永井孝尚ブログ

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Facebook「いいね」機能は、経営陣は反対だった

SNSに投稿する人たちがどうしても気になるのが「いいね」の数ですね。「いいね」の機能は、FacebookがSNSの世界で初めて実装しました。Facebook急成長の1つの要因はこの「いいね」機能でした。いまやTwitterやInstragranなどの多くのSNSが「いいね」機能を標準装備しています。

でもこの機能、当初は経営陣が反対していたことをご存じでしょうか。

この機能は2007年に、同社のプロダクトマネジャーだったリア・パールマンが中心になって開発した機能です。

当時のFacebookは創業3年目。問題を抱えていました。人気投稿にはコメントが沢山つきますが「すごい」「おめでとう」という簡単なモノが多く、意味のあるコメントが埋もれていたのです。

パールマンたちは「解決策はないか?」と社内で議論を繰り返し、9ヶ月かけて辿り着いたのが「awesome (すごい)」というボタンを付けること。実際にプログラムを作って動かしてみたら、社内の評判も上々です。

しかし2007年年末、ザッカーバーグCEOなどの経営陣に最終承認を得ようとしたところ、「簡単に応答できてしまうと、ちゃんとしたコメントが減るんじゃないの? あとawesome(すごい)よりは、like(いいね)がいいと思う」と反対されてしまいました。

そこで開発チームは「この機能でユーザー同士のやり取りは増える」という実データを見せて、経営陣を説得。そして「awesome(すごいね)」は「like(いいね)」に変更しました。

2009年2月、ザッカーバーグの最終承認の後、2009/2/10、「いいね」機能は発表されました。当時の発表文はこちら

この「いいね」機能のおかげで、Facebookは極めて強い拡散力を獲得し、GAFAの一角を占めるまでに成長しました。

(以上は、こちらの記事を参考にしました)

当時、Facebookの開発チームも経営陣も、この小さな「いいね」機能が、SNS全体をここまで変貌させる強力な機能だったとは知りませんでした。

このように「実際にやってみないとわからない」という話は、世の中にたくさんあります。

マクドナルドがビッグマックの肉を大幅増量した「メガマック」を発売した際にも、「ヘルシー志向の世の流れと逆行するのでは?」という反対もありました。しかし大ヒットしました。

さらに昔でいうと、日本ビクターが開発したVHSビデオも当初は社内で大反対のお荷物プロジェクト。しかし大成功して、ビデオデッキの標準になりました。

商品が成功するかどうかなんて、事前にはなかなかわかりません。サケの産卵のようなものです。サケは3000個の卵を産みますが、成魚になるのは2-3匹。卵を一つ一つ選別しても、それが成魚になるかなんてわからないのと同じです。でも「成功確率は2/3000で低いから、産卵なんてやめよう」ともしサケが考えたとしたら、サケは絶滅してしまいます。

だから大ヒット商品を生み出すには、現場社員が様々なことに自由に挑戦し、意思決定者(日本企業では部長や部門長レベル)が反対しても現場社員が対等に反論できるような組織文化が必要です。

あなたの組織はいかがでしょうか?

 

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プレゼンは事実でなく、インサイトを示せ

多くの人のプレゼンを見てきました。

感覚的な話しですが、全体の8〜9割くらいの人が「プレゼン資料で、このポイントを改善するだけで、説得力が格段に上がるのになぁ」と感じることがあります。

それは、事実だけを述べていること。

たとえばプレゼンで、こんなチャートをよく見かけます。

でもこれだけの情報を見せられても、聴き手は「で?」なんですよね。

こんな事実を次々と列挙する話を延々と聞かされて終わり…というプレゼンも、たまにあります。確かに事実は大事なのですが、プレゼンで事実を伝えるだけでは、聴き手の時間をムダにしています。

プレゼンの目的は、聴き手を動かすこと。
聴き手が知りたいのは、「だから、要はナニ?」なのです。

このように資料を変えると、資料にメッセージが宿ります。(これは先週のコラムで紹介したGOの事例を、私がチャートに書き起こしたものです)

ポイントは、「この事実には、こんな意味がある。だから私はこうしたい」なのです。

聴き手がそのメッセージに共感すれば、聴き手は動きます。「聴き手を動かす」という目的を達成できるプレゼンとは、事実ではなく、インサイト(洞察)を伝えるプレゼンなのです。

そのためには、その事実を元に「これはどういう意味か?」→「自分はこの事実を元に、何をしたいのか?」を考えて、言葉にすることです。

あなたの今度のプレゼンに、インサイトはありますか?

今一度考えてみるだけでも、今度のプレゼンの説得力は、大きく変わってくると思います。

 

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タクシーに乗って、DXの本質を知る

先日、タクシーでやや長距離を移動したときのこと。

私は長距離は、なるべく個人タクシーを使うようにしています。
運転が丁寧ですし、道に迷うことがまずないからです。
しかしこの時はラッシュ時で、個人タクシーが掴まりません。
そこでタクシーアプリの「GO」で、日本交通のタクシーを呼びました。

5分程度で来てくれました。運転手は20代の若い男性です。いつも通り道順を伝えると…。

「その道順よりも、こっちの道順の方が3分ほど早く着きますが、いかがしましょう?」

GOでタクシーを呼ぶ際、目的地の住所指定をしたので、行き先はカーナビに自動セットされているのですね。(ちなみにタクシーを呼ぶ時は住所入力は不要で、地図上で建物をクリックするだけです)

お任せしたところ、「こんな道あったの?」と思うほどの抜け道を走り、あっという間に到着しました。

でもこの若い運転手が、抜け道を知っているわけではありません。カーナビの通りに走ったわけですね。

2022年11月18日のテレビ東京・ワールドビジネスサテライトを見ていたら、まさにこのことを紹介していました。

番組に登場した20代の女性運転手は、乗務歴4ヶ月。でも既に売上は営業所の平均です。その秘密が、GOの活用。

これまでタクシー運転手は、空車の時には流しで運転し客を掴まえるのに独特の勘が必要でした。運転には土地勘も必要でした。つまりタクシー業界は、ベテラン運転手が稼げる市場だったわけです。

しかしGOなら、自動的に乗客と車両をマッチングして、行き先も丁寧に教えてくれます。つまり知識がなくても稼げるわけです。しかもタクシー運転手は、比較的時間に拘束されずに自由に働けます。ですので20代でタクシー運転手になる人も増えています。

GOを運営するMOT(モバイルテクノロジーズ)の中島宏社長によると、タクシー会社に入社して数ヶ月で年収600万円稼げる方も出てきているそうです。

このため、GOでは決済システム、配車アプリ、タクシーに乗せるタブレットなどが全て連動しています。この結果、タクシーは利用者にとっても実に使いやすくなりました。

・乗車率 6割(GO開始前)→9割(GO開始後)
・支払い時間 40秒(車内決済)→15秒(GO決済)
・待ち時間 6分半(電話配車)→3.4分(アプリ配車)

この先のビジネスもあります。

GOに登録する全国15,000台のタクシーは、常にドライブレコーダーで道路の状況を撮影して走っています。そこで撮影画像から標識や信号をAIが自動検知し、地図会社と連携して地図データ更新に活用しています。1日で地球10週分の走行距離の情報量。まさにビッグデータです。

さらにこのデータを活用して、自動運転の研究も進めています。

DXの本質は、ケタ違いの利便性と大きな価値を生み出して、業界を変革し、市場を拡大して、新たなビジネスを創造することです。

これまでタクシーは不便が沢山ありました。しかしその不便さは、同じ業界にいる人ほど、ある意味で当たり前でした。その不便を解決したのがGOでした。

GOの前身は、ジャパンタクシーというタクシー会社である日本交通が設立した会社です。10年前に「このままでは日本のタクシー業界は、ぜんぶUberにやられる」という危機感を持った日本交通トップ・川鍋一朗さんが、タクシー配車アプリを始めたのがきっかけです。

このGOの挑戦は、まさにDXの本質です。

あなたの業界では、どのような危機感を持っていますか?
その危機を克服するために、どんな取り組みをしていますでしょうか?

 

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「役職定年」、賛成? 反対?

2022年11月9日の日本経済新聞に、こんな記事が記載されていました。

「NEC、さらば役職定年 管理職に1000人復帰」

役職定年とは、ある年齢(55歳とか)になったら一律管理職から外す制度です。 組織の新陳代謝を図り、人件費を削減することが目的です。だから管理職を外れた方は、収入も減ります。この「役職定年」は多くの企業で導入されていますが、最近、この制度を廃止する企業が増えているという記事です。この記事ではNECが1000人を管理職に復帰させた例が紹介されています。

これは色々な見方ができますね。

「もっと若手に機会を与えるべき。役職定年は継続すべきだ」
「55歳で一律給料を減らすのは、やる気を失わせる。廃止に賛成」
「ウチの部長、役職定年でいなくなってよかったと思ったら、役職定年廃止で部長に復帰だよ。カンベンして欲しい」
「会社に数十年勤めているということは、スキルが高い裏返し。もったいない。廃止に賛成」

どれもごもっともな意見に見えます。あなたはどのように考えますか?

私は年齢的に、会社員だと役職定年をされる立場です。
ですので私の同年代の会社員と会う機会が多いのですが、彼らを見ていると、役職を外されたり給料が下がったりして、ちょっとつらそうです。

高いスキルを持つ人も多いので「これって、社会全体で見て損失じゃないの?」と思ったりします。

もちろんシニアにもいろいろあります。時代遅れのスキルしか持っていなければ、責任ある仕事はちょっとムリでしょう。ですので役職定年を廃止する場合でも、ちゃんとその人が役職に見合ったスキルを持っているかを検証することが大前提だと思います。

年齢で役職を区切るのは、そもそも年齢的な差別でもあります。
しかし本来、これはシニアだけの問題ではありません。

「女性だから管理職はどうかな」というのも差別。
「若いからまだ課長には早い」というのも差別。
「日本人じゃないから管理職は無理じゃないの?」というのも差別です。

女性だったり、若かったり、外国籍だからという理由で役職に就けないのも「社会全体で見て損失」ですし、公平とは言えませんよね。

役職定年は確かに不公平ですし社会の損失ですが、日本では他にも様々な点で不公平と社会の損失があります。

不公平がなくなり、誰もがやりがいをもって能力を発揮できる世の中になるといいですね。

 

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ダイヤモンド「銃・病原菌・鉄」から考えた、昆虫食

「昆虫食」をご存じでしょうか? 牛や豚に代わって、コオロギや蚕を蛋白源にしよう、という考え方が登場し、昆虫食ビジネスを手掛けるスタートアップ企業が注目を集めています。

「コオロギや蚕を食べるの? ムリムリ」と思うかもしれませんが、粉末状にしたりして無理なく食べる技術も開発されています。

ジャレド・ダイヤモンドの名著「銃・病原菌・鉄」を読んでいたら、この昆虫食が優れていることを裏付けるヒントが書かれていました。

本書は壮大な人類史の進化について書かれた本です。1997年刊行なので、当然のことながら昆虫食については何も書かれていません。

一方で本書には、人類が家畜を飼うようになった経緯の一節があります。人類は野生動物を家畜化したわけですが、家畜化するには次の5つの条件をすべて満たす必要がある、と書かれています。

①餌の問題 草食哺乳類は体重の10倍の餌が必要になります。肉食哺乳類は、餌の動物を育てるために体重の100倍の餌が必要。なので肉食哺乳類は効率が悪いため家畜化できません。

②成長速度 牛や豚は早く成長します。ゴリラや象は成長に15年かかるので、家畜としては効率が悪いのです。

③繁殖上の問題 家畜は繁殖させる必要があります。しかしチータのように人前で交尾しない動物は繁殖できません。人前で交尾を恥ずかしがらないことが家畜の条件です。

④気性の問題 大型哺乳類は人を殺せるので、気性が穏やかでないと危険です。熊は実は美味しいそうです。でも人を殺すので家畜化できません。

⑤序列ある集団を作るか 群れを作る動物は序列が明確なので、人間が頂点に立てば支配できます。山羊の群れとかはまさにそうですよね。

昆虫をこの5つの条件に当てはめてみると、こうなります。

①餌の問題 2013年に国連食糧農業機関が発表した昆虫食に関する報告書によると、タンパク質1Kgを生産するために必要なエサの重量は、コオロギは1.7Kgだそうです(ただし諸説あり)。資源効率化が問われる現代では、この効率性は極めて重要です。

②成長速度 コオロギは卵から1ヶ月で3cmに育ちます。従来の家畜と比べて、もの凄く速いですね。

③繁殖上の問題 昆虫の繁殖は、哺乳類と比べて比較的簡単です。

④気性の問題 昆虫は適切に管理すれば人に危害を与えません。

⑤序列ある集団を作るか これも適切に人間が管理できます。

こうして整理してみると、コオロギや蚕などの昆虫は、驚くべきことに理想的な家畜であることがわかります。

少し見方を変えることで、今まで私たちが当たり前に見ていたモノが、大きな可能性があるビジネスに変わります。ビジネス・チャンスは、この潮目を見極められるかどうかにあるのですね。

 

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