「残業=カッコいい」から、「残業=カッコ悪い」の時代へ


私が20代の会社員だった頃の飲み会で、管理職だった団塊世代の先輩社員が、こう言いました。

「同じアウトプットを出すAさんとBさんなら、私は夜遅くまで頑張ったAさんを評価する」

私はこう反論しました。

「それはおかしい。早く仕上げたBさんを評価すべきだ」

今なら笑い話ですが、高度成長期の終わりにさしかかっていた当時は、「夜遅くまで頑張った人間は、偉い」「愛社精神の証」と評価する傾向が高かったように思います。

「残業=格好いい」という時代だったのですね。

よく考えてみると先の例では同じ仕事を仕上げても、定時に仕上げたBさんは残業代なし。夜遅くまで頑張ったAさんは残業代をもらえて収入も増えています。同じようなことは、企業の中でよく起こっているのではないでしょうか?

 

2015年3月6日の日本経済新聞に、「SCSK、残業手当を高めに一律支給 「しない人」も対象 生産性アップめざす」という記事が掲載されています。

—(以下、引用)—

システム開発大手のSCSKは残業手当の支給額を一律にして、残業時間を短くした 人の方が得をする人事制度を7月に導入する。

…入社7年以上の中堅社員には裁量労働制を適用し、月 給に34時間分の残業手当を一律で上乗せする。残業時間 がゼロならば、34時間分の手当を余分に受け取れる。反 対に50時間の残業をすると16時間分の手当は得られずに 損をする仕組みだ。

…SCSKは以前は深夜の残業などが多く、2012年度の 平均残業時間は月26時間だった。13年度には残業を減ら した職場は翌夏のボーナスを上乗せする制度を導入し、14年度の平均残業時間を月18 時間に減らした。

7月からはボーナス支給を毎月の手当に切り替える。残業をしない方が得をする効果を従業員が実感しやすくなり、残業時間の抑制効果が高まるとみている。

—(以上、引用)—

 

個人毎への仕事の割り当てが課題になってきますが、残業をしない方が時間単位給が今よりも増えて得をする仕組みは、よく考えられています。

「時代も変わったなぁ」と実感しました。

 

このように企業の考え方が変わってきたのは、仕事の性質がこの30年間で大きく変わってきたことが背景にあります。

私が20代だった時代はインターネット普及前夜でした。大量生産・大量販売時代の名残もあり、時間をかけて頑張ればできる仕事が多くありました。

「知識社会」と言われる現代、かつて手作業で処理していた多くの仕事がITで自動化されています。時間をかけて頑張ればできる仕事は、次々とITに置き換わっています。一方で増えてきたのは、アイデアを生み出す仕事。夜遅くまで頑張っても、必ずしもいいアイデアは生まれません。むしろ心身健康でいい状態を保ち、適切な休みを取った方が、いいアイデアが生まれます。

企業側もこのことがわかっているので、社員に残業をさせないようにし、知的生産性を高める方向に舵を切っているのですね。

 

「残業=カッコいい」から、「残業=カッコ悪い」の時代へ変わっていけば、企業の生産性も向上し、私たちもより充実した人生を送れるようになると思います。