MECEにこだわりすぎて、仕事が進まない?


「この議論、なんかさっきから整理ばっかりしてるけど、結局これって、何を決めるんだっけ?」

話が進まずに膠着している会議で、つい、こんな疑問を感じたことって、ありませんか?

「問題をロジカルに整理しよう」と考えるあまり、「分類の議論」ばかりが延々と続き、肝心の問題分析や意思決定が進まない…ということが、よくあります。

特に、MECE(ミッシー)にこだわりすぎると、こんな現象が起きがち です。

MECEとは”Mutually Exclusive and Collective Exhaustive”の略で、「漏れなく、ダブりなく」モノゴトを整理する思考法です。ロジカルシンキングの代表的な手法として、コンサル業界でよく使われています。

たとえば「売上が減っている原因」をMECEで考える際には、4Pのフレームワークを使って次のように分類できます。

「製品に問題がある」 Product
「価格設定に問題がある」 Price
「販促方法に問題がある」 Promotion
「販売方法に問題がある」 Place (Channel)

確かにこうすると、売上減少の要因を漏れなく分析できそうですよね。

しかし実際のビジネスでMECEにこだわりすぎると、時間がかかりすぎて、議論が進まないことも多いのです。

確かにMECEは、4Pのような既存フレームワークを使える場合は便利なのですが、あらゆる問題がMECEを適用できるわけではありません。

たとえば売上減少の原因が、4Pの中で「製品に問題がある」とわかったとします。では製品の問題をどのようにMECEで分類すればいいのでしょうか?

多くの人が、ここで「ハタ」と止まります。
製品の問題をMECEで分類できるフレームワークが存在しないからです。

・「どんな軸で分けようか?」
・「この分け方、もしかしてダブってない?」
・「これって、本当に漏れがないかな?」

こんな「本来の問題分析の議論」ではなく、「漏れなくダブりないか議論」が延々と続くわけです。

これって誰が見ても、本末転倒ですよね。 でも当の本人たちはそのことに気付かずに真剣に議論が続き、時間だけが経っていき、成果はほとんど出ない、というドツボにハマっているわけです。

どうすればいいのでしょうか?

MECEは、単なる一つの方法論に過ぎません。必要なのは「完璧な分類法」ではなく、「問題解決のスピード」です。

MECEで分けるフレームワークが使えないリアルなビジネスでは、MECEにこだわらずに、スピード重視で「タブるけど、漏れはない」アプローチでリストアップして考えるのが現実的です。

こんな感じでまず大カテゴリー(■)を作り、その中で要因(・)を挙げていきます。

■機能・性能の問題
・競合製品に比べて機能が劣る
・顧客ニーズに合っておらず、不要な機能が多く、必要な機能がない
・品質が不安定で不良品が多い

■デザイン・使いやすさの問題
・見た目が時代遅れでダサい
・UX/UIが悪く、使いにくい
・サイズや重量が大きすぎ

■ブランド・イメージの問題
・ブランドのイメージがターゲット層とズレている
・高級ブランドなのに、見た目チープ

■安全性・健康の問題
・…

■付随サービスの問題
・…

(以下、続く…)

こうしてMECEにこだわらずに、スピーディに要因をリストアップした方が、実務では圧倒的にスピーディに全体像を掴んで、より早く実行段階に移せます。

MECEは確かに有用ですが、「何のために分類するのか?」という目的を見失うと、スピードが落ちて成果も出ません。

MECEを使うべき状況は、

・既存のフレームワークが使える場合(4P、SWOT分析、3Cなど) →「どの軸で分類すべきか」と悩む必要がなくなります。

・分類軸が明確で、かつ問題を切り分けて、アクションに繋げたい場合 →たとえば4Pで切り分けられれば、アクションの責任の所在も明確になります

MECEを使わない方がいい状況は、

・問題が複雑で、分類軸が明確に立てられない場合 →たとえば「なぜ社員のモチベーションが低いのか?」

・分類軸が不明確で、かつスピードを重視する場合 →分類論に議論の時間を使わずに、可能性がありそうな原因を素早く一通り洗い出して、解決策の仮説を立てます。

MECEは強力なツールですが、万能ではありません。

「議論が進まないな」と感じたら、いったんMECEを脇に置いて、「ダブっていいから、漏れなく要因を出す」アプローチを試してください。

リアルなビジネスでは、議論のスピードが圧倒的に上がり、次のアクションも立てられるようになります。

     

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