ビジネスパーソンの出版戦略:大木豊成さんインタビュー(その3)「企画書を書こう!」

オルタナブロガーの大木豊成さんとのインタビュー、第1回目第2回目に続き、今回は最終回となる第3回目です。

 

■企画書を書こう!

N 「本を出したいと思っているビジネスマンに、大木さんからアドバイスはありますか?」

O 
「二つありますね。概念的なことと、テクニカルなことです。まず概念的なことですが、ターゲット読者を明確にすることですね。そのためには、ターゲット読者のペルソナを決めることですね。例えば、『30歳で、係長や主任昇進試験直前で、管理職の心得を学びたいと思っている』といった感じですね。これがスタートポイントだと思います」

N 「最初にターゲットを具体的に設定するのは、マーケティングそのものですね」

O 「全くその通りですね。次に、そのターゲット読者に対して、自分が伝えたいことを明確にすることです。例えば『30歳過ぎで、フラフラしている人間に説教したい』というのでもいいと思います」

N 
「二つ目のテクニカルなこととは何でしょうか?」

O 「出版したいと思っているボク達が意外と気がついていないのは、出版社にとって、出版はビジネスということなんです。考えてみると当り前ですね。出版社は出版で儲ける必要があるんですよ」

N 「まったくその通りですね」

O 「では出版社がどうやっているかというと、編集者が作った企画を、出版社の編集企画会議にかけて、ビジネス的にペイするかを詳細に検討していくんですよね。ある出版社では、実際に出版される本の10倍の企画があがってくるそうです」

N 「10倍ですか!」

O 「言い換えると、企画会議を通過するのは10本に1本しかないということです。だからその企画会議を通すために、編集者は必死に考える訳です。ボク達は、その編集者の人達が企画を通しやすいようにすることが大切なんですよ」

N 「なるほど、そう考えるとやることが見えてきそうですね」

O 「だからまずは企画書を作ってみることです。企画書を作っておくと、編集者の人と話し合っていくうちに企画自体が成長していきます。真正面に編集者と話しをする時には、企画書を作っていないと話しに乗ってくれないんですよ」

N 「うーん、なるほど。確かに、私も最初の本を出す数年前に、パーティで知合った編集者の方に『出版したいんですけどね』とお話ししたことがあります。そこでどんな本を出したいのかを尋ねられた時に、『マーケティングとか、写真とか、色々とネタがありますし、書けますよ』と答えたんですよね。でも、今から考えると、相手は明らかに困っていました」

O 「そうなんですよね。ボクも知合いに編集者を紹介して欲しいと言われることがあるんですけど、『まずは、企画書を書くといいですよ』って言っています。企画書がないと、そもそも編集者は話しに乗ってこれないですよね。出版社もビジネスですから」

N 「本を出したことがない人からは、編集者とのコンタクトがなかなかなくって困っている、ということも聞くことがあります。それについては何かアドバイスありますか?」

O 「福助の経営立て直しで社長をなさっていた藤巻幸夫さんとお話しをする機会があったんですけど、藤巻さんは若い頃、『なんとなく、クリスタル』を書かれた田中康夫さんにどうしても会いたくなったらしいんですよ。それで出版社に手紙を書いたりして、色々なツテを使って実際に会ったらしいんですよね。あの人は、会いたいと思ったら、何としても実現するんですよね」

N 「それはまたすごい行動力ですね」

O 「藤巻さんの例は極端かもしれませんが、『自分はどうしてもコレをやりたい』という思いがあれば、ゼロからでもコネクションは作れると思うんですよね。自分の知合いや、知り合いの知り合いで出版した人って、必ずいると思うんです。そういう人達に紹介してもらえば、出版社の編集者とのコネクションって、意外に作れてしまうんですよね。むしろコネを作るよりも、ちゃんとした企画書を作ることが重要です。知り合いや編集者も、企画書がなければ、どうすればいいか困りますよね。だから、ちゃんとそうした努力を続ければ、出版を実現するのは可能だと思います」

 

■わずか20時間で執筆できた理由

N 「大木さんが2冊目の本を書いている時は、どんな感じで書かれていたんでしょうか?」

O 「他のビジネスマンもそうだと思いますが、昼間は仕事に入り込んで書く時間は全くありませんでした。そこでメリハリを付けるために、毎朝4時40分に起きて、1時間書く、といったように、本を書く時間を決めました。週5日書くとして、1週間で5時間使えますよね」

N 「かなり集中して書いたんですね。目次を作るまで3ヶ月掛かったということですが、実際に書いた期間はどの位ですか?」

O 「1ヶ月間です」

N 「1ヶ月!合計20時間というのは早いですね。まさに「『超』速断の仕事術」ですね」

O 「3ヶ月かけて目次を作って、各章の重複を見たり、各章で何を書くのかかなり詳細に決めたんですよね。編集者から、『目次を作るのは大変だけど、これを作れば中身は1ヶ月で書けますよ』って言われたんですよ」

N 「それが実際にそうなったということですね」

O 「まぁ、編集者と1ヶ月という執筆スケジュールを決めてしまったので、合わせざるを得なかったという面もあるんですけどね。(笑) 企画でしっかりデザインしておけば、執筆段階で書いていくだけなんですよね」

N 
「なるほど、ちょうどシステムの開発で、要件定義と詳細設計をしっかりやっておけば、プログラムに落とす段階が容易になって、手戻りもなくなるのと同じですね」

O 「まさに全く同じですね。あと、各章を仕上げた順に、編集者に送ってチェックしていただきました。全部書いてから送っていたら、もっと時間がかかっていたかもしれませんね」

N 「ところで、出版で犠牲になったものはありますか?」

O「犠牲になったものですか?うーん……。特にないですね。強いて言うと、本を書いている最中は、かみさんや子供達に『お父さんはいつもパソコン見ているね』って言われていました。本のあとがきにも書いたんですけど、家族にはとても感謝していますね」

N 「パソコンをいつも見ているのって、もしかしたら本を書いた後もそうなんじゃないですか?」

O 「あ、考えてみたらそうですね。まぁ、最近はiPhoneばかり使っているので、『パソコンばかり見ているね』が『iPhoneばかり見ているね』に変わりましたけどね」

N 「やはり家族の協力がないと、ビジネスマンが本を書くのは難しいということですね。大木さんからお話しをお伺いして、まさに出版はプロジェクト・マネージメントだということがよく分りました。そのためには企画がとても大切ということですね。今日は本当にありがとうございました」

 

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■ビジネスパーソンの出版戦略:大木豊成さんインタビュー(その2)「実名ブログを書くと、出版する力がつけられる」

 



ビジネスパーソンの出版戦略:大木豊成さんインタビュー(その2)「実名ブログを書くと、出版する力がつけられる」

オルタナブロガーの大木豊成さんとのインタビュー、第1回目に続き第2回目です。

■伝えたかったのは、ノウハウではなく心構え

N 「大木さんが出版された本は、どんな内容にしようと思われましたか?」

O 「ライフハック的な本にはしたくなかったんですよ。1冊目の本もそうですが、『道具やノウハウだけを覚えてよしとするようなビジネスマンには、なって欲しくない』という想いがありました。ビジネスマンは仕事では腹を括らないとダメですよね。そんなことも伝えたいな、と思いました」

N 「その点は、1冊目と同じ考え方ですね」

O 「社長が何か言うと、それをそのままスルーパスで部下に伝えるマネージャーって、世の中で多いと思うんです。でも、部下は社長の言葉をそのまま受けてしまうわけで、困るんですよね。本来、マネージャーは腹を括って、社長の言葉をしっかり受け止めて、自分の言葉で部下に伝えるべきだと思います」

N 「確かに、そのように楽な方向に流されがちなマネージメントは多いように感じますね」

O 「ある方が、『この本は仕事術の本ではなくって、心構えの本だ』という書評を書いていただきました。ありがたかったですね。分っていただいたんだな、と思って」

 

■出版はまさに「最強の名刺」だった

N 「ところで、そもそも大木さんが本を書きたいと思われたきっかけは何ですか?」

O 「2001年にYahoo! BB立ち上げに携わっていた時に、『こんなに面白いこと、本になるよなぁ』と思っていたんですよね。いつかは本を書きたいと思っていました。そのまま書いてしまうと、企業秘密とかあるんですけど、エッセンスは、他の人達にとっても参考になると思ったんですよね」

N 「なるほど、そこで書きたいというきっかけを持ったんですね」

O 「結局、2冊目の出版は、2008年にソフトバンクを退職して、独立した時でした。本は必ず名刺や看板代わりになると思っていましたので、退職する時には必ず本を出そうと思っていました。そこで退職する直前に、広報に『ソフトバンクの経験を本に書きたいんですけど』と相談したんですよ。広報はいい宣伝になる、と協力的でしたね。私の原稿、孫社長も目を通しているかもしれませんね」

N 「実際に、本を出してみて、いかがですか?」

O 「両親が『あのダイヤモンド社から本を出した』ということでとても喜んでくれたのは嬉しかったですね。78歳の母親も、付箋を貼って読んでくれました。感激でしたね」

N 「いいお話しですね」

O 「今は独立して人事部門や経営企画部門のコンサルティングの仕事をしていますが、ダイヤモンド社からソフトバンクでの経験を本にして出している、というのは、信頼をいただいて仕事を獲得するのにとても役立ちました。その点では、ソフトバンクにすごく感謝していますね」

N 「実際の経験を本にまとめるのは、とてもいいですね」

O 「口頭で『Yahoo! BBの立ち上げをやっていました』とお話しすると信頼していただけるんです。でも、本をお渡しすると、読んでいただいた後に『大変なことをやっていたんですね!』って言われるんですよ。『孫社長ってどんな人なんですか?』という質問をいただくこともあります。口頭で説明する場合と比べて、受ける印象は全く違うんですね」

N 「本が色々と語ってくれますからね」

O 「東証一部に上場している数千人規模の社長さんにお会いするときも、本をお渡しするだけで分っていただけるんですよ。社長さんも、『大木さんという人はこんな本を書いていてね』という感じで、部下に説明しやすいんですよね。やっはり独立するためには、本を書くのがいいですね。」

N 「なるほど、コンサルタントにとっては、本当に出版は名刺代わりですね」

O 「コンサルタントとして独立する時には、名刺になる本は必要ですね。まだまだ経営者は50代の方も多いんですよね。電子書籍の時代になってもこのあたりはすぐには変わらないんじゃないかな、と思います」

N 「名刺代わりにしたいということで出版されたということですが、実際に『出版は最強の名刺』だと思いますか?」

O 「『出版は最強の名刺』というのはまさにその通りだと思います。本を渡せば、自分で何も語る必要がないですからね。本には嘘は書けませんし、相手も事実として理解していただけます。ボクについてこれ以上語ってくれるものはありません。実際、初めてのお客さんに会うときなんかは、出張先の書店で自分の本を2、3冊買って、相手に差し上げることもありますね」

 

■実名ブログを書くと、出版する力がつけられる

N 「ブログがきっかけで本の話しが来る方は多いのですが、大木さんが出版するきっかけは、お知合いのご縁で1冊目の共著の本を出して、さらに編集者とのご縁が出来たことでしたよね。他に、出版にあたってブログを書いていて役だったことはありますか?」

O 「ブログを書いていたことが、本を執筆するのにとても役立ちました。ブログを書いていると、頭が整理できるんでしょうね。ブログに書いた内容を直接本に書くことはなかったんですが、本を書いているうちに、『あれはどこかブログに書いていたな』と思い出して、探したりしました。日記を書く習慣があったら、それもまた役だったかもしれませんね」

N 「ブログ自体が、一種のナレッジ・データベースみたいな感じで活用できたということですね」

O 「それと、実名でブログを書いていたのがよかったのかもしれません。匿名で書いていると、もしかしたら仕事での不平・不満も書いていたかもしれないんですよね。でも実名ブログだったし、当事者が読むと分ってしまうこともあり、ブログでは常にポジティブに語っていました。これがあとあとよかったかもしれません。本を書きたいと思う人にとって、実名で書くブログはメリットが大きいですよね」

N 「まだまだ実名で書くのは恐いという人が多いですよね。実名で書くにあたって、配慮していることはありますか?」

O 「実名で書くのが恐いという人は、ネガティブなコメントがついて炎上するんじゃないかって心配していることが多いんですよね。でも、批判的なことを書かなければ炎上はしないんですよね」

N 「なるほど、確かに私もそうですね。私の場合も、もしブログに書く内容で一人でも傷つくようなことがあれば、書かないようにしていますが、今まで炎上したことはないですね。ところで、ブログをやっていて、本を書く力は鍛えられましたか?」

O 「それはありますね。ブログを書いていて2つの点で鍛えられましたね。一つは、整理する力ですね。ダラダラと書くのではなく、どのように書けば相手に伝わるかをすごく考えましたね」

N 「大木さんはほぼ毎日書いていますから、積み重ねがすごいのでしょうね」

O 「あと、2つ目ですけど、実はボクがブログを書き始めた時は、偉そうに『教えよう、伝えよう』と思っていたんですよ。でも、実際に書いていて分ったのは、ブログを読んでいる人はとても多くて、自分よりも詳しい人が必ずいるってことなんです」

N 「それはブログを書いていると、本当に実感しますね」

O 「そして知らないことを教えてくれるんですよ。インターネットなんかでいくら調べても分らないことってあるじゃないですか。例えば、そもそも仮説が立たずに、自分が知らないことって、検索できないですよね。でも、何か書くと、詳しい人が教えてくれるんですよ。そこに気がついたのは大きかったですね。そこで、むしろ『教えてもらおう』という気持ちで書くようになりました。ブログは情報発信といいますけど、どこかで双方向なところがあるんですよね」

N 「確かにブログを書き続けていくと、自然と謙虚になっていきますよね」

O 「そうですね。ブログを書く時は、相手がコメントを付けやすいように書くことを心掛けています。ちゃんと知識がある人が、コメントで反論してくれるのは大変ありがたいですね。でも本を書くにあたって、逆にこうやって分ったことを本では『こうだ』という感じで伝えなくてはいけないので、ブログに書く場合とはちょっと違うのかもしれませんね」

 

(以下、次回の「企画書を書こう!」に続きます)

 

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■ビジネスパーソンの出版戦略:大木豊成さんインタビュー(その1)「企画に3ヶ月かけた2冊目の本」

 

 



2010-08-16 | カテゴリー : 商業出版 | 投稿者 : takahisanagaicom

ビジネスパーソンの出版戦略:大木豊成さんインタビュー(その1)「企画に3ヶ月かけた2冊目の本」

「ビジネスパーソンの出版戦略」インタビューシリーズの続きです。

シリーズその1のライフネット生命保険社長・出口治明さんに続き、シリーズその2として、オルタナブロガーの大木豊成さんとのインタビューをご紹介します。

 

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大木豊成さんは、2008年末に独立されるまで、ソフトバンクで様々なプロジェクトの責任者を歴任されてこられました。現在、独立され、スマートフォン法人導入、及び人事部門や経営企画部門を対象としたコンサルティングを行うイシン株式会社を経営されています。

2008年3月に共著でダイヤモンド社から「ファシリテーターの道具箱」を出版。2009年7月には、ソフトバンク在籍中に孫社長の元で様々なプロジェクトに関わってきたご経験を元に、「ソフトバンク流『超』速断の仕事術」を出版されました。

インタビューから5ヶ月後の2010年7月には、「iPad on Business」(翔泳社)を出版されました。

(インタビュー実施日:2010年2月23日)

 

■初めての共著になる出版で、色々と学びました

永井(以下、N): 「大木さんが初めて書かれた本『ファシリテーターの道具箱』は、共著でしたね。どのようなきっかけで、この本を出されたのでしょうか?」

大木さん(以下、O): 「日本ファシリテーション協会というファシリテーションを学び合うNPOがあって、ボクはここに参加していたんですよね。ある日、ここのメンバーの壇野さん、そして協会元理事の森時彦さんと「ファシリテーションの道具に関する本を書きたいね」という話をしていました。それがきっかけで、森さんが中心になって企画を立て始めました」

N: 「森時彦さんは、この本全体をまとめた方ですね」

O: 「そうです。森さんは『ザ・ファシリテーター』という本を書いたり、色々な会社の経営者を歴任されている方で、この世界の第一人者なんですよね。実は当初、壇野さんは「ファシリテーションのツール(道具)に関する本を書きたい」と言っていて、森さんはさらに『ツールだけを身につけても仕方ない、ということも書きたい』という意見を持っていたんです。みんなで話し合って、『両方を盛り込もう』という話しをしました。それで、日本ファシリテーション協会でビジネス計の分科会を運営していたメンバーにも声をかけ、森さんを中心にしたプロジェクトが立ち上がったんです」

N: 「この本で、どんなことに気をつけられましたか?」

O: 「森さんがおっしゃっていたように、単なる道具箱にしたくなかったですね。企業の経営やビジネスもそうですが、ファシリテーションはツールだけを身につけても役立たないでしょう。だから心得的なものも書きたいな、と思っていました。そこで、『まえがきを厚くしましょう』ということになりました」

N: 「執筆者が10人もいると、なかなかまとまらず、意見が発散したのでは?」

O: 「発散します。(笑) まとまりませんでした。始めてから書き終わるまで結局8ヶ月かかりました。ファシリテーターって、話しを発散させるのが好きな人が多いんですよね」

N: 「それは意外ですね。ファシリテーターって、全体の意見をまとめる役目だと思っていました」

O: 「もちろん、まとめるのも必要なんですけど、話しを発散させてアイディアをどんどんふくらますこともファシリテーターにとっては必要なんですよ。あと、今回のメンバーはお互いに利害関係があるようで実はなくって、対等なんですよ。だから最後まで議論が発散し続けてしまって。アイディアが沢山出たところで、最後は森さんがトップダウンで決めました。どこかで割り切らないといけないんですよね」

N: 「ところで、最初に共著で出版されたのは、何か理由があったのでしょうか?」

O: 「実は、自分一人で書くのが不安だったんですよ。当り前のことですが、本を書いたことがなかったでしょう。最初に森さんの本作りに参加して、とても勉強になりました」

N: 「どんなところが勉強になりましたか?」

O: 「森さんが本を作っていく過程ですね。森さんはみんなで議論させるようにして、どれだけ道具を揃えるかを話し合いました。だから議論が発散したんですが、森さんはその議論で出された道具を次々と分類していました。今から考えると、分類することで目次を作っていたんですよ」

N: 「なるほど、目次ですか。確かに最初の段階では、とても大切ですね」

O: 「本では目次がすごく大切なんですよね。本の全体の構成を決めますから。メンバーはみなツールの中身は分っているので、目次さえ出来てしまえば、あとは書けるんですよね。この本を通じて森さんから教えていただきました。勉強になりましたね」

 

■企画に3ヶ月かけた2冊目の本

N: 「2冊目は大木さん一人での出版ですよね。この本は、どのように出版されたのでしょうか?」

O: 「1冊目をダイヤモンド社から出したので、ダイヤモンド社の編集者の方と繋がりが出来たんです。1冊目を出して手順も分りました。私自身、書いてみたいことがあったので、1冊目の編集者の方に出版について相談しました」

N: 「編集者の方は、どんな反応でしたか?」

O: 「『ソフトバンクの名前を冠するのであれば、多分売れるんじゃないか』ということで始めました。実は当初、プロジェクト・マネージメントの話しを書こうと思っていました。でも、プロジェクト・マネージメントという名前だと、IT系技術書の棚に置かれてしまうんですよね。書きたかったことはそうじゃなくって、ボクがソフトバンクで経験した、事業をプロジェクトとしていかに立ち上げて管理していくか、ということを書きたかったんです」

N: 「なるほど、それが2冊目の『ソフトバンク流『超』速断の仕事術』の出発点だったんですね。どのように作っていったのでしょうか?」

O: 「編集者とのやり取りが始まったんですが、『何を書きたいのか?』、『誰向けに書くのか?』、『どんな内容を発信するのか?』ということを決めていきました。このように話すと簡単なことなんですが、実は深く考え始めると分らなくなってしまうんですよね」

N: 「私もそうでした。その感じ、よく分ります」

O: 「モヤモヤっとしたことを構造化してシンプルにまとめるのって、大変ですよね。なかなか分からなくて、編集者の人と話し合いながら、結局3ヶ月間かかって決めていきました。ここでも目次を作っていきました」

N: 「3ヶ月間かけて、骨子を作ったのですね。私の場合は目次を決めるのに5ヶ月かかりました。まとまったものを見ると簡単に見えるんですけど、そこに至るのは大変ですよね。ところで対象読者はどのように考えたのでしょうか?」

O: 「読んでもらう対象は、転職を考え始める30歳前後、また主任など役職に就いたばかりの年代を考えました。実は、当初は30歳過ぎから40代のミドルマネージメント向けを考えていました。しかし途中で、編集者からR25卒業世代を狙おうという提案をいただき、『対象を20代後半から35歳に対象を下げて欲しい』という依頼があって変更しました。」

N: 「企画を固めた後は、どうされましたか?」

O: 「どこの出版社でも同じなんですが、出版社の企画会議にかけられました。この出版社の場合、企画会議は月に一回なんです。ここにかけられて、『本当に売れるのか』というのを色々な観点でチェックしました」

N: 「私達ビジネスマンは『自分の本を出したい』と思って編集者の人に色々とアプローチするんですけど、実は編集者の人達も、企画会議を通すために真剣に企画を作っているんですよね」

O: 「そうなんですよね。しかも、企画会議を通過しても、トップ通過とボトム通過では、広告費のつけ方も変わってきます。編集者の人とは『トップで通そう!』と話していました。熟練編集者の方が担当して下さったおかげで、一発で通りましたね」

N: 「実はクラウドの本を出された林さんの場合は旬のネタなので、3ヶ月もかけて企画を練ることはできなかったんですよね。一方で大木さんや私の本の場合は、旬のネタではなくってスキルや経験を深掘りする本ですよね」

O: 「そうですね。必ずしも出版のタイミングが勝負ではなくって、既に世の中に沢山ある本の中でいかに差別化するかが必要なんですよね。だから、企画に時間をかけることになるんですね」

 

(以下、次回の「実名ブログを書くと、出版する力がつけられる」に続きます)

 

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■ビジネスパーソンの出版戦略:ライフネット生命社長・出口治明さんインタビュー(その2)「情報は、発信すればするほど、集まってくる」

■ビジネスパーソンの出版戦略:ライフネット生命社長・出口治明さんインタビュー(その3)「個人の出版は、日本の将来のためにもよいことです」

 



2010-08-15 | カテゴリー : 商業出版 | 投稿者 : takahisanagaicom

ビジネスパーソンの出版戦略:ライフネット生命社長・出口治明さんインタビュー(その3)「個人の出版は、日本の将来のためにもよいことです」

ライフネット生命保険・代表取締役社長の出口治明さんのインタビュー、第1回目第2回目に続いて、今回は最終回となる第3回目です。

 

=====

■「ため」にしないこと

D 「それから2番目は『ため』にしない、ということですね。例えば『最強の名刺にしたい』とか、そのことで何かの利を追わないことですね」

N 「まず書きたいことを書く、ということですね」

D 「私はよく『人脈がたくさんある』とびっくりされるんです。普通のサラリーマンなのに、出口さんは異常だとよく言われます。例えば、米国財務長官のガイトナーさん。なんでガイトナーさんと知り合ったかというと、極めて簡単です。彼は29歳頃、1990年頃に赤坂の米国大使館で勤務していました。米国財務省から日本に派遣されていたのです。当時、日本の生保はたくさんお金を持っていて盛んに米国債を買っていました。だから、ガイトナーさんは、生保の外債投資に興味を持ったんだと思います。そこで、ガイトナーさんは、大蔵省に、生命保険会社の経営者か、投資担当の役員に会いたいから、紹介してほしいと頼んだようなんですが、誰も、尻込みして首を縦に振らない。そこで、私に、お鉢がまわってきたのです。まだ、一介の課長でしたが。私は、会いたいと言う人は、決して断らない主義でしたから、ガイトナーさんに会って仲良くなりました。理詰めの考え方をする人で、話が弾みました。カラオケにも、連れて行きました。当時、ガイトナーさんが米国の財務長官になるなんて、誰も思わなかったですよね。」

N 「それはまたすごいお話しですね」

D 「よく『人脈を作る本』というのがありますが、私は全部でたらめだと思いますね。来るものは拒まず、去る者は追わず、という方針で、私は誰とでも会ってきただけです。たくさんの人と会ったから、結果的に人脈ができたんですよね」

N 「確かに、出口さんの講演会で一回だけ名刺交換をさせていただいた私からのインタビューのお願いをこのように引き受けていただいて、本当に驚きました」

D 「私は30歳で東京に来てから、声が掛かるお座敷は全部受けようと考えて、その通りやってきましたから、人脈は飲んだ回数に比例すると思ったらいいのではないでしょうか。ただ、1度も、人脈を作ろうと思って飲んだことはないですね。」

N 「人のご縁というのはそのようなものなのでしょうね」

D 「だから本も同じですよね。自分で書きたいことがあったら、書くべきです。自分の利益にしようと思って本を書くと、どこかに『いやらしさ』が出ます。人脈も同じですよね。自分の利益を図ろうと思って人脈を作ろうとすると、『あ、この人は自分の利益のために近づいてきているんだな』と思うし、そういうのは人脈にはならないでしょう。だから、私は本を書くのも人脈と同じで、書きたいことがあるから書くべきだし、何か自分で得ることがあるから毎日人と会うのだし、それが結果的に、書いた本が最強の名刺になることもあるし、人脈になる場合もあります。でもそれは結果論であって、神様しか分らないですよね。そういうことを狙って、本を書いたり、人と会っても、ロクな事にはならない、というのが私の基本的な考えです」

N 「今日はいいお話しを伺いました」

D 「いえいえ、私はどなたに対しても思ったことしか言いませんから」

 

■個人の出版は、日本の将来のためにもよいことです

D 「よく『日本には成長戦略が必要』と言われますが、私は『成長』という言葉は、馬鹿げていると思います」

N 「政府やマスコミは、『成長戦略が必要』と言っていますね」

D 「GDPは、単純化すれば、人口 × 生産性 ですよね。でも日本の人口は大幅に減少していきます。だからGDPを増やすという発想ではダメなんです。大事なのは競争力です。必要なことは、政府の競争力、企業の競争力、大学の競争力、個人の競争力を上げることです。豊かな生活をしようとしたら、まず、個々のセクターの競争力をつけることです。競争に負けたら貧しい生活をするしかないんですよ」

N 「そのためには、まずは個人の競争力強化ですね」

D 「私は本を出すということは、個人の競争力強化だと思います。だから、今回の永井さんの企画がいいと思ってインタビューをお引き受けしました」

N 「ありがとうございます」

D 「個人の競争力を高めるには、まず自分が知っていることを情報発信することです。『自分はここまで知っている』と宣言するということは、『お前はここまでしか知らないのか?』という批判を受け止める覚悟が必要になります。でも、批判を受けたら、学び直せばいいだけですね。この結果、競争力を高めることができるのではないでしょうか。まず、『競争したい』という意思表示をすることが必要なんですよ」

N 「本を書くことは、まさにそうですね」

D 「『自分を開く』ということは、おそらく『競争する』ということと同義です。素晴らしいことですよね。個人を強くしなければ日本は強くなりません。日本の将来にとっても、本を書くということは、個人の競争力を高めて日本を強くすることに繋がると思います。そして、本を書く場合は、書きたいことを書くべきです。その結果何かを得たいとかいう邪心があったらその本は売れないと思います」

N 「本を書くことが、個人の力を強くすると言うことですね」

D 「東京大学総長だった小宮山先生は『自分は世界の大学のトップ10に日本の大学が一校も入っていないのが悔しくて我慢ができない。大学は本や論文を書くなどして、もっと世界に情報発信すべきだ』とおっしゃっていました。その言葉にほだされて、ライフネット生命保険を創業するまでは、東京大学のお手伝いをしていたのです」

N 「情報発信しないことには始まらないということですね」

D 「国立大学の先生は極端に言えば、一生本を書かなくても、地位が保証されているでしょう。大学の先生方は、『そもそも、国際ランキングで大学の順位を決める採点基準がおかしい』等という議論ばかりやっている。でも、文句を言っても始まらないんです。イソップの『すっぱいぶどう』の逸話と同じです。現在の日本の一番の問題点は、競争しようとしないことです。大学が競争力を高めるためには、情報発信しかありません」

N 「特に大学の場合、世界に向けて英語での情報発信が必要ですね」

D 「そうです。大学が好例なのでお話ししましたが、仮に採点基準が悪いのならば、ルールを変えるように具体的な行動を起こすべきです。内輪で『すっばいぶどう』の話ばっかりしていてもダメですよね。日本の問題は、企業も政府も大学も個人も、グローバルに競争しようとしないことです。競争しなければ、いい生活ができる訳がありません。日本の企業にはグローバルで見て真っ当な経営者が少ないという事実が、最近の株価にも現れていますよね。歴史的に見れば、より頑張った企業や町や国が、豊かになる、という単純な事実しかないですよ」

N 「競争力を高める出発点が、情報発信ということですね」

D 「本を書くということは、個人が、自分の知識や見識を世間に問うことになります。誉められる場合もありますが、罵倒されることもあるわけで、競争の場に自分をさらすということですよね。競争しようという意思表示なんです。だから、永井さんのお話しを最初に聞いたとき、直観的に、これは、いいことだな、と思いました」

N 「今日のお話しを伺って、とても勉強になりました」

D 「あくまで私が『こう思う』ということですから、永井さんには永井さんのお考えがあるでしょうから」

N 「本を出版される方々の中には、例えばコンサルタントとして独立するにあたって、名刺代わりに本を出したいという方もいます。でも、単に本を名刺代わりに出したいというだけではなくて、誰もが強烈な思いがあって書いておられるのですよね」

D 「それはそれで正直でいいと思います。人間はきれい事だけではないので。大切なのは、言いたいことがある、訴えたいことがあるということですね。ただ結果は、神様次第ですから、『くれるかもしれない』と思っていないと、ショックが大きいかもしれませんね」

N 「本日は本当にありがとうございました」

D 「またいつでもお越し下さい」

 

当掲載内容は、永井個人が、出口治明様個人にインタビューしたものです。必ずしもライフネット生命保険様の立場、戦略、意見を代表するものではありませんので、ご了承ください

 

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■ビジネスパーソンの出版戦略:ライフネット生命社長・出口治明さんインタビュー(その2)「情報は、発信すればするほど、集まってくる」

 



2010-08-13 | カテゴリー : 商業出版 | 投稿者 : takahisanagaicom

ビジネスパーソンの出版戦略:ライフネット生命社長・出口治明さんインタビュー(その2)「情報は、発信すればするほど、集まってくる」

前回の続きで、ライフネット生命保険・代表取締役社長の出口治明さんのインタビュー、第2回目です。

 

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■「直球勝負の会社」を出版した経緯

永井(以下、N) 『直球勝負の会社』は、どのような経緯で出版されたのでしょうか?」

出口さん(以下、D) 『直球勝負の会社』の最後に書きましたが、ライフネット生命保険を創業する前に、この会社をどのように皆さんに知ってもらえばいいのか、随分、悩みました。日本で一番安い保険と広告宣伝費を潤沢に使うことは全く両立しないでしょう。そこで、いろいろな方に相談に伺いました。さわかみ投信の沢上篤人さんに相談に行った時、沢上さんが笑って、『それはね、本を書いて全国を辻説法して回ればいいんですよ』と教えてくださったのです。なるほど、と思いましたね。これが、1つのきっかけになりました。ゼロから始めたライフネット生命保険を全国の皆さんに知って貰おうと、パートナーの岩瀬と2人で、書けるものは書いていこうと決めたのです」

N 「会社のために書いたということですね」

D 「ただ、戦後初めてゼロから創り上げたライフネット生命保険の思いを、1人でも多くの人に知って貰いたいという強い気持ちが先にありました。宣伝だけなら、会社が出版してもいい訳です。でも、会社がお金を出して出版したものは、読者の皆さんが『結局、会社の宣伝ではないか?』と敏感に感じ取ってしまうでしょう。だから、『マニフェストに象徴されるまったく新しい生命保険会社を、ゼロから立ち上げた』というストーリーを、読者の皆さんがどれだけ面白いと感じてくださるかどうかがカギだと考えて、全力で執筆に取り組みました。会社で出版するという考えは、最初から微塵もありませんでした。書いたものを、面白く思ってくださる出版社があれば、出版しようと。幸いにも、取材に来られた記者の方が、編集者を紹介してくださいました。ライフネット生命保険の創り方が面白いと感じて下さったのです。私の本も、岩瀬の本も(ライフネット生命保険副社長・岩瀬大輔氏著 『生命保険のカラクリ』文藝春秋社など)、ライフネット生命保険はびた一文出していません。すべて、出版社の方から、『ぜひ、出版したい』と言われたものばかりです。最初の本と同じですが、世の中に出す価値があると、出版社の方が判断してくださったものを出さないと、出版する意味がないんじゃないでしょうか」

N 「市場が求めているかどうかで出すべきだ、ということですね」

D 「コンテンツがすべてです。私は一概に自費出版を否定する訳ではありませんが、どちらにしても『書きたい』という強い思いがなければ、出す意味がないと思いますね。『生命保険入門』は若い人に伝えたいという強い気持ちがあって、遺書のつもりで書きました。『直球勝負の会社』は、ベンチャーとして始めたライフネット生命保険のありのままの姿を知って欲しいと思って書きました」

N 「両方に共通するのは、読者のことを分っている出版社が『出しましょう』と言うかどうかが、判断基準だということですね」

 

■「小説5000年史」について

D 「一方で、『小説5000年史』はおそらくどこの出版社も出してくれないだろうと思っていますので、自分の趣味として、自費出版で出そうと思っています。私は生命保険だけの人間ではく、他にも好きなことが1つくらいはあった人間だったということを、本の形で残したいと思っていますから」

N 「それはよく分ります。私が最初に自費出版した本(『戦略プロフェッショナルの心得』)はマーケティング戦略の本だったのですが、実は最初に自費出版を検討した際、写真の本にすることも考えていました。私は真剣にプロの写真家になろうと考えていた時期があったのですが、プロの写真家になると逆に自分の写真作品が撮れなくなってしまうことが分って、プロになるのは辞めて、アマチュア写真家として作品を撮り続けることにしました。その時に考えたことを、『プロフェッショナル・サンデー・フォトグラファー』というメルマガにまとめて、2004年頃から2年ほど配信していたんですよね。非常に熱心な読者が600名程いらっしゃったのですが、これは商業出版としては成り立たないので、将来、何らかの形で本にまとめたいと考えています」

D 「なるほど、それは是非読んでみたい気がしますね。私の場合も、私が歴史オタクだということを聞きつけた人がいて、声を掛けてもらって、サーチナという中国専門のサイトで中国史のコラムを書き始めました。何で簡単に書けるのかというと、『5000年史』の草稿があるからです。昨年、母校である京都大学(教養学部)で、卒業以来初めて講義をさせていただきましたが、テーマは、イスラーム世界でした。その準備も、『5000年史』があったので、それほど、時間を割かずにすみました」

 

■情報は、発信すればするほど、集まってくる

D 「永井さんのこの『ビジネスマンの出版戦略』という企画はすごく面白いと思うんですよ。情報発信というのはすごく大切ですよね」

N 「ありがとうございます」

D 「私が1981年に興銀に出向していた時に、山本さんという産業調査部の部長がおられました。早くから時代を見通していた人で、当時から『これからはITの時代だ。出口君、ITの情報を集めるべきだ』と言っておられたのです『どうすればいいんですか?』と尋ねたら、『簡単だよ。まず、組織を作って情報発信すればいいんだ』と言われたのです。山本さんは興銀の産業調査部の中に、『IT班』という組織を作られました。班というのはいわば、課ですね」

N 「最初に組織を作ったのは面白いですね」

D 「当時の興銀は智恵の塊でした。この興銀でITの専門組織を作れば、詳しい人達が向こうから勝手に集まってくる。例えて言うと、『俺は、剣道は一番上手い』と宣言すると、道場破りが向こうから来る、ということですね。山本さんの考えは、情報を集めるためには、情報を聞きに行くのではなく、まず、発信すべきだということです。まず『自分は良く知っている、こう思う』と言い切ってしまうんですよ。その結果、自分の知らなかった情報が集まるのなら、道場破りをされて看板を取られてもいいじゃないですか」

N 「今のブログやTwitterは、まさにそうですね」

D 「書きたいことがあるということは、好奇心があるということでしょう。だから書きたいことがあれば、情報発信をすると、志を同じくする人達が集まってくる可能性があるんですよ」

N 「なるほど、私がインタビューしている方で毎日ブログを書いている人がいるんですが、世の中で注目される前から、勉強しながら書いているうちに、色々な人が教えてくれて、専門家になっていかれました」

D 「それを山本さんは30年前から言っておられたのです」

N 「情報の本質的なことですね」

D 「だから、知りたいことがあれば、まず自分から情報を発信するということですね。『自分は知っている』と言ってしまって、看板を出す。そうすると、道場破りが出てくる。つまりさらによい情報が集まってくる。だから、書きたいことは書くべきだ、と思うんですよ」

N 「昔も今も変わらないことですね」

 

当掲載内容は、永井個人が、出口治明様個人にインタビューしたものです。必ずしもライフネット生命保険様の立場、戦略、意見を代表するものではありませんので、ご了承ください

 

(以下、次回の「個人の出版は、日本の将来のためにもよいことです」に続きます)

 

■関連エントリー■
■ビジネスパーソンの出版戦略:ライフネット生命社長・出口治明さんインタビュー(その1) 「『書きたいから、書く』のが一番です」



ビジネスパーソンの出版戦略:ライフネット生命社長・出口治明さんインタビュー(その1) 「『書きたいから、書く』のが一番です」

3月末に当ブログで書きましたように、「ビジネスパーソンの出版戦略」という本を構想中です。

現時点で、出版社数社とお話ししてみたものの、現時点に至るまで正式な企画として編集会議は通っていません。

「現時点の企画では類書との差別化が十分でない」との意見も頂きました。

電子書籍等の最新動向や実際の経験も、取り入れる必要がありそうです。

 

一方、既に出版なさったビジネスパーソンの方々に、3月にインタビューを行いました。私自身もとても勉強になる内容でした。

このインタビュー内容を、当ブログでご紹介したいと思います。

 

シリーズ第1回目は、ライフネット生命保険・代表取締役社長の出口治明さん。

ご多忙な出口さんが、1時間半も時間を割いてお話しして下さった中身の濃いインタビューを、これから3回に分けてご紹介します。お楽しみに。

=====

出口治明さんは、日本生命保険に勤務され、日本興業銀行(出向)、生命保険協会財務企画専門委員会委員長(初代)、ロンドン事務所長、国際業務部長等を歴任、2005年に日本生命保険を退職されました。

2004年には、初めての著書となる「生命保険入門」(岩波書店)から出版。

その後、東京大学総長室アドバイザー、早稲田大学大学院講師等を経て、2008年に、ライフネット生命保険を創業。現在、代表取締役社長です。

ライフネット生命保険を設立する経緯は、2009年に出版した著書「直球勝負の会社」(ダイヤモンド社)に詳しく描かれています。

2010年6月には、「『思考軸』をつくれ-あの人が『瞬時の判断』を誤らない理由」(英治出版)を出版されました。

(インタビュー実施日:2010年3月8日)

■最初の本は遺書として書き上げた

永井(以下、N) 「出口さんが初めてのご著書『生命保険入門』を出版された経緯は、『直球勝負の会社』に詳しく書かれていますね。改めてお聞かせいただけますでしょうか?」

出口さん(以下、D) 「私は55歳で日本生命保険から子会社に出向を命じられました。企画部から、財務企画部に転じた後、大蔵省(MOF)担当、生命保険協会の仕事、ロンドン事務所の責任者等と、日本生命の中でも、一貫して経営企画部門を歩ませていただきました。そのおかげで内外の業界全体を広く見渡すことができ、生命保険についても深く、研さんを積むことが出来ました。ただ、それは私の能力ではなく、たまたま、勉強になるいいコースを歩まされて、いい先輩や仲間にも恵まれて、見聞を広げさせていただいたおかげです。役職定年で関係会社に出向が決まった時、恐らく、もう生命保険の仕事に戻ることはないだろう、と考えました。でも、自分が蓄積した知識は、誰か若い人に残したいな、と漠然と考えていました。若い世代が生命保険のことを勉強する際にも、(生命保険の)森全体を1冊で見渡せるしっかりした体系書があった方がいいと思いました。だから、『直球勝負の会社』にも書いたとおり、生命保険業界の若い世代に宛てた遺書のつもりでこの本を書いたんです」

N 「どの位の期間で書き上げられたのでしょうか?」

D 「自分の頭の中にあるものをすべて書き出したのですが、集中したので、約3ヶ月でしたね」

N 「あれだけの内容で3ヶ月とは、短期間ですね」

D 「ただ書き上げてみたものの、『これは単なる自己満足ではないか』と考えたのです。普段、私は即断即決なんですが、この時は珍しく悩みましたね。MOF担をしていた関係で、メディアにも友人がいて、東洋経済や日経の知り合いの編集者の顔が浮かんだんです。彼らに『遺書を書いた』と言って出版の相談をしたら、『出口さんが遺書を書いたのなら』と、ひょっとしたら二つ返事で出版をOKしてくれるかも知れない、でも、それは、多分に、義理・人情の要素が混在しているので、この本が本当に価値あるものなのかどうかが分らない。世の中で価値のないものを出版しても、恥をかくだけだと考えたんですよね」

N 「出版する価値があるか、客観的な判断を求められたということですね」

D 「そこで、たまたま飲んでいた友人である学者の塩原さんに相談したところ、『僕が原稿を預かるよ』と言ってくれて、私のことを全く知らない岩波書店と講談社の編集者の方に原稿を持ち込んでくれました。幸運にも両社ともOKのご返事をいただきました。ただ最初から、先にご返事をいただいた方に決めようと考えていて、岩波書店の返事が1日早かったので、岩波書店から出版させていただきました。私は、『この本が生命保険を改革するために世の中で役に立って欲しい』と思って書きましたが、『自分のキャリアに役立てよう』などとは露ほどにも思わなかったですね。何しろ、もう、生保の世界に戻ることは金輪際ないだろうと思って、遺書を書いたわけですから」

 

■損得を考えて出版する本は、誰も読みたくない

N 『生命保険入門』を読んで、この本には現在のライフネット生命保険で実現していることが全て書かれていると思いました」

D 「そうですね。私の知っていること、考えていることは、全て書きました」

N 「この本がライフネット生命保険を創業するきっかけになったのでしょうか?」

D 「それは全く関係ないですね。ライフネット生命保険は、私の親友である伊佐さんの紹介で、あすかアセットマネジメントの谷家さんと出会ったことがきっかけでしたし、この本に書いた生命保険会社のあるべき姿は、私自身が以前より考えていたことです」

N 「この本がなくても、ライフネット生命保険は生まれていたということですね」

D 「ただ、この本を岩波書店から出したことで、若干の信用は生まれたと思います。例えば株主を募集した時に、この本を見ただけで『出口さんという人は、保険に詳しいんだな』と思ってくれました。そういう面では、この本があってもなくてもライフネット生命保険は生まれていたと思いますが、あったことで、プラスになった面も間違いなくありましたね」

N 「この本が名刺代わりになったということでしょうか?」

D 「私は、一番大切なことは『書きたい』という気持ちがあることだと思います。自分にとってプラスになるとか、マイナスになるとかを考えて書いた本は、おそらくロクでもない本になるのではないでしょうか。書きたいコンテンツがあれば、書くべきです。それは、自分にとって何の役にも立たないかもしれない。でも、何かプラスになるかもしれない」

N 「確かに、全くおっしゃる通りです」

D 「本は『最強の名刺』になるかもしれないし、ならないかもしれない。それは、神様次第です。書かなければチャンスは起こりません。でも、『最強の名刺を作ろう』と考えて、本を書くべきではないと思います。大事になことは、『自分が書きたいことがあるかどうか』です。『最強の名刺』を作ろうと考えて書いた本など、誰も読みたくないですよね。例えば、永井さんが自費出版されたのも、永井さんご自身が書きたいことがあったからですよね」

N 「はい。私が2008年に自費出版した時は、とにかく『マーケティング戦略で学んだことを本に書きたい』と思って、試行錯誤しながら、かなり時間をかけて本を出しました」

D 「そういう気持ちが、とても大切だと思います。私が『生命保険入門』を書いた時は、『自分が30年働いて仕事で得た知識をすべて若い世代に伝えたい』と考えていました。だから、出版する価値があるかどうかという客観的な判断が必要だと思ったので、出版社に判断してもらった上で、商業出版をしようと考えました。従って、自分では、この本を自費出版で出そうという気持ちは全くありませんでした。出版社が出す価値がないと判断するのであれば、そのような本を出すのは、社会の為にならないと考えたのです」

N 「それは、自費出版というアプローチは、必ずしも正しくない、ということでしょうか?」

D 「いいえ、そういうことではありません。例えば、自分の仕事を離れて出す本は、自費出版で出してもいいと思います。実は、私には自費出版しようと思って書き上げている本があります。『小説5000年史』という仮のタイトルで、紀元前3000年から西暦2005年までの人類の歴史を、編年体で描いた本です。『生命保険入門』のおそらく5倍以上の分量があります。私は歴史オタクで、歴史のことはずっと趣味で学んできました。この本はそうやって学んだ知識を一冊にまとめたものです」

N 「素晴らしいですね。歴史全体を俯瞰した本はなかなかないと思います」

D 「既に草稿は書き上げたのですが、全て記憶に頼って書いたので、書いた内容が正しいかどうか、項目毎に事実検証が必要です。そこで大学図書館に行って、色々な学術論文と突き合わせて、書いた内容を検証していたところに、谷家さんと出会ったのです。検証作業には、2~3年くらい掛かると思ったのですが、谷家さんに出会ってライフネット生命保険を創業することになって、検証作業は中断したままになっています」

N 「ぜひ出版されることを楽しみにしています」

D 「でも、これはあくまで趣味の本なので、自費出版で出そうと思っています。会社が一段落したら、再開したいですね」

 

当掲載内容は、永井個人が、出口治明様個人にインタビューしたものです。必ずしもライフネット生命保険様の立場、戦略、意見を代表するものではありませんので、ご了承ください

 

(以下、次回の「情報は、発信すればするほど、集まってくる」に続きます)



2010-08-11 | カテゴリー : 商業出版 | 投稿者 : takahisanagaicom

【独自調査発表】2010年6月、日本では電子書籍はどのような電子書籍リーダーで読まれたか?

こちらのブログに書きましたように、2週間前から『戦略プロフェッショナルの心得』のePub版の無償ダウンロードを開始しました。

ダウンロードする際に、どのような電子書籍リーダーで読むかをお聞きするようにしました。

おかげさまで、2週間で200件以上のデータが溜りました。

現時点で、日本では電子書籍がどのように読まれているかを把握する上で参考になると思いますので、ご報告します。

 

【調査概要】
回答件数:214件(複数選択あり)
調査期間:2010/6/17-2010/6/30
調査方法:『戦略プロフェッショナルの心得』ePub版/PDF版ダウンロードの際に、読む際のデバイスを回答いただく

【調査結果】
・iPAD: 110 (43%)
・PC画面:66 (26%)
・iPhone: 70 (28%)
・その他ケータイ:3 (1%)
・Kindle: 4 (2%)

 

現在の電子書籍を読むデバイスは、まずはiPAD。
次にPC画面とiPhone、ということでしょうか?

私のブログやTwitterを読む人がダウンロードなさっていますので、サンプルは世の中全体の傾向と比べて偏っている可能性もあります。その点も考慮いただいて参考にしていただければと思います。

実は1週間前にもいったん集計したのですが、iPADの比率が1週間前と比べてやや増えています。

やはりiPADユーザーが増えているということでしょうか?

定点観測して推移を見ていくと面白そうなので、またご報告いたします。

2010-07-02 | カテゴリー : 商業出版 | 投稿者 : takahisanagaicom

佐々木俊尚著「電子書籍の衝撃」を読んで、「電子書籍時代のビジネスパーソン出版戦略」のヒントをいただく

佐々木俊尚著「電子書籍の衝撃」を読み終えました。

本書は下記5章構成で、現在の電子書籍をとりまく状況をまとめています。

第1章:iPADとキンドルは、何を変えるのか?
第2章:電子ブック・プラットフォーム戦争
第3章:セルフパブリッシングの時代
第4章:日本の出版文化はなぜダメになったのか?
第5章:本の未来

それぞれが素晴らしい切り口で書かれており、混沌とする電子書籍の状況がマクロ的に整理されています。

現在、会社員の立場で、「電子書籍時代のビジネスパーソン出版戦略」というテーマで3冊目の本を企画しているため、特に第3章「セルフパブリッシングの時代」は啓発される内容でした。 

同時に、電子書籍全体の議論の中で、自分が探っているテーマがどこに位置付けられるかも、理解できました。

上記5章の「セルフハブリッシング」の中の、「ビジネスパーソンによる出版」にポジショニングされるのですね。

ということで、本書の中の第3章を中心に、「ビジネスパーソンによる出版」という視点で、私が感じたことをまとめたいと思います。

 

第3章の最初に、「アマゾン・デジタル・テキスト・プラットフォーム」(以下、アマゾンDTP)が丁寧に紹介されています。

アマゾンDTPについては、オルタナ・ブロガーの斉藤さんも、ブログで紹介されていますので、概略を知りたい方はご参考になると思います。

アマゾンDTPでは、ISBNコードとコンテンツさえあれば、その場で即座に電子出版できます。

そのISBNコードも、本書で書かれている通り、個人で簡単に入手できます。(→私も個人出版の際にISBNコードを入手した経験を書いたエントリーでご紹介しました)

現在はアマゾンDTPは日本語対応していませんが、日本人でも英語で出せるコンテンツがあれば、現時点でも登録可能です。

本書では、インディー(独立系)の書き手としてセルフパブリッシングをスタートした米国の女性が、ブログで収支決算を報告した際の文章を紹介しています。

—(以下、引用)—

「多くの人達に読んでもらうために書くという行為は、自分が書いたものをエージェントに送って放置されたり、そっけない断りの手紙を受け取るよりも数千億倍価値がある。SNSのマイスペースでは『あなたの小説はベストセラーよりも面白いよ』とコメントしてくれる人がいて本当に嬉しかった」

—(以上、引用)—

私が2008年に「戦略プロフェッショナルの心得」を個人出版で上梓した際には、新書248ページで2,000部印刷し、アマゾンのe託販売で通常の書籍として販売しました。

全て個人で行い、合計70万円掛かりましたが、2年前の当時、恐らくこれが最もコスト・パフォーマンスがよい個人出版方法の一つだったと思います。

それが2年後の現在、わずか2-3万円で出せるようになった訳です。

従来の出版社が持っていた「紙の在庫」は、出版社のパワーの源泉でもあり、リスクでもあり、「本を出版したい」という人にとってある意味で参入障壁でもありました。

「本を出版したい」というビジネスパーソンにとって、この非常に高かった出版への参入障壁を突然消滅させたところに、電子書籍の大きな意義があるのでしょう。

 

本書ではさらに、このセルフパブリッシングに挑戦する米国の女性が、メルマガやブログ、フェイスブック等で様々なマーケティングプロモーションの展開を考えている様子も紹介されています。

手前味噌ですが、私も3月から行っている「戦略プロフェッショナルの心得」PDF版無償公開で、今後出版する本の情報配信を希望する方々のメールアドレスを600件程いただいています。

今後、私が電子書籍を出版しプロモーションする際には、この蓄積は大きな力になっていく筈です。

 

本書では、リアルからネット化で10年先行している音楽配信に関する考察が随所に出ています。

その中で、組織を経由せずに、完全フリーランスで収入を得ている日本のミュージシャンの事例も紹介されています。

かつて、多くの商品は直売でしたが、大量販売の時代を迎えて、組織を経由した間接販売が主流になりました。

音楽の場合は大手レーベル、本の場合は出版社や出版卸がそうですね。

ソーシャルメディアを活用することで、昔懐かしい直販モデルが復活していることも、感じました。

 

また、本書では今年2月に米国で行われたディスカッションの中で挙げられた「これからのジャーナリストに必要なスキル」についても紹介しています。

—-(以下、引用)—-

①的確なタイミングで的確な内容のコンテンツを的確なスキルを駆使し、多様なメディアから情報を発信する能力。

②多くのファンたちと会話を交わし、そのコミュニティを運用できる能力。

③自分の専門分野の中から優良なコンテンツを探してきて、他の人にも分け与えることができる選択眼。

④リンクでお互いがつながっているウェブの世界の中で自分の声で情報を発信し、参加できる力。

⑤一緒に仕事をしている仲間たちや他の専門家、そして自分のコンテンツを愛してくれるファンたちと強調していく能力。

—(以上、引用)—

佐々木さんも書かれておられる通り、これはソーシャルメディアを活用する知的プロフェッショナルにとって今後求められるスキルに他なりません。

例えば、このオルタナティブ・ブログを書いているブロガー全員に当てはまることなのではないでしょうか?

 

また、佐々木さんは、この章の最後に、「電子ブック時代の出版社は?」という節で以下のように述べておられます。

—(以下、引用)—

 その究極の進化形は、フリーの編集者とフリーのデザイナー、そしてフリーの書き手がフリーランス連合を組んで一冊の本を作り、売れた分だけ60%の印税をレベニューシェアするようなチーム編成かもしれません。

—(以上、引用)—

「まさに、これだ!」と思いました。

日本には、このような力を持っている人達は沢山いる筈です。

ただし、それらの非常に多くの人達は、編集者は既存の出版社の中に、職業的な深い知恵を持った潜在的な書き手は企業の中に、という形で、組織の中にいて個人として活動しておらず情報発信もしていないのが、日本の現状でもあると思います。

昨年末から今年にかけて、私は「ビジネスパーソンの出版戦略」の講演を何回か行いました。

そして、多くのビジネスパーソンが、「自分が長年仕事を通じて身につけた職業経験を本にまとめて出したい。しかし方法が分らない」と考えているということが分りました。

このような人達が、組織のしがらみから自由になり、佐々木さんが「究極の進化形」として提示された形で、個人として情報発信できるようになれば、個人個人の競争力も上がり、それがひいては日本全体の競争力の向上に結びつくようになるのではないかと思います。

 

当ブログでは、「電子書籍の衝撃」の中から、ごく一部を紹介させていただきました。

他にもここでは紹介しきれない程、多くの啓発される内容が書かれています。

本書で、現在考えている「電子書籍時代のビジネスパーソン出版戦略」をさらに深化させる上で素晴らしい示唆をいただきました。

感謝いたします。

 

2010-05-01 | カテゴリー : 商業出版 | 投稿者 : takahisanagaicom

角川歴彦氏インタビュー『書籍電子化、出版社どう対応?』を読んで考えた、電子書籍の高収益モデル

4/18の日本経済新聞に、角川グループHDの角川歴彦氏の対談『書籍電子化、出版社どう対応?』が掲載されています。

出版社責任者の立場で、電子書籍をどのように捉えておられるのか、興味があり拝読しました。

—(以上、引用)—

….。出版業は読者に書店で本を買ってもらう製造・流通モデルから、インターネット時代には知的サービス業になる。この変化を日本の出版界は頭で理解しても、行動をためらっている

—(以下、引用)—

電子書籍の時代になると、編集者は、読者(=顧客)視点でのコンサルタント・サービスを提供する形になると思います。僭越ながら「知的サービス業になる」という点で私も同じ意見です。

一方で、出版業界が抱えてきた「紙」という存在は、出版社にとってパワーの源泉である一方で、在庫という大きなリスクでもあったと思います。

この部分を抱えているために、なかなか身動きが取れない現状があるのではないでしょうか?

—(以下、引用)—

「…。出版社に値決めする権利はないというアマゾンの立場に対し、出版社には著作者を守る義務と権利があると主張したい。電子では著作者の意に反して作品が容易に変容する懸念もある。出版社の役割を著者や読者に了解してもらったうえで、電子書籍のビジネスモデルを構築したい」

—(以上、引用)—

「著作者を守る義務と権利」という考え方は、とても重要だと思います。

一方で、技術的なブレイクスルーにより、電子書籍が改変されないようになる可能性もあります。

作品改変防止を保証することに加え、どのように著作者を守るのか、また、それが顧客に対してどのような価値を提供するのかを、具体的に提示していくことが必要なのかもしれません。

この記事は以下のように締めくくっています。

—(以下、引用)—

電子書籍がどう収益に結びつくかはまだ見えない。出版社にとって価格決定権をもつ紙の書籍の方が利益率は高い。電子書籍を入り口に、新たな読者を獲得する一方、利益を生むコスト構造を築けるかがカギを握る。

—(以上、引用)—

利益率については、電子書籍はやり方次第で高収益事業に生まれ変わる可能性もあると思います。

理由は、紙の本と比べて、紙のリスクがなくなる電子書籍は、1冊辺りの限界費用は限りなくゼロに近づくからです。部数が出る程、電子書籍の利益率の方が高くなります。

損益分岐点を出来るかぎり下げて、かつ、目標とする高収益を実現できるだけの部数が売れるようにすることが、電子書籍が高収益をあげられるための前提条件になるのではないでしょうか? 

電子書籍の価格戦略、商品戦略、プロモーション戦略、チャネル戦略も、これらを考慮することが、高収益モデルを実現するための一つの考え方になると思います。

 

インタビューを拝読し、出版社側にとっても、電子書籍はまだまだ暗中模索の段階であるという印象を受けました。

このような時期は、やり方次第で色々な展開が可能な、ある意味で面白い時期でもあると思います。

PDF版無償DLの「戦略プロフェッショナルの心得」が売れ始めている!?

Twitterでもつぶやきましたが、3月16日からPDF版無償ダウンロードを始めた『戦略プロフェッショナルの心得』が、3月末から売れ始めています。

爆発的に売れているという感じではなく、無償DLを始めて10日間ほどパタっと止っていた売上が、その前の2/3程まで回復した、という感じでしょうか?(あくまで感覚的なものですが)

考えられる可能性が二つあって、

1.読み終わった人の中から、気に入った人が「紙の本も」と思って、買っている

2.実は、PDF版無償ダウンロードがあることを知らずに買っている

 

1.だとすれば、フリーミアムの見事な事例なのですけどね。

もうしばらく、様子を見る必要がありそうです。

実は、アマゾンの本商品紹介で、「PDF版無償DLもやっています」と紹介してみて、全く売れなくなったら、実態は1.ではなく2.である、ということが検証できます。

自費出版のためAmazonへ商品掲載しているのは私個人ですから、こういうことも可能です。

ただ、商品掲載文章はチェックなさっているようですし、さすがに「いい加減にしなさい」とお叱りをいただく可能性もあるので、今はやめておきます。(笑)

 

ちなみに、PDF版無償ダウンロードはこちらで継続中です。

2010-04-09 | カテゴリー : 商業出版 | 投稿者 : takahisanagaicom

日本経済新聞の書評記事「電子書籍が変える読書」

日本経済新聞は日曜日に書評を数ページに渡って紹介しています。

4/4(日)の書評特集「今を読み解く」のタイトルは「電子書籍が変える読書」。

米国でiPadが発売され、日本でも発売間近になり、電子書籍の本も目立ち始めてきました。

そんな中で、4冊の電子書籍関連本を紹介しています。

■石川幸憲著『キンドルの衝撃』(毎日新聞社)

冒頭のエピソードが興味深く思います。

—(以下、記事より引用)—

日本より一足先に電子書籍の普及が始まったアメリカのレポートである。「まえがき」にあるエピソードがショッキングだ。著者が知人宅を訪ねたときのこと。典型的な中流、リベラル、インテリである彼女の室内に、本や新聞が見あたらない。「最近、本を読んでいないの?」と聞くと、にっこり笑ってキンドルを指差したというのである。

—(以上、記事より引用)—

改めて自分の家にある本棚を見てみると、これが全部なくなることはなかなか想像できません。

しかし一方で、本と比べて使い勝手が格段によいKindleを触っていると、出先に何冊も重い本を持っていくよりも、1000冊以上入るKindleを1つもって出かける方がずっと楽だな、と実感します。

このようなことが積み重なった結果、もしかしたら10年後にはこのエピソードのようなシーンもよくある場面になるのかもしれません。

■前田塁の評論集『紙の本が亡(ほろ)びるとき?』(青土社)

以下はまったく同感です。

—(以下、記事より引用)—

本の電子化とは、たんにキンドルやiPadが紙の本にとってかわる、ということを意味するのではない。本の読み方が変わり、本の書かれ方が変わり、本そのものが変わっていくのである。

—(以上、記事より引用)—

「紙のメディア」という制約に基づく本の流通構造は、書籍のビジネス構造の基本的な部分に関わっています。

既にこのブログや他の方々が述べているような本の仕組みが大きな変化の多くは、この流通構造が電子化されることに起因して起こります。

それは、ある人には紙在庫リスクの消滅、ある人には参入障壁の消滅、といった形を取ったりするのでしょう。

■角川歴彦著『クラウド時代と〈クール革命〉』(角川oneテーマ21)

「出版文化だけでなく、情報産業全体、あるいは文化全般も電子化によって激変すると予言」としています。

例えば、今までなかなか本を出せなかったビジネスマンが、電子書籍で本を出せるようになるのは大きな変化だと思います。

しかし、意外としがらみを持っているビジネスマンも多いのが事実です。

例えば、色々な事情で実名ブログを書けない人達もいます。このような立場の人達は、電子書籍で出版の前に、乗り越えなければいけない障壁があるように思います。

電子書籍でも、変わる部分と変わらない部分があるということなのではないかと思います。

■港千尋著『書物の変』(せりか書房)

以下、記事からの引用です。

—(以下、記事より引用)—

書物がその誕生以来、常に変化し続けてきたことを指摘している。たとえばコピー機の普及が、書物のありかたをどう変えたか。「活字文化」というが、活字はとっくに印刷現場から姿を消している。ところが最近は活字の魅力に注目する人びとも現われている。

—(以上、記事より引用)—

確かに、電子書籍は今までの多くの変化の中の1つでしょう。

一方で、古いモノも見直されることもあります。

改めて、全体の大きな情報メディアの流れの中で、電子書籍がどのような位置付けなのかを考えていく必要があるのかもしれません。

2010-04-05 | カテゴリー : 商業出版 | 投稿者 : takahisanagaicom

今泉さん提唱の『Twitterと組合わせた電子書籍による「個人出版」』は、マーケティング理論から考えると、コンテンツ次第でまったく新しいマーケテイングの世界が拓ける、という話

今泉さんが電子書籍・Twitter・リアルイベントを組合わせた新しい「個人出版」の形を提案されています。(こちらこちらこちら)

これは、もの書きの視点から、市場(セグメント)として成立しうるのでしょうか? 考えてみました。

 

マーケティング理論によると、市場(=セグメント)を定義するためには、次の5つの条件を満たす必要があります。

■測定可能性:セグメントされた市場の規模と購買力が容易に測定できること

■利益確保可能性:得られたセグメントが十分な規模を持ち、十分な利益が挙げられること

■到達可能性:セグメントされた市場に到達でき、マーケティング活動が効果的に行えること

■差別化可能性:概念的に他と区別でき、異なるマーケティング・ミックスに異なる反応を示すこと

■実行可能性:得られたセグメントを引きつけられる効果的なプログラムが実行可能なこと


今泉さんが提唱されている「個人出版」に、上記理論を当てはめてみると、もの書きから見て、見事に市場(=セグメント)として成立していることが分ります。

■「測定可能性」/「利益確保可能性」/「到達可能性」について

今泉さんは、Twitterとリアルイベントを組合わせて、個人の著者が5000人程度の固定ファンを確保することを提唱されています。

これは、利益を保証できるレベル(=利益確保可能性)の具体的な市場規模を確保(=測定可能性)し、かつ一人一人が見えて個別にコンタクトできる(=到達可能性)ことを示しています。

考えてみれば、従来はこのようなメディアはなかった訳で、画期的ですね。

■「差別化可能性」について

ここが最も重要なポイントだと思います。

この人ならではのコンテンツを持っていることが大前提になります。できればオンリーワンが理想。

今泉さんは、よくライカ等の特定のクラシックカメラ専門家の例を挙げておられます。世の中の大多数はこのようなコンテンツにはまったく興味がありませんが、一部に熱狂的なファンがいます。かく言う私もそうでした。

言い換えれば、差別化できるコンテンツさえあれば、Twitterとリアルイベントを組合わせて、差別化をさらに大きく加速できるということです。


■「実行可能性」について

これは独自のコンテンツと組合わせて、いかに効果的なメッセージ性を出すかの勝負でしょう。


このように考えると、今泉さんが提唱されている「電子書籍+Twitter+リアルイベント」を組合わせた個人出版のスキームは、著者が持っているコンテンツ次第で、まったく新しいマーケティングの姿を開拓できる可能性が非常に高いと思います。

変更記録

2010/4/4 10:13 タイトルを修正しました

「電子書籍時代のビジネスパーソン出版戦略」の本を企画しています

何回か当ブログでも書いていますが、3冊目の本となる「電子書籍時代のビジネスマンのための出版戦略」を企画しています。

まだ正式に出版社の企画は通っておらず出版社も未定ですが、最近ブログやTwitterに書くことで、色々なアイディアがふくらんで来ました。

一度まとめてこちらで紹介したいと思います。

 

ここ数年間、多くのオルタナティブブロガーが本を出されています。

林さん、大木さん、私のような普通のビジネスマンが、出版を契機に、その後いろいろな形で活動が広がっています。

現在皆さんはブロガーですが、3-4年前にブログを始める前は、みな普通の会社員でした。

そしてそのような方が、ブログを書くことで自分なりのテーマを深めて、メッセージ力も上げて、出版の声がかかる、というパターンが実に多いのです。

 

一方で、「いつか本を出版したい」という方々の潜在ニーズも高いことを実感しています。

こちらに書きましたように、2010/11/26に「ビジネスマンのための出版戦略」というタイトルで講演会を行ったところ、30名の方々が参加されました。

実際に講演会を実施して分ったのは、「いつか本を出したい。出版は憧れ」という方が非常に多いことです。

このようなお話しをする際には、いつも下記のようなペルソナを紹介します。

「出版したい」ビジネスマンのペルソナ

42歳。一部上場企業の会社員。新卒入社で22年間勤務。現業務(マーケティング)は10年目。家族は妻と中学生の娘1人

部下5名の管理職。経験を積み仕事は順調だが、将来に漠然とした不安。個人として世の中の評価を高めたい。蓄積した経験を、社外にも個人として情報発信したい。

出版すると何が変わるのかは分らないが出版は憧れ。しかし会社や周囲との関係が難しそうだ。具体的な出版の方法も分らない

インターネットやパソコンが自由に使える。日記風のブログもハンドル名で書いている。実名はちょっと恐いかも

 

このペルソナをご紹介すると、非常に多くの方々が、「これは私自身だ」とおっしゃっいます。

出版したいという人達も、実際に出版された人達も、変わりなく共通です。

『ビジネスパーソンとして今まで蓄えてきた経験を本にまとめてみたい』という深い思いがあるということを強く感じます。

恐らく、このまま仕事を続けるだけでは不安で、自分自身の個人ブランドを確立したい、という気持ちがあるのでしょう。

 

よく分ります。

実は、このペルソナは私自身でもあるのですから。

 

一方で、多くの方々が、

・実際にどのように出版すべきなのか?

・出版すると何が変わるのか?

・そもそも自分にとって出版がどのような意義があるのか?

という点が今一つハラに落ちていないため、出版に踏み出せない状況にあるようにも感じています。

 

そこで、

・ビジネスパーソンが出版する意義

・自分の経験を元に出版したビジネスパーソンの経験談

・出版するための具体的なノウハウ

をまとめた本を出すと、ビジネスパーソンのこれらのニーズに応えられるのではないか、と考えています。

 

さらに今年、日本は電子書籍元年になります。

4月末にiPadが出てきますし、年末にはKindleの日本語版も出てきます。

今年の後半には、電子書籍がビジネスパーソンが出版する際の強力な手段になる可能性が、極めて高いと思います。

ビジネスパーソンが電子書籍で出版する方法論は、まだ確立したものはありません。

しかし既に様々な方々が議論を始めています。

これらも取り込んでいければ、今までとは違った視点で「電子書籍時代のビジネスパーソン出版戦略」が語れるのではないかな、と思っています。

 

既に先行して、実際に出版を経験された数名のビジネスパーソンの方々(ブロガー含む)にご協力いただき、先行インタビューも行っています。

インタビューを通じて非常に多くのことを学ばせていただきました。

当初の仮説で、正しかった点、進化が必要な点、色々と見えてきました。(ご協力下さった皆様、ありがとうございました)

電子書籍以外の部分は既にかなり出来上がりつつあります。

電子書籍の部分も、『戦略プロフェッショナルの心得』PDF版無償公開等で色々と試行錯誤していて、経験値を蓄え始めているので、割と短い時間で書き上げられるかもしれません。

単なる電子書籍のノウハウ本ではなく、ビジネスパーソンにとっての出版の意義を自分で問いかけられるような本にしたいと思っています。

 

この本自体を電子書籍で出版してみるのも、面白いかもしれませんね。

ご興味がある方は、先日の講演会の資料もぜひご覧下さい。

2010-03-29 | カテゴリー : 商業出版 | 投稿者 : takahisanagaicom

【フリーミアム実験結果】 有料版/無償版比率=5%ではなく0.32%でした

『FREE』でクリス・アンダーソンが述べている『フリームミアム』とは、5%の有料ユーザーが、残り95%の無料ユーザーを支えているモデルです。

この5%という数字は普遍的なものなのでしょうか?

今回、『戦略プロフェッショナルの心得』PDF版を無償公開し、並行してアマゾンでも紙の本を販売していましたので、数字を比較してみました。

3/16(火)23:00から3/26(金)23:00まで、10日間のDL数: 1,278件
同期間の『戦略プロフェッショナルの心得』販売数:4冊
  (*)…中古品販売は含んでいません。

 →有料版/無償版比率 = 0.32%

という結果でした。5%ではありませんね。

「5%の有料ユーザーが、残り95%の無料ユーザーを支えている」というフリーミアム・モデルは、必ずしも普遍的なものではない、ということが、この結果からも分ります。

フリーミアム・モデルは、色々な仕組みを積み重ねて実現します。

単に無償公開版と有償公開版を用意しておくだけでは実現しない、つまり、

『タダで提供したのにあまり儲からなかった → それは創造力が足りなかっただけ』

これは考えてみたら、当り前のことですね。(実際、この10日間は、無償版だけプロモーションして、紙の有償版の方はほとんど紹介しませんでしたし)

 

また、3/1から3/16までの16日間で、『戦略プロフェッショナルの心得』は12冊売れていました。

その後の10日間で売れたのが4冊ということは、結果的に有償販売版とのカニバリゼーションを起こしている可能性があります。

ただ今回、PDF版無償DLがきっかけで、読んで下さった方々が1,000人もおられました。

元々は「沢山の方々に読んでいただきたい」という動機で自費出版をしたのですし、今回のPDF版無償DLはそれを拡げるために行いました。儲けるために行ったのではないので、今回の結果には、心から満足しています。

今後も、『戦略プロフェッショナルの心得』PDF版の無償公開は、有償版が売れなくても継続します。

ちなみに、ここからダウンロードできます。

 

さて、自費出版ではなく商業出版において、書籍を完全無償公開してビジネスとして成立させるためには、無償で入手する人達のうち何%がプレミアム版を購入するか、という比率にビジネスケースがかかってきます。

今回の試みでも分るように、「無償公開の5%がプレミアム版を購入する」という話は、必ずしも普遍的な話ではなく、色々な仕掛けを工夫することで成り立ちます。

 

また、先日ご紹介した岩瀬さん著『生命保険のカラクリ』は、出版社と色々と交渉した末、期間限定での公開です。

またクリス・アンダーソン著『フリー』は、日本語版が出る前に限定1万部をネットで配信しましたが、これが人気をあおりベストセラーに繋がった面も大きいと思います。

このように、商業出版においてネットで無償公開してビジネスに繋げるためには、デマンド・ジェネレーションの一環として、期間限定公開で話題性が高まるのを促し、期間終了後に実際の本の販売で投資を回収する、という手法が現実的なのかな、と思います。

他にも、特定の章だけを公開する方法もありますね。ただこの場合は、予めネットで無償公開することを前提で目次をデザインしておくべきかな、と思います。

デマンド・ジェネレーションするためにはどこの章を使い、顧客が有償でも価値を得たいと考えるのはどこの章で、その部分でいかに投資を回収するか、ということですね。

 

ただ、ネットで期間限定あるいはコンテンツ限定で無償公開することが差別化ポイントになるのは、電子出版がブームになっていて、かつ、実践している人達が極めて少数派である現時点だからこそ、だと思います。

今後、この手法は一般化し、どの出版社も行うべき当り前の手法になってくるかもしれません。

『ビジネスパーソンの出版戦略』講演報告 (講演資料も公開) #sw2p

昨晩、SocialWeb2.0Partyで講演させていただきました。

会の始まりは夜8時、当日講演された方々は合計4名でした。

今泉さんも講演されました。

最近は始発出勤で夜がめっきり弱くなってしまったため、ワガママをお願いして最初にお話しさせていただきました。

こちらが講演資料です。

(尚、一般公開版のため、個人情報等の一部チャートは含まれていません)

 

既に当ブログでは何回か書いていることですが、講演して、改めて考えたことです。

 

紙の本による自費出版は、1部当り数百円から数千円のコストがかかります。

私の場合、印刷費用は新書248ページ・2000部で70万円かかりました。アマゾンへの配送料を加えると全部売れたとしても一冊当りのコストは約400円。

実際には全部売れることはないので、これよりももっと高くなります。

2000部も作らず、1000部でページ数を削ると、印刷費用35-50万円です。

1年半前は、個人の自費出版としては、これが最もコストパフォーマンスが高い方法の一つだったのではないかと思いますが、結局赤字です。しかし、自費出版は「自分の本を世の中に出したい」という動機で行うモノなので、儲けは最初から度外視なのですね。

一方で、先週『戦略プロフェッショナルの心得』を無償公開させていただきました。

このような完全無償公開は、『お金を持ち出してでも、多くの人達に読んで欲しい』との想いで出版する自費出版の場合は、非常に適合性が高いように思います。

なにしろ、皆さんがダウンロードして下さるのですから、限界コストがほぼゼロ。

今年、iPAD等で皆さんがダウンロードして簡単に読める環境が整ってくる訳で、これが現実的な選択肢になると、何十万円もかけて自費出版する必要性がなくなります。

ただ、資料にもありますように、紙の本の魅力も捨てがたいものがあります。

このように考えていくと、やはり、

「10万円かけて数十冊のオンデマンド印刷」+「大量配布は電子出版」

という組合わせが、今後の自費出版における現実的な選択肢になるように思います。

わずか1年半で、最もコストパフォーマンスが高い自費出版の費用が、70万円から10万円に下がってしまった、ということでしね。

 

一方で、昨晩は今泉さんこちらで書かれたお話を講演をされました。

素晴らしいお話しで、大変勉強になりました。

従来の紙による自費出版ではなく、電子出版による個人出版も、極めて近い将来、現実的な選択肢になると思いました。

 

色々と得るところが大きい会でした。

会を主催された芳井さん、関係者の皆様、ありがとうございました。

 

『電子書籍時代のビジネスパーソン出版戦略』、是非実現したいと思います。

本日3/25の講演、「ビジネスパーソンの出版戦略」 #sw2p

先日お知らせしましたように、本日20:00から、赤坂NOTEで行われるSocialWeb2.0Partyで、「ビジネスパーソンの出版戦略」の講演を行います。

講演資料は、今まで作成してきた「ビジネスパーソンの出版戦略」の出版企画書をベースに、過去の講演資料を組合わせて、さらに新たに電子書籍で試行錯誤している話を入れて作りました。

ただ、講演時間が20分間という短い時間内での紹介なので、話の大きな流れをご紹介することを最優先とし、一部の話を割愛しています。

例えば、ビジネスパーソンの出版戦略の中では「パーソナルメディアでの情報発信」は非常に重要な位置付けになりますが、今回はTwitterの達人の方々が多数集まることから、釈迦に説法の面もあるため、この部分は割愛しています。

また、本来は書籍では書くであろう自費出版や商業出版の実際の細かいノウハウも、割愛しています。

ちなみに、11月にこの部分を講演した際は、1時間半いただいてお話ししました。

今回はこの時の詳細なお話しはカバーできませんが、改めて読み返してみると、今回話す内容の大筋のストーリーは、この時から4ヶ月が経過してだいぶ進化しているように思います。

 

いい講演になるようにしたいと思います。

 

追伸:

本日の講演では、「戦略プロフェッショナルの心得」の本(紙の方) 15冊、「朝のカフェで鍛える実戦的マーケティング力」を2冊、お持ちします。参加者全員分はありませんが、希望される方々に差し上げます。 

まだ申込は受け付けているようです。(こちらのサイトの「このイベントに参加登録する」をクリック)

2010-03-25 | カテゴリー : 商業出版 | 投稿者 : takahisanagaicom

『戦略プロフェッショナルの心得』PDF版、ダウンロード1,000件突破。そして、改めて考えたこと #sw2p

先日よりご紹介しているPDF版無償公開ですが、公開4日後に、ついにダウンロード1,000件を突破しました。

考えてみると、この本を出版したのが2008年9月。

それから1年半をかけて、1,000冊を販売または配布しました。

その1年半かけて販売&配った数を、わずか4日間で超えてしまいました。

Twitterでこの本のことをリツイートしていただいたり、ブログでご紹介して下さった皆様のおかげです。

感謝いたします。

 

ところでふと、「この出来事は、一体何を意味しているのだろう?」、….と考えてしまいました。

 

何回かご紹介している通り、この本は自費出版です。

自費出版ではありますが、しっかりプロにお願いして表紙などをデザインし、版下を作り、自分でISBNコードを取得し(だから『出版者』は私=永井孝尚になっています)、アマゾンのe託販売により、通常の本とまったく同様に販売しています。

そのため、「この本は自費出版です」と説明すると、驚かれることがあります。

このために、約70万円かけて2,000冊印刷しました。

今からほんの1年半前、2008年9月の時点の日本では、自費出版として、この方法が最もコストパフォーマンスに優れた方法だったと思います。

一方で、まだ1,000冊が残っていて、自宅の一角を占領しています。

黒字にするためにはあと400冊程売る必要がありますが、今後、400冊売れる可能性は少ないと思います。

ただ、儲けようと考えて出版したのではないので、このこと自体はまったくこだわっていません。

それは、もともと、『仕事で学んだマーケティング戦略の考え方を本にまとめて、皆さんに読んでいただき、役に立てて欲しい』と考えて出版したからです。

 

そのわずか1年半後、PDF版を無償公開した途端に、同じ1,000部がダウンロードされています。

その全てが、紙の本と同様に読まれることはないかもしれません。

取りあえずダウンロードしてみた、という方もおられるでしょう。

しかしそれにしても、1,000部です。

『仕事で学んだマーケティング戦略の考え方を本にまとめて、皆さんに読んでいただき、役に立てて欲しい』

という当初の思いを実現するのならば、このようにPDFで無償公開する方が、合理的かもしれません。

少なくとも金銭的な持ち出しはない訳で、数十万円をかけて紙の本を何千部も作る必要はなくなります。

ただ、紙の本が手にできる….という感激は何ものにも代え難いものがあるので、この点をどう考えるか、ですね。

本書を出版した際にも、既に何冊も出版されている方から、

『バック・トゥ・ザ・フューチャーの最後に、主人公の父親が作家になっていて、段ボールに入った新刊が送られてくるシーンがありました。あの感激は万国共通だと思います』

というメッセージをいただきました。まったく同感です。

 

もしかしたら、15万円程度かけて50-100部程度をオンデマンド印刷し、かつ電子出版で配布、というあたりが、ビジネスマンが自費出版する際の今後の姿なのかもしれません。

 

一方で、まだKindleは日本では極めて限られた方々しか普及しておらず、iPADも来月発売というこの時期に、4日間で1,000件がダウンロードされたという事実は、大きな意味を持っていると思います。

 

このあたりのことは、昨日ご紹介しましたように、明日3月25日のSocialWeb2.0Partyで講演したいと思います。

 

ところで、今回、Twitterで「PDF版無償公開」とつぶやいたり、ブログのエントリーをつぶやいたりしたのが、リツイートされて拡がっていきました。

ダウンロード状況も把握しているので、Twitterの拡がりとダウンロードの関係も、後程、分析してみようと思います。

 

■■方波見さん■■

■FREEを実践・実験するマーケ永井さん。 さすがです。

■『戦略プロフェッショナルの心得』PDF版、通勤の合間に半分読みました。『朝のカフェで鍛える 実戦的マーケティング力』の売れ行きもUPするのでは?

 

■■当ブログ■■

■『戦略プロフェッショナルの心得』PDF版、読破報告第一号 from Twitter

■『戦略プロフェッショナルの心得』全文PDF無償公開、一日でダウンロード500件突破

■『戦略プロフェッショナルの心得』を、全文PDFで無償公開開始。Twitter経由でも5時間で100件以上ダウンロード

SocialWeb2.0Partyで『ビジネスパーソンの出版戦略』を講演します #sw2p

SocialWeb2.0Partyで、講演を行うことになりました。

今回のSocialWeb2.0Partyのテーマは、「Twitter、ソーシャルアプリと電子出版」ですが、この中で「個人出版について話して欲しい」とのご依頼をいただき、「ビジネスパーソンの出版戦略」と題して講演を行うことになりました。

「自分のビジネス経験を元に出版をしたい」というビジネスパーソンのニーズはとても高いことを、最近実感しています。

そこで、実際に出版を実現したビジネスパーソンへのインタビューや、出版の意義付け、出版のための具体的な方法等をまとめた本を企画しています。

現時点で、企画部分は70%、執筆部分は40%(主にインタビュー部分が完成)の仕上がりです。

そこで、今回の講演では、本企画「ビジネスパーソンの出版戦略」の背景や内容についてお話しする予定です。

尚、今回は勤務先の業務とは関係がないので、「オルタナティブ・ブロガー」との肩書きで参加します。

 

日時は3/25(木)20:00から、場所は赤坂NOTEです。

参加申込は、こちらのサイトの右上にある「このイベントに参加登録する」をクリックしてみてください。

2010-03-23 | カテゴリー : 商業出版 | 投稿者 : takahisanagaicom

『戦略プロフェッショナルの心得』PDF版、読破報告第一号 from Twitter

PDF版無償公開から2日間経過しましたが、ダウンロード数は累計800件を超えました。

また、早くもダウンロード版の読了報告第一号をTwitterでいただきました。

@takahisanagai 『戦略プロフェッショナルの心得』読破しました。今やっている仕事にも通じるところがあると非常に感銘を受けました。ありがとうございました。

こういうご感想をいただくと、とっても嬉しいですし、励みになりますね。

このような読者の方との双方向コミュニケーションの方法は、今まであるようでありませんでした。

ブログでもご感想を書いていただくことはあるのですが、Twitterではその敷居がとても低くなっていると実感します。

今回のPDF版公開をTwitterとブログを介して行ってみましたが、実際にやってみないと分らないことも多く、大変勉強になります。

 

今回のPODF版公開は、方波見さんにもご紹介いただきました。

「FREEを実践・実験するマーケ永井さん。 さすがです。」

実際には思いつきでやっているので、お恥ずかしい限りです。

 

尚、再度の御案内になって恐縮ですが、こちらからダウンロード可能です。

『戦略プロフェッショナルの心得』全文PDF無償公開、一日でダウンロード500件突破

昨日書きましたように、一昨晩(3/16)の午後11時にTwitterでつぶやき、昨日の朝、ブログで公開しました。

Twitterで一言つぶやいた後の状況ですが、ダウンロード数は下記の通りです。

  1時間後(3/17 00:00AM)  80件
  2時間後(3/17 01:00AM) 112件
  5時間後(3/17 04:00AM) 127件
  7時間後(3/17 06:00AM) 132件

この辺りで一段落っぽかったのですが、3/17 6:30AMにブログで公開してからまた伸び始めました。

  9時間後(3/17 08:00AM) 157件
 10時間後(3/17 09:00AM) 206件
 12時間後(3/17 11:00AM) 278件
 14時間後(3/17 13:00PM) 317件
 19時間後(3/17 18:00PM) 391件
 22時間後(3/17 21:00PM) 429件
 24時間後(3/17 23:00PM) 482件
 30時間後(3/18 05:00PM) 517件

ついに500件突破。すごい伸びです。

3/17早朝はTwitterの返事はできていたのですが、業務開始からできなくなり、夜自宅に帰ってから再びTwitterへの返事を始めました。

結果的に、再びTwitter上での露出が増えたためか、この辺りからまたダウンロードが増えた感じです。

 

性別と年齢を回答いただいていますが、9割以上が男性、年齢は20代から50代までバラバラ、といった感じです。

また、前日まではGoogleで私の名前を検索すると13,500件程度だったのですが、現時点で検索すると15,000件程度に増えています。

以前、はてぶで300件程度のブックマークをされたことがあった際にも、検索ヒット数が増える現象がありましたが、同じことが起こっています。

ネット上で、私の名前が行き交う頻度が高まっているということでしょうか?

 

紙の方の本は、公開後2冊売れました。

実は最近は売上ペースがかなり落ちていて、1月で10冊程度の売上だったので、悪くない数字かもしれません。

今回は実験ですので、どの程度紙の本の売上と繋がるものなのか(繋がらないものなのか)、あるいは、買うのはどのようなタイミングなのか(例えば読み終わってから買うのか)、等々、色々と確認してみたいと思います。

 

また推移を見守って、結果をご報告したいと思います。

ちなみに、こちらからダウンロード可能です。

まだの方はこの機会に、是非どうぞ。

『戦略プロフェッショナルの心得』を、全文PDFで無償公開開始。Twitter経由でも5時間で100件以上ダウンロード

2008年9月に出版した『戦略プロフェッショナルの心得-ビジネスの現場で、理論だけの戦略が実行できない理由』を、全文PDFで無償公開を開始しました。

 

本書出版の経緯についてこちらに詳しくまとめているように、本書の著作権や版権等に関する一切の権利は、私個人が持っています。

そこで、今年、電子書籍元年になることもあり、今後の電子書籍の方向性を探る上で一つの実験になればと考え、無償公開に踏み切りました。

 ダウンロードはこちらからどうぞ。

 

試しに昨晩11時過ぎにTwitterでつぶやいてみました。

『戦略プロフェッショナルの心得』、全文PDFで無償公開を開始しました。Kindleでも快適に読めます。尚、紙の本も今まで通り販売中です。 http://www.takahisanagai.com/book2008/

すると、あっという間にリツイートがリツイートを呼び、ダウンロードがスゴイ勢いで伸びました。

午前0時までの1時間で計80件以上、午前4時までの5時間で計130件のダウンロードがありました。

Twitterでも、感想を続々いただきました。

皆さん、ありがとうございます!!

Twitterの威力をまざまざと実感した次第です。

 

7時間半遅れで、当エントリーにてブログで公開していますが、どのような効果があるか、比較してみたいと思います。

面白い結果が出たら、後程ご報告します。

 

今後の参考にさせていただきたく思いますので、本書をご覧になった方は、当ブログのコメント、トラックバック、Twitter等で、是非、ご感想をいただければ嬉しく思います。

 

尚、本書はKindleでも読むことができます。

既に岡本さんがKindleで読んでみた感想をアップして下さっています。(ありがとうございました!)

『永井さんの「戦略プロフェッショナルの心得」をKindle DXで読んでみた』

私もKindle2で読んでみましたが、快適に読むことができます。

 

なお、まだ自宅に本書の印刷版在庫が1000冊ありますので(大汗)、紙の本も、アマゾンでの販売を継続しています。(昨晩公開してから1冊売れたようです。こちらも感謝です)

2010-03-17 | カテゴリー : 商業出版 | 投稿者 : takahisanagaicom

日本初?のギャルKindle誕生

金曜日は、毎月恒例のオルタナブロガー会議でした。

早速なので、先日購入したKindleを持っていき、恒例の懇親会でお披露目させていただきました。

iPhone保有率8割(推定)を誇るオルタナブロガーでも、さすがにKindle保有者は極めて少数派で、初めて見る方が多かったようです。

皆さん、大変興味深げにご覧になったり、写真を撮っておられました。

そんな中、ちょっと目を離した隙に、私の隣で怪しくニコニコしていたさる方によって、いつの間にか私のKindleが改造されてしまいました。

写真は、そのさる方の手帳と、変わり果てた生まれ変わった私のKindleです。

Galkindle

ううむ…..。

….お揃いになって、光栄です。

さりげない感じがなんとも良い味を出しています。

でも、電車の中で読むのはちょっと恥ずかしいかも。

これって、もしかして、日本初のギャルkindle?

2010-03-14 | カテゴリー : 商業出版 | 投稿者 : takahisanagaicom

Kindleで遊んでいて、考えたこと

色々とやってみると楽しいですね。

ちょうど今、次の出版の準備中のため、読みたい本が溜っているので、英語の本を買うまでには至っていませんが、試し読みはできるので"Presentation ZEN"の試し読みをしてみました。

"Presentation ZEN"のサビ(と勝手に自分で思っている)、Guy Kawasakiのプレゼンテーションのサンプルも、ちゃんと画像も表示されて、読むことができます。

結構分りやすいですね。

 

試しに、2008年に自費出版した「戦略プロフェッショナルの心得」の表紙部分も表示してみました。

ちゃんと表示されます。(日本語OKなので、当り前ですね)

Strategyprofessional

考えてみたら、この本は私が自費出版したものなので、版権等の全ての権利は私が持っています。

これを無償ダウンロードできるようにして、実物が欲しい人はアマゾンで実物の紙の本を購入いただく、ということを試みても、面白いかな、と思いました。

Kindleをゲット。日本語の本がサクサク読める!

3/2(火)にKindleを注文しましたが、3/5(金)に家に小さい小包が届いていました。

米国アマゾンからKindleの到着でした。早いですね。

写真でiPhoneと比較すると、だいぶ大きく見えますが、….

Kindle1

重さは280g。新書本2冊分。すごく軽く感じます。

持った感じも、とても快適です。

Kindle2

指示に従って充電すると、早速動き始めました。

3G回線に勝手に繋がって、色々と検索できます。

この回線料金も、アマゾン持ちです。

「今まさに旬のベストセラーを、電子書籍で無償公開する試み」でご紹介した岩瀬大輔さん著『生命保険のカラクリ』のPDF版が表示できないか、試してみました。

まずUSB接続してPDFファイルをコピーしようとしましたが、Kindle側が書き込み禁止状態になっていて、コピーできませんでした。外部から直接はコピーできないのですね。無事コピーできました。

(↑2010/3/7 11:00AM修正:私のパソコンの設定の問題だったようで、別パソコンで試したらちゃんとコピーできました。)

ちなみに空き容量は1.5GBでした。2GB程度のメモリーが入っているようです。確かにテキスト主体だと1冊1-2MB程度なので、これで十分なのでしょう。

また、色々と調べてみると、kindle.comにユーザー専用のメールアドレスが設定されていて、こちらに送付するようになっているようです。

そこでパソコンでPDFファイルを送付したところ、Kindleの画面上に「1MBあたり0.99ドルかかるが、OKか?」というメッセージが出てきました。

OKをするとダウンロードが始まり、読めました。

こんな感じです。

Kindle3

ためしに電車の中で読んでみました。

強いて言うとちょっと字が小さいのが難点ですが、サクサクと問題なく読めました。

紙の本を読む場合はページめくりが必要ですが、Kindleではボディ両端にあるページボタンを押すだけなので、とっても楽です。

画面も見やすいので、満員電車などでは、紙の本を読むよりもむしろ快適かもしれません。

英語の本はまだ注文していませんが、色々と試してみたいと思います。

3G回線が繋がれば、パソコンに接続していなくても、この280gのKindleさえあればいくらでも注文できてしまうところがスゴいですね。

 

Kindleという電子書籍リーダー自体は、800×60016階調モノクロ画面と約2GBのメモリーで、比較的低コストで作られていますが、このビジネスモデルの発想と、それを実現するための仕組み作り(各国の3Gネットワークへの対応と無償接続等)は、素晴らしいモノがあると思います。

真に本が好きな人達の気持ちを徹底的に考えて、その深層心理まで踏み込み、あるべき姿を演繹的な発想で描いていった産物であると感じました。

Kindleは、既に全世界で数百万台売れています。

日本でも4月末にはiPadが、年末にはKindle日本語版が、それぞれ出てきます。

それとともに、出版インフラも大きく変わっていくでしょう。

Kindleを色々と触っているうちに、今年が日本の電子出版元年になる、と確信しました。

2010/3/6 11:00修正:USB接続でファイルをコピーできないと書きましたが、私のパソコンの設定の問題だったようで、無事コピーできました。木村さん、ご指摘ありがとうございました。

今まさに旬のベストセラーを、電子書籍で無償公開する試み

電子書籍の話題がブレイクしている昨今ですが、日本でも昨年10月に発売され2万9千部を超える売上を記録しているベストセラーを無償公開する実験が行われています。

「この本、丸ごと無料です」(日経BP)

大手出版社の文藝春秋が3月1日から1つの実験を始める。昨年10月に出版した新書『生命保険のカラクリ』をインターネット上で全文無料で読めるようにするというもの。大手出版社が丸ごと1冊を無料で公開するのは極めて異例のことだ。

単行本の無料ダウンロードの試みと出版の今後 (ダイヤモンド)

ライフネット生命保険の副社長である岩瀬大輔氏が新しい実験を始める。昨年、彼が文藝春秋社から文春新書の一冊として出版した『生命保険のカラクリ』の全文を3月1日から4月15日までの期間、無料でダウンロードできるようにする。

 

ダウンロードはこちらから。性別、年代、メールアドレスを記入するだけです。

4月15日までの限定公開です。

ダウンロードしてみましたが、合計2MBで新書版と同じスタイルの縦書きPDFファイルです。

 

以前も「共感をエンジンとして成長していく、ライフネット生命保険」でご紹介したように、著者の岩瀬さんが副社長を務めておられるライフネット生命保険は、生命保険の仕組みを大きく変えようとしている会社です。

岩瀬副社長ご自身は、本書を通じて多くの方々に読んでいただき、同志を広げていきたいという強い想いがあるのかもしれません。

その観点では、今回の本を無償公開して多くの方々に読んでいただく実験は、その志を世の中に伝える大きな意味合いもあると思います。

 

一方で、別の観点もあります。

電子書籍デバイスがまだほとんど出回っていない現時点の日本で、PDF版が公開されても、実質的に読める端末はほぼパソコンに限られます。

iPhoneでも読むことは出来ますが、小さい画面ではちょっとつらいかもしれません。少なくとも、最近は目がちょっと遠くなった私には、かなり厳しいです。

また、印刷するとかなりの枚数になり、本を買った方が安くついたりします。

iPADが世の中に出回っている状況か、年末にKindle日本語版が出回っている状況では、この実験はまた別の意味合いを持つかもしれません。

4月15日までのこの実験は、ネガティブなリスクが発生した場合、その影響を最小限に抑えられる微妙かつ絶妙なタイミングであるようにも思います。

 

記事によると、今回の実験は、「どこかが始めるのは時間の問題。文春のような保守的な出版社が先駆けてやることに意味がある」という岩瀬さんの熱意が文藝春秋さんを動かしたそうです。

ネットでの無償公開が、ベストセラーの売れ行きに拍車をかけるのか?

この実験の結果は、今後の電子書籍や、ネットでの書籍無償公開など、様々な観点で大きな意味を持ってくるのではないでしょうか?

注目したいと思います。

Kindle、いいなぁ、と思って見ていたら….買っちゃいました

今泉さんのブログ・エントリー「Kindleを買って触ってみたお(1)」を、遅ればせながら拝読。

 

なるほど、日本でも使えるのですね。

読書好きのツボを突いていますね。

うーん、欲しくなってしまいました。

米国で売れている理由も分かります。

 

ためしにアマゾンジャパンでKindleで検索したら….出てきました、Kindle。

「なるほど、日本でも売っているんだ!」と思ってクリックしたら、米国AmazonのKindleの商品案内へのリンクでした。

動画で見るとまた説得力が違います。

ちなみに、雑誌関係がどんな状況か、チェック。

TIMEが毎月2.99ドルは安いですね!

でも、よく評価を見たら絵とかチャートがないとか。

ううむ、色々と課題はあるのですね。しかしこの価格は魅力。

 

….ということで、Kindle、買っちゃいました。(笑)

今泉さんの場合は2月17日に注文して20日に到着とのことなので、もしかしたら金曜日に来るかもしれませんね。

到着したら、また色々とご報告します。

でも、Premium Silicone Skin Cover Caseが、日本には出荷できないというのは、ちょっと残念。衝撃には十分に気をつけて使うことにします。

2010-03-03 | カテゴリー : 商業出版 | 投稿者 : takahisanagaicom

「いつか出版したい」人、必読の書

「いつか本を出版したい」という夢を持つビジネスマン、多いと思います。

出版は、とても難しいことなのでしょうか?

私の周りには、本を出しているビジネスマンの方が多くおられます。かく言う私もそうです。

出版している人達を見ていると、特別に優秀であるとか恵まれているとかいうことはなく、本当に普通のビジネスマンです。

ただ、誰でもその気になればできるような、ちょっとした工夫をしています。

では、その夢を実現するためには、どのようにすればよいのでしょうか?

 

昨日のエントリーでご紹介した藤沢晃治さんが書かれた著書「夢を実現する技術」に、その一つの方法が書かれています。

前回も、少し書きましたが、現在ベストセラー作家の藤沢晃治さんは、もともと会社員でした。

藤沢さんは会社員時代、「本の出版」という夢を持っておられました。

本書では藤沢さんご自身のご経験を語りながら、夢を実現していく過程を紹介されています。

本書から、私が「なるほど!」と思った箇所を3つご紹介します。

 

藤沢さんは、夢を見つけにくいタイプの一つとして、「自転車を漕ごうとしない人」を挙げています。

自転車を漕ぎ始める際はペダルが固くて重くものですが、漕ぎ続けているうちにとても軽くなります。

同じ原理で、夢を実現するために動き始めるのは大変ですが、そのうち楽になります。

自転車を漕ぎ始める際に、「初期抵抗」があるのと同じということですね。

多くの人達は、この初期抵抗が永遠に続くものと思ってしまうために、夢を実現するための行動が起こせない、と藤沢さんは書かれています。

これは全く同感です。

私も、1冊目の本を出すのは大変でした。

2冊目はちょっと楽。

現在3冊目の本に取りかかっていますが、最初の2冊と比べるとかなり楽です。

写真展も同様でした。

21年前に初めての個展を行った時は七転八倒、すごく大変でした。その後数回の写真展は片手間という程ではないにしても、最初ほどは大変ではありませんでした。

このメカニズムを知っていると、かなり気が楽になる人も多いのではないでしょうか?

 

また、本書では藤沢さんが初めての本を出そうと思い立ち、原稿を書いて出版社に売り込んだ時のことも書かれています。

立て続けに5-6社に断られて落ち込んだ時に読んだ本に、こんなことが書かれていたそうです。

「素人が原稿を持ち込んで10社や20社に断られるのは当り前。….出版社にはそれぞれのカラーがあって、そのカラーにたまたま合わないだけ。10社や20社が評価しなかったからといって、あなたの原稿に価値がないということにはならない」

この言葉には随分励まされたそうです。

その後、原稿を送る際に「不採用の場合は理由を教えて欲しい」とのメモと、返信用葉書を同封し、アドバイスを原稿に反映することを続けるうちに、PHP研究所の編集者から声が掛かり、昨日ご紹介した本「30歳からの英語攻略」の出版に至ったそうです。

この本は2005年時点で累計15,000部が売れ、初版から13年後の今もタイトルを変えて「日本人が「英語をモノにする」一番確実な勉強法」というタイトルで販売されています。

私も20代後半の時に初めて写真展の個展を開催するにあたって、メーカー系の写真ギャラリーに写真作品を持ち込んで審査を受けましたが、落ち続けました。

しかし落ちた時にその理由も教えていただいたので、その度に写真を撮り直した末、やっと審査に合格、1989年に銀座キヤノンサロンで個展を行いました。

藤沢さんのおっしゃっていることは、とても実感します。

 

本書では、さらにこのように夢を実現するための具体的な方法も書かれています。

まず何と言っても時間を作ること。

そのためには、「会社の仕事は集中して早く終わらせる」の一点につきる、とのことです。

そしてその秘訣は、なんと、オルタナティブブログでも最近(一部ですが)流行っている「早起き」にある、と藤沢さんは書かれています。

なるほど。

これも深く納得です。

 

「いつか出版したい」という夢を持っていて、なかなか取り掛かれない人にとって、本書はとても参考になると思います。

新しい本の企画を考えています

一昨年、昨年に続き、今年も本を出したいと思っています。

このブログでも何回か書いていますが、今回のテーマは「ビジネスマンの出版戦略」です。

こちら
に書きましたように、昨年11月26日に同名のセミナーを行なったところ、非常に多くのビジネスマンが参加されました。

出版したいというビジネスマンの方は、着実に増えていると実感します。

私自身が、一昨年の初めはそうでした。

この本では、そのような人達にとって役立つような内容にしたいと思っています。

まだまだ企画段階ですが、どのような内容にすれば、皆さんのお役に立てるか、検討している段階です。

ある程度まとまりましたら、またご報告したいと思います。

もし「こんなことを知りたい」というようなご要望があれば、コメントいただければ、とてもありがたく思います。

2010-01-27 | カテゴリー : 商業出版 | 投稿者 : takahisanagaicom

出版21社が、電子書籍で連携

1月13日の日本経済新聞夕刊に、「出版21社、電子書籍対応で連携、来月に新団体――配信ルールなど策定」という記事が掲載されています。

—(以下、引用)—

 講談社や小学館、集英社など大手出版社21社は2月、一般社団法人「日本電子書籍出版協会」(仮称)を発足する。米アマゾン・ドット・コムの電子書籍端末「キンドル」などの普及で拡大が予測される電子書籍市場に対応する狙い。紙の書籍の電子化や配信に関する業界のルールづくりなどを目指す。….

 電子書籍をめぐり「著者、読者、版元などにとって正しい方向性を示す」(大手出版社幹部)ことを目的としている。著作権を持つ著者が直接アマゾンなどと契約して電子配信を進めれば、「版元には何も入らない」(同)ためだ。

 日本を含む世界100カ国で発売中のキンドル(日本語対応版は未発売)のほか、ソニーの「リーダー」など読書端末の普及を背景に、国内の電子書籍市場は2008年度の464億円から拡大が見込まれている。

 出版社の団体としては日本書籍出版協会(東京・新宿)があるが「スピード感を持った対応が必要」として電子書籍に特化した新団体の設立を決めた。

—(以上、引用)—

先日「電子書籍時代の出版は、どうなるのか?」で書きましたように、今後、電子書籍の爆発的普及が見込まれています。

このような中、出版各社による先手を打つ動きと言えると思います。

 

今後は、出版各社が、電子書籍において、読者や著者にどのような新しい付加価値を提供できるかが、成功を左右するのでしょう。

場合によっては、ちょうど「顧客が望むなら自社のプラス社製品以外の他社製品も売ろう」と考えたアスクルのように、現状の否定を考えなければならないケースも出てくるかもしれません。

重要なのは、出版各社の柔軟な変革の意志と、高付加価値サービス提供能力にあると思います。

2010-01-14 | カテゴリー : 商業出版 | 投稿者 : takahisanagaicom

おお、Googleブックで、「朝のカフェで鍛える実戦的マーケティング力」を読むことができる!!

全ページではないのですが、かなりのページがGoogleブックで、読めてしまいます。

こちらからお読みになれます。

ちなみに、Googleブック検索に対する集団訴訟は和解しましたが、Googleの担当副社長は以下のように語っています。(詳細はこちら)

「この和解契約はすべての関係者に利益があるものですが、最も利益を得るのは読者の皆さんです。読者の皆さんは、世界中の本にある非常に豊富な知識を、簡単な操作で得ることができるのです。」

 

確かに本は人類全体の共有財産であり、デジタル化して全てアーカイブしていくことは大きな価値があると思います。

実際、Googleブックに登録済の本は、全ての文章が検索対象になります。これもすごく便利ですね。

 

一方で、改めて著者の立場で自分の本がこのようにネットで読めてしまうのをパソコン画面で見てしまうと….私はネットの世界には比較的親しんでいる方だとは思いますが、正直に言ってちょっと当惑します。

確かに、ネットで読んだ方が「役に立った」と思って頂ければ、嬉しく思います。

さらに、ネットで見た方が、「やっぱりネットだと読みにくいし、手元に置いて読んでみたい」と思って頂ければ、さらに嬉しいですね。

ですので、現時点でこのようにGoogleブックで検索できるのは、嬉しく思います。

一方で、ネット上で読む不便さは、将来的にはAmazonのKindleやiPhoneのような操作性のよい携帯端末用に様々なツールが出てきて解消され、本よりも高い利便性でGoogleブックの内容が読めるようになる可能性もあります。

そうすると本は売れなくなります。

こうなると、コンテンツを提供する出版社や著者の立場からすると、きついですね。

世の中には無償のコンテンツでもよいコンテンツは沢山あります。ブログはその代表ですね。

しかし、有償のコンテンツだからこそ、提供できる品質というものも、確かに存在します。その有償のコンテンツが、提供されなくなる可能性も出てきます。

難しい問題ですが、…将来的には、著者や出版社等のコンテンツ制作者に対する収益モデル確立が必要なのでしょうね。

 

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2009-12-19 | カテゴリー : 商業出版 | 投稿者 : takahisanagaicom

本にすべて書いてあるのに、なぜ講演で話すのか?

今年9月末に本を出版してから、社外で本に書いた内容を講演する機会を何回かいただきました。

最初は、「全て本に書いたし、読んでいただければ分るはず。その上、さらに講演しても、参加される方々にとってあまり付加価値はないのでは?」と思っていました。

しかし、実際にやってみると、違いました。

ありがたいことに、参加された方々からは「本を読んではいたが、話を聞くと、改めてとても参考になる」というご意見を多く頂きます。

 

しかしよく考えてみると、これは当り前のことかもしれません。

 

多くの場合、講演では時間の関係で本に書いてあることを全て網羅できません。そこで、本の一部を取り上げてお話しすることになります。

そのような場合、特定箇所を深掘りしてお話しすることになり、本に書けなかったこともお話しすることになります。

改めて考えると、本に書いていないこともかなりあるのです。

本を書く場合には、その本に書く内容よりも多くの知識を持たないと書けません。

私の場合、仕事や勉強を通じて学んだことの中から、理解しやすいテーマに絞って本に書いています。

さらに、そのように絞ったテーマでも、見直しているうちに、「これは話の流れからすると違和感がある」とか、「これはちょっと違う感じがする」といった判断で、ボツにしたものが結構あります。

その意味では、この表題の「本にすべて書いてあるのに…」は私の思い込みであって正確ではなく、「本にすべて書いたつもりなのに…」が正しいのかもしれません。

 

また、常に分りやすく理解しやすいように書くことを心掛けてはいますが、文章で伝えられることには限界があります。

私の文章力の問題で表現しきれていないこともあるでしょう。また、読んで下さる方が忙しくて飛ばし読みすることで伝わらないこともあるかもしれません。

 

このように考えると、講演などで本に書いてある内容を語ることで、新たに伝えられることは多いのです。

また、参加された方々からのご意見や反応で、新しい発見が得られることも多いのです。

 

今後も「本の内容を話して下さい」というご要望は、できる限りお受けしたいと思います。

 

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勝間和代さんも、最初は本名を隠していた

先日のエントリー『11/26「ビジネスパーソンのための出版戦略」の結果報告』で、「一人称、実名で書く。 (退路を断つ)」と書きました。

また、竹内さんがトラックバックして下さったエントリーへのコメントでも、

(竹内さんの)「一線を越える勇気」は必要、という意見に全く賛同いたします。
実際に一歩踏み出してみれば、そのような懸念は幻想であったと分かることも多いのではないでしょうか?

と書かせていただきました。

 

一方で、昨日12月3日(木)発売のモーニングに連載されている「勝間和代の『誰でも出来る』日本支配計画」で、勝間さんは下記のように書かれています。

—(以下、引用)—

会社員時代に私が出した著作は、組織人として会社に迷惑をかけないために、本名を隠してペンネームで出さざるを得ず、積極的にセールス活動をすることもできませんでした。独立後、ほとんど同じ内容の本を本名で出版し、セールス活動をしたら、当時の20倍以上売れました。

—(以上、引用)—

なるほど、あの勝間さんも、会社員時代は色々な事情があってペンネームで出版なさっていたのですね。

ちなみに、この会社員時代、勝間さんは外資系証券会社に勤務されていたそうです。外資系でも本名を出すのが難しい場合もあるのですね。

そう言えば通産省(現在経済産業省)の官僚だった時に「油断」というベストセラーを出された堺屋太一さんも、ペンネームでした。

 

ここで先日のエントリーを一部補足させていただきます。

 

先日書いた『11/26「ビジネスパーソンのための出版戦略」の結果報告』では、1時間半の講演内容を短いブログの文章でまとめさせていただきました。

そこで箇条書きで講演内容を紹介したために、

「一人称、実名で書く。 (退路を断つ)」

と書きましたが、実際には講演では、この部分は下記のようにお話ししました。

一人称で書くこと。できれば本名が望ましい。その方が退路を絶てるし書いている内容に最終責任を負えるから。

ただし、ペンネームやハンドル名でも、書いている内容にコミットして書くのならば、それでもよい。

銀行員だった小椋佳さん、通産官僚だった堺屋太一さんは、ペンネームでも、自分のコンテンツにコミットしていた。

 

「現代でも、組織によっては、本名でメッセージを出すのが難しい場合は多いのだ」、と勝間さんの連載を読んで改めて思いました。

竹内さんがエントリーで紹介して下さった事例は個人、経営者、個人事業主の方が多いので、この辺りのリスクはご自身で取っておられるのでしょう。

いずれにしても、やはり本人がコンテンツにリスクを取ってコミットしているかどうかが問題なのであって、本名にするかペンネームにするかは、その次に考えるべき問題なのでしょう。

 

しかし、独立後、ほとんど同じ内容の本を本名で出してセールス活動したら20倍以上売れたという勝間さんは、すごいですね。

11/26「ビジネスパーソンのための出版戦略」の結果報告

11月26日に行ったセミナーの結果ご報告です。

30名の方々にご参加いただきました。

セミナーご担当の方によれば、「このテーマで満席は難しいのではないか?」ということでしたが、開催2週間前には満席になりました。

「本を出したい」というビジネスパーソンのニーズ、確かに高いようです。

 

講演は1時間半、続く質疑応答は30分の合計2時間。講演は下記内容でした。

■1.出版のための基本戦略は3段階

 パーソナルメディアでの情報発信:力を蓄える
→自費出版:蓄えた力を実証する
→商業出版:自分マーケティングの実践

■2.パーソナルメディアでの情報発信

・「メッセージ力」は具体的なメディアを通じてメッセージを発信し続ける修練以外には、鍛える方法がない

・私が学んだこと

  • 一人称、実名で書く。 (退路を断つ)
  • テーマを定める
  • 『自分ならでは読者への価値』を常に考える
  • 書いたことは、自分で責任を持つ
  • 他人に敬意を払い、誤りは率直に認める
  • 自分の立ち位置を忘れない(業務を最優先)
  • メジャーなメディアで書く

■3.自費出版:蓄えた力を実証する

・自費出版を決意した3つのきっかけ

  • ブログを書いていた
  • アマゾンe託販売を知った
  • 本の印刷・製本は、意外と安価にできると知った

・自費出版のために必要な作業

  • アマゾンe託販売の活用
  • ISBNコードの取得
  • マスタースケジュールを立てる
  • 勤務先の承認を得る
  • 転載許可を得る
  • 校正にじっくり時間をかける
  • プロモーションプランを立てて、実施する

■4.商業出版:自分マーケティングの実践

・自費出版の限界:プロ編集者の眼の不在→プロは超えられない

・本当に世の中に自分の価値を問うためには、プロの力が必須:自分マーケティングの実践

・自費出版のきっかけ

  • 編集者とのご縁
  • メール・コミュニケーションの継続
  • 大切なのは、編集者との個人同士の「ご縁」

・企画に時間をかけるのがカギ

・ポジショニングマップで差別化を考える

・執筆した後、仮説検証を徹底する

・プロモーションプランを立てて、実施する

・私が学んだこと

  • 「マーケティングの実践」が求められる
  • 編集者との相性が大切

■5.出版の意義

■6.今晩、帰ってから始められること

 

質疑応答の時間では、とても具体的なご質問や示唆を数多く頂きました。ありがとうございました。

 

アンケートには20名の方が回答下さいました。

5段階評価で半数以上の方が「とてもよかった」と評価いただきました。NSI (Net Satisfaction Index)で88ですので、評価は高かったようです。

「本日の講演内容が、本で出版されたら…」という質問に対しては、75%の方々が「購入する」「購入を検討する」と回答下さいました。

一方で「買わない」「多分買わない」と回答された方は、「講演で十分に分った」「ネットで調べれば分る内容だった」とのコメントでした。暗黙知の部分を掘り下げる必要がありそうです。

また、とても丁寧なコメントを数多くいただきましたが、サマリーすると、

・「日本IBMに勤務しているから、できたのでは?」という感想を多く頂きました。また、本を出す前段階として、ブログを実名で書くことに不安を感じる人も多くおられました。

確かに私が日本IBMに勤務していたからできたという部分は多いのですが、オルタナブロガーを見ると、必ずしもそうではなく、典型的日本企業にご勤務されながら本を出されている方もおられます。この辺りをご紹介できればいいかもしれません。

・具体的なノウハウへの興味がとても高いことが分りました。この部分は深掘りしてご紹介したいと思います。

予め仮説を立てて、講演に臨み、いただいたフィードバックで検証すると、得るものがとても多いことを改めて実感いたしました。

木曜日の夜というお忙しい時期にご参加下さった皆様には、厚く感謝申上げます。

 

また、今回の講演のきっかけとなった「朝カフェで鍛える実戦的マーケティング力」にも、出席された多くの方々からご感想をいただきました。ありがとうございました。

 

 

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講演『ビジネスパーソンのための出版戦略』でお話しする概要

11/26の『ビジネスパーソンのための出版戦略』講演会の準備を進めています。

準備しながら色々と考えてみましたが、単に「自費出版」から「商業出版」に繋げるだけではなく、その前段階がとても重要なのだと言うことが分かりました。

 

その一つが、ウェブメディアによる「修練」です。

オルタナティブブロガーで本を出版されている方が多いのは、偶然ではありません。

多くのオルタナブロガーが語っておられる通り、不特定多数が見るウェブメディアで、知らず知らずのうちに「文章を書いてメッセージを伝える力」が強化されていることが、大きな理由だと思います。

加えて、オルタナブロガーの多くの方々が、ご自身のテーマをしっかり持っておられることも、理由に加えられるでしょう。

また、実名で書かれていることも大きいと思います。やはり「変なことは書けない」という覚悟が求められます。

 

私にとっても、ブログを書いていたことが出版をする大きなきっかけでした。

しかし、15年前からパソコン通信、ウェブ、メルマガ等のウェブメディアで情報発信していたことがさらに大きな下地になっていることを、再認識しました。

 

プロフェッショナルフィールドが転換できたのも大きかったと思います。

20代から写真をライフワークとして取り組んでいましたが、当時は「写真」と「業務」は明確に分けていました。

しかし、これは「テーマによる区分け」でした。

様々な学びを得ていく過程で、実はビジネスとライフワークは「心得」という「方法論」の観点では、繋がっていることがよく分かりました。

いわゆる「プロフェッショナルフィールドの転換」は、出版に至る過程で大きな意味を持っていたと思います。

 

今回の講演では、自費出版・商業出版の具体的な方法論に加えて、この辺りも時間をかけてご紹介したいと思います。

 

講演は11月26日(木)19:00-21:00、場所は東京・九段下にある寺島文庫ビル、参加費無料です。

ありがたいことに残り枠もだいぶ少なくなってきたようですが、まだ参加される方を募集しています。

詳細と申込みは、こちらからどうぞ。

 

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『朝のカフェで鍛える 実戦的マーケティング力』の書評を集めてみました

発売後、1ヶ月半近くが経過した『朝のカフェで鍛える 実戦的マーケティング力』ですが、おかげさまで、様々な方々がインターネット上に書評をアップして下さっています。

合計1214名の方が、書評をアップして下さいました。

他にも、Twitterで多くの方々がITmediaエンタープライズの記事にコメントも寄せていただきました。

ありがとうございました。

以下にまとめてみました。(書評のごく一部を抜粋して掲載しています)

 

■■ブログ・メルマガより■■
            
■Webook (松山真之助様)
『とても読みやすく、また、ためになるマーケティング読本。超おすすめ!』

■『マーケティングは重要、でもどうやって身につければいいか』 「走れ!プロジェクトマネージャー!」(大木 豊成様)
『マーケティングはツールから入るのではなく、概念を理解することが重要だということ。顧客の言っていることを鵜呑みにするのではなく、本当の課題を見つけ、本当に顧客の役に立つことを考えること。市場は自社製品ありきで考えてはいけないことなど、大事なことが網羅されています』

■『「朝のカフェで鍛える実戦的マーケティング力」を読んで』(久野麻美子様)
『これが法人マーケティングを志す方の一冊目となれば、最初から難解で消費財の例ばっかり満載の解説書で挫折することもなく、法人マーケティングのおもしろさと本質が掴めると思います。』

『『朝のカフェで鍛える 実戦的マーケティング力』で学ぶマーケティングのおもしろさ』(山口陽平様)
『朝カフェは問題集であり教科書でもあるという点でマーケティングの教材として非常に優れていると思います』
            
■『『朝のカフェで鍛える 実践的マーケティング力』をTwitterでつぶやきながら読んでみた(#twiyomi)』 (林雅之様)
『主人公を中心に会話形式を通じて、マーケティングの理解を深めていくというストーリーのため、非常に理解を深めながら読んでいくことができました』
            
■『【朝カフェマーケ(3/5)】日本IBMのマーケティングを担う永井孝尚氏が、母校・慶應義塾大学の後輩の為に、KBC実行委員の開催するKBC
Study Tourでマーケティングをレクチャー(予習編)』  (方波見豊様)

『この書籍は、非常に長期にわたって売れると思います。シリーズ化をして頂き、いずれは大学や起業の教材となるよう、育っていくことを期待しております』

■『永井さん著書「朝のカフェで鍛える実践的マーケティング力」』
(小俣 光之様)

『真の顧客志向とは? 何度教わっても、本を読んでも、しばらくすると意識から消えてしまいがちなのですが、本書を読み直して再び反省しているところです。おそらくほとんどの仕事で役に立つ内容だと思います』

■『マーケ担当に文句を言う営業も、そしてマーケ担当者自身も目を通してほしい本』 (加藤 恭子様)
『通称「朝カフェ」は、まるで会社の中で永井さんがERPベンダというか、エンタープライズ系のアプリを売っている際に起きうる問題を観察して、書かれたかのような印象を受けました』

■『「忙しいのに売れない」「仕事がつらい」と悩んでいる営業にお勧めするこの3冊~「One to One」「朝カフェ」「英語でMBA」』 (吉田賢治郎様)
『ここに出てくるマーケティングの女性の成長を通して、マーケティング、顧客対応のための「視点」が得られるだろう』

■『中小企業のマーケティング力』 (小さなはちみつ屋の独り言)
『初心者でもわかりやすくBtoBの中小企業のマーケティングに良い助けになると思ったので紹介します』

■『実践的マーケティング』(小屋番0618さん)
『この本をもし私がサラリーマン時代に読んでいたらどんなに助かっただろうか』

■『朝のカフェで鍛える実践的マーケティング力』 (porcaroの日記)
『感想としては、great!と言いたい。初学者にはうってつけの教材だと思う。マーケティング理論をなるべく平易な内容にした実践に当てはめていくのが非常にわかりやすい』

■『朝のカフェで鍛える実戦的マーケティング力』(パラナガさん)
『マーケティングに関する本のなかで、社学者にはもっともとっつきやすく、分かりやすい本だと思います』

■『今一番興味のある分野かもしれない本 [読書]』(dq さん)
『この本を読みながら通勤しているが、商品企画というものに対して非常にとっつきやすい良本だと思う』

 

■■抜粋記事への、Twitterのつぶやきを集めてみました■■

■GoogleやIBMの未来を方向付けた「顧客視点の事業定義」

■顧客第一主義の自社が価格の高いライバルに負ける理由 

■目立つ広告、売れない商品」に潜む欠落

■競合他社の出現は、売り上げ低迷の理由にならない

 

皆様、ありがとうございました。

もし他にも書評を書かれておられる方がいましたら、お知らせいただければ幸いです。よろしくお願いします。

 

修正記録:

2009/11/12 23:20 久野さんの書評を追加しました

2009/11/13 0:00 山口さんの書評を追加しました

http://twitter.com/takahisanagai

11月26日、『ビジネスパーソンのための出版戦略』講演会を行います

私は昨年初の自費出版を、今年は初の商業出版を行いました。

本を出してみたら、世の中が変わりました。

これは、同じく本を出版しておられるオルタナティブ・ブロガーの方々も、感じておられることなのではないでしょうか?

 

では、私はスーパービジネスマンか、というと、決してそうではなく、ちょっと多趣味な、普通の会社員です。

 

出版は特別な人しかできない特殊なものではありません。

むしろ、長年現場の仕事を通じて様々なことを学んだビジネスパーソンこそ、理論先行ではなく、実践に裏打ちされた智恵を、出版を通じて語ることができます。

 

そこで、今回の出版がきっかけとなり、表記の講演会を行う機会をいただきました。

11月26日(木)19:00-21:00、場所は東京・九段下にある寺島文庫ビルです。

詳細と申込みは、こちらです。

 

多摩大学大学院でご指導いただいた田坂広志先生は、

『これからの時代、出版はビジネスパーソンにとって最強の名刺である』

とおっしゃっています。

この『最強の名刺』をどのようにして作るのか、私の経験談を元に、出来る限り具体的に方法論をご紹介したいと思います。

本ブログでご紹介したことに加えて、未公開の情報も色々とお話しする予定です。

参加無料です。ご都合の良い方は是非どうぞ。

『朝のカフェで鍛える 実戦的マーケティング力』が生まれるまで(最終回):今後の展望

『朝のカフェで鍛える 実戦的マーケティング力』が生まれるまでの経緯を連載でご紹介しています。連載バックナンバーは、こちら

 

はじめに、ご報告です。

大変ありがたいことに、松山真之助さんよりWebookでご紹介いただきました。 こちらでご覧になれます。

 

さて、この連載も、今回で17回目。

最終回の今回は、改めて本を書くことについて考えてみたいと思います。

 

本を書くのは、かなり苦しい作業の連続です。

構想を作っては壊し、作っては壊し、という作業の末に、やっと構想のようなものが出来ます。

やっとその構想が出来ても、その構想を本にするのがまた一苦労です。

300ページ近い文章を、どこを切っても互いに矛盾ない内容にし、かつ興味を持って面白く読める内容にするためには、とっても神経を使います。

そのようにしてやっと出来上がり、校正段階でのチェックも、神経を使います。

 

しかし同時に、面白くワクワクする作業でもあります。

 

例えば、本のアイディアを育て上げる作業。

最初に思いついたアイディアは原石です。何回も見直して、ストーリーを書き直す作業を繰り返して、磨き上げていきます。

読者にとって、どういう意味があるのか、時間をかけて考えていきます。そのようにして少しずつ自分で育て上げ、構想したアイディアを、実際の文章として紡いでいくのも、面白い作業です。

主人公がここで何を考えるのか、どういう気持ちでどのような言葉を発するのか?

そのようなことを、単語単位で考えて、書いては時間を置いて見直し、修正していくことになります。

本書267ページの一言一言が、その膨大な積み重ねです。

今からふり返っても、ちょっと気が遠くなりますが、少しずつよくなっていく文章を作っていくのも楽しい作業です。

本書を書く際の方針は、「分りやすく、無理なく、スムーズに頭に入るようにする」でした。

実際に読んでいただくと、もしかしたら、あまり苦労することなくあっさり書いたように感じられるかもしれません。

もしそのように思われたとしたら、私の狙いが実現できたということで、とても嬉しく思います。

 

対象読者を想定し、その対象読者の価値は何かを想像し、構想に繋げていき、骨太なストーリーを作っていくのは、仕事で事業戦略を構築するのに似た面白さがあります。

異なる点は、仕事で戦略を構築する場合は、関与する人達とのコミュニケーションの比重が大きいのに対して、本の構想を作る場合は、自分の発想力・構成力に加え、文章力に依存する比重が大きい点でしょう。

また、出来上がったドラフトを想定読者の方々に読んでいただき、自分の仮説が正しかったかどうか検証するのも、クイズの解答が合っているかどうかを待っている時に似た、楽しい感覚があります。

 

出来上がった本を手にしたとき時の気持ち。

これは格別です。

私のこれまでの経験では、数年間撮り貯めてきた写真作品で構成した写真展の開催初日や、団員が一丸となって1年間の練習を続けて演奏会を開催し思い通りの音楽を全員で創り上げられたときの気持ちに近いかもしれません。

そして、読んで下さった方々からいただく感想は、対象読者に当初の狙い通りの価値を届けることが出来たかどうかを判断する最終審判になります。

 

このように本を書くのは、苦しいと同時に、とても楽しく達成感がある作業です。

 

しかし、この本を出すきっかけというものは、なかなか訪れません。

まず、「本を出しませんか?」というオファーがそもそもありません。

私の場合、このような状況だったので、1冊目は自費出版でした。

2冊目もなかなか話しが来ませんでした。幸い秀和システム様とのご縁をいただき、今回、上梓することができました。

しかし、本書を執筆中に、他からは本の話は来ませんでしたので、そもそも、本を出すオファーというものは、一般にはなかなか来ないものなのかもしれません。(しかし、来る人には結構あっさりと来るようですね)

しかし、このような状況の中でも、本を出そうと思い続けることもまた、大事なのでしょう。

 

さて、1冊目と2冊目は、マーケティング戦略と実践について書かせていただきました。

そろそろ3冊目のことを考え始めています。

これから、また産みの苦しみが始まりますが、それが楽しみでもあります。

 

 

http://twitter.com/takahisanagai

2009-10-12 | カテゴリー : 商業出版 | 投稿者 : takahisanagaicom

第4-1章の抜粋記事『「目立つ広告、売れない商品」に潜む欠落』

本日、ITmediaエンタープライズで、第3回目の連載記事が掲載されました。

朝のカフェで鍛える 実戦的マーケティング力(3)
「目立つ広告、売れない商品」に潜む欠落

『朝のカフェで鍛える 実戦的マーケティング力』から、第4-1章をそのまま抜粋したものです。

 

皆さん、「クールビズ」は、よくご存じだと思います。

では、「省エネルック」はご存じでしょうか?

昨日の慶応大学の講演
では、大学生20名(20歳前後)に聞いたところ、1名しか知りませんでした。

勤務先の若手セールスの方々の研修で聞いたところ、20代後半だと1割程度の認知度でした。

でも、我々の年代(=40代)だとほとんどの人達が知っています。

 

「省エネルック」とは、1979年に政府主導で始めた「クールビズ」です。

かなり話題になりましたし、マスコミでも大きく取り上げられました。

なにしろ、当時生まれていなかった若い人達でも5%-10%程度の方がご存じな程ですから。

お金もかけたようです。

しかし、ほとんど普及しませんでした。

 

この記事では、その理由について、マーケティングコミュニケーションの観点で分析しています。

マーケティングコミュニケーションに関わる方々にとっては、いかに戦略とプロモーション活動が密接に結びつくことが大切かを理解する上で、ご参考になるかもしれません。

 

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『朝のカフェで鍛える 実戦的マーケティング力』が生まれるまで(16):本を受領 (09年09月)

『朝のカフェで鍛える 実戦的マーケティング力』が生まれるまでの経緯を連載でご紹介しています。連載バックナンバーは、こちら

 

2009年9月18日(金)の夕方、ついにサンプル本が完成しました。

乃木坂にある秀和システム様のオフィスに初めてお伺いし、編集担当の方から出来上がった本を受領しました。

既に校正段階で何十回も目を通した文章。
ああでもないこうでもないと議論し尽くしたカバーのデザイン。

見慣れたこれらが一冊にコンパクトにまとまった本を手に取ると、不思議なことに改めて新鮮な感じです。

それとともに、感無量です。

しかしこのように作った本も、書店に並ぶと、きれいに装丁された他の本の中に埋もれてしまい、なかなか見つけられないのですよね。

改めて、世の中に出ている本には、色々な人達の様々な思いが詰まった結晶であることを感じました。

 

出来上がった本を見ながら、編集担当の方と1時間半ほどお話ししました。

10日ほど前にこの編集担当の方が自宅に届けて下さった時は数分しか話せなかったので、このようにお会いするのは、初対面以来、実質的に2回目でした。

毎日のようにメールでやり取りしているのですが、考えてみれば不思議なご縁です。

本書を出すまでの思い出、今後のプロモーションの方法、今後の本の計画などを話し合いました。

 

翌週の月曜日。

出来上がった本を周りの人達に渡しました。

原稿にコメントして下さった方々。

勤務先でお世話になった方々。

「え、昨年出したばかりなので、もう2冊目?」

という反応もありました。

総じて、好意的な反応を多く頂きました。

 

 

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2009-10-10 | カテゴリー : 商業出版 | 投稿者 : takahisanagaicom

『朝のカフェで鍛える 実戦的マーケティング力』が生まれるまで(15):マーケティング・コミュニケーション (09年08月)+おまけ

『朝のカフェで鍛える 実戦的マーケティング力』が生まれるまでの経緯を連載でご紹介しています。連載バックナンバーは、こちら

 

2009年8月。

校正も完了し、本書もほぼ完成の目処が立ちました。

自費出版の時とは異なり今回は商業出版なので、出版社がプロモーションをして下さいます。

しかし自分の本ですから、自分でも是非、市場に対して本書の価値を伝えていきたいと考えました。

 

本書にも書いた通り、これは「プロモーション」というよりも、むしろ「マーケティングコミュニケーション」と言った方がいいかもしれません。

「プロモーション」という言葉には、「販売促進」というニュアンスが感じられます。

しかし本来は、対象顧客にとっての商品の価値を正しく定義した上で、その対象顧客に対して商品の価値を正しく伝えることこそが重要です。これがマーケティングコミュニケーションの考え方です。

「プロモーション」と「マーケティングコミュニケーション」は、一見同じことを言い換えただけに見えますが、実はその考え方は大きく異なります。

本来の対象読者へのマーケティングコミュニケーションとはかけ離れたような、販売促進活動を行う例もあります。

例えば、身内で注文を一時期に集中してアマゾンの順位を上げたり、出版の度に大規模な出版記念パーティを開く出版社もあるそうです。

このようなカンフル剤的な施策を実施することで、確かに一時的には売上効果が上がるかもしれません。

しかし、このような活動は顧客に価値を届けることとは全く関係ありません。このような活動により、対象顧客に商品の価値が正しく伝わるかどうかは、はなはだ疑問です。

本来のマーケティング活動とはかけ離れたものですし、一見うまく行っているように見えても、結局長続きしないのではないでしょうか?

 

ということで、本書のマーケティングコミュニケーション活動の狙いは、非常にシンプルです。

「対象読者となる若手ビジネスマンに、本書の価値をシンプルに伝えること」

この狙いを達成するために、次の4通りの方法を実施しました。

 

1.ポータルサイトを作る

昨年「戦略プロフェッショナルの心得」を自費出版をした際に、www.takahisanagai.comというサイトを作り、本書の概要を紹介しました。

このサイトは、takahisanagai.comという名称が示す通り、将来的に私の様々な活動をまとめて紹介するサイトにしたいと考えていました。

しかし昨年の時点では、旧著の紹介がメインでした。

そこでこのサイトをまず下記のようにバージョンアップし、当初の狙いである私個人の様々な活動をここに集約しました。

Takahisanagai

このサイトで本書のバナーをクリックすると、本書の概要が分るようにしました。詳細な目次や、本書に掲載した30件の参考文献も掲載しました。さらに、ここからアマゾンで注文できるようにもしました。今後は読者の声も分るようにする予定です。

Takahisanagaibook2009

各種記事で本書を紹介する場合は、このサイトを紹介するようにしています。

 

2.ITメディアの連載記事

前著は、「オルタナティブ新書」として出版したこともあって、ITメディアの方々に色々とご相談にのっていただきました。

今回、新しい本を出すのが決まった時点で、早速ITメディアの方々にご報告しました。

すると、「ある程度まとまった時点で、ITメディア・エンタープライズで本書の紹介記事を連載してはどうか」というお申し出をいただきました。

出版社とも相談した結果、16章からなる本書から4章を抜粋し、紹介する形にしました。

既にご案内の通り、これまでに公開した記事は下記です。

『GoogleやIBMの未来を方向付けた「顧客視点の事業定義」』

『顧客第一主義の自社が価格の高いライバルに負ける理由』

おかげさまで、はてブのブックマ数は、連載第1回目が50件を超え、2回目も40件近くになる等、好評でした。

『GoogleやIBMの未来を方向付けた「顧客視点の事業定義」』のはてブのブクマ状況

『顧客第一主義の自社が価格の高いライバルに負ける理由』のはてブのブクマ状況

 

3.本書が出来上がる過程の紹介

普通のビジネスマンは、なかなか本を出す機会がありません。しかしビジネスマンとして10年・20年仕事をしていると、自分だけしか語れない経験が少しずつ貯まってきます。

そこで、「この経験を本にまとめると面白いのではないか?」と考え、その経験をまとめたのが、本書です。

同時に、「私と同様に、自分で本を出したいと考えているビジネスマン向けに経験談を紹介すると面白いのではないか?」と考え、本書が出来上がる課程をブログに書くことにしました。それが当連載です。

アクセス上位には顔を出しませんが、確実に読んで下さる方がいるようです。

 

4.Twitterのハッシュタグを使った方法

林さんがブログで本書の書評を書いていただいています。

この方法がとても興味深いもので、Twitterでつぶやいて、それをまとめる、という方法でした。

しかも、単につぶやくだけでなく、ハッシュタグという方法を使っていました。

「はっしゅたぐ?」

実は私も全く知りませんでした。

Twitter上で、#で始まるハッシュタグを入れてつぶやき、後でこのハッシュタグで検索すると、このハッシュタグが付いているつぶやきを全て見ることができる、ということが分りました。

そこで林さんの方法を参考に、新たに『朝のカフェで鍛える 実戦的マーケティング力』用のハッシュタグを作ってみました。

#asanocafe

本書関連の話題をTwitterでつぶやく場合は、是非つぶやきの中に#asanocafeを入れてみて下さい。検索すると仲間が見つかります。

ちなみに、最新の#asanocafeこちらで見ることができます。

 

また、ここではご紹介できませんが、他にも様々なマーケテインングコミュニケーション活動を組合わせて実施しています。

 

おまけ

本日も、書店をいくつか回って、本の販売状況を見てきました。

  • Book 1st新宿ルミネ店:3冊棚済みでした。もともと6-7冊あったようです
  • 紀伊國屋書店新宿南店(高島屋横):6冊平積みでした
  • 紀伊國屋書店新宿本店:7冊平積みでした
  • 青山ブックセンター丸ビル店:1冊ありました
  • 丸善・丸の内本店:7冊平積みでした

思ったよりも平積みをしていただいている店が多いのに驚きました。(ありがとうございました)

各書店で入荷を増やしていただいているような感じです。

アマゾンでは品切れが続いているようなので、入手したい方は大手書店に行けばすぐに入手出来るかもしれません。

 

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