やってるつもりで、できていない仮説検証


「仮説検証を、ちゃんとやりましょう」というと、「やっていますよ。(…耳タコなんですけど…)」という答えが返ってくることが少なくありません。しかし現実には、仮説検証のあるべき姿を理解せずに、まったく回っていないことも多いのです。

【できていない仮説検証】
たとえばある営業部のケースを考えてみましょう。
この営業部では、前期の売上目標に対し、売上実績は10%足りませんでした。
そこで営業の鈴木部長が「仮説検証しよう」と営業課長に呼びかけて、反省会が行われました。

鈴木部長 「売上が10%未達だったのは、なぜだろう?」
山田課長 「A社が契約できなかったからです。取れていれば目標達成でした。正直言って、担当営業の粘りが今ひとつだったと思います」
鈴木部長 「担当は誰だっけ?」
山田課長 「佐藤君です」
鈴木部長 「そうか。A社が契約できなかったのは指導不足が原因だな。山田課長は佐藤君にコーチングをお願いします。他には?」
山下課長 「今期出荷予定だった新商品の出荷がずれたことも痛かったですね。あれが出荷されていれば売上が大きかったので」
鈴木部長 「なるほど、問題は開発部だな。商品出荷の件は、私から開発担当の斎藤部長に、『それじゃ困るよ』と申し入れしておこう。他には?」
山田課長 「思いつくのはこの2つですね」
鈴木部長 「以上だな。仮説検証終了。今期も頑張ろうっ!よろしくっ!」

よく見かける光景ですが、これは仮説検証ではありません。
一見すると前期目標を元に反省会を行って議論しています。しかし「犯人捜し」しかしていません。

 

では「あるべき仮説検証」とは、どのようなものでしょうか?具体的に見ていきましょう。

【あるべき仮説検証】
まず、営業プロセスを、次のようにパターン化して考えます。

(1)顧客とのコンタクト → (2)課題と解決策の特定 → (3)提案 → (4)成約

そして期初に、目標売上を達成するために、過去の実績データを元に、このような仮説を立てたとします。(かなりシンプルにしています)

(1)顧客コンタクト数 2000件
(2)課題と解決策を特定した、発掘案件数 400件 (仮説:顧客コンタクト数の20%)
(3)提案案件数 200件 (仮説:発掘案件数の50%)
(4)成約案件数 100件 (仮説:提案案件数の50%)
→ 今期売上 10億円 (仮説:平均案件単価1000万円)

この仮説に対して、結果がこうなったとします。(仮説と違う部分を赤字にしています)

(1)顧客コンタクト数 2000件
(2)課題と解決策を特定した、発掘案件数 600件 (結果:顧客コンタクト数の30%
(3)提案案件数 300件 (結果:発掘案件数の50%)
(4)成約案件数 90件 (結果:提案案件数の30%
→ 今期売上 9億円 (結果:平均案件単価1000万円) →目標に10%未達!!

このように図にするとわかりやすいと思います。

この結果を元に、仮説と実績の差が出た原因がどこにあるのかを議論していきます。たとえばこんな感じです。

鈴木部長 「発掘数と提案数は仮説の1.5倍ですが、成約数が少ないですね」
山田課長 「本来は提案数の50%が成約するのに、30%に留まっています。提案書の品質の問題です。提案書をチェックしましたが『お客様の課題把握が中途半端な提案書が多い』というのが実感です」
鈴木部長 「なぜ提案書の品質が悪かったのでしょうか?」
山下課長 「今期、『売上拡大のために提案数を増やそう』と号令がかかりました。だから発掘数が1.5倍になりました。しかしこの結果、課題把握が不十分な状態で提案する案件が多くなってしまいました」
鈴木部長 「なるほど。言い方は悪いですが『提案書の粗製濫造』ですね…。それは反省ですね。私たちは売上至上主義に陥りかけていますね」
山田課長 「前期の学びは、『数と量を追いかけてはいけない』ということですね」
山下課長 「改めて、『最優先はお客様の課題把握』ということを徹底する必要がありますね」
鈴木部長 「今期は、お客様の課題見極めを徹底して、的確に課題に応えられる案件に集中し、提案の質の向上を目指しましょう」

このように、仮説検証で行うべきは、キチンと当初に立てた仮説に立ち戻り、その仮説を結果と事実で付き合わせて、ギャップが生じた原因を突き止めることです。

両者を比較すると、問題がよくわかります。
前者の「犯人を捜す」の反省会は、仮説に立ち戻らず、結果の数字だけを見た対症療法であり、本質的な問題に踏み込んでいません。
後者の「原因を探す」仮説検証では、数字と事実を元に仮説に立ち戻り、数字に現れない現実を把握している現場のマネージャーと本質的な議論を行い、問題を解きほぐしています。

このように、当初の仮説に立ち戻ることで、新たな学びを得ることができ、仮説を進化させることができるのです。

なお、11月1日に行う朝活勉強会「永井塾」のテーマは、この仮説検証です。現在、参加者募集中です。

 

 

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