意外と知らない「自分の強み」。そこでお勧めの本


あまりブログやメルマガで本をお勧めすることはないのですが、この本はとても参考になりましたので、ご紹介したいと思います。

「さあ、才能(じぶん)に目覚めよう」
(マーカス・バッキンガム&ドナルド・O・クリフトン著、日本経済新聞出版社)

企業も個人も、「強みを活かそう」とよく言われます。
企業の強みについては、コアコンピテンシーを提唱したゲイリー・ハメルや、RBVやVRIOを提唱したジェイ・B・バニーなど、様々な考え方があります。

一方で、「個人の強みとは何か」を定義したものは、意外と少ないものです。
本書では、この個人の強みについて書かれた本です。

 

本書は、「その人が一番強みを持っている分野を伸ばせば、大きな成長の可能性がある」としています。
では、「強み」とは何でしょうか?

本書では、「強み」とは「才能」であり、後天的に学習と経験で獲得できる「知識」や「技術」と区別しています。

そして「才能」は、その人の「資質」により、無意識に思考・感情・行動のパターンが繰り返されることで作られます。
つまり「才能」とは、その人の先天的な「資質」が作る、というのが本書の主張です。

ここまでの話を整理すると、

「才能(先天的な資質がベース)+知識(後天的)+技術(後天的)→ 強みが生まれる」

ということです。

そして「強みとなりうる先天的な資質を活かすことが、個人の成功に繋がる」として、個人の資質を34に分類し、「この資質を組み合わせることで、その人ならではの強みを育てるべし」と述べています。

「先天的な資質が、個人の強みを生み出す」という考え方は、なるほど、と思いました。

 

本書がさらに素晴らしいのは、巻末に袋とじ付録でついている固有のアクセスコード。これを使い、ネットで「ストレングス・ファインダー」にアクセスすると、自分の資質の上位5つを判定できます。

これが驚くほど当たります。私の場合、上位5つはこうなりました。

【1位】 学習欲 (Learner):新しいことを学ぶということが大好き。常に何かを学んでいないと落ち着かない。スキルを獲得することで、自信を強めていく。

→【私の場合】勉強好きというわけではないのですが、興味を持ったことはトコトン突き詰めて調べないと気が済まない性格ですので、かなり当たっています。特にこの20年間は、まさにマーケティングが大きなテーマになっています。

【2位】戦略性 (Strategic);他の人には複雑としてしか見えない状況の中でも、パターンを見つけて先を読み、リスクを予測し、最善の道筋を発見することができる。ヤバそうな選択肢を切り捨てる。

→【私の場合】前職のIBM社員時代に事業戦略を担当していた頃は、まさにこの強みを活かしていました。またここ数年は物語でマーケティングの本を書くことが多いのですが、実際の混沌としたビジネスの状況を、マーケティング理論で整理し、誰にでも理解できるように筋道立てて考えるのはとても好きです。これが今の「マーケティング戦略アドバイザー」としての強みの源になっており、「なるほど」と思いました。

【3位】責任感 (Responsibility):「やる」と言ったことはなんでもやり遂げようとする。筋を曲げて、言い訳や正当化したり、適当にごまかすのは問題外。それがよい評判を生んでいるが、完了するまで生きた心地がしない。一方で責任を果たしていない人がいるといらだちを感じる傾向がある。

→【私の場合】いつも「やるべきこと」を箇条書きにして、期日前に終えないと気が済まないのは、この資質のためだったのか、と納得です。ただ他人にも同じことを要求する傾向もあるので、これは気をつけないといけませんね。

【4位】内省 (Intellection):一人で考えるという行為自体が好き。自分自身に疑問を投げかけ、自分自身で回答がどうなのかを考える。

→【私の場合】アイデアをまとめるときは、ちょっとざわついたカフェに入って一人でああでもないこうでもないと考えることが多いですし、実はそんな時間が大好きですので、大いに心当たりがあります。

【5位】達成欲 (Achiever):何かを成し遂げたいという恒常的な欲求。平日も休日も、一日が終わるまでに何か具体的なことを成し遂げないと不満に感じる。何かを成し遂げると一瞬落ち着くが、また次の目標へと強制的に駆り立てられる

→【私の場合】常に「今日は何をすべきか?」「今日は何が出来たか?」を考えていますし、休みの日であっても何もしないでいるとどこか罪悪感を感じてしまうので、これも納得します。

ということで、怖いほど当たっていました。現在の仕事がまさにこれらの資質を活かしたものになっているのは、長い人生を通じてあれこれと壁にぶつかりながらも試行錯誤を繰り返した必然の結果なのかもしれません。

 

この「ストレングス・ファインダー」は、パートナーを理解する上でも、とても役立ちます。
このパートナーとは、たとえば、仕事では同僚ですし、プライベートでは家族です。

パートナーとのトラブルの多くは、こんなことが発端になることが多いのではないでしょうか?

「こんなこと、当たり前なのに、なんで相手はわからないんだろう?」

しかし実際には、パートナーは別の考え方をしていることが多いものです。

 

たとえば私の場合、先の診断結果にもありますように、こう考えています。

「モノゴトを戦略的に考えるべきだ。自分で学んだり考えたりすることは楽しいことだし、目標達成に責任を持つことは、何よりも大切だ」

しかし、世の中の多くの人がそう考えるとは限りません。たとえばこう考える人がいるかもしれません。

「モノゴトは相手の気持ちをくみ取って考えるべきだ。他人に役立つことは楽しいし、人とのご縁は必ず何らかの意味があるので相手を尊重することが何よりも大切だ」

あるいは、こう考える人もいるかもしれません。

「何ごとも1番にならないと話にならないわ。そのためには手段を選んでいられない。ライバルを蹴落としてでも、トップを狙う」

新しいプロジェクトが障害にぶつかった際に、これらの価値観の違いを考えずに、対応について議論した場合、

「誰がなんと言おうと、あるべき姿に向かって進むべきだ。だから戦略的にこう考えて進めるべきなのは自明だ」

「いやいや、この際は達成するかどうかよりも、相手の顔を立てることが何よりも大事でしょ」

「なに緩いこと言っているの?戦略とか相手の顔とか関係ないでしょ。この際、手段を選ばずに1番にならなければ意味がない」

と言うように平行線の議論が続き、お互いに「なんで、こんな当たり前のことを相手は理解しないのだろう?」とストレスが溜まるのです。「自分の資質が、世の中では一般的なものだ」と考えてしまった結果、自分の価値観を押しつけてしまうのですね。

 

ここで、お互いがこの「ストレングス・ファインダー」を受けて、相手がどんな資質を持っているかを理解すれば、

「なるほど、この人は戦略的に考えているから、私のように情に流されないんだな。ここは首尾一貫させるのもいいのかもしれない」

「なるほど、この人は私よりも相手に共感する力が強いから、こう言っているんだな。確かに一理あるな」

「なるほど、この人は競争志向だから1番にならないと意味がないと考えるんだな。ここは、いかにライバルに勝つかも考える必要があるかもしれない」

と、お互いに理解できようになるのです。

このように本書は、仕事では同僚を理解し、チーム力を上げるのにも役立ちます。

 

本書を知ったきっかけは、ヤッホーブルーイング・井手直行社長の著書「よなよなエールがお世話になります」を読んだ時でした。

井手社長は社内で、ストレングスファインダーを受けた社員同士でお互いの資質を共有し、「〇〇さんは『着想』を持っているから、これを任せよう」とか、「〇〇さんは『指令性』を持っているから、彼にまとめて指示を出してもらおう」というように、社員一人一人の強みを活かした仕事を担当するようにしています。

 

本書は、家族同士がお互いの価値観をより深く理解し合うのにも役立ちます。私生活のパートナーは比較的価値観は共有しているものですが、自分と常に同じ価値観を持っているとは限りません。私自身、パートナーにこのストレングスファインダーを受けてもらい、自分と相手の価値観に違いがあることを知ったのは、大きな発見でした。

 

本書は、「みんな一人一人違う。それぞれが、それぞれの資質を持っている。その資質が強みになる」という当たり前のことを、とても具体的に教えてくれるという点で、とても役に立ちます。

相手の資質を理解することで、自分との違いを認識すれば、お互いの理解が深まるはずです。

(なおアマゾンの書評を見ると、中古の本のアクセスコードではストレングス・ファインダーは受けられないようです。ご注意下さい)

 

 

■当コラムは、毎週メルマガでお届けしています。ご登録はこちらへ。

Facebookページで「いいね」すると、さらに色々な情報がご覧になれます。