前、年代にして10年前の機種なので、スキャンした画像が現在のデジカメを比較しても劣るのは当たり前かと思うのですが。
心は萌えさん、tmatsuさん、コメントありがとうございました。
まずはお礼を。ご指摘いただいて、重大な間違いを発見しました。
私が使用していたのはNikon CoolScan IV EDでした。以前、IIIからIVに買い換えたのですが、間違えて古い機種の名前を書いてしまいました。
お詫びとともに、訂正いたします。ありがとうございました。
画素数の議論ですが、本エントリーのPowerSot G9(1200万画素)と1Ds(1110万画素)の画質比較でも触れましたように、画素数の多寡で画質を比較する場合、様々な条件を同じにしないと、単純に数字だけで比較するのは危険であると思っております。
デジタル同士の場合でも画素数の単純比較はできないので、アナログの銀塩フィルムとデジタルのデジカメを画素数で単純に画質比較を行うのは難しそうですね。
一例として、「銀塩の画素数は一般的なフィルムで2000万画素以上」と言った場合、その1画素の情報量はどの程度なのか、という考察が必要だと思います。
ちなみに、ご存知の通り、多くのデジカメの場合は24bitフルカラー/RGB各色8bit、さらに1Dsの場合はRAWで12bitですし、CoolScan IV EDの場合はスキャンニングの有効解像度は2900dpiで、入力はRGB各色12bitです。(古いCoolScan IIIでも2700dpi、RGB各色10 bitです)
デジカメやフィルムスキャナーの場合は、1画素で非常に豊かな階調が表現できることになります。
銀塩フィルムで、1画素あたり24bitフルカラーを表現できるデジカメと比較する場合は、1678万階調(=2の24乗)を表現できる粒子の集まりが、24mmx36mmのフィルム全体でいくつあるか、という点を考察する必要があるように思います。(RGB各色12bitの場合は、さらに豊かな階調になります)
検索してみたところ、銀塩フィルムの有効画素数について「2000万画素以上」「1000-3000万画素相当」といったように議論している様々なサイトはありましたが、その場合に想定している1画素数の情報量について併せて論拠を立てているサイトは見つかりませんでした。
心は萌えさんの方でもし分かりましたら、ご教授いただけると幸いです。
よろしくお願いいたします。
記事拝見ましたが、この比べ方では全く比較にならないと思います。
どれだけ高性能になろうともフィルムをスキャンする課程での劣化は必ずありますのでこそ時点で銀塩が不利です。
写真であるからにはプリントした状態で比較するのが道理だと思います。
全ての写真をA3程度のサイズで現像した後スキャナーで取り込む方が比較になると思うのですがどうでしょうか?
koujiさん、
「プリントした状態で比較すべき」というご指摘、ありがとうございます。
確かにご指摘の通り、この比較では銀塩フィルムでアナログ⇒デジタル変換している分、不利かもしれません。
手元にある銀塩フィルム・サンプルのプリントを見た限りでは、本エントリーの「銀塩フィルム等倍」の画質と非常に近いので、問題は、デジカメ・サンプルのプリントがこのエントリーに掲載した画像からどの程度劣化されてプリントされるか、という点になるかと思います。
ただ、デジカメの大伸ばししたプリントとフラットヘッドスキャナーが手元にないので、後日機会がありましたら、ということにさせていただければと思います。よろしくお願いいたします。
こうゆうのは物理の分かってる人間に実験させないと。
ソフト屋が馬鹿だという見本のような実験ですね。
http://d.hatena.ne.jp/populaire/20080106/p1
デジタルカメラの画質がフィルムカメラを超えた?
トラックバック先(永井孝尚のMM21)によれば「コンパクトデジカメの画質は、いまや銀塩フィルムを凌駕している、と言ってもよいのではないでしょうか?」とされています。なるほど、これは引かれた画像を見ればそう思えてもおかしくありません。…
プリントした銀塩とディスプレイ表示のデジカメで比べてみるとか
今回のようにデジデジで比較するとか、両方プリントして比較するとか
最終出力をいろいろ組み合わせて比べてみたいですね。
用途は色々あるわけですし。
moさん、
コメントを下さり、ありがとうございました。
おっしゃる通り、色々な組み合わせで比較したものを並べてみると、メディアの特性も分かりますし、面白いですね。
それと、皆様ご指摘の通り、アナログ⇒デジタル変換に加えて、本文にも書きました通り相反則不軌が起きる条件で比較しているので、今回の比較は銀塩フィルムに不利な条件になっていますので、その旨を本文に付記させていただきました。
この実験だと、空が塗り絵の様になってしまったデジタルは低画質、という結果に見えるのですが。。。
G9の1/1.7CCDのサイズは、書かれているほど大きくないと思いますが?
フィルムを露出不足で使えば性能は劇的に低下します。とくにコダクロームは粒状が荒れてしまいます。デジでいえばISO3200で撮影したのかと思うほどです。このテストは、長時間露光の場合のデジの優位性を証明したものではありえても、適正露光の場合のそれを証明したものではありません。
それに他の方がしゃべっておられますように、家庭用スキャナでスキャンすれば画質は相当劣化します。ポジ投影象とスキャン像を比べれば明瞭です。ニコンのクールスキャンは4000dpi解像度ミリ80本ですが、フィルムの限界性能と近いので問題ないとは言えません。スキャン時の劣化は撮影時の劣化に直列に加わるからです。すなわち、スキャン時にフィルムの情報をほぼ劣化なしに再現するためには、スキャナの能力はフィルムの能力を数字上大きく上回らなければなりません。
実際に、ぼくの使っている6400dPiスキャナでは画質ははっきり劣化します。
そのため歴史民俗学博物館では15年も前に1万dpiのスキャナを使用していました。いまなら2万dpi6億画素機を使っていることでしょう。
デジタルの1画素は8bit諧調3色です。すなわち1677万色。仕様上それ以上ではありえません。(確かに16bit諧調で印刷できる機械もあるのはわかっています。でもそれは、うちの出入りの印刷屋=一部上場、が入れたと威張っていたぐらいの製品です。日本に3台しかないとか。家庭でいやプロだって買えるとはとてもとは思えません。リンホフ原版のおおのばし印刷を置いていきましたが、素晴らしい絵でした。)
ポジだろうとネガだろうとフィルムは16bitどころか無段階の諧調です。それにADOBE‐RGBなんて制約もありません。
ぼくはデジのほうが圧倒的にいいとは言い切れないと思います。ぼくは当面フィルムで行くこととし、写真を再開しました。コンタックスのレンズを買いあさっています。
この手の試験をする場合、現行で一番いいスキャナを使用すること。クールスキャン4は当時のフラットベッドスキャナ上位機とほぼ同品質と言ってよく、当時でも最高品質とはいえない。(もしフィルムとして最高性能を引き出すと公称するなら、ドラムスキャナか最低でもFlexTightを使用すること。)
当方がKM投影像(適正露出)をチェックした結果、最低でも5000万画素相当となる。Epson GT-X970のスキャン結果を考察しても、2500万画素相当となる。
(デジカメCCDからえられる情報量は公称画素数の1/3しかないが、補間技術の部分でくっきりはっきりの画質を作り出している。これは情報量が多いのとは別の話で、見栄えを化粧しているにすぎない。スキャナは画素数に相当する情報量がある。)