「成熟社会だから、現状維持でいいのでは?」

先日の朝活勉強会「永井塾」で、こんなご質問をいただきました。

「現代は、人口が減っている時代です。『常に変わり続け、成長していくべき』ということですが、『成長は目指さず、安定状態を維持する」という戦略に切り換える考え方もあるのではないでしょうか?」

確かに高成長が望めない今、「ほどほどで安定できればいい」とも考えたくなるのはよくわかります。
しかし実は、現状維持で安定するためには、変わらなければならないのです。

自分は変わっていないつもりでも、周囲は常にレベルアップしているからです。
自分が変わらなければ、周囲と比べると、相対的に衰退してしまうのです。

アップルは2007年にiPhoneを発表、スマホが本格的に普及し始めました。当時のiPhoneは革新的でライバルを圧倒しましたが、その後ライバルたちが登場。しかしアップルは常にiPhoneの機能強化を続け、出荷金額ベースでスマホ市場のリーダーであり続けています。もしアップルが2007年の初代iPhoneのまま何も変えていなければ、あっという間にライバル勢に追い抜かれています。

このようにライバルに圧倒的に優位でも、いつかは追いつかれます。周りの状況も変わり、必ず時代遅れになります。

だから現状維持するためには、常に変わり続けることが必要なのです。

絵にすると、こうなります。

常に変わり続けるか?さもなくば、衰退と死を受け容れるか?

成熟市場だからこそ、現状維持するためには変わり続けることが必要なのです。

 

 

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「リスクを取らないこと」が、最大のリスク

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「新しいことをやるにも、そんな人がいないよ」
「そもそも、スキルがないし」
「だいたい、失敗した場合に責任が取れるのか?」

 こんな話をよく聞きます。

確かに組織やチームを預かる立場では、今の仕事をそのチームで回すだけでも精一杯。今の仕事だけでも大変なのに、その上で新しいことに挑戦なんて、ムリと思いがちです。

しかしお客さんも市場も、凄いスピードで変わり続けています。こんな状況で最大のリスクは、何も変わらないために、自分たちが取り残されて、賞味期限を起こしてしまうこと。いまや「リスクを取らないこと」が最大のリスクなのです。

 

たとえば馬車全盛期、自動車が生まれました。「当社の本業は馬車だ」と変化を拒んだ会社は急速に消滅しました。

写真フィルム全盛期にデジカメが生まれました。売上・利益の6割超を写真フィルムに依存してた富士フイルムは、変化を受け容れ、新たな挑戦をし、今も成長しています。一方で写真フィルム事業から脱却できなかった会社は消滅しました。

新しいことに挑戦しない限り、組織そのものが消滅してしまう時代なのです。

 

新しい挑戦には、必ずリスクはつきものです。

もしリスクがないとしたら、それは挑戦でも何でもありません。

何も挑戦しない段階でリスクばかりを議論し、ひたすらリスクを回避し続けていたら、新しいものは何も生み出せないし、ましては新しい価値なんて創れません。

 

だから真っ先に考えるべきは、まず「何もしない、やらない」「変わらない」という選択肢を捨てること。

そして「変わる」「新しいことをやる」と決めた上で、挑戦することです。

そして「こうすれば上手くいくのではないか?」という仮説を立てて、挑戦しながらその仮説を検証し、その仮説が間違っていたら、即座に仮説を修正すること。

「リスクマネジメント」という言葉があります。「リスクを徹底的に避ける」という意味に捉える方が多いのですが、本来はリスクを回避するのではなく管理するのが、リスクマネジメントです。新しいことに挑戦してリスクに出会ったら、それを避けるのではなく、正面から取り組み管理することで対応すべきなのです。

たとえば、「日本一の星空ツアー」で有名な阿智村で、拙著「そうだ、星を売ろう」で紹介しなかったエピソードがあります。

当初、「真っ暗な中でお客さんを連れて行くなってリスクだ」という声が多かったそうです。しかし実際にはそれ自体はライトアップを徹底する等で対応可能でした。実は誰も気がつかなかった最大のリスクは、雷でした。阿智村は雷多発地域。星空ツアーは真っ暗な中、15分ロープウェイで移動します。ロープウェイに落雷すると、ロープウェイは停止します。こういう状況になると乗客はパニックを起こすかもしれません。つまり真っ暗な中で乗客を乗せたまま、ロープウェイが落雷で停止するのが、最大のリスクだったのです。そこで阿智村は、雷発生30分前に雷を探知するシステムを整備し、雷を探知したらすぐに客を乗せるのを止め、すべての客が降りたらロープウェイを停止させるようにしました。つまりリスクは自分の管理下に置く。これがリスク管理の考え方です。

仮説を検証し続けて進化させ、そこで発生するリスクも管理し続けることが、学びの集積となり、それ自身が大きな差別化になるのです。

 

まず、「やる!」と決める。
そして、仮説を作る。
そして、その仮説を検証し続けるのです。

 

まずその一歩を踏み出せば、色々なことが変わってくるはずです。

 

 

 

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「100万社のマーケティング」に寄稿しました

宣伝会議が発行している季刊「100万社のマーケティング」2016年夏号に、記事「今、注目の手法&用語:イノベーター理論とキャズム理論」を寄稿しました。

100万社のマーケティング

知っているようで意外と知られていない「イノベーター理論」と「キャズム理論」について、テスラなどの電気自動車、浅田真央選手で有名になったエアウィーヴ、セールスフォース・ドットコムなどの事例を挙げながら、4ページでわかりやすく解説しています。

よろしければご一読ください。

 

 

 

 

オムニマネジメント2016年5月号に連載最終回『2020年東京オリンピックは、世の中を変えるイノベーションを生み出す』が掲載されました

一般社団法人日本経営協会様が発行する月刊オムニマネジメント2016年5月号に、『2020年東京オリンピックは、世の中を変えるイノベーションを生み出す』が掲載されました。

オムニマネジメント201605

 

実は前回1964年の東京オリンピックでは、その後の日本を変える大きなイノベーションが数多く生まれました。それは1964年〆切厳守の無理難題にチャレンジせざるを得なかったからです。

今回2020年の東京オリンピックも、同じように今後の日本を変えるイノベーションを生み出す可能性は、とても高いのです。

本論文ではそのことを述べました。

もしご覧になる機会がありましたら、お手にとってご一読いただければ幸いです。

 

今回で連載12回目、最終回となりました。このような連載の機会をいただきましたこと、感謝します。

真冬の北国で採れたトロピカルフルーツが、なぜ1個2万円で売れるのか?

十勝マンゴー

3年前、北海道・帯広市にお招きをいただき、講演をした時、こんな話を聞きました。

「実は、帯広では真冬にマンゴーを1玉2万円で出荷しています」

最初に思ったのは、(なんで真冬に、帯広でマンゴー?しかも1玉2万円?)

 

北海道・帯広がある十勝地方と言えば、まさに厳寒の地です。
そもそもこんな場所で、どうしてマンゴーを、真冬に作っているのか?そして高く売れるのか?
しかも自然エネルギーだけで栽培しているそうです。
不思議ですよね。

 

日本国内のマンゴーの主産地は、宮崎です。九州の温暖な気候の中で、春から夏にかけて収穫されます。

一方でマンゴーは、年末年始の贈答用としても高い需要がありました。この時期はクリスマス需要も見込めます。
しかし九州とは言え真冬は当然ながら寒いわけで、マンゴーを栽培するのは難しかったのです。

「マンゴーを12月に出荷できないか?」

そこで宮崎のマンゴー農家と、帯広で事業を展開するノラワークスジャパンという会社が、協業を始めました。
2010年11月に宮崎県から成木を移植して栽培を開始。2011年5月には20個を収穫、十勝でもマンゴーが実ることを確認しました。

 

しかしマンゴーを冬に収穫するためには、マンゴーに6ー7月が冬で、12月が夏だと錯覚させる必要があります。そこで大型ハウス栽培に挑戦しました。

しかし石油や電気エネルギーを使って大型ハウスを暖房・冷房していては、お金もかかります。地球にも優しくありません。では、どうするか?

そこには逆転の発想があったのです。

 

十勝地方の冬、大雪が積もります。
そこで夏場は、木屑をかけて保存した雪山から、大型ハウス地下にパイプを通して水を循環させ、真夏の地水の温度を下げるようにしました。これでマンゴーは真夏を「南国の冬」と錯覚します。

また十勝地方には、「美人の湯」として知られる十勝温泉があります。
そこで冬場は、この温泉水を循環させて、冬場でもハウスを30度以上の温度を保つようにしました。これでマンゴーは、冬場を「南国の夏」と錯覚します。加えてミネラル豊富なこの温泉水は、マンゴーの木にも与えられています。

さらに十勝地方は年間平均日照時間が2033.2時間。これは北海道内ではトップクラス。日本国内でも、宮崎市や高知市、和歌山市といった日照時間が長い地域と比べて遜色がありません。冬も晴天が続きます。このおかげでマンゴーも完熟します。

実は帯広・十勝は食糧自給率は1100%。わが国有数の食料生産基地なのも、この国内有数の日照時間のおかげなのです。

 

このおかげで、日本一の糖度15度超、さらに繊維質も少なくとろける味わいのマンゴー生産に成功しました。
十勝で生まれたマンゴーは、「白銀の太陽」と名付けられています。

十勝マンゴーは、「マンゴーはシーズンもの」という従来の常識を覆して「クリスマスに美味しいマンゴーを届ける」というイノベーションを実現し、「年末年始の贈答」「クリスマス需要」という「お客様が買う理由」を創りあげ、新たな顧客を創造したのです。

 

【参考リンク】
十勝マンゴー、冬取り成功(十勝毎日新聞社ニュース)

「白銀の太陽」通販サイト

 

ガラガラの紳士服店は儲かっているのか?

紳士服

家の近所に、全国でチェーン展開している紳士服専門店があります。

店の前をよく通りがかるのですが、お客さんはあまり入っていません。店員もまばらですが、店内にはかなり多くの商品を展示しています。

「お客さんも店員も、ほとんどいない。商品は沢山ある。儲かっているんだろうか?」

同じように不思議に思っている方も多いのではないでしょうか?

私も不思議でしたので、調べてみました。

 

そもそも紳士服専門店各社は、儲かっているのでしょうか?大手4社の2015年度業績は次の通りです。

青山商事   売上 2221億円 経常利益 247億円
AOKI   売上 1838億円 経常利益 189億円
はるやま商事 売上 504億円 経常利益 31億円
コナカ    売上  386億円 経常利益  11億円

どこもしっかり儲かっていますね。

しかし「紳士服専門店」というと、思いつくのはこの4社。
他にも横文字チェーン店があります。でもThe Suit Companyは青山商事、ORIHICAはAOKI、Perfect Suit JOYははるやま商事、SUIT SELECTはコナカが展開しています。世の中で目にする紳士服専門店のほとんどは、この4社で占めています。よく考えてみると不思議ですね。

 

そこで「紳士服専門店」という業態ができた経緯を調べてみました。

紳士服専門店は、1970年代から1990年代にかけて急成長しました。先鞭を付けたのは「洋服の青山」の青山商事です。

1970年代当時、紳士服は主に百貨店で売られていましたが、1着で給与1ヶ月分と、会社員にとっては高価でした。

そこで青山商事創業者の青山五郎社長は、「スーツを気軽に1ヶ月分の小遣いで安く買えるようにしよう」と考え、自社で開発・生産し、自社の店頭で売るようにしました。

これはSPA(製造小売販売)モデルという形態で、ユニクロやGap、最近ではAppleも展開しています。自分で材料の調達から、生産、配送、さらに店舗でお客さんに売るところまですべてをカバーしているので、自社商品に最適化でき、高収益になるのですね。

 

ただ、「紳士服専門店が儲かっているのは、自社で調達・生産・販売するSPAモデルで展開しているのが理由だ」と言われても、なんだかしっくりきませんよね。他にも理由がありそうです。

そこで青山がどのように生まれて成長したかを見てみましょう。

 

1972年、既に紳士服販売に特化して6店舗を展開していた青山商事の創業者・青山五郎社長は、同業他社のトップと一緒に「米国商業視察ツアー」に行きました。

視察の途中、サンフランシスコ郊外の巨大ショッピングセンター(SC)に立ち寄りました。周囲は何もない荒野ですが、賑わっています。ここで青山社長は疑問を持ちました。

「そもそも誰もいない郊外に、こんな巨大な商業施設を作って、なぜ商売が成り立つんだろう?」

当時の日本の常識は、「人が集まるところに店を出そう」だったのですね。

翌日。青山社長は別の視察先に行く一行から離れ単独行動を決意。タクシーを100Km飛ばしてその巨大SCに戻り、気がつきました。

そのSCの前には幅100mの大きな幹線道路があり、建物の数倍の面積を持つ巨大な駐車場が併設されていたのです。「カーショッピング」という、当時の日本には存在しなかった、まったく新しい販売形態だったのですね。

当時、日本でも家庭に自家用車が急速に普及し始めていました。青山社長は考えました。

「これはそのうち日本にやってくる。しかも、まだ誰も気づいていない」

一方で、この販売形態で特有なこともわかってきました。

まずこのやり方は、土地代が高い都会では無理。郊外だからこそ可能です。

一方で都会の買い物では、店に立ち寄るお客さんは多いものの一見客も多く、必ず買うとは限りません。しかし青山の場合、カーショッピングで紳士服専門店に車で来るのですから、消費の目的は明確に「紳士服を買うこと」です。

「これはいける」と考えました。

1974年、周到に準備を重ねた青山商事は、郊外ロードサイド型店舗(幹線道路の脇に建てて車で買い物にくるタイプの店)の一号店を広島県東広島市の西条町に出店しました。

当時、紳士服店は繁華街に出店するのが常識。そこへ、田んぼの真ん中に売り場面積70坪の紳士服専門店が突然あらわれました。当時地元の同業者たちは、「青山は気がふれた」と笑っていたそうです。

さらにオープン当初、お客さんは店に一人も来ませんでした。目の前の幹線国道を走るのは、トラックやライトバンなどの商業車ばかりでした。そこで手持ちぶさたの店長と販売員は、手分けして半径15Kmにくまなくパンフを定期的に配りました。

半年後、徐々に客が来るようになりました。そしてその客はほぼ100%、紳士服を買いました。

2号店以降は事前に販促活動を徹底してから開店するようになり、開店日から売れるようになりました。

こうして郊外ロードサイド型店舗の紳士服専門店の全国展開が始まりました。

 

このタイプの店に来るお客さんは「スーツを買う」という目的が明確で一見客はいないので、販売員も実際に買うお客さんに対応できる人数でOK。さらに商品が紳士服なので、販売員に必要な専門知識も絞り込まれています。販売員一人当たりでカバーできる店舗面積は、他業態と比べて格段に広くなります。だから私の近所の紳士服店も店員がまばらだったのですね。

来店する買う気満々の客には、確実に買ってもらうことが必要です。そこで紳士服に絞り込み、要望に対応できるように品揃えを幅広く用意しました。紳士服は1着数万円程度と高単価です。一日に10人来店し、1着ずつスーツを購入すれば、売上は一日数十万円。加えてSPAモデルなので粗利はその半分。収益性は高いのです。

「洋服の青山」を展開する青山商事を追って、各社も参入。紳士服専門店は、1990年代まで市場の成長とともに急成長しました。

 

一方で紳士服専門店というと、先に述べたように現在は青山、コナカ、AOKI、はるやま商事の4社ですよね。なぜいま、他の会社は参入しないのでしょうか?

紳士服チェーンは、1店舗で5万人の商圏をカバーする、と言われています。日本の人口は1億2600万人ですので、大まかに言うと2500店舗で飽和します。2015年時点の店舗数は次のようになっています。

青山858/コナカ344/AOKI557/はるやま商事477 →合計2236店舗

既にほぼ飽和状態です。この状況で、紳士服チェーン各社は新規出店と閉店を繰り返しています。つまり飽和市場で、既に強力な先行企業4社で寡占状態になっており激しく争っているので、他社はなかなか新規参入できないのです。

言い換えれば市場への参入障壁が高いため、4社で「残存者利益」を得ていることになります。

 

では市場全体はどうなっているのでしょうか?

矢野経済研究所「アパレル産業白書」によると、2007年に3099億円(小売金額ベース)だったスーツ市場規模は、団塊世代退職やクールビズ浸透により、2013年には2183億円に減少しています。

市場の成長段階にわけて戦略を考える「製品ライフサイクル」という考え方があります。図にするとこうなります。

製品ライフサイクル

この「製品ライフサイクル」で整理すると、紳士服市場は次の状況になっています。

導入期(1970年代前半) →一般的に、赤字です
成長期(1970年代後半〜90年代) →一般的に、利益が拡大します
成熟期(2000年代〜現在) →一般的に、利益は最大です
衰退期(現在〜将来) →一般的に、利益は減少します

既に紳士服専門店は市場として衰退期に入りつつあることも、新規参入がない理由なのでしょう。

このままでは、紳士服専門店はどこも収益が下がっていきます。そこで各社も多角化戦略を打ち出しています。

青山商事は、周辺アイテム(ドレスシャツ/靴)やカジュアル事業の拡大を図るとともに、レディスを強化、さらにEC/オムニ戦略を推進、加えて飲食事業や海外展開(主に中国)が成長しています。 →参考リンク

AOKIホールディングスは、機能性商品開発やブランド化(CAFÉ SOHO)を図るとともに、レディスを強化。さらにブライダル事業、カラオケルーム運営事業、複合カフェ市場も展開を始めています。→参考リンク

各社の今後の戦略は、「アンゾフの成長マトリックス」という考え方で整理できます。

アンゾフの成長マトリックス

 

この考え方で各社の今後の戦略をおおまかに整理してみると、

市場浸透戦略(既存客に、既存商品をより浸透させる)→EC/オムニ戦略、機能性商品、ブランド化
市場開拓戦略(新規顧客に、既存商品を売る)→海外展開、レディス
新商品開発(既存顧客に、新商品を売る)→カジュアル化
多角化戦略(新規顧客に、新商品を売る)→飲食事業、カラオケ(郊外展開の相乗効果を考慮)

ということですね。

 

世の中の変化を誰よりもサキドリし、「お客様が買う理由」を創りあげたのが、青山をはじめとする紳士服専門店が成功した大きな理由です。

さらに市場全体を製品ライフサイクルなどの大きな時間軸で見ると、打つべき手も見えてきます。

そして各社の戦略も、マーケティングの考え方で整理できます。

 

 

身近な紳士服チェーンから、自社にあてはめて学べることも多いのではないでしょうか?

 

 

 

変革は、若者しかできないのか?

変革

「やはり、若い人でなければ変革はできないのでしょうか?」

講演の質疑応答で、こんな質問をいただきました。

この講演では、ある地域活性化の取り組み事例をご紹介しました。

5年前、急速に衰退する地域にいる30代の若い方が「このままでは子供たちにこの地域を引き継げない」という危機感を持ち、賛同する少人数の同志と一緒に地域活性化に取り組みました。そして5年間で大きな成果を上げ、仲間も広がり、この地域は賑わっています。仲間の多くは若い方々です。

そこで冒頭の質問をいただいたのです。

地域活性化は、大きな変革プロジェクトです。
経験豊富な反対派も次々と現れ、チームは様々な組織的な壁にぶつかります。ともすると若者だけでは突破が難しいケースもあります。

この地域では、最初に志を共有した同志の中には、60代の経営者もいました。経験豊富なこの人がいたおかげで、組織的な問題にも対応でき、突破できました。

 

人は経験を重ねて成功すると、その成功体験が正しいと思いがちです。
しかしその成功体験は、賞味期限が切れてしまいます。

たとえば高度成長期、かつては一部の人しか楽しめなかった旅行が、低価格化と可処分所得の増加により一気に大衆化しました。この現象が「マスツーリズム」です。実際に私が学生の頃は、単に「海外旅行したい」という単純な理由で欧州に行く人も少なくありませんでした。

かつては顧客は「大衆」と考えるマスツーリズムは、成功の方程式でした。

しかし価値観が多様化し、成熟化した現代では、「海外に行きたい」という単純な理由だけで旅行する人はほとんどいません。多くの人は「エジプトのピラミッドを見たい」とか「フロリダのディズニーリゾートで遊びたい」といったように、自分の価値観にあった明確な理由で旅行に行きます。

こんな時代に、高度成長期のマスツーリズムの成功体験で「大衆向け」の集客をしても、お客さんは集まりません。
顧客は「個客」になったからです。

このようにかつての成功体験は、時代の移り変わりとともに賞味期限が切れていきます。
ですから、その昔の成功体験を、問題意識と志を持ってリフレッシュできるかどうかが重要なのです。
この地域で若いリーダーと志を共有していた60代の経営者の方も、「このままでは衰退するばかりだ」という大きな問題意識を持っていました。だから変革出来たのです。

 

83歳になるセブンアンドアイの鈴木敏文会長は、常に「変化対応」と言い続けています。鈴木会長は、1945年に第二次世界大戦で日本が敗戦したことで、価値観が根底からひっくり返ったことが原体験になり、常に変革し成長し続けるセブンイレブンを生み出したのです。

 

確かに若い人は、シニアな人と比べて経験値が少ないので、過去の成功体験に囚われません。新鮮な目で現状を見ることができ、過去に囚われることなく危機感を持つことができます。

では、若い人でなければ変革はできないのか?

そんなことはありません。重要なことは、「志と危機意識を持って、現状を否定できるかどうか」

経験を重ねてもそれが可能なことは、この地域の60代の経営者も、そして鈴木会長も、証明しています。

 

年齢を重ねても、問題意識と志を常に忘れないようにしたいものです。

 

 

世界で話題騒然のウーバー(Uber)。東京都内で乗ってみた

Uber

Uber(ウーバー)というサービス、ご存じでしょうか?
米国で生まれた自動車配車ウェブサイトと配車アプリです。
現在は世界58カ国で展開。普通のタクシー配車に加えて、一般の人が自分の空き時間と自家用車を使い他人を運ぶ仕組みも提供しています。このため米国ではタクシー業界が大きな影響を受けています。

一般の人が自家用車で他人を運ぶサービスは、日本では国交省の「白タク規制」にひっかかります。
実はUberは既に2014年から、「白タク規制」に引っかからない部分でサービスを開始しています。文化放送「オトナカレッジ」でお世話になっている放送作家・鈴木さんに教えていただいて、このことを知りました。

ということで私も先週、Uberを使ってみました。色々な発見がありました。

 

まず、Uberのアプリをスマホにダウンロード。設定は簡単です。メールアドレス、携帯電話番号、氏名、クレジットカード情報を入力します。これで個人が特定でき、自動決済できます。

この日は、東京・赤坂アークヒルズで仕事し、浜松町に移動するためにUberアプリを起動。近くで走っているUber対応の車が表示されます。

TAXI、プレミアムTAXI、ブラックVAN、ハイヤーの4種類別に、利用可能な車がどこにいるのかが地図で表示されます。車も地図上で刻一刻と動いています。このときはブラックVANとハイヤーのみが利用可能でした。5分程度で到着とのことでしたのでブラックVANを指定。車種はトヨタAlphard。ドライバーの氏名と顔、車種とナンバーも表示されます。若いドライバーでした。「この人が来るんだな」と事前にわかるのですね。

すぐに運転手の方から携帯電話に着信があり、待ち合わせ場所を口頭で確認。

アークヒルズ前の待ち合わせ場所で待ちながらスマホでUberのアプリを見ていると、地図上で今どこにその車があるかが表示されます。時間通りに到着し、乗り込みます。

ドライバーとお話しします。

「タクシー会社にお勤めなんですよね?」
「はい。今はUber専属でお客さんを乗せています」
「どの程度のお客さんがいるんでしょう?」
「毎日20件くらいですね。海外の方にとっては便利なようです。自分のスマホで自国語で表示されますし、日本語が話せなくても確実に到着地に着きますからね。お金の受け渡しもないので、安心です。自分の国でUberを使うのとまったく同じ感覚で使えるのがいいようですね」
「なるほど」

そんなことを話しているうちに、浜松町に到着しました。事前登録しているクレジットカード決済なので、ドアが開きそのまま何もせずに降ります。お金のやりとりをせずにそのままタクシーを降りるのはちょっと新鮮な体験ですね。

降車するとタクシーの領収書がメールで届きました。Uberアプリでも履歴が確認できます。プレミアムタクシーなので、実は普通のタクシーと比べると料金は若干高めです。通常1000円程度の料金が1990円でした。評価を付けられるので、最高の★★★★★にしました。

 

このように「白タク規制」がある日本では、タクシー会社だけがUberのサービスを提供しています。海外でタクシー会社でなく一般人がサービスを提供する場合も、基本は同じ仕組みのようです。

乗る立場になると「一般人が運転する車に乗るの?ボッタくられるんじゃないの?」とか、運転する立場になると「どんな客が乗るかわからない。怖い」と思いがちです。しかし顧客と運転手が互いに評価しあい、その評価をオープンに公開することで、事前にどのような人が運転したり乗ったりするかがわかり、未然にトラブルを防いでいるのです。

さらに海外では、自家用車を運転する一般の人が「A地点から、B地点を経由して、C地点に車で移動します。乗りたい人はどうぞ」とネットに登録し、そこに乗りたい人が申し込む仕組みもあるようです。一般人がサービスを提供する場合は当然料金もタクシーと比べて安いですし、手軽に使えるので、今までタクシーを使わなかった新たな顧客を生み出し、需要も創造しているのですね。

Uberによる2015年半期の売上は推定500億米ドル(6兆円)にも達するとのことです。

 

当初、創業者がUberのサービスを思いついたときは、誰もが荒唐無稽なアイデアと言ったのではないでしょうか? しかしこのサービスが今や非常に大規模になっています。同じようなサービスを思いついた人は沢山いたでしょう。しかし実行するのが何よりも大切だということが、このUberの成功からわかります。

さらにこのUberの裏には、挑戦したけれども失敗して消えていった他の方々の膨大なアイデアがあるはずです。

 

「新規事業とは、こんな形で生まれて、育っていくのか」と思った次第です。

 

 

下町ロケット・佃航平は、ものづくりではなく顧客づくりをしていた

ロケット2

最終話は2015年連ドラ最高の視聴率22.3%を記録した、あの「下町ロケット」

私も第一話から最終話まで見ていました。池井戸ファンの私としては本も2冊読みました。そして気づいたことがあります。

この物語は一見、日本企業への「ものづくり賛歌」に見えます。
しかし物語が進むにつれて、実はそうではないことに気がつきました。

最初の頃の佃製作所は、高性能エンジン技術に特化してはいるものの、何に使えるかわからない儲からない技術にばかり投資し、過大な研究開発予算で会社のお金も回らなくなり、大口取引打ち切りもあって、何回も経営危機を迎えます。主人公の佃航平も、社員から「社長、もっと経営やビジネスのこと考えて下さい」と迫られ、「オレは経営者失格なのか」と悩みます。

その姿は、顧客が見えない「ものづくり」に没頭する日本企業の姿とダブります。

しかし物語が進むにつれて、佃製作所が蓄積してきた技術を必要とする顧客が現れてきます。

たとえば、帝国重工宇宙航空部の財前部長。
初の100%国産ロケット打ち上げの厳命を受けて、高性能バルブシステムを必要としています。

さらに「ガウディ編」では、財前部長はバルブに混入する異物をセンサーで感知して粉砕する佃製作所のシュレッダー技術が、将来ロケットの信頼性を格段に向上することを見抜き、その布石としての位置づけで、ガウディ計画への参画を決意します。

また、北陸医科大学・一村教授。
心臓手術に使用する人工弁「ガウディ」の開発責任者として、血栓を生じない高信頼性の人工弁を必要としています。

これらの難易度が高い課題に応えられる技術を持った企業は、佃製作所しかなかったのです。

 

つまり物語を通じて、佃製作所は、地道な技術蓄積の末に極めて強い「お客様が買う理由」を創り上げていったのです。
私がいつも提唱している「お客様が買う理由」のフレームワークで整理してみます。

 

■ロケットのバルブシステムの場合

(1) 佃製作所の強みは何か?
高性能タービン技術

(2) その強みを必要とするお客様は誰か?(= ターゲット顧客)
帝国重工宇宙航空部 財前部長

(3) そのお客様が必要とすることは何か?(= 顧客課題)
帝国重工社長からの至上命題は、初の100%国産ロケット打ち上げ。そのためには、燃料である液体水素と、酸化剤である液体酸素をタンクから高圧でエンジンに送り込む高信頼性のバルブシステムが必要としていた。(部下の富山が開発に成功したが、その特許は佃製作所が先に抑えていた)

(4) お客様が自社を選ぶためにどうするか?(= 解決策)
より高性能・高信頼性のバルブシステムを開発し、帝国重工へ供給する

 

■ガウディ計画の場合

(1) 佃製作所の強みは何か?
ロケット品質の高性能タービン技術

(2) その強みを必要とするお客様は誰か?(= ターゲット顧客)
北陸医科大学の一村教授

(3) そのお客様が必要とすることは何か?(= 顧客課題)
心臓弁膜症の治療に使われる人工弁は外国製のものが多く、成長期にある子どもの患者は、成長するたびに新しい人工弁に取り替える手術が必要になる。そこで取り替える必要がない人工弁を国産化したい。そのためには血栓が生じない高信頼性の弁を必要としていた

(4) お客様が自社を選ぶためにどうするか?(= 解決策)
人体の臓器よりも血栓発生率が少ない高性能・高信頼性の人工弁を開発し、供給

 

いずれの場合も、自社の強みを徹底的に見極めた上で、その強みを活かせる顧客を見定め、課題を徹底的に理解し、解決策を提供していることがわかります。

いわば、「ものづくり」だけではなく、その先にある「顧客」も見据えて、「顧客づくり」に邁進しているのです。

 

この裏にあるのは、主人公・佃航平の

「技術は人を支える。人間社会を豊かにする。人を幸せにする」

という強い想いです。泥臭くもがきながら技術を追求し続け、いかに顧客を幸せにし、よりよい社会にするかを考え抜いているのです。

 

「自分がやりたいことをやるための『ものづくり』」ではなく、「お客様が欲しいと思い、幸せになるような『ものづくり』」が必要であることを、私はあらためて下町ロケットから学ぶことができました。

模倣戦略は失敗の王道。しかし有効な場合もある

先週12月3日に出演した文化放送オトナカレッジでは、「柳の下にドジョウは2匹いるのか?」と題して、お話ししました。

ポイントをまとめると、

■1980年代くらいまでは、模倣戦略は有効だった

■しかし今、この戦略はうまくいかない。たとえばルンバは2002年に販売開始したが、2014年時点で日本国内シェアは66%。残り34%は他メーカー10社が分け合っている

■模倣戦略がうまくいかない理由は2つある

■1つは、商品寿命が短くなっている。1970年代と比べて1/10程度になっている

■2つは、模倣しても劣化版コピーにしかならない。時間が少ないので模倣が不十分になり、差別化しようとしてもそれが顧客が買う理由に繋がらない

■だから、「模倣戦略は失敗の王道」なのである

 

しかし実は、模倣戦略が有効な場合もあるのです。事例を2つご紹介します。

 【事例1:AltaVistaとGoogle】

実はネット全文検索を初めて実現して世の中で話題になったのは、Googleではなく、AltaVistaというサービスでした。 1995年の当時、私はAltaVistaを使ってみて、「おお、凄い!こういうことができるんだ!」と驚いたことをよく覚えています。

このAltaVistaは、コンピューターメーカーのDECが開発したAlphaサーバーの高性能をデモするために、インターネット上のあらゆるページをインデックス化することにより作ったサービスでした。(ちなみに後にCompaqがこのDECを買収。そのCompaqもHPにより買収されました)

一方でスタンフォード大学の博士課程だったセルゲイ・ブリンとラリー・ペイジがGoogleの原型を開発したのは、翌年の1996年。そしてGoogle創業は1998年。実はGoogleは後発だったのです。

では、なぜ後発なのにGoogleは残り、AltaVistaは負けたのでしょうか?

AltaVistaはDECがAlphaの性能をデモすることが目的だったので、機能は十分ではありませんでした。たとえば検索結果の精度は徐々に悪化していきました。一方で後発のGoogleはネット検索専業として技術を磨いて検索精度を向上させ、追い越したのです。

 【事例2:ウォークマンとiPod】

携帯音楽プレイヤーで先行したのは言うまでもなくソニーのウォークマン。しかしデジタル音楽が普及した2001年に登場したAppleのiPodは、単にデジタル音楽機器として提供されただけでなくデジタル音楽を配信するインフラiTunesも用意しました。一方のソニーは従来型の音楽著作権のしがらみから抜けられず、iTunesのような仕組みは作れませんでした。

その結果Appleは、ソニーがデジタル音楽を配信するインフラを作れないジレンマを抱えて停滞している間隙を縫って、デジタル音楽の勝者になりました。

 

このように考えると、どのような場合に模倣戦略が有効かがわかります。

それは、先行企業が色々な理由により技術を磨かけずに、進化が停滞した場合です。

「商品寿命が短い」ということは、時間がますます希少な資源になっているということです。進化を怠ると、あっという間に後発企業に追いつかれます。

先行企業と言えども、油断をすると、後発企業に模倣されて抜かれてしまうのです。ビジネスがまさに「競走」であることを考えると、当たり前のことですね。

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逆に言えば先行企業は、常に技術を磨き続けて顧客の課題を解決し続けることが、勝利の鉄則なのです。

 

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カメラを再定義。4年間で売上が22倍に成長したGoPro

私のライフワークは写真です。20代の頃は若気の至りで、プロの写真家として生計を立てることも考えてました。

これまで色々な写真機材を使ってきましたが、そのほとんどは日本製。皆様ご存じの通り、日本のカメラは世界でも品質がダントツに優れています。そしてデジタル化が進んだことで、静止画と動画の融合も始まっています。

このカメラ市場で、急成長している米国企業があることをご存じでしょうか?

2010年 40万台
2011年 110万台
2012年 230万台
2013年 380万台
2014年 520万台

凄い成長ですよね。米国のGoProという会社です。

2010年に6400万ドル(77億円)だった売上は、4年間でなんと22倍になり、2014年には13億9400万ドル(1672億円)になりました。

GoProのカメラを使うと、このように今までとまったく違う写真が撮れます。

GoPro

(GoPro Investor Presentationより)

 

普通のカメラではこんな写真、なかなか撮れませんよね。

 

どんなカメラかというと、こんなカメラ。HEROという名前のカメラです。

GoProカメラ

(GoPro Investor Presentationより)

 

身体やヘルメット、あるいは人間以外のもの(ペットなどの動物や乗り物など)に付けて撮影します。撮影を意識することなく、スポーツなどに熱中し、その様子が本人の視点で撮影できるのです。

 

このGoProを創業し、現在CEOを務めるニック・ウッドマンさんと一橋大学の竹内弘高先生の対談を、先月の日経フォーラム世界経営者会議で伺う機会をいただきました。

ニックさんは20歳の時、「30歳までの発明家になる」と決めて、新規事業に挑戦してきました。24歳の時はゲーム会社で400万ドルの損失を出したりして、26際にはすべてを失い失敗。そこで5ヶ月間、自分が情熱を持てることに熱中しようと、好きなサーフィンをしながら世界を回ることにしました。ニックさんはサーファーだったのですね。

サーフィンをしながら波の上から見える景色は、地上とはまったく違います。ニックさんは「この目に見えるシーンを、写真に残したい」と考えました。そこで2004年、35mmフィルムカメラを自分の腕に括り付けて、ファインダーを見ることなく写真を撮れるようにしました。自分用に作ったカメラですが、サーファー仲間で「同じモノが欲しい」と大人気になり、製品化することにしました。これがGoProの始まりです。

なぜGoProという名前を付けたかというと、サーファーは誰もが「プロになりたい」と思うから。そこで「プロになる」(Go Pro)と名付けました。製品名HEROも、「自分がヒーローになる」という想いを込めています。

つまりGoProは「究極の自撮りカメラ」なのですね。

 

竹内先生が「かつてこういうガジェット系の製品は、ソニーが作っていた。なぜソニーでなくGoProが成功したのですか?」と質問すると、ニックさんは「組織が大きくなると製品も多くなるし色々と難しくなるのだろう。GoProは、情熱とアイデアを持つ個人を大切にしてきたから」と答えています。

 

 

GoProは、自社の使命を次のように定義しています。

「体験のコンテンツを記録し、共有し、管理するわずらわしさを、徹底的に排除する」
(OUR MISSION: ELIMINATE THE PAIN POINTS OF CAPTURING, MANAGING AND SHARING ENGAGING CONTENT)

この使命を実現するために、カメラを製造・販売するだけでなく。ソーシャルメディアなどで写真(動画)をすぐに共有できるような仕組みも整えています。

GoPro-Enablement

(GoPro Investor Presentationより)

 

ここまでお話しをお聞きして、GoProが成功した理由がわかりました。

1990年代にデジカメが登場した頃、銀塩フィルムと比較してデジカメの画質はかなり見劣りしていました。そこでカメラメーカー各社は、よりシャープに、より高精度に、より忠実に写真を記録できるように技術を磨き続けてきました。「写真をキレイに撮影する」ことに注力してきたのですね。

その進化のおかげで、現在のデジカメはかなりの高画質になりました。

たとえば私が来週の写真展の撮影のために使用したデジカメは1600万画素。数字の上ではそれほど高画素数ではありません。しかしこの画素数でも150cm × 100cmの大サイズにプリントして、十分な画質を確保できます。カメラを普通に使う分には、これ以上のサイズにプリントする人はそんなに多くないでしょう。

しかし日本のカメラメーカー各社はさらに高画質化に挑戦中で、間もなく1億画素のデジカメ登場も予想されています。

 

一方でGoProが追求しているのは、「キレイに撮影すること」ではなく、「コンテンツを通じて体験を共有すること」

そのために、カメラだけでなく、プラットホームも用意し、自分の感動を共有した人達をファンに取り込み、ブランドメッセージを強化し続けています。

 

GoProが対象とする顧客は、「自分の感動体験をすぐに共有したい。でも従来型のデジカメやビデオは煩わしい」と思う人。その人たちに強い「買う理由」を提供しています。

かくいうカメラのヘビーユーザーである私自身、「写真を撮影する時は、撮影に集中する」のは当たり前。何か面白そうな被写体を見つけても「これは撮影する体勢が確保できない」と判断すると、撮影を諦めることもよくありました。そして撮影後、画像を現像するなど、人に見せるまでに手間をかけるのも当たり前と思っていました。

GoProのように「写真を撮ることは忘れて、その『行為』に集中する」、さらに「手間をかけずに映像を共有する」という発想はできませんでした。

つまり従来のカメラユーザーに訊いても、GoProのような発想は生まれてこないのですね。

サーファーのように、まったく異なるニーズを持つ顧客を見つけ、その顧客の課題に対して応えたのが、GoProなのです。

 

ニックさんのお話をお聞きし、「ニーズのサキドリ」を実現した企業が勝つ時代なのだと改めて実感しました。

 

 

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売れる商品は、必ず真似される。ではどうする?

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「せっかくいい商品をだしても、数年で他社に模倣されて、価格勝負になるんですよね」

製品担当のその方は、残念そうにおっしゃいました。

 

しかし現代では、売れた商品は、必ず真似されるのが宿命です。

先週のコラムでも、アイリスオーヤマの「半透明収納ケース」が大成功すると、コピーメーカーが多数出現し、供給過剰になり、価格競争に陥った話を紹介しました。この収納ケースはどのメーカーでも容易に真似できるのです。

 

ではどうすればいいのでしょうか?

模倣されても、多くの場合、「劣化版コピー」に過ぎません。形だけを真似しても、その背景にある課題・自社の強み・プロセスまでは真似できないからです。

だから模倣するライバルに対して、常に先行して「価値」を創り続けるのです。

そのためにはニーズのサキドリをし続けることです。

先週のコラムでも、「半透明収納ケース」を真似されたアイリスオーヤマが、「中味が見えると、リビングに置きにくい」という半透明収納ケースの声なき不満をサキドリし、木天板、硬質ポリスチレンの引き出しに金属レールを使った「HGチェスト」を新たに開発し、高収益商品にシフトして大ヒットした話を紹介しました。このような異なる素材の製品を作れるのは、多品種を製造するアイリスオーヤマならではの強みで、他社には難しいことだったのです。

 

現代では、模倣して追従しようとするライバルに対して、ニーズをサキドリし続けることが勝負を決めます。理由は2つあります。

1つ目の理由は、新規市場を開拓すると、先行者利益があるからです。たとえば「おそうじロボット」と言えば「ルンバ」、「半透明収納ボックス」と言えば「アイリスオーヤマ」というブランドが定着しています。先行メーカーだからこそ、ライバル不在の状況でブランドを確立でき、お客様に「〇〇〇〇と言えば、◎◎◎◎」と覚えてもらえるのです。追従するコピーメーカーは、確かに商品は真似できますが、市場でのブランド認知に関しては、後から頑張っても覆すのは容易ではありません。

2つ目の理由は、あらゆる変化が激速化しているからです。かつては技術進化も顧客の変化も今ほど激しくなかったので、模倣戦略は有効でした。真似することで先行メーカーに追いつくことは可能だったのです。しかし現代では、技術進化も顧客変化も格段に速くなっています。「時間」が「ヒト・モノ・カネ・情報」に次いで「第5の経営資源」とも言われる時代です。先行メーカーが常に新技術を磨き続けて、サキドリしたニーズに応える形で新商品を出し続ければ、先行し続けられるのです。

 

 

ですから、勝負の分かれ目 は、

・ニーズをサキドリし続けること。→つまり「顧客づくり」

・新しい技術開発を継続すること。→つまり「ものづくり」

この「顧客づくり」「ものづくり」の両輪を、常に継続して回し続けることが大切なのです。

せっかく技術を磨き続けても、「顧客づくり」を怠って「ものづくり」だけを考えていては、失敗を積み重ねるのです。

さらに、考えるだけで実行しなければ、時間を浪費し、先行しているメリットも失ってしまうのです。

 

2013年にリタ・マグレイスが書いた「競争優位の終焉」という本をご存じでしょうか?

本書では、次のように述べています。

・かつて多くの企業が「持続的な競争優位性」を目指していた。しかし現代で実現できている企業は、極めて少ない。

・競争が激しい現代においては、「持続的な競争優位性」という考え方は既に終焉している。

・今の時代に勝っている企業は、「一時的な競争優位性」を連続して獲得している企業である。

・だから、常に「一時的な競争優位性」を生み出せるように、会社の仕組みを変えていくことが必要だ。

 

短期間で「売れる商品」が模倣される競争が激しい現代の市場において、この「一時的な競争優位性」を生み出すポイントが、自社の技術的な強みを活かし、ニーズのサキドリをし続けることなのです。

 

そしてこの「一時的な競争優位性」を長く保つ1つのポイントが、当コラムで書いているとおり、

(1)「自社の強みは何か?」
 ↓
(2)「強みを必要とする顧客は存在するか?」(対象顧客の有無)
 ↓
(3)「その顧客は、何を必要としているか?」(顧客の課題)
 ↓
(4)「顧客が自社を選ぶために、どうすればよいか?」(解決策=商品・サービス)

これを首尾一貫して考え、「お客様が買う理由」を作り上げることなのです。

 

他社がなかなか真似できない自社の強みに基づいて「お客様が買う理由」を作り上げることで、「一時的な競争優位性」の寿命はより長くなるからです。

 

 

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「ヘッドピンの存在を信じる」マツダ スカイアクティブ成功の裏側

Ten Pin Bowling Pins And Ball

マツダは4年連続赤字やフォードの出資比率低下による信用低下などによる苦境を乗り越え、現在好調です。このマツダの好調に大きく貢献しているのがスカイアクティブ・テクノロジーです。

しかしマツダは業界トップのトヨタと比べると規模は1/10以下。エンジン周りの開発人員に至っては、フォードとの共同開発案件に駆り出されていたこともあって、数十分の一でした。そんな状況で、「燃費を30%以上改善しながら、走りの楽しさも実現する」という目標を立てて、スカイアクティブ・テクノロジーが開発されました。

 

マツダのスカイアクティブ・テクノロジーの挑戦については、「100円のコーラを1000円で売る方法2」や当ブログでも何回か紹介しました。

開発本部長としてこの開発を陣頭指揮された、マツダ・常務の人見 光夫さんが、著書を出されました。

「答えは必ずある---逆境をはね返したマツダの発想力」(人見 光夫著)

マツダの挑戦については、これまで主にマスコミの記事で報じられていましたが、人見さんご自身が何を語られるのかとても興味があり、拝読しました。

 

やはり現場で格闘されている人の言葉には重みがあります。

いくつかご紹介したいと思います。

—(以下、引用)—

もっとも、私たちの「選択と集中」は前述のとおり、多くの選択肢の中からどれかよさそうなものを選んでそこに集中するということではなく、さまざまな課題に共通している主要共通課題を賢く選択して、その部分の解決に集中するという意味である。 ボウリングのように、後ろのピンがすべて倒れるようにヘッドピンにうまく当てるのが理想だ。

(中略)

最も重要なことは、ヘッドピンの存在を信じることだ。 常に、そうした目でものごとを見るという習慣が何よりも大事だ。そうすれば、必ず見えてくる。一人ではダメでも、チーム力を駆使すればそれができる。

—(以上、引用)—

本書ではこの「ヘッドピン」という言葉がよく出てきます。

自動車開発に限らず、実に多くのケースでこの「ヘッドピン」というのは存在する、ということは、私も実感します。

ともすると私たちは、常識に囚われたりして、表面的な現象を問題の原因と考えがちです。しかし、様々な視点でその奥深くに潜む本当の原因は何かを徹底的に考えることが必要になります。

様々な現象の本当の原因を徹底的に考え、シンプルな原因に辿り着くことで、ヘッドピンが見えてくるのです。

逆に言えば、対策が10個もある状態では、まだまだ思考が不足している証でもあるのです

 

競争について語っている箇所もあります。

—(以下、引用)—

自動車業界を見渡せば、現在でもそうした後追いはある。なぜ後追いをするのか。不安だからだ。不安になるから真似をする。

—(以上、引用)—

「不安だから真似をする」というのは、まさにその通りだと思います。

日本企業に限らず、世界を見渡しても、成功している他社の模倣をする企業はとても多くあります。

しかし成功企業の真似をしようとしても、100%真似をするのは不可能です。成功企業は独自の強みを持っているからです。だからコピーしたつもりでも「劣化版コピー」にしかならず、「安価な代替品」になってしまうことも少なくありません。

我々は、「模倣は、実はリスクが大きい」ということに、気がつく必要があるのではないかと思います。

 

仕事のあり方についても、語っている箇所があります。

—(以下、引用)—

だから、私はできるだけものごとをシンプルに考えて、仕事は減らさないといけないと言っている。もちろん、ラクをするためではない。無駄をなくし、より重要で、全体最適に貢献する仕事をするためだ。 そこを解決すれば、品質もよくなるし、性能もアップする。そしてコストも安く済む。そうした課題を見つけるという発想で課題を探し、ソリューションを考える。それがつまり、仕事を減らすということの意味だ。

—(以上、引用)—

「品質と性能をアップし、コストを削減し、仕事を減らす」

相矛盾するように聞こえますが、実はシンプルな理想形を徹底追求すると、不可能なことではありません。

無駄を排除すること、言い換えれば、不要な様々なモノを切り捨てればよいのです。

それは仕事だったり、製品だったり、あるいはお客様だったりします。

しかし私たちは、この「不要な様々なモノを切り捨てる」ことがなかなかできません。企業は組織ですから、当然ながら利害関係者の反対もあります。

そのためには、価値観と、全体最適の姿を徹底的に共有するチームワークが大切になってきます。

 

スーパーマンのように見える人見さんですが、先行開発部での仕事が長く、ご自身のキャリアの中で、実際の商品開発には関わってこられなかったため、このように語っておられる箇所もあります。

—(以下、引用)—

すでにそれなりの年齢になっていたのに、特に満足感や達成感が得られないまま過ごしているという焦燥感も強かった。自分の仕事がなかなか商品化されない。たとえ商品化されたとしても、技術者としてどれだけのことをしたのかと問われた時に説明ができない。山のようにある技術のうちの数種類に携わったというだけのことでしかないという虚しさだ。

(中略)

考え方、技術のとらえ方を変えないと、「何もできないまま、サラリーマン人生終わりだな」と日に日に強く感じるようになっていた。

—(以上、引用)—

会社に務められて、同じような気持ちを抱えながら仕事をしている方は多いのではないかと思います。

 

等身大で語られる本書から、私たちが学べることは多いと思います。

責任感と法令遵守精神が強すぎるから、日本企業は斬新なビジネスを立ち上げられない、という意見

businessman looking through keyhole

海外のベンチャー企業は様々な革新的なビジネスを立ち上げる一方で、日本からはなかなか斬新なアイデアが出てこない、と言われています。

 

たとえば、ハイヤーの配車サービスを提供するUberというサービスがあります。スマホで配車依頼をすると、個人でサービスを提供しているドライバーと引き合わせ、決裁も安全に行えます。

欧米ではUberのように斬新なサービスに挑戦する会社は少なくありませんが、日本では「そうはいっても、タクシーやハイヤーのサービスがあるし、法律的に色々と面倒なので、やめておこう」と思いがちです。

日本でこのような発想が出ない一つの要因として、「リスクにチャレンジしないから」という意見があります。

しかしそのような性格的な面だけでは、今ひとつ腹オチしませんよね。

 

先日読了した、「競争戦略としてのグローバルルール」(藤井敏彦著、東洋経済新報社)で、そのことがわかりやすく書かれていました。著者の藤井さんは、経済産業省の現役政府交渉官として世界的なルール策定に数多く関わってきた方です。

本書で「なるほど」と思ったのは、日本人は「法は守るもの」と考える傾向が極めて強いのに対して、欧州では「法は目標」と考える、という点。だから海外企業は「法はいくらでも変えられる」と考えて自由な発想でイノベーションを生み出しているのです。

 

たとえば本書では、著者と欧州議会議員が、実現が困難な環境規制について議論したエピソードが書かれています。

著者「…実際に遵守できないことがわかりながら規制するのは適切なこととは思えません」
議員「法は目標なのです。法のめざす方向に社会が動いていけばそれでよいのです」

 

また、非現実的な規制が設定されたエピソードが紹介されています。日本企業であれば「この規制は達成不可能だ。ヨーロッパ市場から撤退をするしかない」と悩むところですが、著者が欧米企業とどのように対処するか議論したところ、最終的な結論は「放っておこう。どうせ誰もこの義務は果たせない」。

本書では、このように書かれています。

—(以下、p.107より引用)—

国際ルールづくりの現場には日本人であればとうていできないような考え方が渦巻いているのだ。日本的に言えば単なる無責任であり、彼らに言わせれば未来志向である。

—(以上、引用)—

また元サッカー日本代表チームのオシム監督が、日本選手がゴールを積極的にねらえない理由として「責任感が強すぎるから」と述べたエピソードも紹介されています。裏を返せば「失敗を叱責しすぎる」ということです。

法令違反をした場合、日本だと「誰がやったのか?」という責任追及になりがちですが、欧米企業では「罰金はいくらだ?」になります。法令遵守のコストより安ければ罰金を払って済ませます。もちろんこの背景には、社会的バッシングが日本よりも少ないこともあります。

 

本書を読んで、過度な責任感の強さや法令遵守精神が日本企業の停滞を生み出しているとすれば、企業側が積極的に働きかけてその責任を企業側で負い、もっと社員に失敗前提でチャレンジすることを奨励すべきなのではないか、と改めて思いました。

また、規制緩和が成長戦略のために政府ができる最大の貢献であることも実感しました。

現状打破の意外なポイントは、まだまだありそうです。

Google/Appleは自動車業界を制覇するのか?

TechCrunchで、「自動車業界は1985年のIBMと同じ道を辿ろうとしている」という記事が掲載されています。

1985年当時のIBMは、コンピュータ業界で最強とも言える巨人でした。絶好調のパソコン事業では、OSはMicrosoft、CPUはIntelをパートナーとして組んでいました。しかしその後、Wintel連合が業界を牛耳ることになりました。

当記事の主張は、現在、自動車業界がダッシュボードをGoogleとAppleに明け渡そうとしているのは同じことである、という点です。

 

当時、私は新入社員としてIBMにいました。業界の中でリアルタイムにこの怖さを肌身で感じた世代です。

新規事業立ち上げの際に、自社に足りない部分を他社に頼る判断はよく行われます。「新技術でよくわからない分野はベンチャーや専門家に任せて、自分たちは現時点で大金を生み出すキャッシュカウに集中しよう」という考え方ですね。

そして任せた部分がいつの間にか業界標準プラットホームになり、各社がこのプラットホームに準拠しなければならなくなり、将来莫大なキャッシュフローを生み出すプラットフォームを明け渡してしまうのです。

 

今、自動車業界で起こっている変革は、人工知能、センサー機能、膨大な数のセンサーから生み出される巨大なビッグデータへの対応、自動運転、ロボット技術、など、かなり膨大なテクノロジーの集合体です。30年前にIT業界で起こっていたCPUやOSといったものと比較するとかなり大がかりな資本と人材を必要とします。

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現在アナログな自動車業界がデジタル化した時点を見据えて、Googleは莫大な資金と人材をこの分野に投入しています。

 

また現代では、企業や組織の壁を越えて、様々な技術を持ち寄って、イノベーションを推進していく「オープンイノベーション」も主流になりつつあります。

30年前と同様、少数企業がプラットホームを独占し業界を牛耳るのか?

それとも自動車業界や電機業界などのメーカー主導でいくつかの業界標準が生まれ、群雄割拠の状況になるのか?

大きな分かれ目でもあると思います。

 

IoT (Internet of Things)の時代になり、同じことは急速に様々な業界で起こりつつあるように感じています。

ルンバ大成功の裏にあった、14の新規事業失敗の意味。日本の電機メーカーは「ルンバという製品」でなく、「アイロボット社の考え方」を学ぶべき

iRobotロゴ

おそうじロボット「ルンバ」は、現在、アイロボット社の主力商品です。

この結果だけを見ると、

「なるほど。ロボット技術を活かして、自働おそうじロボットか。アイロボット社も、いいところに目を付けた。ラッキーだな」

と思いがちですよね。

 

しかし実際には、アイロボット社は偶然「おそうじロボット」を作ったのではありません。

2014年には全世界で売上5.57億ドル (約668億円) / 利益0.38億ドル (46億円)を稼ぎ出すアイロボット社は、自社の強みであるロボット技術を「儲かるビジネス」になかなか繋げられずに、苦しんだ時期があるのです。

2015年3月4日付のITmedia Life Styleの記事『困難に直面しても「楽しかった」――「ルンバ」登場までの軌跡』では、2014年に明治大学で講演したコリン・アングルCEOが儲からなかった時期について語っている様子を紹介しています。

この記事に掲載されたチャートによると、アイロボット社は下記14件の新規事業を計画しては止めることを繰り返していました。

Failed Business Models over time

1. Sell Movie Rights to and then perform to a Robotic mission to the moon
2. Sell Research Robots to Universities and Hobbyists
3. Earn Royalties on Robotic Toys
4. Develop and license technology for nano-robots to clean plaques from blood vessels
5. Sell Robots to the oil industry to stimulate production in wells
6. Sell Nuclear Power Plant Inspection Robots
7. Sell Educational Robots to Museums
8. License Technology for Industrial Floor Cleaning robots
9. Develop and Sell Smart Home solutions to supermarkets
10. Create and sell “Robot Wars” style location based entertainments experiences
11. Sell Landmine clearance robots
12. Develop and License a Robot Operating system
13. Sell Robots you can control over the internet to data centers
14. Develop and sell planetary rovers to the Ballistic Missiles

上記を日本語に訳してみました。

過去失敗したビジネスモデル

1. 映画化権利を反した上で、月面へのロボットミッションを遂行する
2. 研究段階のロボットを大学や愛好家に売る
3. おもちゃのロボットのロイヤルティで稼ぐ
4. 血管で血小板をきれいにする極小ロボットを開発し技術をライセンス供与する
5. 油田の生産工場のために石油業界にロボットを売る
6. 原子力発電所の検査用ロボットを売る
7. 博物館に教育ロボットを売る
8. 工場のフロアを掃除するロボットの技術をライセンス供与する
9. スーパーマーケットへスマートホーム·ソリューションを開発し販売する
10. 「ロボット戦争」スタイルの位置情報付きエンターテイメント体験を売る
11. 地雷除去ロボットを売る
12. ロボット用のオペレーティングシステムを開発しライセンスする
13. インターネット経由でデータセンターを管理できるロボットを売る
14. 惑星探査機を開発して売る

1/2/4/7/10/13/14などは、「こんなプロジェクトまで考えていたのか!」と驚きますね。

一方で、6の技術は福島第一原発に提供されましたし、11.の地雷除去ロボットもいいところまでいっています。

 

改めて思ったのは、アイロボット社がおそうじロボット「ルンバ」を成功させたのは、単なる幸運ではなかったということ。

ルンバ成功の過程で生み出されたのが、この14の新規事業の失敗。しかし実際には失敗とも言い切れず、継続してビジネスに繋がりかけているプロジェクトもあります。

アイロボットは自社の技術的な強みを活かして、いかに顧客を絞り込んで、その顧客の課題を解決することで、ビジネスに繋げるか、アイロボット社は考え抜いてきたのです。

つまり「ものづくり思考」ではなく、「マーケティング思考」なのです。

 

日本の電機業界も、「ルンバという製品」を学ぶのではなく、「アイロボット社の考え方」を学ぶべきではないでしょうか?

 

成功体験の賞味期限が短くなっている。だから成功体験の否定力が重要

GEが、2003年には全社営業利益の56%を占めた金融事業の比率を、2016年に25%まで下げる方針を打ち出しています。金融事業からの事実上の撤退です。

その背景には、金融ビジネスの収益悪化と、GEの本業である製造業における「インダストリアル・インターネット」への自信があります。

 

かつて総合スーパー業界の優等生であったイトーヨーカ堂も苦しんでいます。セブン&アイの鈴木会長も、日経ビジネス2015/4/27-5/4合併号で、このように語っています。

「伊藤雅俊・名誉会長から受けた教育が伝統になってしまっている」

そして、伊藤会長以来の成功モデルであり聖域となっていたチェーンストアという考え方を否定しようとしています。

 

日本のIT業界では、この7-8年、クラウドによる既存ITビジネスモデルの破壊が喧伝されています。

しかし一方で、ITサービスや製品を提供側の企業とお話ししていると、かつて成功体験であったSI受注型モデルの発想からなかなか脱却できない企業も多いように感じています。

 

成功体験には賞味期限があります。いつの間にか食べられない状態になっています。

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そして変化が激しくなっている現代、賞味期限はますます短くなっています。

かつて栄華を誇っていた恐竜が徐々に数を減らして大絶滅したように、成功体験に溺れた企業も新しい成功体験を得た企業に淘汰されます。

 

かつての成功体験を、いかに否定するか?

GEやセブン&アイのような巨大企業では、成功体験は全社の津々浦々まで染み渡っています。業界レベルでも同様です。

そして人の行動を変えるのは、一朝一夕には進みません。それは成功体験が各自の頭の中に存在しているからです。成功体験は、忘れることはできないのです。

仮にトップが「このように変われ」と言っても、そして頭ではわかっていても、成功体験が染みついているために、日々の行動を急激に変えるのはなかなか難しいのです。

だからこそ企業変革にあたっては、トップが明確に目指すべき方向性をメッセージとして出し続けると共に、経営戦略やマーケティング戦略だけに留まらず、業務変革戦略・人事戦略・人材育成戦略・オペレーション戦略などとシームレスに連携しながら、新しい成功体験を作っていく方向に持っていくことが必要であると、ますます感じています。

中原淳著『研修開発入門』…網羅的で実践的な企業研修のガイド

中原淳著『研修開発入門 会社で「教える」、競走優位を「つくる」』(ダイヤモンド社)を読了しました。

本書は、企業での研修を企画・実施する方法論を、とても網羅的・実践的に書いています。

自分の人材開発マネージャーの経験と照らし合わせて知識の棚卸しができましたし、現在の自分に足りない部分も色々と見つかり、とても勉強になりました。

人材開発に携わる方は、是非ご一読をお勧めします。

 

もう一つ、本書のあとがきで「なるほど!」と深く腹オチした言葉がありました。

著者の中原先生が、知財専門の法律事務所の先生から聞いた言葉が紹介されている箇所です。

—(以下、引用)—

「方法・手法に、法律は、著作権を認めませんでした。中原さん、それはなぜかおわかりですか? それは、私たちの文化を発展させるために、それらは自由に流通させた方が、社会全体のためになると法律が考えているためです。そのことで、『不利益を生じる個人』が、もしかすると生まれるかもしれません。でも、社会全体の功利を考えれば、方法、手法は流通した方がよいのです。方法・手法は流通することを待っているのです。」

—(以上、引用)—

 

ともすると、「研修や講演でビジネスしよう」と考えると、自分のノウハウを出し惜しみしがちです。

しかし実際には、そのノウハウを広く世の中に情報発信して拡げることで、よりよい世の中を創ることができます。

 

改めて、情報発信の継続が必要だと認識しました。

 

ドンキもドワンゴも、強みの源泉は、その強みを明確に説明できないこと

ドンキ

ドン・キホーテ(以下、ドンキ)の店内に入って、その密林のような商品展示に驚かれた方も多いと思います。

ドンキは2015年6月期で26期連続の増収増益、年商6000億円超が見込まれ、絶好調です。

ドンキの強みの秘密は何なのでしょうか?

 

週刊東洋経済2015年3月21号に、今年6月にCEO職を現社長に譲り引退することを発表した創業者・安田隆夫会長のインタビュー『ドン・キホーテ 安田隆夫 激白 わが「勇退」』が掲載されています。

ドンキの強みの一端を理解する上で、参考になりました。

—(以下、引用)—

SPA(製造小売業)と違い商品に独自性があるわけではない。単なる編集と演出をしているだけです。そうして成功している。にもかかわらず、新規参入がない。…この理由を、多くの経済学者を含めて誰も解き明かせないでいる。

最初は皆「あの会社、何なんだろう。ある種、ゲテモンなんやな」と思っていた。しかしそのゲテモンが年間6000億円も売り上げていると話が違ってくる。しかも、北海道から沖縄まで満遍なく繁盛し、都心の一等地でも、ほとんど人が住んでいないような地域でも繁盛している。その理由を考えて、最終的には 消化不良に陥って「もういいや、あの会社のことは」となる。そこがドンキの強さだ

—(以上、引用)—

 

安田会長は「強みがよくわからないことが、ドンキの強さだ」とおっしゃっています。

奇しくもKADOKAWA・DWANGO会長の川上量生さんも、ドワンゴ会長当時に執筆された著書「ルールを変える思考法」でこのようにおっしゃっています。

川上会長

—(以下、引用)—

独自性を保つ上では、明快で他社が追随しやすい差別化を行うよりも、何が差別化なのか、ちょっと考えただけでは理解できないものであり続けることが大切だというのが僕の考えです。  そのためには、自分自身が理解できることであってもダメなんじゃないかと実は思っています。なぜなら、自分が理解できるものは、他人も理解できる可能性が高いからです。自分でもわからないものであれば、他人もわかりようがありません。

…理解できそうで理解できないぎりぎりの境界線上に答えがあるというのが僕の結論です。

—(以上、引用)—

 

一方で安田会長は、もう少し踏み込んだ質疑応答をされています。

—(以下、引用)—

—-安田会長はその理由を知っている。編集、演出のほかに何があるのですか。

それがまさに権限委譲であり、一 人ひとりが商店主である。あるいは商品のファンドマネジャーといってもいい。ドン・キホーテはファンドマネジャーの集大成という、過去にはない流通業態のあり方なんです。

ただし、権限委譲はよほどうまくやらないかぎり、組織崩壊します。

一時期、業界問わず、どこもかしこも権限委譲がはやった。「個店対応」というキーワードで。個店対応はすごくいい。いいんだが、本当に個店対応するには、個店に主権がないといけない。そうでないかぎり、 個店修正ぐらいにしかならない。  一方で権限委譲ばかりやるとばらばらになって、スケールメリットが まったく発生しない。組織のていをなさなくなり、単なる烏合の衆になりかねない。 組織か現場か、ではなく、双方を「アンド」の精神で生かしていく。 「オア」ではなくて。その手法を長年かけて作ってきた。

—(以上、引用)—

 

ここから読み取れるのは、品物・立地・店舗といった目に見える業態よりも、店舗従業員との関わり方といった目に見えないところに強みの源泉がある、ということです。…ただ一方で、まだ十分に明確ではなく「モヤモヤ」っとしますね。

 

ジェイ・B・バーニーというマーケティング学者は、企業の競争優位性の源泉となる資源を分析するために「VRIO」というフレームワークを提唱しています。

Value: 顧客にとって価値がある
Rarity: 希少性がある
Inimitability: 模倣しにくい
Organization: 組織的な取り組みがある

インタビューからわかることは、ドンキもドワンゴも、このVRIOをちゃんと持っており、かつ、お二人の経営者ともそれについては確信を持っておられるようです。

 

グローバル化社会と言われてから、多くの日本企業は単純明快な戦略を徹底して攻めてくるグローバル企業に押されている面がありました。

その単純明快さは、「ローコンテキスト文化」(文化的背景が違うので、言語化しないと通じない文化)に根ざしたものです。

一方の日本企業は、「ハイコンテキスト文化」(文化的背景を共有するので、あうんの呼吸で通じる文化)なので、なかなか単純明快な戦略を徹底できない面がありました。

しかし安田さんや川上さんのお話しからは、このハイコンテキスト文化を逆手に取って、強みを活かしていることが読み取れます。

 

 

外部から分析しようとしても、ドンキもドワンゴも、強みを見極められない。
しかし実は、真似できない確かな強みを持っている。
そして実は強みを明確に言語化できず(あるいは行わず)、モヤモヤするところに本当の強みがある。

 

そのように思いました。

 

このように考えると、「強みを明確に説明できないドンキだからこそ、ドンキが永続するためには、自分が元気なうちに後進に経営を譲り、後進が独り立ちできるように支援する必要がある」という安田会長ならではの問題意識を読み取ることもできます。

「ファミマ、ユニー統合」…企業統合で生まれる顧客価値向上が、統合ロスタイムによる損失を上回るか?

企業買収や合併が増えてきました。

規模の追求を狙い、二社合併を発表するケースもあります。

企業買収や企業統合はどのように考えればよいのでしょうか?

 

そのことを考える上で、週刊東洋経済 2015/3/21号に掲載された「ファミマ、ユニー統合で始まる コンビニ大淘汰」という特集は、買収や合併による効果、イノベーションの追求などを考える上で、とても示唆に富む内容でした。

本記事に2001年のサークルKとサンクスの合併について考察している箇所がありますので、引用します。

—(以下、引用)—

もっとも、今まで違う歴史をたどってきた企業が一緒になったうえで、重複する部分を合理化し、かつ相乗効果を生み出すことは容易でない。くしくもサークルKサンクスの 現実がそれを物語っている。

……並んでいる商品やサービスは一緒なのだが、消費者からは違う店に見えるという、何とも不思議な状態だ

サークルKサンクスはその理由を「それぞれのブランドに顧客が付いている」などと説明してきた。こうした姿勢に業を煮やし、ライバル社 に移ったエリアFC(フランチャイ ズ)会社幹部は「商品や販促、オーナーへの支援、いずれも劣る。どういうコンビニを目指すか見えてこなかった」と憤る。

—(以上、引用)—

 

確かに海外や異分野などの新市場に進出するために買収・企業統合を行い、成功しているケースは多くあります。

 

一方で競合が激しい同一市場内で規模の追求を狙って買収・合併しても、その効果が不十分な事例は、世の中に少なくありません。

この章の「負け組同士、統合の正否」という辛口タイトルに象徴されるように、企業文化が異なる2社を融合しようとしても、それぞれの「組織の論理」が邪魔をしてしまいがちです。

その結果、本来はイノベーションに裂くべき企業の体力が、企業統合というイノベーションを生み出さない作業に費やされます。

そしてその間にライバルのトップランナーは、新しい分野で着々と仮説検証を繰り返し、イノベーションを進めています。

 

ちょうど、チームによる競走レースをイメージするとわかりやすいかも知れません。

Robert Gesink Climbing Alpe D'Huez

先頭チーム(セブン)は、順調に走っています。

追いかける後続チーム(ファミマとユニー)はなかなか追いつけません。そこで複数の後続チーム同士で一体化することで体力増強を図り、キャッチアップを目指します。

一体化するためには、立ち止まって服を着替えたり靴を履き替えたりマシンの調整をしたりする必要があります。

しかしこの時間は完全にロスタイム。その間に先頭チームはどんどん先に進み、タイムは開くばかりです。

ロスタイムを挽回するためには、統合した後に先頭チームを上回る速度で追いかける必要があります。

もし統合後に速度が遅くなると、さらに差が開くばかりです。

 

このように考えると、施策も見えてきます。

 

まず統合のロスタイムを考慮しても、一体化することによる統合化メリットを、数字で把握すること。

両社合計の売上高や店舗数だけで評価すると、どんな統合でも数字は増えます。これだけで判断すると、あらゆる統合ケースで「統合=正しい」になりますよね。統合による価値の本質を見失いがちです。

たとえばこのケースでは、店舗当たりの1日の売上(ファミマ52万円、ユニー43万円)が、統合することで向上し、セブン(66万円)にキャッチアップできるかどうかというのも、一つの指標になり得ます。

統合化メリットが生まれるシナリオが作れるのであれば、一体化するメリットが出てきます。

 

もう一つは、そのシナリオを確定した上で、早期にそのシナリオを実現するために、統合化のロスタイム最小化を図ること。

統合化自体は、顧客に対して新たな価値を生み出す作業ではありません。たとえば統合するとユニーでもファミマの新商品を売ることができます。しかし顧客からすると、統合しなくてもファミマに行けば商品は買えるわけで、顧客にとって大きな価値があるとは言えません。

競走で着替える時間はカウントされるのに距離はまったく進まないのと同じことです。

だからこそ、企業統合はできるだけスムーズに速く進めることが必要です。

合併は結婚のようなもの。結婚同様に、事前にお互いに一つ屋根の下で一緒に暮らしていけるのか、相性を見極めることが大切です。

また、放っておいて現場で自然に二つの会社が融和することもありません。

さらに2社間でどちらの会社に寄せて統合するのか、あるいは藤森さんが率いるリクシルのように全て壊して一から作り直すのか、リーダーシップを明確にすることも大切です。

 

統合化のメリットが、統合化のロスタイムによる損失を上回るのであれば、統合は意味があるものになります。

 

ファミマはかつてam/pmを統合した経験もあります。

ファミマとユニーの統合が成功し、コンビニ業界が活性化して、消費者の利便性がさらに向上するようなイノベーションが生み出されるように願っています。

 

エレクトラックスが価格競争に陥らない理由

「黒船家電の掃除機」というと、ダイソンとアイロボットが有名です。それぞれ「吸引力」や「自働ロボット」といった尖った機能を売りにしています。

実は他にも、国内掃除機市場で伸びている黒船家電があります。北欧のエレクトラックスです。

この会社の売りは、「音が静かなこと」。

「掃除機は音がうるさい」という常識を覆し、赤ちゃんが寝ていたり、家族がテレビを見ていても、安心して掃除機をかけることができます。

 

日経ビジネス2015年3月9日号『企業研究:エレクトロラックス 「音」で打倒ダイソン』という記事で、詳しく紹介されています。

—(以下、引用)—

確かに、「音」は、日本の掃除機市場を牽引する外資2大勢力、ダイソン及びルンバシリーズの数少ない弱点の一つだ。サイクロン方式と強力なモーターでゴミを吸引するダイソン製掃除機は、その構造上、静粛性を追求するには限界がある。ルンバも在宅の際に利用すると、稼働音は人によっては気になるレベルに達しかねない。

 一方、エルゴスリーの運転音は約43デシベル。一般的な掃除機(約70デシベル)の6割程度で、例えると図書館や深夜の市街地レベルしかないという。この静粛性へのこだわりこそが、エルゴスリーが日本で評価を高めている原動力となっている。……

—(以上、引用)—

補足すると、実際には10デシベル違うと大きさは1/10になります。つまり43デシベルのエルゴスリーは、70デシベルの一般的な掃除機よりも、音量が数百分の一。

圧倒的な静音ですね。

 

成熟市場のように思われがちな白物家電ですが、エレクトロラックスはどのように考えてこのような製品を出しているのでしょうか?

記事ではその点についても言及しています。

—(以下、引用)—

 ……なぜエレクトロラックスは家電事業を拡大させようとするのか。その背景には、「白物家電には膨大な改良余地が残されており、そこをクリアすれば需要は掘り起こせる」という独自の発想がある。

 ……ある1つの信念で結び付いている。「現状の家電はまだまだ使う人に心地よくない部分が残っている」だ。

 同社の開発部隊は、掃除機の運転音に限らず、「現状の家電が持つ人に優しくない部分」を根絶するため、日々、異常とも言える実験を続けている。

—(以上、引用)—

 

記事では、経営幹部の言葉を紹介しています。

—(以下、引用)—

掃除機などのデザインを担当するペルニラ・ヨハンソンVPは説明する。

 仮に白物家電市場が成熟しつつあっても、“使って心地よい家電”を追求していくことには広大なフロンティアが残されていると考える。「これからも音や重さ、デザインなどに限らず、ユーザー自身さえ気が付いていない不快の源やニーズを探っていく」。

—(以上、引用)—

 

まさに消費者自身も「当たり前」と思っていて気がつかない困っている課題を先取りし、解決することで伸びているのですね。

しかし改めて、なぜ白物家電なのか?

そこにはしたたかな戦略があります。

—(以下、引用)—

実はそこには、「使う人にとって心地よい白物家電はまだ改良の余地がある」という思想に加え、もう一つ、重要な理由がある。「白物家電市場はデジタル家電に比べ安定している」(マクローリンCEO)がそれだ。

 冷蔵庫や洗濯機、掃除機、調理家電は、「清潔に生活したい」「おいしいものが食べたい」など人間の根源的欲求を満たす製品で、市場が消えることはない。買い替え需要が発生するし、新たな付加価値を打ち出し顧客に認められれば、高くても買ってくれる顧客がいる。

……着実に成長を遂げることができたのは、「主戦場は白物家電」「作るのは人に優しい家電」という2つの絶対軸をかたくななまでに貫き続けた結果だ。

—(以上、引用)—

 

顧客が気がつかないニーズを掘り起こし、応え続ければ、差別化を続けることができ、価格競争に陥らない、ということですね。

 

あらためて、「顧客が気がつかないニーズを掘り起こし続け、自社の強みを活かして、応えること」が、差別化の源泉になるということがわかります。

これは家電業界に限らず、ほとんどの業界で共通なことだと思います。

「安かろう、悪かろうのLCCは時代遅れ」

「格安航空会社」とも言われるLCCは、1970年代に米国で生まれました。1967年に設立され1971年に就航したサウスウェスト航空はその代表格。それから40年以上経過し、今、数多くのLCCが生まれています。

そしてともすると、「LCCは価格勝負に陥っている」とも言われます。

実際のところ、どうなのでしょうか?

 

週刊東洋経済 2015/3/21号の記事「この人に聞く ピーチ・アビエーションCEO 井上慎一 安かろう、悪かろうのLCCは時代遅れだ」で、井上CEOが次のようにおっしゃっています。

—(以下、引用)—-

LCCの事業モデルを日本流にカスタマイズした。原則としてLCCは払い戻しに応じないが、それでじゃお客様に対して愛がない。そこでチケット代金の10%分を支払えば、一定の条件下で全額を補償する保険をつけた。また、LCCは払い戻しには機内エンターテイメントがない。そこでお客様のスマートフォンなどに、事前に映画や音楽をダウンロードし、機内で楽しめるようにした。

—(以上、引用)—-

 

「なるほど」と思いました。

前者は、払い戻しに応じつつ、ちゃんと収益が出るモデルにしています。

後者は、搭乗客のスマホを画面として使うことで、テレビを各席に装備するコスト増を避けながら、実質的なサービス強化を図っています。

知恵を出して、価値を生み出しておられます。

 

では、なぜこのようなチャレンジが必要なのでしょうか?

井上CEOはこの問いについても答えておられます。

—(以上、引用)—-

……われわれも機材繰りなど基本的なプラットフォームは従来のLCCモデルを踏襲している。それに加えて何か「おもしろいこと」が必要だ。お客様の期待が世界的に変わりつつある。

—(以上、引用)—-

 

お客様の期待は、常に変わっています。

それはLCCに限らず、全てのビジネスでも同様です。

だからこそ現状に留まらず、常に頭に汗をかき、自社の強みを意識しつつお客様から学び続け、価値向上を図っていくことが大切なのだと思います。

新事業にこそ、活路がある:自社の強みと足りないスキルを見極め、新常識を既存市場に持ち込み、差別化を図る

昨日のブログ「業種転換のウソ・ホント…共通するのは、「強みの見極め」」の続きです。

 

日経ビジネス2015年3月2日号の特集「業態転換 常識のウソ・ホント 中小でも富士フイルムになれる」の掲載事例に共通するのは、自社のコア技術(強み)と、新事業で足りないスキルの見極めです。

それぞれの事例をまとめてみました。

■ブランチ
コア技術:建設業で培った店舗の施工・設計
従来製品:建設業
新製品:カフェ・コーヒー豆の輸入販売
足りなかったスキル:カフェ運営スキル
差別化ポイント:カフェ開業したいオーナーに、元建設業の経験を生かし、設計図面の段階から最適な設備を提案可能

■太田組
コア技術:建設業時代の道具。機械の扱い
従来製品:建設業
新製品:農業+自社栽培のタマネギ/ショウガ/ニンニクを原料とした焼肉のタレの製造・販売
足りなかったスキル:農産品の販売
差別化ポイント:自家製のたれのレシピ再現のため、機械扱い技術を活かし、専用の調理設備を導入。

■エアウィーブ
コア技術:ブラスティックス成形加工技術
従来製品:プラスティックス射出成形機
新製品:寝具
差別化ポイント:寝ている人の疲れを軽減できる

■ディージータカノ
コア技術:高い加工精度と設計力
従来製品:業務用ガスレンジの火力調節つまみ
新製品:省エネ機能付き水道部品
足りなかった技術:水関連技術。そこでエキスパートを結集
差別化ポイント:水の勢いを変えないまま水量を10分の1に節水

■幸和産業
コア技術:シルバーカーや車椅子で培った軽量化、安定化、タイヤの形状工夫スキル
従来製品:乳母車/シルバーカー
新製品:高齢者向け歩行器(介護補助対象商品)
足りなかった技術:販路。介護補助対象商品はGMSやスーパーでは販売していない
差別化ポイント:「重い」「不安定」「タイヤが溝にはまる」という3つの不満解消

■オオアサ電子
コア技術:液晶加工技術
従来製品:液晶表示装置加工
新製品:ハイレゾスピーカーやスマホ保護カバーガラス、タッチパネル式看板
足りなかったスキル:営業(ずっと下請けで来たため)
差別化ポイント:部屋のどこでも同じ音質で音楽を楽しめる全方位型スピーカー。ハンマーでも割れないiPhone保護ガラス。大手電機メーカーも販売

 

これらの事例は、市場参入前こそ門外漢ですが、門外漢だからこそ市場の常識に囚われずに新らたなスキル(自社の強み)を市場に持ち込み、学びながら足りないスキルを身につけて、新しい常識を生み出し、その結果差別化を実現しています。

新市場にこそ、活路がある

自社に当てはめて考えると、学びがあるのではないかと思います。

 

改めて感じるのは、様々な状況で新事業への転換を図っているということ。

オオアサ電子長田社長が「事業転換なんてきれいなもんじゃない。ドラマなら面白いかもしれないが、これほど苦しいことはなかった」とおっしゃっている言葉には、当事者しかわからない重みがあります。

業種転換のウソ・ホント…共通するのは、「強みの見極め」

日経ビジネス2015年3月2日号で、「業態転換 常識のウソ・ホント 中小でも富士フイルムになれる」という特集があります。

ここで富士フイルムの名前が出ているのは、言うまでもなく、フィルム市場が消滅しつつある中、液晶や医療など非写真事業を強化して企業を変革し生き残りに成功したからです。

市場の変化が激しい中、富士フイルムが直面した危機が、多くの市場で起こっています。

この記事では、実際に業態転換をした中小企業を例に挙げて、次のように検証しています。

(ウソ1) 業態転換は最後の手段 → (真実1)業態転換は好調時にこそ決断する

(ウソ2) まずは周辺分野を狙え → (真実2)「飛び地」に出るから、知恵が生まれる

(ウソ3)宝は成長分野にある → (真実3)成熟分野にこそ宝は眠る

 

私は拝読して、これら企業に共通するのは「企業の強み」を徹底的に見極めて活かし、足りないスキルを補強している点ではないか、と感じました。

取り上げられている企業をすべて見てみたいと思います。

 

■ブランチ(愛媛県西条市)

業態転換:建設業→カフェ・コーヒー豆の輸入販売

きっかけ:公共事業の急減

活きるスキル:建設業で培った店舗の施工・設計

欠けているスキル:カフェ運営スキル

—(以下、引用)—

 「飛び地だからといって、既存の技術が応用できないとは限らない。むしろ飛び地に活路を求めたからこそ、既成概念にとらわれず事業に取り組めたと思う」と越智社長は振り返る。

—(以上、引用)—

 

■太田組(大阪府松原市)

業態転換:建設業→農業

きっかけ:公共事業の急減

活きるスキル:建設業時代の道具。機械の扱い

欠けているスキル:販売スキル

—(以下、引用)—

 偶然にも太田社長の祖母がたれ作りの名人で、近所の焼肉店に自家製のたれを卸すほどの腕前だったため、そのレシピを再現。思い切って専用の調理設備も導入した。建設と調理と分野は大きく違うが、機械の扱いなら多くの社員が手慣れたもの。こうして2013年、「大阪河内 万能焼肉のたれ」が誕生した。

—(以上、引用)—

 

■ディージータカノ(大阪府東大阪市)

業態転換:業務用ガスレンジの火力調節つまみ→省エネ機能付き水道部品

きっかけ:2005年頃から中国や韓国から低価格部品が流入

活きるスキル:高い加工精度と設計力

—(以下、引用)—

 2009年に発売した「バブル90」は蛇口に搭載するだけで、水の勢いを変えないまま水量を10分の1にできる。その省エネ性能の高さに消費不況に悩む多くの飲食業者が飛びついた。「あるラーメン店では年間120万円かかっていた水道代が66万円になった」(高野社長)。そんな口コミが2014年に一気に全国の飲食業者の間で広がり、累計販売個数が5万個を突破。2014年度の会社全体の売上高は2013年度の20倍に当たる2億円に到達した。

  「他の水道部品と異なり、バブル90の製造には高い加工精度と設計力が必要。海外勢には真似できない」と高野社長は説明する。

—(以上、引用)—

 

■エアウィーブ(東京都中央区)

業態転換:プラスティックス射出成形機メーカー→寝具業界

きっかけ:射出成形機は海外勢に押されて経営が悪化

活きるスキル:ブラスティックス成形加工技術

—(以下、引用)—

 こうして2007年に発売されたのが、“寝ている人の疲れを軽減できる寝具”エアウィーヴだ。同社はその後、敷布団だけでなく、枕など関連商品も開発。2007年は4000万円だったエアウィーヴの売り上げは2014年度には120億円を見込む。国際線のファーストクラスや高級ホテルにも採用されるなど、販路は今も急速に広がっている。

—(以上、引用)—

 

■幸和産業(大阪府堺市)

業態転換:乳母車→シルバーカー→高齢者向け歩行器(介護補助対象商品)

きっかけ:少子高齢化

活きるスキル:シルバーカーや車椅子で培った軽量化、安定化、タイヤの形状工夫スキル

欠けているスキル:販路。介護補助対象商品はGMSやスーパーでは販売していない

—(以下、引用)—

 歩行器事業は現在、幸和製作所の売上高のうち約3割を占める。2014年の会社全体の売上高は44億円。歩行器事業が牽引する形で、ここ数年、年率2ケタ増という急成長が続く。

—(以上、引用)—

 

■オオアサ電子(広島市山北郡)

業態転換:液晶表示装置加工→ハイレゾスピーカーやスマホ保護カバーガラス、タッチパネル式看板

きっかけ:売上8割の得意先からの契約解除

活きるスキル:液晶加工技術を核に、強みと付加価値を洗い出し

欠けているスキル:ずっと下請けで来たため営業がいない。

—(以下、引用)—

 ピーク時300人いた従業員の数は、115人程度まで減ったが、苦しい4年間も解雇はせず、雇用を守り抜いた。ただ、周辺事業が育ちつつあるとはいえ、2014年の売上高は、契約を解除される前と比べて3分の1。長田社長は「事業転換なんてきれいなもんじゃない。ドラマなら面白いかもしれないが、これほど苦しいことはなかった」と話す。

—(以上、引用)—

 

ただ、例外もあります。

■ディライト(奈良市)

創業者の教えで、15-20年ごとにまったく違う事業に業態変更してきました。

肌着生産工場→ホテル業→輸入雑貨販売→結婚式場運営→(将来、カフェ運営/写真館経営)

見極めポイントは、15-20年後に地域で最ももうかる事業ということ。

ディライトは、過去の事業の強みが活きない分野に多角化しています。

しかし実際には、「強み」についても考慮していまるのです。

—(以下、引用)—

もっとも、「15年後にもうかる」という基準で進出分野を決めてしまえば、白羽の矢が立つ事業は往々にして既存事業と無関係の分野になり、現在持つ技術やノウハウの応用は望めない。「だから準備の時間が必要」と出口社長は強調する。

—(以上、引用)—

 

■はせがわ

仏壇販売から墓石販売へ業態転換しました。

1995年に販売絶好調でしたが、バブル崩壊以降、注文住宅が減り狭くなるので仏壇サイズも小さくなることが予想されました。一方で高齢化社会で墓石販売は安定成長が望めます。

一方で、仏壇と墓石は営業方法が違うので墓石問屋へ修業に出し、時間をかけて事業シフトに着手、現在は200万円以上の仏壇はピークの10%に落ち込む一方、墓石事業が会社を支え、2014年の会社の営業利益は過去最高でした。

 

ディライトもはせがわも、多角化したい事業では現在の強みは活きないので、好調なうちに時間をじっくりかけて必要とされる強みを獲得してきました。

裏を返せば、強みはやはり重要と言うことですね。

 

価格競争から脱して、新たな価値を生み出した後に起こることは、新たな価格競争。ではどうするか?

講演で、次のようにお話ししました。

「際限のない価格勝負を続けると企業は体力を消耗してしまい、次々と淘汰されてしまうので、業界全体としては永遠には続けられません。だから価格競争が行き着く先には、必然的に価値競争への転換があります」

そして質疑応答の際に、こんなご質問をいただきました。

「価値競争に転換した後、再び価格競争になる、といったように、それは繰り返されるのでしょうか?」

 

皆様は、このご質問にどのようにお答えになりますでしょうか?

 

私は、このように答えました。

「まったくおっしゃる通りで、価値競争に転じても、再び価格競争になります。

なぜかというと、新しい価値を創り出しても、価値には賞味期限があるからです。

たとえば、一時期「企業寿命30年説」というのが流行りました。新入社員として成長産業に入っても、50歳になった頃には構造不況産業になるケースはとても多くあります。企業が新しい環境に適応できず、新たな価値を提供できないと、成長産業と言えどもいつかは衰退してしまうのです。

だからこそ、常に新しい価値を創り出して、価格競争に陥らないようにしていかなければなりません。
その出発点は、どのターゲット顧客の、どのような課題に、どのような解決策を提供するか、です。」

 

常に、いかに新しい価値を顧客に提供し続けるかは、企業にとって永遠の課題。

そしてそれこそが、企業の存在理由でもあると思います。

 

「オンラインで靴を買う顧客は存在する」という仮説を、簡単な実験で検証したザッポス

2009年11月、アマゾン・ドットコムは約9億ドルもの大金を投じて、靴・アパレルのネット販売大手ザッポスを買収しました。

このザッポスの創業は1999年。靴のオンライン販売立ち上げを皮切りにビジネスを始めました。

 

1999年はネット販売が普及、急速にあらゆるものがネットに移行し始めた時期です。

当時、「靴のオンライン販売ビジネスを立ち上げよう」と思いつき、実行したのは凄いですね。 仮に思いついたとしても、「そもそも靴は履き心地を重視する。オンラインで売るのは無理」と考え、そこで思考停止する人が圧倒的に多いのではないかと思います。

Women shoes. many high heels.

 

実はザッポスの創設者ニック・スインマーンは、「靴をオンラインで買う顧客は存在する」と仮説を立てました。

ではどのようにその仮説を検証すればいいでしょうか?

1999年の当時、ネット販売サイトを作るだけでも大変です。

 

スインマーンは、実に簡単な方法でこの仮説を検証しました。

その事業立ち上げの頃の様子がエリック・リース著「リーンスタートアップ」で描かれています。

—(以下、引用)—

スインマーンは実験からスタートすることにした。まず、靴をオンラインで買う顧客がいるという仮説をたてる。そしてその仮説を検証するため、近所の靴店に頼んで在庫品の写真を撮らせてもらった。撮った写真はウェブに掲載し、それを誰かが買ってくれたらお店の売値で買うからと言って。

このようにザッポスはごく小さくシンプルな形でスタートした。このときの目的は、靴のオンラインショッピングにおいて優れた体験のニーズが十分に存在するか否かという問いに回答を得ることだった

—(以上、引用)—-

「靴のオンラインショップ」というと、「倉庫を用意して、複雑な受発注システムを構築したりしなければならないので大変だ」と思いがちです。さらに事業立ち上げの際には、我々は市場調査に頼ったりします。

しかしスインマーンはシステム構築は行わず、市場調査にも頼らず、1−2日あれば誰でも作れる簡単な仕組みでサービスを開始し、「お、これは売れるぞ」と検証してみたわけですね。

 

当時は靴をオンライン販売で売る業者は存在しませんでした。

しかし実際にやってみたら「売れた」のです。「顧客が存在するという事実」はビジネスを立ち上げる上では、何百時間もの議論よりも、はるかに貴重なデータです。

スインマーンは、実際に靴が売れたことがわかっただけでなく、様々なことを学びました。

–(以下、引用)—

ザッポスは以下のことが学べたのだ。

1.顧客の望みについて精度の高いデータが得られた。頭の中で考えただけの質問を発するのではなく、顧客が実際にどう動くのかを観察したからだ。

2.現実の顧客とやりとりする立場に自らを置き、顧客のニーズを学んだ。………

3.顧客が予想外の動きをする場合があり、そのときザッポスは、たずねようとも思わなかった情報を入手した。たとえば顧客が靴を返品してきた場合などだ。

ザッポスが行った実験からは、十分な数の顧客が靴を買う、あるいは買わないという、明快で定量的な結果が得られた

……小さくスタートすれば、全体的なビジョンを損なうことなく、実行時の無駄を大幅に減らせる。

—(以上、引用)—

 

新規事業を立ち上げる際に陥りがちな罠は、「考えすぎてしまう」ことです。しかしいくらオフィスで考え抜いても、決して正解にはなりません。

むしろザッポスのように、実際に行動して顧客に販売することで、学べることも多いのです。

さらに「オンラインで靴を売るのは無理」と考える人が圧倒的に多かったからこそ、「実は買う顧客が存在する」ということを発見したザッポスがブルーオーシャンを切り開けたのです。

顧客が洗練され、変化が激しい現代においては、「仮説を立てた上で、リアルな顧客から学ぶ」という仮説検証のプロセスが重要なのです。

高城 剛著「2035年の世界」 今後20年間に何が起こるか、ポイントを押さえて概観できます

高城 剛著「2035年の世界」を読了しました。

高城さんが書かれたので、当初は技術面が中心だと思っていたのですが、実際には社会や人間のあり方までが書かれていて、とても参考になりました。

以下のセクションで構成されています。

セクション1:身体科学

セクション2:科学

セクション3:移動

セクション4:スタイル

セクション5:リスク

セクション6:政治

セクション7:経済

セクション8:環境

 

ここ1-2週間話題になっている「指数関数的に進化する人工知能は、人類にとって脅威になるのではないか」という点についても、高城さんとしての回答を出しておられます。

コンパクトな本ですが、今後20年間に起こる可能性がある事象についてポイントを押さえて幅広く概観できます。

今後の社会動向を考えて戦略の打ち手を考える立場にある方には、ご一読をお勧めします。

SmartNews Compass 2014に参加しました

昨日2014/12/1に東京ANAホテルで行われたSmartNews Compass 2014に参加しました。

「日本のIT業界でも、マーケット・イン発想でテクノロジーに徹底的にこだわり、最初からグローバル展開を考え海外の経営人材も採用し、成果も出し始めているSmartNewsのような企業が出てきたのだなぁ」と、大きな感銘を受けました。

 

まず、SmartNews 40名の社員のうち、半数以上はエンジニア。物理系研究者出身の方が多く、「世界中の良質な情報を必要な人に送り届ける」というミッションのもとで、技術を磨いています。

戦後間もなく急成長したソニーやホンダといった日本のベンチャーも、設立当初はこんな感じだったのかもしれない、と思いを馳せました。

 

さらに、米国で政治記者を長年務め、The Wall Street Journal Onlineを立ち上げ、デジタルジャーナリズムの世界最大組織Online News Association(ONA)を創設した米国人も、SmartNewsの経営陣に参加しています。

またSmartNewsは最近、米国版を出荷しました。これは日本語版と同一です。設定で「各国版」の項目を「アメリカ合衆国」に変えると、米国と同一コンテンツを見ることができます。

2年前に当ブログの『消費者が「体験」を求めるグローバル時代に必要な、「サービス製造業」の考え方』というエントリーで書いたように、製品とインフラを世界共通プラットホームとして提供します。

 

またSmartNewsをお使いの方は、最近広告が違和感なく表示されるようになったことに気がついた方もおられるのではないでしょうか?

今回、SmartNews Adという広告事業の開始を発表しました。

“Ads as Contents”という考え方のもとで、広告もコンテンツの一部と捉えて、高度な最適化と配信アルゴリズムを持つAd Technologyにより広告配信しています。

SmatrNews Ad NetworkのPartnersとして、ミクシー・森田社長が登壇された他、産経デジタル、毎日新聞、サイバーエージェント、グリー、DeNAなども参加されています。

既にクライアントは50社。今回はその中からライフネット生命とエンジャパンのご担当者も登壇しました。

 

このようなイベントに参加するのは久しぶりでしたが、とても刺激を受けました。

何よりもITmediaにおられた時にとてもお世話になった藤村さんがお元気そうに活躍されていて、嬉しく思いました。

是非、SmartNewsが世界に羽ばたいていただくことを願っています。

 

詳しい様子は既にITmedia Newsでも紹介されていますので、興味がある方は、そちらもあわせてご参照ください。

現代の若い起業家たちに感じる、大きな可能性

東洋経済オンラインに掲載されていた、田原総一朗さんの対談にとても共感しました。

今の起業家は松下さんや盛田さんに似ている
田原総一朗が目にした、スタートアップの最前線

—(以下、引用)—-

共通するのは、事業の興し方が乱暴でないことだ。言葉遣いも割合丁寧だし、服装も普通の格好をしている起業家が多い。ここは堀江貴文の世代とは毛色が違う。

また大学を卒業して、いきなりベンチャーを作るのではなく、まず手頃な企業に就職しているのも、私が出会った起業家たちの特徴だ。そこで生きるノウハウをまず習得し、その後、自分の好きなビジネスを立ち上げている。

彼らが大事にしているのは、金儲けよりもソーシャルインパクトだ。本当はボランティアでやりたいが、それでは長続きしないからと、ソーシャルビジネスという形態で行っている。

—(以上、引用)—-

私も20代・30代の若い起業家にお目にかかる機会がよくあります。

多くの方がキチンとしています。パリッとしたスーツも着こなす方も意外と多く、礼儀作法もしっかりしています。「いかにいい社会を作るか」というビジョンが明確、ちゃんと日々の努力と学びが大切であることを理解し、謙虚に積み重ねておられます。

そして何よりも尊敬できる素晴らしい人間力を持った人が多いと感じています。

 

会社設立の起業のハードル(資本金、手続き等)がここ10年で大きく下がったことも一つの要因なのでしょう。

加えて、日々の会社経営に必要なリソースもクラウドやアウトソーシングを活用すればそれほどかかりません。損益分岐点をかなり低く下げることができるので、ある程度の売上を確保することができれば、会社経営を軌道に乗せることができます。

この結果、私が20代だった20-30年前と比べて、起業はかなり現実性ある選択肢になっていると思います。(かくいう私も起業しました)

 

ということで、この記事で紹介されていた田原総一朗著「起業のリアル」を早速Kindleで購入しました。16名の起業家と田原さんが個別に対談した対談集です。

読むのが楽しみです。

 

工期1年絶対厳守のホテル。浴室工事だけで1年半。どうする?

東京オリンピックが開催されたのは、51年前の1964年。日本は高度成長期の入り口にさしかかっていて、様々なイノベーションが生まれました。

開催直前、オリンピックの来場客のために、ホテルニューオータニが急ピッチで建設されていました。

ホテルニューオータニは、着工後1年以内の完成が求められていました。

しかし各部屋で行う浴室工事は、当初1年半かかると見込まれていました。

従来どおりの方法でやっていては、まず間に合いません。

 

そこで東洋陶器(現TOTO)と日立化成工業(現ハウステック)により新たに開発されたのが、ユニットバス工法。

工場で浴室の部品を成形し、工事現場で組み立てるというイノベーションが生み出されました。

この結果、浴室工事はわずか3ヶ月で完成できるようになり、ホテルは無事納期までに完成できました。

この様子は、TOTOのサイトでも紹介されています。

ユニットバスルームの発祥は?

今ではユニットバスの普及率は90%。

このユニットバスも、東京オリンピックがきっかけで世界に先駆けて生まれたのです。

ユニットバス

 

ゲリー・ハメル著「経営は何をすべきか」に、次のような一文があります。

「イノベーションと変革への意思は情熱から生まれる。つまり、現状に対するもっともな不満の産物なのである」

ユニットバスも、まさに大きな課題への挑戦で生まれた不満の産物です。

 

一見無謀に見えるような「顧客の課題」ほど、大きなイノベーションに育つ可能性があるのです。

「顧客の課題」は、まさにイノベーションの母なのです。

『デキる・デキない』や『常識』を捨て、『やってみたい』気持ちに従うと、人生が変わる

2014/7/18(金)にIBM OB会であるBBJ主催「若手サロン」があり、参加しました。

今回は、ともに日本IBM 2000年入社組の永田ジョージさん小野裕史さんのご講演でした。

 

永田ジョージさんは日本IBM入社後は、ITエンジニア、社内留学でMBA取得、その後はコンサルタント、営業の仕事をされていました。在職中から都内ライブハウス等でライブを行なっておられました。

2012年に日本IBMを退職され、現在はジャズミュージシャンとしてご活躍中です。CDも3枚リリースされ、精力的にツアーを行っておられます。

 

小野裕史さんは、日本IBM入社5ヶ月後、モバイルベンチャー企業に社員第1号として転職。2008年に同社専務を退任され、ベンチャーキャピタルを立ち上げて現在に至っています。出資企業にはあのfreeeやGroupon Japan、中国ではYeahka、DeNA China等があります。

一方で、35年間まったく運動していない状態から、2009年にWii Fitをきっかけにランニングを開始。5ヶ月後にフルマラソン出場、2年後に中国ゴビ砂漠やエジプトサハラ砂漠の250kmマラソン完走、3年後北極点でフルマラソン完走、南極アイスマラソン100kmの部で世界2位。4年後にチリアタカマ砂漠250kmマラソンのチーム戦で世界1位。そして文藝春秋社より「マラソン中毒者」という本を出版したこと。

 

小野さんのプレゼンに、

『デキる、デキない』や『常識』を捨て、『やってみたい』気持ちに従うことが大切

という言葉がありました。まさに永田さんと小野さんの生き方から、このことを学ばせていただきました。

 

人はともすると、『デキる・デキない』や『常識』で判断し、リスクを避けようとします。しかしこれは、過ぎ去った昔の経験で、未来を恐れているのです。

実際は、未来がどうなるかはわかりません。状況も変わるし、自分自身も、何歳になってもどんどん成長していきます。

未来は変えられるのです。そして変える原動力は『ワクワクすることを、やってみたい』という自分の想い。

だからこそ、『ワクワクすることを、やってみたい』という気持ちが、大切なのですね。今回の講演では、永田さんの場合は音楽、小野さんの場合はマラソンやベンチャーキャピタル経営ですね。

絵にすると、こんな感じです。

Photo  

以前ブログでも書きましたように、人は「これをやらなければ!」と思って仕事を頑張るよりも、「これをやりたい」と思ってやる方が、知的作業ははるかに大きなパフォーマンスを生み出します。現代は知識社会。だから「やりたい」ことをやることが、とても大切なのですね。(ダニエル・ピンクの「モチベーション3.0」ですね)

私も「やってみたい」ということばかりやってきたので、お二人の話にはとても共感しました。

また私はクライアント様に事業戦略の研修や講演を行う機会を多くいただくのですが、企業共通の悩みが「いかに会社として新しいことに挑戦するか」ということです。

これも結局、会社の中で「ワクワクする、やりたいこと」を見つけ出して、挑戦することなのですね。

今回の永田さん・小野さんの講演をお聞きして、個人でも企業でも、『コレをやってみたい』ということが何よりも大切なのだ、ということがよくわかりました。

 

永田さん・小野さんに感謝です。

 

『人が足りなかったから、突破口が見つかった』…規模10倍のライバルに、常識を覆したディーゼルエンジンで挑んだマツダ

マツダは、社員数2万人で売上2兆円。
一方の業界トップのトヨタは、社員33万人で売上22兆円。

規模10倍のライバルに同じ事をしていては勝てません。そこでマツダは、「スカイアクティブ」という省エネエンジンで差別化しました。圧縮比に注目し、徹底的に圧縮比を高めて燃費を改善。ノーマルのガソリンエンジンでハイブリッド並の省エネを達成し、デミオに搭載しました。

ここまでは2011年時点の情報を元に、「100円のコーラを1000円で売る方法2」でご紹介した話。

実は最近のマツダは、このガソリンエンジンとはまったく逆のアプローチで、ディーゼルエンジンを成功させていることをご存じでしょうか?

 

ディーゼルエンジンの取り組みで、日本の大手自動車メーカーは欧州メーカーに遅れを取っています。ここにマツダはディーゼルエンジン「スカイアクティブD」で挑戦しました。

ディーゼルエンジンは、低速トルクがあって燃費が良いものの、高回転が回らず、排気ガス浄化度はガソリエンジンンに及ばず、価格もガソリンエンジンに比べて高い、というジレンマがあります。

本当は静かでよく回り、排気ガスをキレイにし、価格下げたいところ。

さらに燃料を速く燃やすと窒素酸化物(NOx)が増え、ゆっくり燃やすと黒煙(PM)が増えるので排ガスの後処理装置が必要になり、コストがさらに上がります。

ディーゼルエンジンにはジレンマがあったのです。過去、自動車メーカー各社はここに色々と挑戦してきました。

 

マツダは全く異なる設計でチャレンジしました。このことは下記の記事に掲載されています。

「排ガス対策・静か・高回転」 常識を覆したマツダのディーゼル(モータージャーナル 池田直渡さん

ガソリン版のスカイアクティブでは圧縮率を上げました。

逆に、ディーゼル版のスカイアクティブDでは圧縮を下げたのです。

圧縮を落とせばNOxは減ります。加えて燃料噴射を高精細化して超緻密制御することで、まずNOx抑制エンジンの基本を作りました。

しかしこれだとパワーが出ません。そこで条件がよいときはターボで圧縮を補うようにしました。

つまり通常のディーゼルエンジンは、「エンジン高性能化→排ガス対策」という発想で取り組むところを、マツダは「排ガス対策→高性能化」という逆転の発想で取り組んだのですね。

おかげでディーゼル特有のガラガラ音も激減、強度設計に余裕ができたので鋳鉄製ブロックをアルミに置換して、軽量ディーゼルが誕生。回転部品が軽量化したことでエンジンも高回転化しました。

スカイアクティブD搭載車は走りもよいと評価されています。

 

2011/12/11に掲載された日本経済新聞の記事「イノベーション 成功の法則(3) 『欠乏』『不足』が新機軸生む」で、マツダの人見開発本部長は、『数十人の組織ではあれもこれもできない。一方で必ず燃費の良さは重要になる。エンジンの基本に立ち返り一から考え直すことにした』とおっしゃっています。

さらに『人が足りなかったから、突破口が見つかった』と加えておられます。

この取り組みの結果、圧縮比を上げたガソリンエンジンのスカイアクティブが生まれました。

 

この数年後に挑戦したディーゼル版スカイアクティブDも、方法は全く逆の「圧縮比を下げる」アプローチではありますが、同様の「エンジンの基本に立ち返り一から考え直した」結果生まれたのです。

私たちはつい「リソースが足りない」と思いがちです。

しかしリソースはイノベーションの必須条件ではありません。

むしろスタートアップ企業などを見ていると、リソースがなく、かつしがらみから解き放たれた組織の方が、自由な発想でイノベーションを起こすケースが多いように思います。

 

このマツダの挑戦は、しがらみから解き放たれて発想する大切さを教えてくれます。

 

 

「イノベーションのジレンマ」は製造業だけでなくあらゆる業界でのテーマである–米国小売業のケース

絶賛された企業でも、破綻します。その一つの理由が「イノベーションのジレンマ」。

イノベーションを起こした企業が、目の前の顧客のことばかり真剣に考え続けているうちに現状維持に陥り、次のイノベーションを起こした企業に破れ、そのうち破綻してしまうジレンマをあらわした言葉です。

私は講演で、1950年代に全盛期を迎えていた真空管ラジオが、トランジスタという新技術を使い急成長したトランジスタラジオに置き換えられた例を挙げて「イノベーションのジレンマ」を説明しています。

 

一方で講演後のご意見やアンケートの中で、「自分の業界は製造業でないので、参考にならなかった」というご指摘をいただくこともあります。

実はイノベーションのジレンマは、製造業に限らずあらゆる業界で起こることです。その本質が、「新しい技術を活用したイノベーターが、現在の覇者に勝ってしまう」ということだからです。

先日の日本販売士協会様の講演では、米国小売業でこの150年間起こったケースを例に、イノベーションのジレンマをご紹介しました。

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図の補足説明です。

・1800年代後半に生まれた鉄道技術で、全米を網羅する輸送能力が大きく向上しました。そこでシカゴのマーシャルフィールドのように、駅の拠点に百貨店が生まれました。

・1900年代前半、自動車が全米に普及しました。そこで自動車を持った消費者の利便性を考えて、大きな駐車場を用意したシアーズのようなGMS(総合スーパー)が生まれ、成長しました。

・1980年代から90年代になると、SCM(サプライチェーンマネジメント)技術が大きく進化しました。そこで人口5万人程度の市に出店し、各店に対して配送センターから最適化したサプライチェーンで商品を発送することで、コストを徹底的に下げて、EDLP(エブリーディ・ロー・プライス)戦略を実現したルマートに代表されるディスカウントストアが急成長しました。

・2000年代、インターネット技術を活用し、おなじみのアマゾンのようなネットショップが急成長を続けています。

このように、一つの理論を理解することで、様々な業界に展開できるのですね。

 

講演では、お客様の状況、課題やニーズに併せて、なるべくハラ落ちするように講演内容をカスタマイズしてお話しするようにしています。

 

ランダル・ストロス著「Yコンビネータ」…起業家精神とは何かを学べる本

「Yコンビネーター シリコンバレー最強のスタートアップ養成スクール」(ランダル・ストロス著)を読了しました。

「Yコンビネーター」(以下、YCと略す)とは、シリコンバレーの起業家養成スクール。本書はこのYCの3ヶ月間の活動に密着したノンフィクションです。

合格率3%を突破した、スタンフォード、MIT、UCバークレーなどの在校生や卒業生からなる64チームが、3ヶ月間かけて、自分たちの事業を立ち上げるために、「デモ・デー」と言われる数百人の投資家へのプレゼンを目指して、寝食を忘れて働き続けます。

各チームの事業は、「デモ・デー」では投資されるかどうかが決まります。

つまりYCは単なるスクールではありません。YCではシーズン毎に3ヶ月間、このようにリアルなお金を投資し、参加者はアドバイスを受けながら、自分の人生をかけて事業立ち上げに挑みます。

YCは基本的に、スタートアップの事業立ち上げのために、少数株と交換で、シード資金を投資として提供する「エンジェル投資」です。ただ実際に成功するのは100件のうち数件というのが現実。投資時点ではどの事業が成功するかはわかりません。そこで定期的に多数のスタートアップに同時に投資し、かつ徹底的にアドバイスをする仕組みになっているのです。

このYCからは、あのドロップボックスも生まれています。

 

本書を読んで、現代のシリコンバレーにおける起業がどのように行われているのか、その一端を知ることができました。

いくつか抜粋します。

—(以下、引用)—

10年前にはソフトウェアスタートアップがベンチャーキャピタルから資金を得るためには、創業者には業界での長い経験が求められるのが普通だった。また起業には高価なサーバーやデータベースソフトの購入、人材の採用のために数百万ドルを必要とした。現在のYC傘下の起業家たちには情熱とプログラミング能力以外何も必要ではない。

—(以上、引用)—

クラウド登場によりサーバーを所有する必要がなくなり、さらにシステムやソフトウェアも進化したことで、多くの場合、投資額は自分たちの人件費がまかなえれば事業が立ち上がる環境になり、起業の状況も変わってきています。

 

また投資案件を決める基準も、興味深く思いました。

YCでは、創業者たちが成功に必要な資質を備えていると思えるならば、アイデアに弱点があっても大目に許しています。

そして思考の試行錯誤が必要なので、立ち上げるビジネスは途中で変わってもOK。提供しようとするサービスやプロダクトの内容も、頻繁に変わります。

 

起業に適した年齢は、「学部学生よりは多少成熟しているものの、まだ家のローンや子育ての重荷を背負っていない」こと。つまり25歳前後。このことについても書かれています。

—(以下、引用)—

スタートアップを始めてもたぶん失敗するだろう。ほとんどのスタートアップは失敗する。それがベンチャー・ビジネスの本質だ。しかし失敗を受け入れる余裕があるなら、失敗の確率が90%ある事業に取り組んでも判断ミスにはならない。40歳になって養わなければならない家族がある状態での失敗は深刻な事態になる。しかしきみたちは22歳だ。失敗してもそれがどうした?22歳で在学中にスタートアップに挑戦して失敗したとしても、23歳の一文無しになるだけだ。そして得難い経験を積み、ずっと賢くなっていくだろう。これが私が呼びかけている学生向けプログラムの概要だ。

—(以上、引用)—

なぜ25歳なのかについても書かれています。

—(以下、引用)—

25歳はスタミナ、貧乏、根なし草性、同僚、無知といった起業に必要なあらゆる利点を備えている。

—(以上、引用)—

新卒一括採用などの仕組みもある日本と直接の比較はできませんが、米国のスタートアップの考え方がよくわかる一文だと思いました。

 

—(以下、引用)—

「まず一般的に言って、失敗を隠すな。きみたちがどんな失敗をしたって金を返せとは言わん。」

….

「期日までに仕事ができないと上司に『おい、遅れているぞ』と叱られる。そのままいつまでも仕事が終わらなければ最後にはクビにされるかもしれない。しかしわれわれはきみたちをクビにはしない。しかし市場がきみたちをクビにする。」

—(以上、引用)—

このあたりは、リスクマネーとはどのようなものなのかがわかる部分です。

 

—(以下、引用)—

「実は過去にイライラして口うるさくしたことがないではない。しかし何の訳にも立たなかった。まずい仕事をする人間はいつまでたってもまずい仕事をし続ける。泳ぎを覚えられるか、それともおぼれるか、だ。われわれはきみたちを手助けする。きみたちが望むならわれわれは喜んで手助けする。しかしきみたちがどこか見当はずれな方向にさまよい出てしまっても、われわれはきみたちの襟首をつかんで引っ張り戻したりはしない。これまで成功したスタートアップはみな一切脇目をしないチームだった。寝る、食う、運動する以外はプログラミングしどうしだった。」

—(以上、引用)—

ベンチャーの世界では、何が正しいかわかりません。「これは確実、大丈夫」と思ったアイデアが大失敗し、「これはダメでしょ」と思ったアイデアが思わぬ成功を収めます。だから失敗も多い半面、成功した場合は大きな見返りが得られます。変化が激しい環境では、口うるさく「こうあるべき」と言っても実は間違っているかも知れません。事実に対する謙虚さが求められるのですね。

 

—(以下、引用)—

アメリカの有権者は「アメリカ国民は全体として世界でもっとも起業家精神に富んでいる」と言う。グレアムはそれに強く反論する。彼の意見では、他の国で欠けているのは起業家精神ではなく、多くの創業者が集中する場所だという。そういう場所では多くの人々が起業家として成功する姿を目の前で見られるので起業へのモチベー

人類の歴史は、リスクへの挑戦の歴史

類人猿から人類が枝分かれしたのは、500万年ほど前、アフリカだと言われています。

当時、私たち人類の祖先は、森林の樹上で豊富な食料に恵まれて生活していました。しかし環境が激変して食料が減った時、快適だった樹上から下りて、勇気を持ってサバンナで直立二足歩行を始め、自由になった前肢を手として使い始めたことで、人類として進化を始めた、という説があります。(*注)

一方でリスクを取らなかった類人猿は、当時と同じ姿で森林の樹の上で暮らしています。しかしその森林は少なくなり、生活圏は狭まっています。

 

あえてリスクを取り、未知の世界に踏み出し、未来を築いていく。

この大切さは、現代でも変わりません。

たとえば企業はともすると、自社が得意な製品にこだわってしまう傾向があります。

しかし現在販売中の製品やサービスは、かつてお客様の課題を解決するために開発されたものです。お客様は常に変化しており、かつてのお客様の課題は変わっているかもしれません。

もし現在私たちが得意としている製品が「過去の栄光」になっているのであれば、新しい課題に挑戦することが必要です。

もちろん、挑戦しないことも選択の一つではあります。

ただ長い目で見ると、樹上で生活している類人猿の生活圏が狭まったのと同じ事が起こるかもしれません。

 

常に新しいことに挑戦することで、私たちの未来が開けるのだと思います。

(*注:人類の誕生については、他にも色々な説があるようです)

 

藤沢久美著「なぜ、川崎モデルは成功したのか?」…日本ならではのオープンイノベーションの姿が、ここにある

藤沢久美著「なぜ、川崎モデルは成功したのか?」を読了しました。

 

この本と出会えて「よかった」と思いました。元気になるからです。

 

そもそも「川崎モデル」とは何でしょうか?本書のオビには、次のように書かれています。

—(以下、オビから引用)—

川崎市から始まる 政府・省庁も注目 新・中小企業支援。

異色公務員集団が大企業や金融機関を巻き込みものづくりの町・川崎市を元気にする!
話題のオープン・イノベーションの最前線!

戦略は、「密着」「おせっかい」「キャラバン隊」

—(以上、引用)—-

本書では川崎モデルの様々な事例が紹介されています。たとえば、ある企業のケース。

墓石業を営むある会社は、川崎市からデザインコンペにエントリーすることを勧められました。そこでこの会社はガラス墓石の開発を検討しました。

そのことを知った川崎市のキャラバン隊の担当者は、ガラス工芸を手がける市内の事業者を紹介。ガラスを使った新たな墓石「シルエット」が誕生し、デザインコンペで優秀賞を受賞しました。(キャラバン隊とは、実際に企業に出向き、支援施策の情報を提供したり、連携先を紹介したりと、色々と世話をする川崎市のチームのことです)

さらにキャラバン隊は販売のために、市内のガラス工芸作家を集めて「メモリアルガラス研究会」を発足し、「かわさきガラスのお墓」が誕生、国の地域資源の認定を受け、この墓石の販売は拡大しています。

本書では、次のように書いています。

「社外の異分野の人々との協働の場を作り、これまでの常識を覆す新たな商品を生み出した。まさにオープンイノベーションだ」(p.210-211)

 

「役所がこんなことまでするのか!?」と驚かれる方もいるのではないでしょうか?この原動力が、熱い想いを持った、川崎市の公務員の方々です。

本書では、藤沢さんの優しい視線で、この川崎モデルに取り組まれてきた人たちの様子が丁寧に描かれています。

 

実はこの川崎モデル、最初から川崎市が組織全体で始めたものではありません。

1990年代中頃、中小企業についてまったくの門外漢だった若手中堅職員が、川崎市の中小企業が置かれた厳しい現実を知り、まず勉強会を立ち上げました。その熱い想いに共鳴した数名の職員が中小企業経営者の訪問や勉強会を繰り返して、徐々に育てていったものです。

現在の川崎市では考えられないことですが、当初は組織としての反対もありました。

たとえば、ものづくり企業の共同体である「ものづくり共和国」のために補助金を申請しようとすると、「共和国は会社ではないので、申請はまかりならん」。

川崎市のサイトからリンクを張ろうとすると「一企業だけにリンクを張るのは不公平なのでまかりならん」。

しかし今では、中小企業の支援をしているコーディネータは、川崎市だけでなく、国や都道府県の補助金までみつけて、申請支援をすることもあります。

もし「自分たちのミッションは、川崎市の中小企業の支援施策の活用推進だ」と考えると、ちょっとあり得ない行動かもしれません。

しかし「自分たちのミッションは、産業育成によるよりよき社会の実現だ」と考えると、至極まっとうな行動です。

自分たちのミッションを考え抜いて、メンバーで共有しているのです。

 

一人一人の熱い想いが大きな動きを生み出し、「川崎モデル」を作り上げている様子を、本書では様々な事例を通じて、活き活きと描いています。たとえば、このように書かれた一節があります。

「『官民連携』という言葉はどこでも耳にするが、連携の肝は人の交流。そして現場で一緒に本気で汗を流すこと。そして学びあうことだと、川崎市と関わる金融機関の皆さんが体験を通じて教えてくれた」(p.193-194)

コーディネーターには成功報酬はありませんが、中小企業支援のためなら徹夜も厭わないし、面倒な作業にも嫌な顔一つせずに取り組みます。その理由は、まさに「志」。コーディネーターのある一人は、このように語っています。

「喜んでもらえるのがうれしくて、喜んでもらえるために、いろいろとしてしまう」(p.72)

「働くとは、どういう意味なのか」ということを考えるきっかけをいただき、元気にさせてくれます。

 

「この本と出会えてよかった」と思った理由は、先の「読むと元気になる」ことに加えて、もう一つあります。

それは本書がアイデアの宝庫であること。現場で格闘してきた人たちならではの、ビジネスの知恵が散りばめられています。是非ご紹介したいのですが、ネタバレになってしまうので、当ブログでは割愛させていただきます。

  

本書には、日本ならではのオープンイノベーションの姿が描かれています。折りを見て、読み返していきたい本だと思いました。

 

藤沢さんは「社長Talk」という社長とのインタビューを、2006年7月14日の第一回放送以来毎週欠かさず続けておられます。→これまでのアーカイブ

また「藤沢久美の社長Talk News」というメルマガも、このたび配信200回を超えました。→登録はこちら

藤沢さんが積み重ねてこられた、この膨大な日々の蓄積があってこそ生まれた骨太な本なのだと実感します。

 

アマゾンは、あらゆる消費者体験を革新しようとしている

アマゾンのニュースを数多く目にするようになりました。

ここ数日のニュースに限っても、…

『「Amazon Dash」はネットショッピングに革命を起こしそう』

Amazon Dashを一言で言うと「買い物専用インプットデバイス」。

商品のバーコードを読み取り、注文できます。現在はPC経由。将来的にはこのデバイスが単独で直接ネットに繋がり、消費者が商品を手にしてバーコードを読み取った途端に直接注文できるようになっていく可能性が高いのではないでしょうか。

 

『「Amazon Prime Air」のドローンは第6世代試作機の飛行テスト中、第8世代が設計段階』

ドローン(無人航空機)を使って注文後30分以内に配達することを目指している「Amazon Prime Air」は、2015年の実現を目指しています。

一見ホラ話に思えますが、アマゾンは真剣に取り組んでいます。既に試作機の飛行テスト中で、2kg強の荷物を抱えて16km飛行できるだけの能力とバッテリーを搭載しようとしています。

 

『Amazon Fire TV について知っておくべき10のポイント』

99ドルのセットトップボックスです。テレビを見ていて、「これ買いたい」と思う場面は多いと思います。その際の購買の手間を大きく削減することになるのではないでしょうか?

 

(4/14 7:30AM追記) ■アマゾン、6月にもスマホ発表―9月末までの出荷目指す

Amazonはスマホ販売を検討していると報じられています。これも消費者がスマホ経由で購買することを考えると、アマゾンにとって自然な流れなのかも知れません。

 
 

数多くの消費者が日常的にアマゾン経由で購買するようになると、購買取次をするアマゾンの収益は莫大なものになります。

消費者を増やせば増やすほど、儲かります。

消費者を増やすためには、入り口の敷居をなるべく低くすること。

たとえば、Amazon DashやAmazon Fire TVのデバイスを無料で配布したり、Amazon Prime Airを極めて低料金で提供することで、将来的には莫大なキャッシュフローが得られます。

まさに消耗品の「ジレットモデル」に近い収益モデルを構築できる訳ですね。

 

ちなみに、日本国内ですが、最近もこんなニュースもありました。

『Amazon.co.jpが酒類の直販に参入 ビールや日本酒など5000種以上』

クール便対応などが行われるようになると、従来の酒屋のビジネスは変革を迫られそうです。

 

最近のアマゾンは、小売ビジネスにおけるある種の「クリティカルマス」を越えた感じがあります。

消費者の購買体験をより容易に簡単にすることにより購買機会を増やすために、廉価な最新テクノロジーを活用して、考えられうる様々な方法を展開しているように見えます。

 

ここしばらくの間は、アマゾンの動きから目を離せない状況が続きそうです。

(4/14 7:30AM追記) …赤字部分

 

ルンバのアイロボットCEO曰く、「日本の顧客を幸せにできれば、世界中の顧客を幸せにすることができる」

東洋経済オンラインに、こんな記事が掲載されています。

自動掃除機で独走状態、「ルンバ」強さの秘密
アイロボットCEOの描く「10年戦略」とは

本記事でアイロボットのコリン・アングルCEOは、次のようにおっしゃっています。

—(以下、引用)—

アングル氏は、「日本の顧客を幸せにできれば、世界中の顧客を幸せにすることができる」と言う。開発テストでは、畳の上をはだしで歩いて、細かい粒状のゴミが感じられないかをチェックした。

—(以上、引用)—

この考えで、新型「800シリーズ」は、日本で先行販売したそうです。

先日のブログでも書きましたように、我が家もルンバ870を購入しましたが、確かに旧型の577と比べて格段に能力が上がっています。

拙著「100円のコーラを1000円で売る方法3」では、「日本企業が成功するための解決策」として、与田誠に次のように語ってもらいました。

—(以下、p.28から引用)—

「(世界で一番レベルが高い日本の)ユーザーの要求に、個別にカスタマイズせずに標準品で対応して世界中に展開すること。意思決定のスピードを速めること。そして何よりも考えるだけでなく実行することです。」

—(以上、引用)—

これらは考え方や問題解決アプローチを変えることで出来ることです。

しかし、なかなか出来ないのが現実。クライアント様とお話ししていると、組織の問題が大きいように感じています。

逆に過去のしがらみがない新しいベンチャー企業では、このあたりはリーダーの考え方次第で、軽やかにクリアなさっているようです。

 

マーケティングの問題と、組織論は、かなり深いところで繋がっているのではないか、というのが、最近の実感です。

 

「自社ならではの強み」は何か?いかに育んでいくか?

「自社ならではの強み」は何か?

今年1月末に「「バリュープロポジションが大切」…と言っても、どうやってバリュープロポジションを考える?」で書いたように、その一つの方法はコア技術を考えることです。

 

たとえば、デジカメの台頭で、本業である写真フィルム市場の90%が蒸発してしまった富士フィルムでは、コア技術は「写真フィルム」ではなく、「有機材料」「無機材料」「薄膜技術」「光学」「画像」「メカ・エレキ」の6つと考えました。そして化粧品や高機能材料などに多角化を進め、高収益を維持しています。

このように考えると、「写真フィルム」はコア技術ではなく、「製品技術」であることがわかります。

 

この「コア技術」について考える際に、とても参考になる書物が、「コアコンピタンス」という考え方。

「コアコンピタンス」という考え方自体は、1990年にゲリー・ハメルらがHarvard Business Reviewに寄稿した論文”The Core Competence of the Corporation”で登場し、広まった概念です。

もう24年前の論文ですが、ここには高度成長期の絶頂にあった多くの日本企業が登場します。

 

「コアコンピタンス」の考え方は、ゲリー・ハメル著「コア・コンピタンス経営 」(日経ビジネス文庫)にまとまっています。

既に20年近く前の本ですが、「コアコンピタンス」以外にも多くのことに触れられており、学ぶことがとても多い本でした。

本書から、特にコアコンピタンスについていくつか取り上げてみたいと思います。

 

—(以下、抜粋)—

(p.72から)

製品の開発は100メートル競走のようにスピードの勝負だが、産業の発展や変革を巡る競争は、100マイルの自転車競争、遠泳競争、マラソンを合わせたトライアスロンに相当する。

—(以上、抜粋)—-

ここでは後者がコアコンピタンスに相当します。製品開発とコアコンピタンスを明確に分けて、考えることが大切であり、時間軸のとらえ方を変える必要があるのです。

ともすると私たちは「製品こそが強み」と考え勝ちですが、そうではありません。そのことについて、次のように書かれています。

—(以下、引用)—

(p.134から)
コアコンピタンスとは、もっと広い意味の顧客にとっての付加価値を意味している。たとえば、アップルコンピュータの「ユーザーフレンドリー」や、ソニーの「ポケットサイズ」、あるいはモトローラの「コードレス」などである。キヤノンにはカメラ事業、コピー機事業、プリンター事業などいろいろな事業部門がある。しかし、キヤノンが自社をそれぞれのマーケットに対応した戦略的事業部門の集まりとしてしか見ていなければ、次のカメラ、次のコピー機、次のプリンターというイノベーションしか起きない特定の製品と市場をセットで自社を定義してしまう企業は、自社の運命を市場の運命に縛りつけてしまうことになる。

(p.315から)
コアコンピタンスとは、顧客に特定の利益をもたらす一定のスキルや技術を言う。ソニーにとってその利益とは携帯性で、そのためのコアコンピタンスが小型化である。フェデラルエクスプレスが提供する利益は定時配達で、そのための高いレベルのコアコンピタンスが物流管理である。

(p.319から)
コアコンピタンスは幅広い製品やサービス全体の競争力に貢献する。この意味でコアコンピタンスはどんな特定の製品やサービスよりも上位に置かれる存在であり、また社内のどの事業部よりも大切である。

(p.364から)
空白エリアのビジネスチャンスを明らかにするには、市場ではなくコアコンピタンスから始めて、ある特定の企業力を特定の顧客にもたらす利益を利用することを考えなければならない

—(以上、引用)—-

このように考えると、コアコンピタンスは「コア技術」の集合体でもあり、事業などのコアビジネスは市場や顧客ニーズに対応できるようにコアコンピタンスを元に生まれてくるものであり、製品はコアビジネスの周りで生まれるものである、ということがわかります。

 

このコアコンピタンスは不変なのか?それについては次のように述べられています。

—(以下、引用)—

(p.336から)
一〇年単位で見たときに、ある時期にコアコンピタンスであったものが、次の時期の単なる能力の一つになってしまうことがある。

(p.244-246から)
企業の経営資源をしのぐような野心やレバレッジする力がないと、ありあまるほどの経営資源があっても戦略の決定がおろそかになりかねない。….野心が経営資源を永遠に上回っているというストレッチこそが、競争優位を生み出すエンジンの燃料である

—(以上、引用)—

つまり、コアコンピタンスは陳腐化するし賞味期限がある、ということです。

たとえばかつてのソニーは本書にあるように「小型化技術」がコアコンピタンスでしたが、今や多くの企業がこの能力を身につけてしまいました。現在のソニーの苦境は、ここにあるのかもしれません。

 

5年・10年単位で常に「自社はどうあるべきか?」を考え、自社のコアコンピタンスを見据えて、長期的にどのように伸ばしていくか考えていく。

そのためには常に背伸びをし続けていくことが必要なのでしょう。
 

 

与えられた経営資源にこだわらず、「本来は…」で発想することが必要なのかもしれない

私たちはともすると、

「予算はこれだけ。この中で何をしよう?」
「これだけの人員がいる。何が出来るだろう」

と考えることが少なくありません。

失われた20年を通して人員削減やコストカットを繰り返して、現在に至っている状況の中で、このように考えてしまう気持ちはとてもよく分かります。

しかし、このように「与えられた条件の中で、何をするか」を考える発想では、さらなる縮小均衡に陥る危険性があります。

 

「コア・コンピタンス経営」 (ゲリー・ハメル著、日経ビジネス文庫)で、下記のような記述があります。

—(以下、p.244-246から引用)—

企業の経営資源をしのぐような野心やレバレッジする力がないと、ありあまるほどの経営資源があっても戦略の決定がおろそかになりかねない。….野心が経営資源を永遠に上回っているというストレッチこそが、競争優位を生み出すエンジンの燃料である

—(以上、引用)—-

 

これは企業全体の視点で語ったものですが、企業の中の各部署でも同じことではないでしょうか?

「本来、xxxをやるべき。しかし予算はこれだけ。いかに増やすか?あるいはやり繰りするか?」
「本来、xxxをやりたい。人員はxxしかいない。いかに外の力を借りるか?」

現実には経営資源の制限は常について回るので難しい面もあります。しかし見方を変えてこのように発想してみることで、同志も増えて、色々なブレイクスルーも可能になるのではないでしょうか。
 

坂本さんもよくおっしゃっていように、アントレプレナーシップが、ビジネスパーソン一人一人に求められているのだと思います。