全米クイズ王に勝ったコンピュータ「ワトソン」が提示する、新しい私たちの未来 #ibmwatson

IBMが4年間をかけて開発したQ&Aシステム「ワトソン」が、米国の人気クイズ番組「ジョパディ!」で、二人のクイズ王と3日間に渡って対決、最終的にワトソンが勝ちました。

ITメディアの記事「IBMのコンピュータ対クイズ王 2回戦はコンピュータの勝利」では、二日目の様子をレポートしています。

ここでは、「米国の都市」カテゴリーの質問に対して、ワトソンが、正解の「シカゴ」ではなく、カナダの都市「トロント」と答えた様子が書かれています。

人間からすると、「米国の都市の問題じゃないか。なんて初歩的なミス!」と思うところですが、記事によると、

 IBMの開発者はこのミスの原因について、Jeopardy!ではクイズのカテゴリー名と答えの内容が合わないことも多いため、Watsonがトレーニングの段階で、カテゴリー名をヒントとして重視しないよう学習していたこと、問題文に「米国の都市」という言葉がなかったことなどを挙げている。

としています。

本100万冊分の情報が入っているワトソンですが、その膨大な情報をどのように活用するのか、こうやって、一つずつ地道に教え込むことが必要なのですね。

asahi.comの記事「スパコン、米のクイズ王に圧勝 本100万冊分の知識」では、「連勝王」「賞金王」の二人(人間)と、ワトソン(人工知能)の比較表が掲載されていて、なかなか興味深い内容になっています。

賞金100万ドルは慈善事業に寄付するとのこと。

当然のことですが、実はIBMは、これよりもかなり大きい金額をかけて、ワトソンを開発しています。

 

エンターテイメントとしてみると、なかなか面白い「コンピュータ vs クイズ王」のイベント。

しかし、IBMは単なるエンターテイメントでこのプロジェクト「ワトソン」を進めてきたのではありません。

 

ワトソンは、自然言語処理技術、分析技術、大量データ処理技術、最適化技術、音声認識技術等、様々な要素技術を統合することで、人とコンピューターの新しい関わり方を提示しています。

2011/3/3修正:ワトソンには音声認識技術は搭載されていません。番組でテキストデータが送られ、処理が始まるようになっています。お詫びと共に訂正いたします。

今後もCPUやメモリー、ディスク等のハード面は指数関数的に速く大容量になります。ワトソンと同等のシステムが、一般の人が使えるようになるのは、そんなに遠い未来ではありません。

たとえば、ワトソンと同じシステムが、将来一人一人のケータイに内蔵され、あらゆる質問に答えることができたら、どうでしょう?

あるいは、そんなに先の話でなく現時点で考えても、昨日の日経新聞夕刊記事に書かれていたように、たとえば医療診断システムへ応用することで、より的確な診断をいつでも行えるようになります。

コンピュータは人間と違い、仕事が続くことで疲れて能率が低下したりミスを誘発することはありません。激務と言われている医師の仕事の一部を肩代わりできる可能性もあります。

他にも、企業の様々な課題を解決するために、活用できる場面は沢山あります。

ワトソンで培った技術は、新しいビジネスをもたらし、テクノロジーで世の中を変革する大きな可能性を秘めているのです。

 

 

「ムーアの法則」は100年以上続いている。そして恐らく今後も続く

この40-50年間のIT産業の進化の基本は、「ムーアの法則」に従っていました。

ご存じの通り、ムーアの法則とは、「LSIのチップ上に集積されるトランジスタの数は、18~24カ月ごとに2倍になる」というものです。

この予測通りにトランジスタの数が増えることで計算処理能力が高まってきました。

2011/02/06の日本経済新聞の記事「半導体の限界破れ、「ムーアの法則」の先へ挑む、材料・構造、改良急ピッチ」では、この法則が限界に近づいてきていることが述べられています。

—(以下、引用)—

半導体に詳しい東京大学の高木信一教授は「これまでは材料も構造も変える必要なく、ムーアの法則に従い縮小するだけですべてがうまくいっていた」と話す。

状況が変わったのは2000年代から。(中略) 20年ごろには微細化のペースは減速し始め、ムーアの法則がついに成り立たなくなるとの見方が多い。

(中略)

こうした限界を打開するアイデアの一つが「立体型トランジスタ」だ。

(中略)

もう一つが「ひずみシリコン」という技術だ。

(中略)

半導体の素材に使うシリコン自体を見直す研究も盛んだ。ゲルマニウムを使った半導体は、電気の流れやすさがシリコンの2倍以上になる。

—(以上、引用)—

記事にあるように、半導体の微細化だけによる性能向上が限界になり、様々な技術が模索されています。

 

ムーアの法則は半導体の進化について述べたものです。

一方で下記のように、カーツワイルの理論によると、計算処理能力は、パンチカード、機械式リレー、真空管、トランジスタ、集積回路、と、様々なパラダイムシフトを経て向上してきました。

Kurzweil

たとえば、今年で創業100年になるIBMは、創業時の1900年代前半は、まさにこの図にあるパンチカードが主力製品でした。

「貫徹の志 トーマス・ワトソン・シニア IBMを発明した男」(ケビン・メイニー著、有賀裕子訳)によると、1900年代前半も、ものすごい勢いでこのパンチカードの技術革新が行われてきたことが書かれています。

ムーアの法則は、この中で5番目のパラダイム変換である集積回路について述べられたものです。

ムーアの法則はもともと半導体について述べられているものですが、半導体よりも広く、この5つのパラダイムを通して考えてみると、このペースでの計算処理能力向上は、100年以上続いていることになります。

日経の記事にありますように、現在は従来の集積回路微少化が限界に突き当たっています。

しかし、もっとマクロな視点で考えてみると、再び6番目の何らかのパラダイムシフトで、計算処理能力向上は継続していく可能性は高いのではないでしょうか?

 

 

ソフトウェア活用は、今や経営課題。では、日本の経営をいかに変えるのか?

言うまでもなく、現代の企業はITなしでは経営できません。

ユーザーのIT支出全体の中で、製品としてのソフトウェアが占める比率は、日本は、世界の半分であると言われています。

では、日本はソフトウェア製品で使っていないIT支出はどこに使っているのかというと、カスタム開発で使っているのです。

ただ、全社的な経営の観点で見ると、ともするとこれが全体最適を妨げてしまい、経営の足かせになってしまっているケースも少なくありません。

 

そこで、何回か当ブログでご紹介しておりますように、ソフトウェアが日本企業の経営をいかに変えるのかを定期的に日本IBMのサイトで特集しています。

これまでに行ったシリーズをまとめてみました

■第1回:概要編 6つの課題とは?(10月18日より)

■第2回:コラボレーション編(11月15日より)

■第3回:運用の効率化編(12月6日より)

■第4回:俊敏性編(12月27日より)

■第5回:ソフトウェア開発の変革編(1月24日より)

 

本特集でご紹介しているように、最新ソフトウェアテクノロジーをビジネスで活用することで、様々な領域で、企業の経営そのものが変わる可能性は大きいのです。

ソフトウェア活用は、今や企業にとって、大きな経営課題と言ってもよいかもしれません。

これからも続けます。

 

2010年北米カー・オブ・ザ・イヤー「シボレー・ボルト」のプログラムは1000万行以上。しかし従来10年間かかる新車開発を、5年間で完了。その理由は?

2011年1月に北米カー・オブ・ザ・イヤーを受賞した「シボレー・ボルト」。

復活したGMの象徴とも言われているこの車。

実は、ソフトウェアの塊です。

プログラムは1000万行以上。

どの位の量かというと、Linuxのカーネル2.6に匹敵する程の巨大なコード量です。

現代のモノづくりは、ソフトウェアを実装した専用コンピューターを作っているようなものなのですね。

 

従来、新車開発には10年間が必要と言われていました。

しかしシボレー・ボルトの場合、5年間で開発を完了しています。

それを可能にしたのは、ソフトウェア開発の仕組みです。

シボレー・ボルトの開発責任者が自らYouTubeで語っています。(日本語字幕付き)

 

さて、これは日本のモノづくりにとって、どのような意味があるのでしょうか?

その部分を深く掘り下げた特集を、日本IBMのサイトに掲載しました。

Swdev

ご興味ある方はご一読いただければ嬉しく思います。

 

Apple TVの驚異的なユーザーインターフェイスのシンプルさが分かる写真

実家の母の誕生日にApple TVをプレゼントしました。

Apple Storeで注文し、配送先に実家を指定し、購入。

数日後に実家に到着したとの連絡あり。

昨日の日曜日にセットアップに行きました。

そこで撮影したのが、この写真。

Appletvs

左から、実家のDVDのリモコン、実家のテレビのリモコン、今回のApple TVのリモコンです。

写真では分かりにくいのですが、Apple TVのリモコンはアルミ製でとても薄く出来ています。

Apple TVのリモコンのボタン部分を拡大したのがこの写真。

Appletv2

iPod同様、見事なほど割切りのよい、シンプルなユーザーインターフェイスです。

 

ところで、Apple TVはHDMIケーブルでの接続なのですが、5年前に購入した実家のテレビはD4端子だったので、接続できませんでした。

「ハイビジョンテレビなので接続できる」とばかり思っていたのが、最新の家電については全く疎いためか、お恥ずかしいことに大間違いでした。

対応策を検討中です。

 

クイズ王に練習戦で勝ったコンピュータ「ワトソン」。でも弱点が!? そして次の挑戦は!?

半年前にも当ブログでご紹介したワトソンですが、ITmediaの記事「IBMのコンピュータ、クイズ対決の練習戦で人間に勝つ」にもありますように、練習戦で、クイズ王に勝利したそうです。

このプロジェクトに参加しているIBM東京基礎研究所の研究者に、話を聞いたことがありますが、ワトソンは数年間かけて試行錯誤をしながら徐々にチューニングをしているそうです。

最初はかなり見当はずれな回答もしていたとか。

しかし、練習戦とは言え、クイズ王に勝つレベルまでチューニングされているということですね。

1997年前にチェスのチャンピオンに勝ったディープブルーから比べると、クイズ番組に答えなければいけないワトソンは格段に複雑な問題に対応できるコンピュータです。

コンピュータの性能は指数関数的に向上しますので、今後の性能向上でさらにすごいことになってくると思います。

 

しかし、実はそんなワトソンにも、弱点が。

 

記事にもありますように、ユーモアに弱いという点です。

「ただひらすら真面目に問題に取組み、一心不乱に学ぶ無骨な職人肌」というのが、人に例えたワトソンのイメージでしょうか?

1997年のチェス・チャンピオン打倒、2009-2011年のクイズ王打倒、と続いてきたIBMのプロジェクト。

このように考えると、次の挑戦は、もしかしたら、「世界コメディアン王打倒」なのではないでしょうか?

ローワン・アトキンソン(Mr.ビーン)との対決とか。

…ううむ、判定基準は…???

それはともかく、クイズ王打倒よりもさらに高度な問題への挑戦になります。

さらに十数年、または数十年先のことなのかもしれませんね。

 

なお、言うまでもなく、これは公式IBM見解ではなく、あくまで永井個人の(どちらかというと妄想に近い)見解です。念のため。

 

これから5年、私たちの生活を変える5つのイノベーション

技術の進化は、加速度をつけて進んでいます。

そんな中で、技術はどのように私たちの生活を変えていくのでしょうか?

昨年暮れの2010年12月29日に、IBMはちょっと変わった発表をしました。

「IBM、今後5年間で人々の生活を一変させる5つのイノベーションを発表」

詳細はリンク先を見ていただければと思いますが、概要は次の通りです。

■友人との通信も3Dで

映画のような3Dインターフェースが実現、友人のホログラム(3次元立体画像)とリアルタイムで双方向通信ができるようになります。

また、3Dデータで視覚化することで、様々な現象が瞬時に理解できる形に表現できるようになります。(例えば、地球儀上の疾病拡大シミュレーション、ツイッター上で話題の世界のトレンドを視覚化、等)

■空気で充電できるバッテリー

 トランジスタと電池技術が進歩し、デバイスの連続使用可能時間は現在の約10倍に。さらに、エネルギー・スカベンジングと呼ばれる技術を用いて充電するバッテリー不要の電子機器が実現します。例えば、「振ってダイヤルする」ケータイの登場です。

■一人一人がセンサーに

個人の電話、自動車、財布に組み込まれたセンサー、Twitterのつぶやきからデータが収集され、科学者に周辺環境のリアルタイムな情報が伝えられ、地球温暖化対策や絶滅危惧種の保護、世界の生態系を脅かす侵入動植物の追跡などに利用することができるようになります。

既存の単純なセンサーを使い、て研究に役立つ大量のデータを提供し、解析する形になります。例えば、町で雪解けが始まった時期、最初に蚊が現れた時期、小川があるはずの場所から水が干上がっている、等の単純な観察は、研究者が包括的な情報収集ができていない現状では貴重なデータになります。

今までは、このような技術がなかったので実現できなかったのですよね。

■私にぴったりのマイ・ルート

進化した解析技術と進化した交通システムと連携して、個人毎に目的地に最短時間で移動できる道順が分かるようになります。

■コンピューターが、都市生活のエネルギー源に

データ・センター等から放出される余分な熱やエネルギーを、冬のビル暖房や夏の冷房などに再利用できるようになります。

実は現代のデータセンターで消費するエネルギーの50%が冷却で使用されています。放出されるエネルギーを利用できると、このエネルギーを節約できるのですよね。

既にプロセッサーが放出する熱をリサイクルする技術があります。この技術を活用したあるプロジェクトでは、二酸化炭素の年間排出量を最大で30トン、これまでの85%削減できると予想されています。エネルギーコストも比例して削減できます。

 

IBMの発表なので、これらを実現するために必要な技術を、IBMはご提供することが可能です。

 

こちらのビデオ(英語ですが)をご覧になると、より分かりやすいと思います。

 

巷で噂の、HTML5の表現力

最近、Chrome OS等でもキーワードになっているのがHTML5。

では、そのHTML5、どのようなものなのでしょうか?

既に世の中にはHTML5で書かれたサイトが色々とありますので、その実力を体験することができます。

例えば、"CanvasMol"では、様々な分子名を指定して、その分子構造を3Dで回転させながら様々なビューで確認できます。

また、「書道」では、実際に書道ができます。このユーザーインターフェイス(というのでしょうか?)は、秀逸です。自分の作品を掲載することもできるようです。

従来の「ブラウザー」という概念とは全く異なり、見た目はアプリそのものですね。

技術的には、既存のパソコン+Windowsで出来る部分のうち、かなりの部分をカバーできそうですね。

ちなみに、PCのヘビーユーザーがChrome OSネットブックだけを使って仕事をするとどうなるかは、「Chrome OSオンリーで6日間過ごしてみて思うこと」という記事に詳しく書かれています。多くのアプリがHTML5ベースであると仮定して考えると、色々な意味で参考になります。

 

「エンタープライズ・ソーシャルウェア」が、日本企業を強くする

バブル前の1980年代まで、日本企業は「絶好調」とも言えるほどの強さを誇っていました。

その要因の一つが、個人が持つ暗黙知を、組織全体で共有し、そこから価値を生み出す力だったのではないでしょうか?

このように組織全体で知識を共有し価値を生み出すメカニズムを、野中郁次郎先生は世界的名著「知識創造企業」で提示されました。

世の中に「知識経営」の考え方が拡がる契機にもなりました。

その後、日本企業が強さを失った理由の一つには、利益重視の管理手法でこの仕組みが失われたことがあるのかもしれません。

 

一方で、Twitterやブログに代表されるソーシャルウェアは、チームで暗黙知を共有して価値を創造する上で、大きな可能性を持っています。

しかし現在、企業によるTwitterやブログ活用事例の多くは、顧客や市場と企業間のやり取りで使われているものです。

社内で組織を活性化し、暗黙知を共有する手段としてTwitterやブログを活用している先進事例はあるものの、数は多くありませんし、必ずしも大規模ではありません。

 

それでは、企業がソーシャルウェアを活用し、組織で暗黙知を共有して価値を生み出す仕組みを作ることで経営力を強化していくためには、どうすればよいのでしょうか?

 

この課題への一つの解決策を提示すべく、今週から、私の勤務先の日本IBMのトップページで、下記の特集を開始しました。

エンタープライズ・ソーシャルウェアで日本企業の強さの源泉が復活

Enterprisesocialware

本特集は、製品の視点ではなく、経営力強化の視点で、どのようなエンタープライズソーシャルウェア技術が活用できるのか、日本IBMのソーシャルウェア・エバンジェリストの行木さんが語っています。

エンタープライズソーシャルウェアを1万人規模でグローバルに展開されているベルリッツ様の事例もご紹介しています。

「エンタープライズ・ソーシャルウェア」という概念は、ソーシャルウェアを活用して企業の組織変革を促進していく上で、今後、重要な考え方になっていきます。

巷では「社内Twitter」という言葉もあります。一方で、「エンタープライズ・ソーシャルウェア」は、Twitterの機能にとどまらず、ソーシャルウェア全体を網羅しており、概念的にもかなり広いものです。

もしよろしければ、是非ご一読を。

なお本特集は、こちらでご案内したシリーズの第二弾です。これからも、第三弾、第四弾と、続いていきます。

 

エバンジェリストの行木さんが本特集に関して書いたブログも、昨日公開されています。

行木さんも書かれているように、このような記事、エバンジェリスト(行木さん)やマーケティングマネージャー(私)だけではできません。

プロフェッショナルのWebエディターやWebマスターがいて、お互いに徹底的に議論して暗黙知を共有することで、クリエイティブが出来上がり、世の中に生み出されます。

まさに、コラボレーションの産物ですね。

 

iPhoneが動かなくなった時の対処法。(解決する確率:ほぼ9割?)

iPhoneを使っていて、動作がおかしかったり、遅くなったり、ウンともスンとも言わなくなることって、結構ありますよね。

こんな場合、どうすればよいのでしょうか?

 

iPhoneの中身は、パソコンそのもの。

たから対応はパソコンと同じです。

それは再起動すること。

これでほとんどの場合(感覚的ですが恐らく9割程度)、問題は解決します。

 

でもiPhoneの場合、スイッチを切る(=上部右側のボタンを押す)だけでは、単にスリープしているだけなので、ダメです。

再起動するには、次のステップになります。

1.前にあるボタンを押しながら、上部右側のボタンを5秒程度押す
2.画面に出る「電源オフ」のバーを右にドラッグ。これでiOSが終了。
3.再起動するには、上部右側のボタンをしばらく押す

1.だけ憶えておくと、後は簡単です。

いつか、困ったときのために、憶えておくとよいかもしれませんね。

 

ITベンダーの事業の目的は、システムを作ったり製品を提供することではない。世の中の色々な問題を解決することである

『本日、「ITは世の中の様々な問題をいかに解決できるのか?」という講演をします』で書きましたように、色々なところで講演させていただいたり、資料を作ったりしています。

そこで改めて実感するのが、「ITは、世の中の問題を解決するためにあるのだ」ということです。

これは、考えてみると当り前のことです。

一方で、IT業界にいると、システムを作ったり、ハードやソフトの製品を売ったり作ったり導入したりすることが自分の仕事だと、ともすると思いがちではないでしょうか?

でも、これらは本来の目的を達成するための手段なのですよね。

 

実際、ITはものすごい勢いで性能が向上しています。

たとえばハードウェア。

ムーアの法則によると、集積回路におけるトランジスタの集積密度は、18~24か月ごとに倍。

ビル・ジョイの法則によると、通信網のコストパフォーマンスは1年で倍。

インターネット元年と言われた1995年から15年経った現在、単純計算すると、計算速度は1,000倍(18ヶ月で倍と想定)、通信のコストパフォーマンスは30,000倍になります。(実際の進化は微妙に違う数字になっていますが、感覚的にはまさにこんな感じですね)

これって凄いことですよね。

ソフトも様々な分野で進化しています。

 

一方で、世の中には色々な問題が発生しています。

無駄も多いし、配分も均等ではありませんし、不幸な人達も大勢います。

例えば、食糧不足で飢えている人が地球上で10億人近くいる一方で、日本では年間9000万トンの食糧のうち1900万トンが廃棄されています。配送上の問題、規格外、腐敗等が原因です。

 

このような無駄や配分の問題は、ITを上手に活用することにより、解決可能な問題です。

実際、ほんの10年前や5年前は夢物語だったことが、IT活用により、現実にできるようになりました。当ブログではご紹介致しませんが、私が講演させていただく際には、実際のお客様事例を紹介させていただいています。

 

このように考えると、ITが社会を良くしていくのはまさにこれからが本番だし、まだまだ大きな潜在力を持っている、と思います。

そして、IT業界に関わっている私達に求められているのは、このような情報技術を活用して、「世の中の問題をいかに解決するか」ということを具体的に考えていく攻めの発想力。

そう思うのです。

 

かつて、米国では鉄道が主な輸送手段でしたが、今は衰退しています。

車やバス、飛行機に顧客を奪われたからではありません。

鉄道会社が、自社の事業を「鉄道事業」と考え、自社の顧客が車やバス、飛行機を使うようになっても、「ウチは鉄道会社だから関係ない」と考えたためです。

つまり、自社の事業を製品視点で考えていたのです。

自社の事業は「輸送事業」と顧客視点で考えていれば、顧客離れを防ぐために事業を変革していたことでしょう。

 

私たちITベンダーも、ともすると製品視点で自分達の事業を考えがちですが、常に顧客視点で考えたいですね。

【動画あり】クイズ番組で、達人に対抗して回答する、コンピューター登場

米国で、"Jeopardy!"という有名クイズ番組があります。

IBMのスーパーコンピュータBlue Gene/P上に、音声認識、自然言語処理、情報検索、対話インターフェイスなど先進技術満載のQ&Aシステムを搭載したコンピュータ「ワトソン」が、この番組に登場して回答している様子が、YouTubeに掲載されています。

 

このワトソンがクイズ番組に挑戦することは、昨年4月に当ブログでもご紹介しましたが、実際にクイズ番組に登場し、番組で回答している映像は、今回が初めてです。

 

思えば、コンピュータがチェスの達人を破ったのが、1997年。

それから13年。

決められたルールで、指し手の局面もデジタル化され、特定の課題を解決することが仕事だったチェスの勝負と比べ、どのような質問が出てくるかが予測できないクイズ番組は、コンピュータが非常に苦手とする課題で、難易度ははるかに高くなります。

現在のワトソンは、ビデオにあるように、かなりいい線まで行っていますが、完璧ではありません。

「暴走したのか?」と思えるような答えをすることもあります。

それにしても、コンピュータの進化は凄いものがあります。

 

■Twitter→  http://twitter.com/takahisanagai
■初心者向け
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ストリーム・コンピューティングが、ソフトウェア技術で世の中を変革する

私の仕事は、ソフトウェア事業の事業戦略です。

当ブログでは、そのソフトウェアの話は滅多に書いていません。

ただ、今回の話は、興味がある方もおられるかもしれませんので、そのソフトウェアの話を書きます。 

「ストリーム・コンピューティング」という技術があります。

この技術が、世の中を大きく変革していく、という話です。

 

従来のデータ分析方法は、発生したデータを、データベースに蓄積して、それを分析ソフトで分析する、という方法でした。

でもこの方法は、基本的に過去データの分析なので、リアルタイム性が求められる業務には使えない、という問題があります。

例えば、刻々と動く状況に対応しなければいけないような、犯罪防止、災害予測、交通管制といった業務では、この方法では対応できません。

さらに、業務によっては、発生する膨大なデータを、極めて短時間で処理する必要があります。

例えば、交通管制で、車1台ずつの挙動を把握した上で、都市全体の交通状況を最適化しようとする場合、膨大な数の車が発生する凄まじい量のデータを把握する必要があります。

また、各所に設置した監視カメラの映像をチェックして犯罪防止しようとする場合は、膨大なデータを処理し、その中にある数少ない異常値を検知する必要があります。

いずれの場合も、データを一旦蓄積して、その上で分析する、という従来型の手法だと、業務が求める応答時間を確保するのは至難の業です。

 

これらの課題に対する一つの解決方法が、「ストリーム・コンピューティング」というソフトウェア技術です。

簡単に言うと、発生するデータを、溜めずに、そのまま分析する(不要なデータは片っ端から捨てる)、という手法です。

このために、2003年、IBMは「ストリーム・コンピューティング」のための基礎研究プロジェクト"System S"を開始しました。

 

その後、下記のようなプロジェクトでこの技術を実装して有効性を検証、機能を拡張してきました。

山火事監視(米国):無人機で煙を感知し、衛星監視データと併せ、山火事発生リアルタイムマップを作成。防災に役立てる。

オンタリオ工科大:未熟児の状態を監視。各センサーのデータを解析し、ベテランICU看護士より6-24時間早く未熟児の異常を検知できる。

TD証券(カナダ):160万件/秒で発生するデータを、全て1ミリ秒以内に処理、次世代アルゴリズムトレーディングを実現した。

サイバーセキュリティ:
ビデオ/電話通話記録/音声を監視、犯罪につながる異常を未然に把握できる。

IBMマイクロチップ製造:100以上の製造工程を常時監視し、異常時に工程を停止する。これにより、巨額の廃棄コスト発生を未然に防止できる。

ハドソン川(米国):500Km以上の流域にセンサーを配置し、データを収集・分析。川の生態系を維持する。

 

このような業務で活用するためには、数百万件/秒でエンドレスに発生するデータに対応し、かつほぼ瞬時に(1ミリ秒以下の遅延)、分析する必要があります。

さらに、多様な各種データから、関連性を発見していく必要があります。

膨大なデータ量の処理が必要になりますが、このIBMのストリーム・コンピューティング技術を実装しているシステムは、マシンを追加することで、スケールアウト的に処理能力向上が可能である点も、大きなポイントです。

これにより、都市全体の交通管制といった膨大なデータを処理する業務にも適用することができます。

この技術は、IBMが提唱しているSmarter Planetを実現するためのカギとなる技術の一つでもあります。

先に挙げた事例にあるように、交通、製造、金融、医療、送配電網、水管理、気象、等といった分野で、従来の業務の形を大きく変革していく可能性があります。

(尚、この技術は従来のデータを溜める→分析するといった従来型システムを置換えるものではありません。新しい選択肢を提供するものです)

 

このソフトウェア、この度、日本でもInfoSphere Streams V1.20という製品名で、正式に発売を開始させていただきました。

このような先進ソフトウェア技術を、標準製品として実装している、という点がポイントです。

このような製品をご活用いただき、従来とはまったく異なる発想で業務を変革することで、大きな差別化を図り、競争力強化が可能になります。

 

下記ニュースでも取り上げていただきました。ご興味ある方はご参照ください。

■日本IBM、ストリーム・コンピューティングを実現するデータ分析ソフト [Enterprise Watch様]

■日本IBM、変化する複数情報を並列で瞬時に分析するツールを販売[Internet Com様]

■多数のデータストリームをリアルタイムに複合分析–日本IBMがInfoSphere新製品[ZDnet様]

■日本IBM、ストリームコンピューティングを実現するソフトを提供[リクルート シゴトの計画様]

■日本IBM、ストリームコンピューティングを実現するソフトを提供[リクルート キーマンズネット様]

 
【IBMのプレスリリース】

■刻々と変化する複数の情報を並行して瞬時に分析-ストリーム・コンピューティングを実現するソフトウェア製品-

スパコン性能向上の歴史

ちょっと個人的に興味があったので、調べてみました。

ご存じの方は当り前のことかと思いますが、スパコン(スーパーコンピューター)は凄い勢いで向上しています。

スパコンの性能は、FLOPSという数字で表せます。

FLOPS(フロップス)とはFloating point number Operations Per Secondで、一秒間に浮動小数点演算を行える回数です。

「浮動小数点数演算」というと難しそうですが、要は、科学的な数値計算のことだと理解すれば、ほぼ間違いありません。

ちなみに、Wikipedia「スーパーコンピュータ産業史」によると、こんな感じで性能が向上しています。

1976年 Cray-1 (250MFLOPS)
1985年 Cray-2/8 (3.9GFLOPS)
1997年 Intel ASCI (1.4TFLOPS)
2002年 地球シミュレータ(NEC) (35.86TFLOPS)
2004年 Blue Gene/L (IBM) (70.72TFLOPS→その後280.6TFLOPS)
2008年 RoadRunner (IBM) (1.026PFLOPS)

M/G/T/Pという文字がFLOPSの前に付いていますが、

Mはメガ=100万
Gはギガ=10億
Tはテラ=1兆
Pはペタ=1000兆

という意味です。

1976年のCray-1から数えると、32年で2.5億FLOPSから1026兆FLOPSに性能が向上しています。32年で410万倍、1年間平均で1.6倍の性能向上です。

1997年のASCIから数えると、11年で732倍、1年間平均で1.82倍の性能向上になります。最近はペースが上がっています。

ソニーのプレステ(プレイステーション)も、結構すごい性能です。

2000年 PS2: 6.2GFLOP (当時から15年前のスパコンと同等)
2006年 PS3: 2TFLOPS (当時から9年前のスパコンと同等)

2009/12/26 0:00追記 (引用元)
・PS2はEmotion Engine単体
・PS3はCPU 218GFLOPS / GPU 1.8TFLOPS / 2TFLOPS (システム全体)

こちらは6年間で323倍、1年間平均で2.62倍の性能向上です。

数字だけの単純比較と実際の計算能力は異なる場合もありますが、このような数字を見ると、コンピューターの性能向上が凄まじいことが改めて感じられますね。

クイズ番組に挑戦するコンピューター、「ワトソン」

「ディープ・ブルー」という名前のIBMのスーパーコンピューターと、チェスの世界チャンピオンが対戦したのは1997年でした。

それから12年。

今度はテレビのクイズ番組にコンピューターが挑戦することになりました。

詳しくはこちらに掲載されています。

コンピュータ・プログラムを作った人ならおわかりと思いますが、これはチェスのような特定の課題を解決するのと比べると、信じられないくらい複雑な問題に対する挑戦になります。

でも、考えてみれば、チェスの世界チャンピオンに勝つよりも、一般人が出るクイズ番組で勝つ方がはるかに難しいというのも、面白いですね。

コンピュータの応用として、歴史的にも重要な一歩であると思います。

「2001年宇宙の旅」で描かれたHAL9000のような世界が、本当に間近に来ていることを感じます。

ちなみに、ワトソンとは、IBMの実質的創業者であるトーマス・ワトソンから取っています。

Apache Geronimo のコミッタ・Kevan Miller氏とお話ししよう

Apache Geronimo のコミッタKevan Miller氏が来日され、10月1日に渋谷にある日本IBMの事業所で講演されます。

実際のApache Geronimo開発者とお話しできるチャンスですし、機能拡張に関する要望も直接お話しできます。

無料で参加できますので、ご興味のある方は是非ご参加を。

お申し込みはこちらから。

ちなみに、ThinkITの記事に、Kevan Miller氏のインタビュー記事が掲載されています。

「初音ミク」に見る、音声処理市場の新展開

吉川さんの「画期的な音声合成ソフト「初音ミク」に驚愕した!」を拝読し、「初音ミク」の歌声を聞き、私もそのあまりの自然さに驚愕しました。

 

コンピュータによる音声処理は数十年の歴史があります。

7-8年前、私も音声処理ソフトに少しだけ関わりました。

私が担当していた商品は法人市場向けで、当時はコールセンターでの音声自動応答等に使用していました。

当時の音声はコンピュータで合成しているという前提で聞いて何とか使える、というレベルでしたが、先進的なお客様では実際に活用いただいていました。

お客様に電話で金融商品の名前を言ってもらい、その金融商品名を音声認識し、商品コードで最新市場価格を検索し、結果を音声合成して返す、というデモを作ったのも、この頃でした。

 

さて、「初音ミク」。

ニコニコ動画で「初音ミク」で検索すると、「初音ミク」に「六甲おろし」とか「君が代」等の色々な曲を歌わせている投稿がアップされています。

価格は15,750円で、あまりの人気に品薄状態が続いているそうです。

ううむ、音声合成ソフトでこんな形の展開があったとは、….。

音声処理ソフトという市場は比較的ニッチな市場で、確実にニーズは存在するのですが、なかなか大きな展開に繋がらない市場でした。音声処理ソフトビジネスに少しだけでも関わった者としては、非常に感慨深いですね。

「初音ミク」は実際の声優の音声をサンプリングして作っているとのことですが、非常に自然に聞こえます。発声条件を限定できる「歌」というあたりが、結構いいポイントを突いているかもしれませんね。

 

一つの非常にニッチな分野での利用方法として、アマチュア合唱団の音取りに使えるのではないかと思いました。

合唱団で新曲を取り上げる際には、新曲の自分のパート(ソプラノやベース)をピアノやMIDIで演奏し、それを聴いて自分のパートの旋律を身に付ける作業を行います。「音取り」という作業です。

しかし、実際に人間の声で歌っていただくと、より覚えやすいのではないでしょうか?

合唱団によっては、ラテン語等の外国語の曲を取り上げる場合も多いのでここがネックになるかもしれませんが、日本語の曲の場合に「初音ミク」で新曲の音取りが出来ると、結構使えるのではないかと考えた次第です。

他にも色々と活用方法が出てきそうですね。

人間に伝染するコンピュータ・ウィルス?

20年近く前、「コンピュータ・ウィルス」という言葉が世の中に始めて出たけど、まだそれほど一般的ではなかった頃のお話です。

当時はネットと言えば通信速度が非常に遅いパソコン通信位しかなく、ウィルスはフロッピー等が主な媒介メディアでした。

私の祖母は田舎で農家を営んでおり、当時は70代後半、新聞をよく読む人でした。

「コンピュータ・ウィルス」というあまりなじみのない言葉を新聞で読み、孫(⇒私)がコンピュータ会社に勤めているので、私の両親にこう言っていたそうです。

「最近、コンピュータ・ウィルスっていうのが流行っているそうでねぇか。孝尚は大丈夫かね?うつらないように気をつけねえとなぁ」

今でこそ、「コンピュータ・ウィルス」という言葉の認知度は高くなっていますが、確かに当時の一般の人が「コンピュータ・ウィルス」という得体の知れない単語を聞くと、こんな反応をするのもおかしくはないかもしれませんね。

将来、人工臓器等の医療機器が身体に内臓されるようになった場合、この医療機器にコンピュータ・ウィルスが感染する可能性も考えられます。

その意味では、人に伝染するコンピュータ・ウィルスということも考えられなくはないですが、このようなウィルスは出て欲しくないものですね。

太陽電池は何年でペイするのか?

太陽電池はクリーンなエネルギーである一方、実は製造過程や運搬過程でエネルギーを使用しています。

エネルギーを使用するということは温暖化の原因である二酸化炭素も排出しているということです。

そこで、太陽電池の温暖化抑制効果を測るために、EPT(エネルギーペイバックタイム)という指標があります。

これは、太陽電池の発電エネルギーの総量が、太陽電池の製造・設置・運用時のエネルギーを上回る期間のことで、これが短いほど温暖化抑制効果が高いと評価されます。

私は長い間、「太陽電池のEPTは10年近くあり、なかなかペイしない」と思っていました。

ただ、これは古い技術に基づいた思い込みのようです。

本日(7/24)の日経産業新聞の記事「進化する太陽電池――温暖化抑制くっきり」によると、最近の太陽電池のEPTは最長でも2年間と、かなり短くなっているそうです。

また、2001年に太陽光発電技術研究組合がまとめた報告書では、住宅の屋根に設置する3キロワット級の発電システム(結晶シリコンウエハーを使用)のEPTは約四年九カ月だったそうですが、ホンダが今年から事業化した非シリコン薄膜のEPTは約11月とさらに短いそうです。

EPTは、太陽電池システムの導入コストを回収できる期間とは異なる点、消費者の観点では注意が必要ですが、マクロ的に見ると、太陽電池はここ10年程度で代替エネルギーの役割を果たすべく急速に進化しているようです。

太陽電池は現実的な選択肢になりつつあるのですね。

エンジニア・コメディアン

…という人が、米国にはいるそうです。

Don McMillanという人ですが、IBMが5/21-25にフロリダで開催したIMPACT 2007のイベント司会進行も担当しました。詳しくはこちら

ご参考までに、彼の軽妙な話術と爆笑する聴衆の様子を下記でご覧いただけます。

上の映像は、IMPACT 2007のものではなく、「パワーポイントの間違った使い方」("How NOT To Use Powerpoint")という、彼が長い間やっている持ちネタです。

ITmediaの読者の方々には馴染みが深いものの、一般の方々にはちょっとコアなネタですが、ウケているそうです。

そのうち、日本でも、このようなコメディアンが出てくるかもしれませんね。

ちなみに、彼、元IBM社員だったそうです。

現在IT企業に勤めていて話術が得意な方。もしかしたら日本最初のエンジニア・コメディアンになれるかもしれません。(既にいらっしゃったりして)

ムーアの法則が限界に突き当たる日

意識しているかどうは別にして、IT業界は、ムーアの法則に沿って進歩してきました。

言うまでもなく、ムーアの法則は、インテルの共同創始者であるゴードン・ムーア氏が1965年に提唱したもので、半導体の集積度が18~24ヶ月で倍になるという経験則です。

集積度と性能に大きな相関関係があるため、一般には「コンピュータの処理能力は2年毎に2倍になる」とも読み替えられています。

こちらの最後のチャートにあるように、この法則を過去の技術に当てはめてみると、1890年代から実に100年以上に渡ってムーアの法則は有効だったことがわかります。

つまり、情報処理産業は、業界が生まれてから今まで、常に性能が2年毎に2倍になることが暗黙の前提として発展してきた、と言うこともできます。

しかし、2年前のこちらの記事にもあるように、ムーア自身が「ムーアの法則はいずれ終わる」と述べています。

一方で、数十年後も情報量の爆発は継続している可能性は高く、従って情報処理能力増強のニーズは存在している可能性は高いと考えられます。

  • 半導体の集積度が原子レベルまで迫ってきている現代、その集積度をいかに上げるのか? 又は半導体技術とは別のアプローチでムーアの法則の継続を図っていくのか?
  • 今まで価格性能比は常に継続的に向上しているという前提で対応できていましたが、暗黙の前提であったムーアの法則が成立しなくなる時、IT業界はどのように対応すべきか?(少なくとも、100年前にこの業界が生まれてからこのかた、この業界にいる人は誰もこのような経験はしたことがありません)

これは、IT産業にとって、今後20-30年間の大きな課題になってくるのではないでしょうか?

Google Earthで見えるヤバいモノ

Google Earthでは、様々なモノが見えてしまうのは、皆様ご存知の通りです。

例えば、飛行中のミサイルMD-80(⇒ご指摘を受けて修正)とか、

例えば、とか、

例えば、空母とか、

色々と見えてしまいます。

考えてみると、Google Earthは、「世界中の情報を体系化し、アクセス可能で有益なものにする」というGoogleのミッションの従って、世の中に存在しているモノを単純に上からそのまま見えるようにしているだけです。

この単純なことを行うのが極めて難しいことは言うまでもありませんが、世の中のモノがそのまま見えてしまうことで、我々は新しい視点を得られることは間違いなさそうです。

一方で、ここまで見えてしまうと、色々と差しさわりが出るケースもある訳で、例えば、こちらの記事にあるように、米国国防省の電磁波実験施設の写真は、縦4.5km、横42kmに渡って塗りつぶされています。

情報化社会では、情報の非対称性解消に伴って発生する次の2点をどうするかが大きなテーマになります。

  • 得られる大きなメリットをどのように活用するのか?
  • 利点を失うことで困る人達はどうすればよいのか?

Google Earthの問題はこのテーマを象徴しているように思います。

皆様にご紹介いただいた追加のヤバイもの

06/04 06:26追加:じょーんさんご紹介 …空中給油機

06/08 22:40修正:はーぶがーでんさんのご指摘で、ミサイルをMD-80に修正


キーワード記事*

Google Earth

論理的思考を放棄するスーパープログラマーとモーツァルト

筑波大学4年生でソフトイーサ株式会社社長の登大遊さんが、「論理的思考の放棄」というエントリーを書かれています。

登さんは1日に3,000行、多い日で10,000行以上のプログラムを書いているそうですが、ソフトウェアの大半の設計は自分で行い、設計は最初の1回目で確定させ、その後は極力修正が起こらないようにしているとのこと。

これに加えて、大学は留年することなく卒業し、学術活動・ベンチャー起業と経営も両立しています。

これってすごいことですよね。

登さんはこの自分の能力は標準的なものと思っていたそうですが、実はこのようなことが出来るのはごく少数らしいということに気付いたそうです。そこで、登さんがこのようなことを行うために遵守する3つの項目を挙げています。

① 努力しないこと
② 論理的に考えないこと
③ 頭を使わないこと

詳しくは登さんのブログを読んでいただくとして、非常に奥深いですね。

言うまでもなく、こちらのブログに書かれているように、

・もともと努力しない
・もともと理論的に考えない
・もともと頭を使わない

という人には、このアドバイスは当てはまりません。

登さんのエントリーを読んで連想したのが、天才モーツァルトです。

映画「アマデウス」では、大交響曲が頭の中で完全に形作られ、後は五線譜に頭の中のイメージを一つずつ落とす作業を行うモーツァルトの姿が描かれています。実際に出来上がった曲も手直しが全くなく、サリエリが驚愕するシーンもあります。(ただし、実際に残されているモーツァルトの楽譜には、手直しもあるようですが)

モーツァルトの音楽も、論理的思考や努力とは無縁の産物のような気がします。

登さんのプログラミングとモーツァルトの作曲は、もしかしたら共通点があるのかもしれませんね。

登さんは、翌日のエントリーで、

そう言って伝えることを諦めてしまうのも面白くないので、もう少し時間をかけて、どのようにすればわかりやすくまとめることができるのだろうかということについて研究してみて、うまくまとまれば発表しようと思うから、しばらくお待ちください。

とおっしゃっています。

登さんがご自身の暗黙知を分かり易く形式知にして伝えていただければ、上記の観点で見てもこれは非常に価値があることだと思います。楽しみに待ちたいですね。

FORTRAN開発者が死去

IBMでFORTRANを開発したジョン・バッカス氏が3/17に82歳で亡くなられたそうです。ニュースはこちら

私が初めて接したコンピュータ言語がFORTRANで、大学の授業でプログラムを書きました。

バッカス氏はインタビューで、「自分の業績の多くが、怠け心から生まれた」と回想しているそうです。曰く、

「プログラム(=機械語)を書くのが好きじゃなかったから、プログラムを簡単に書けるシステムを考えた」

よいプログラマーに必要な資質は、怠け者であること、つまり反復作業を嫌がり省略して楽をする方法を考えることである、と言われていますが、バッカス氏はまさにそんな人だったようですね。

IBMには1991年まで在籍されていたそうです。ご冥福をお祈り致します。

MSXの復活

私はMSXは使ったことはないのですが、これを復活させて昨年11月に5000台限定で発売され、既に4000台が出荷されているそうです。(詳しくは、『実ったファンの熱意…「MSXパソコン」復活』を参照)

主要な回路はワンチップで小型化され、外部記憶媒体はSDカードとのこと。演算速度は最新PCの1000分の1程度ですが、昔のMSXソフトはそのまま使えるそうです。コンピュータの入門気としても再評価されているとのこと。

昔、日本の会社(=アスキー)がマイクロソフトと共同でこのような規格を提唱し、実際に500万台も売っていたことを改めて思い出すと、感慨深いですね。

F-22ラプターのバグ

やや古い記事ですが、「米空軍、F-22「ラプター」戦闘機の日付更新処理のバグを修正」というニュース。

記事によると、パイロットは飛行中に製造元のロッキード・マーチン社の技術者に直接の支援を求めて、搭載コンピューターのリブートも試みたそうです。

リブートしたコンピュータがどの機能を担当していたかは明記していませんが、空中給油機に航法支援を受けて帰還したとのことなので、恐らくリアルタイム性を求められない部分であったのだろうと思われます。尚、今回のバグは数時間以内に修正されたとのこと。

改めて、現在の飛行機や自動車がコンピュータそのものになっていることを教えてくれます。このこと自体、大きなリスクになりかねません。

世界がフラット化した現代、世界の各地で分散されて開発される組み込み系プログラム・コードをどのように管理するか、開発プロジェクト全体のリスクをどのようにマネージメントするか、等は、大きな課題ですね。